便利屋イグニート   作:文ノ雪

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熱がでたりと体調不良が続き土曜更新ができませんでした
申し訳ございません


陸上戦

ヴァイスサンドビーチの砂浜にて、陸へ打ち上げられたイカの魔物、ザンクカルマールとの戦闘が始まっていた。

 

「セイッ!セイヤァ!」

 

迫りくる無数の触手をフェリクスは難なくホオズキで斬り落とす。魔物との実戦は初である彼女だが、幾度もの戦闘でどう立ち回るべきか理解し始めている。

 

「ウオラァッ!!」

 

フェリクスとは向かい側で戦ってるリリィは起動させたグランドを両手で振りかざし、ザンクカルマールの脳天、正確には魔石部分に狙いを定め鉄槌を下そうとした。

魔物が生きる上で最も重要なのは魔力、その魔力の原動力である魔石を砕けばどんな魔物も大ダメージは避けられない。

 

だが、魔物とてバカではない。自分の弱点ともいえる場所は十分理解している。狙われてる箇所を理解してかフェリクスに攻撃していた触手さえ使い、リリィのグランドを触手で防いだ。

衝撃に耐えられず何本もの触手が吹き飛ぶも狙いの場所までは届かず防がれてしまう。

 

「チッ!」

 

今の一撃でグランドのエンジンが弱まった以上深追いは得策ではない。リリィは舌打ちし、再度起動させながらその場から離れた。

 

「いいかフェリクス!今は気を配るべき対象は後方の武装船だ!あそこにはオリビアも含めて負傷者がいる!絶対にあのイカ野郎の攻撃を向かわせるな!」

「もちろんです!触手だろうがなんだろうが斬って差し上げますよ!」

 

リリィとフェリクスの背後には上空から降りて来たばかりの武装船がある。先の戦いもあってか戦闘を続行できる職員は僅かしかいない。ネフェリはまだ動けるが、仮にもし触手が二人の攻防をすり抜け武装船に向かってしまった際の事を考えれば、武装船で警戒させてもらったほうが賢明だ。

 

(しかし…こっからどう攻め上げるべきか…)

 

リリィの視線の先にはザンクカルマールが触手を蠢かせ警戒の構えを取っている。さっき粉砕した触手は既に再生され元に戻っていた。魔物は魔力がある限り傷ついた身体を回復させることが可能なのだ。

 

(野郎の魔力も無限ではないはずだ。何度もぶっ潰し続けりゃいずれ息切れするだろうが…悠長が過ぎるな、先にこっちの体力が尽きてしまう)

 

再生は魔力を消費することで行っている。故に攻撃さえし続ければ魔力も尽きるだろうが、魔力が多ければ多いほどその分、攻撃を要する回数は増える。魔物が人間以上の魔力を持ってるのもあり、不可能ではないが現実的ではない。

 

「セイヤァ!」

「あの時はよくも引きずってくれたな!切り刻んでやるから覚悟しろ!」

 

フェリクスはアルターエゴを呼び出し二人係で触手を攻撃し続けているが、本体ともいえる頭部まで近づけていない。

 

(悩んでいるだけじゃ状況は変わらねェ。少し危険だが…とれる行動は全部やらねぇとな!)

「フェリクス!これ以上は埒が明かねェ!悪いがこいつの注意を引き付けてくれ!その隙を見てオレが突っ込む!」

 

尻尾を掴んだ触手を足で踏み潰しながらリリィはフェリクスへと声を掛けた。

 

「了解です!この程度の魔物の攻撃なんて何時間でも耐えて見せますよ!」

「ですので気にすることなく魔物に集中してください!自分の身は自分で守って見せます!」

「頼りになるぜ…よし、任せるぞ!」

 

リリィは一度下がり魔物から少しだけ距離を取る。ザンクカルマールは引き下がろうとしているリリィを狙い触手を向かわせようとする。

 

「させはしない!セイヤァ!」

 

無論、フェリクスがそれを見逃すわけがなく、懐からあるものを取り出し、触手目掛け投げつけた。刃があり、手のひらに収まるサイズをした複数の投擲武器は見事触手に命中し突き刺さる。

その瞬間、投擲武器に搭載されていた小粒サイズの魔石が赤く光り、爆発を引き起こした!

 

「おぉ!使ったのは初めてですが、使い勝手も良くていいですね爆裂手裏剣!」

 

投擲武器の正体は爆裂手裏剣と呼ばれる魔導具。オリビアが開発した物であり、フェリクスの趣味で集めていた武器の中にあった手裏剣を見てアイデアが浮かび、たった数時間で作り上げた。

投擲し突き刺さった瞬間爆発する設計であり、その火力は単体ではあまり高くないが、人間に致命傷を与えるなら十分であり、複数同時に突き刺せば魔物にも効果はある。現に先ほどの爆発で触手は見事吹き飛ばすことに成功している。

 

ザンクカルマールはターゲットをフェリクスに変更し襲い掛かる。この場で厄介なのはフェリクスであると判断し、リリィを捨て置き集中狙いを始めた。

 

「よしよし!何とか気を逸らすことはできた!」

「やっぱり全力で狙ってくるか…上等です、相手になってあげますよ!」

 

 

 

「…二人だけ…厳密には三人だけど、あれだけの魔物相手と真正面から戦えるとは」

 

後方の武装船から二人の戦う様子見守っていたネフェリは思わず言葉に出してしまうほどに関心を寄せていた。彼女とて幾度か魔物と対峙し、そして討伐してきた。そんな彼女からしても、あの二人の戦いには目を見張るものがあるのだ。

 

「エクスプロージョンが相当効いてるんだろうよ…一向に聖魔法を使わない辺り回復に専念したいんだろうな」

「オリビア!?」

 

後方から声が聞こえたと思えば、既に隣に立っていたオリビアに驚愕の声を出す。さっきまで気絶していたはずなのにいつの間にか目覚めているいた。

 

「お前、起きてて大丈夫なのか?私は魔法に精通してはいないが、あれほどの魔法を使っておいてそう簡単に…」

「エーテルはあるだけ飲んだから魔力は大丈夫だが…意識の方は正直キツイ、何時意識が飛んでもおかしくない」

「だったら横に…」

「でもよ、あの二人が頑張ってるのに所長である私が寝ているのは格好がつかねぇ」

 

声がカスカスだが真っ直ぐな目つき、決して譲らいないという意思を感じ取り、ネフェリはそれ以上制止することは無かった。幾度か依頼を頼んで来た身だ、言葉で引き下がるほどおとなしくないことは知っている。

 

「あの二人からはあんたを守ってほしいと言われたんだ。もしもの時なら私が行くから無理はするな」

「…悪いな、無茶を任せて」

「依頼を出したのはこっちのほうだ。これぐらい当然よ」

 

二人は会話を終え、戦ってるリリィたちの方へと視線を戻した。

 

 

 

「ええいもう!どれだけ回復したら気が済むんだよ!」

「手裏剣の残弾も尽きちゃったし…打つ手が本格的になくなってきちゃたよ…」

 

本体と分身体のフェリクスは互いに背中を合わせながらホオズキを構える。かれこれ数分に渡ってザンクカルマールを相手取っていたが、流石に限界を迎えつつあった。

 

(フェリクスも息切れし始めたか、これ以上観察は続けられそうにないな)

 

少し離れたところで様子をうかがっていたリリィはグランド片手に突っ込むべきか考えていた。幸いにもザンクカルマールはフェリクスに夢中のあまりリリィの事を忘れている。奇襲を仕掛けるなら今しかないが、もしそれで仕留めきれなかったらいよいよもって撤退を視野に入れないといけなくなる。

 

(魔石の部分を破壊すりゃ大ダメージは与えれるが即死はしねェ。おそらく最後の体力を振り絞って大暴れしだすに決まってる…となれば武装船にも攻撃が向かうリスクが高ぇ…)

 

グランドで頭を直接攻撃すればトドメはさせるかもしれないが、間違いなく触手がそれを防ごうとするだろうし、触手を粉砕してしまった後はエンジンが弱まりまた起動し直す必要がある。その間に触手が復活して近づけづ仕舞いで終わるのは目に見えている。

 

(…いや待てよ、確か魔物って生物学的には元となった生物と生体自体は同じって言われてたよな?てことは弱点の場所も…)

 

その時、片目しか出ていいない金色の瞳は大きく見開き、口元が二ヤリと笑う。

 

「ネフェリ!槍型のAKWを貸してくれねェか!!」

 

後ろに振り向き大声で槍型のAKWを要求する。

 

「槍のだと?だったら私のを使え!ぶっ壊しても構わん、好きなように使え!」

 

ネフェリは一瞬困惑したがすぐに自身の持っていた槍型AKWをリリィめがけ投げ渡す。軽々とキャッチしたリリィは槍のAKWも起動させ、視線はまっすぐザンクカルマールへと向ける。

 

「観察は十分だ。覚悟しろよ…イカ野郎!」

 

槍型AKWの軌道が最大まで出力が出たのを確認した瞬間。リリィはまっすぐ走りだした!

 

「フェリクス!しばらく任せっきりですまなかった!後はオレに任せろ!!」

「は、はい!了解ですリリィさん!」

 

フェリクスを追い越して、リリィが触手の間をかいくぐって前へと前進していく。当然ザンクカルマールは、触手はその動きを見逃しはしない。先回りするように触手を動かし、道を塞ごうとする。

 

「させはしませんよ!セイヤァ!!」

「こっちを無視なんてさせはしません!」

 

だが、触手の何本かは二人のフェリクスにより斬り落とされてしまう。ザンクカルマールはいくつかの触手をフェリクスの牽制に使い、リリィの攻撃に警戒を強める。当のリリィは既に頭部まで50mを切ろうとしてる。

 

「食らいやがれ!ウオラァア!!」

 

そして飛び上がり、頭部めがけグランドを振り落とした!今使えるだけの触手を全て使い、その一撃を防ぎ切ろうとする。

 

「ウラアアァ!!」

 

グランドはガードしたすべての触手を見事に粉砕!だが、この一撃によりエンジンは低下、威力も下がり頭部を破壊するには火力が足りない。これでは先と全く同じだ。

 

「これで、邪魔する奴は全てなくなった!」

 

だが、今のリリィは武器が二つある。グランドを手放し、二ヤリと笑いながら両手に槍へと持ち替えた。

ザンクカルマールは大いに焦りを見せた。いくら触手は回復できようとも、これでは間に合いようはない。先の武装船に対する聖魔法とエクスプロージョンによる傷を治す為に魔力自体も大きく消耗しており、もはや魔法を使うだけの余裕はなかった。

 

(…目と目の間、外しはしない)

 

鋭く、金色の目で冷静に狙いを定める。狙う場所は急所、魔物とてそこを攻撃されてはひとたまりもない。

 

「リリィさん!後ろから触手が!」

 

その攻撃を阻止しようと、フェリクスの相手をしていた一本の触手が背後から襲い掛かる!

 

「わざわざ足場を用意してくれるとは、気が利くじゃねェか!」

 

だが、リリィは後ろを振り無ことなく触手を蹴り上げ、その勢いに乗り頭部へと飛来!すぐそばにある触手は再生中、フェリクスを相手取っていた触手を戻すには間に合わない、もはや打つ手はなかった。

 

「終わりだ!ウオラアアァ!!」

 

槍はまっすぐ目標めがけ向けられ、奥深く突き刺さった。

 

それと同時に、ザンクカルマールの触手は硬直し、触手の再生は停止され、一瞬静寂が訪れた。

そして、次々と触手が地べたへと落ちていき、ザンクカルマール本体もぐったりと動きを止めた。リリィが足元にあった魔物の魔石を踏み壊した。

 

「討伐…完了だァ!!」

 

リリィは後ろに振り返りながら槍を上げ、フェリクスとネフェリ、そしてオリビアへと高らかに宣言した。

 

「や…やっと終わったぁ…」

 

その場にへたり込むようフェリクスは尻餅をつく。流石のフェリクスも限界であった。

 

「弱っていたとはいえ…まさか二人であの魔物を討伐しきるとは」

「私は信じてたよ、二人でやりきれるって…あ、これ以上は流石に限界…」

「ちょ!?おい!」

 

武装船の上では体力の限界が来たオリビアが倒れ、ネフェリが地面に落ちる前に支えたところだった。とりあえずゆっくりと寝そべらせ亡骸となった魔物の方へと目を向ける。

 

「…これだけ強力な魔物が、いったいどこから…」

 

疑問は残されつつも、かくして魔物討伐はいくつかの犠牲は出たものの、見事成し遂げることができたのだった。




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