燃える闘志
『今日の気温は例年通りの寒さとなっており、異常気象は既に収まったと言っていいでしょう。急な気温の変化による体調管理を心がけ――』
テーブルの上に置かれてる小型ラジオからは天気予報の放送が流れており、明かりが一つしかない薄暗いこの空間にノイズ交じりで声が響く。そんな部屋の中で存在感を示す、白いローブのようなコートを着た女…オリビアは、書類や何らかの部品で散らばってる机の上に置かれた一丁の拳銃をマジマジと見つめていた。
「ついにできたぞ…報酬としてついでにゲットした聖の魔石を使った…新型の銃が!」
そう言いながら手に取ると、いろんな箇所をうっとりした様子で眺めていた。
前回、ヴァイスサンドビーチでの依頼の最中に戦ったザンクカルマールの魔石を採取し持ち帰ったオリビアは、強力な聖の魔石の魔力に魅かれ、帰って早々、事務所の地下開発研究所にて新型の魔導具開発を行っていた。
当初は大砲のような大型の魔導具を作ろうとしていたが、純粋に予算が足りないのと設備も整っていないため、妥協として新たな拳銃の魔導具の開発をはじめ、たった一日で作り上げた。
「撃てば弾丸の代わりにレーザー光線が放たれる…どうせならもっと極太な光線を放てる奴を作りたかったが、プロトタイプとしてはこれでも十分のはず…!」
まだ性能テストさえしてないのに実験に成功させた科学者の如く舞い上がり、クルクル回したり銃を構えたりとカッコつけさえ始めていた。
「よし!手始めに近くの物を使って試し撃ちしてみるか!」
何かちょうどいいモノがないか辺りを見渡すと、ちょうどエーテルの空き瓶が床に転がってるのを目にする。それを見たオリビアは二ヤリと笑い、片手で銃を構え、狙いを定める。彼女の予想通りなら引き金を引けば銃口から細い線の光線が放たれ、その光線に触れた空き瓶は強力な魔力により破壊される見込みだ。
「フッ…動かない標的となればちょろいもんだ…そのキレイな瓶をフッ飛ばしてやる!!」
寝ずにずっと開発してたのもあってかテンションがややおかしいオリビアは自信満々に引き金を引いた。
だが、考えていただきたい。そのような状態で作り上げた銃器がまともに機能するのか?ましてや魔導具となればより技量を求められる代物。オリビアも腕前自体は良いが、初めて作るような魔導具ではテンションやその日の体調などに関わらず、大抵は失敗作になる。過去に自作の車を作り上げたものの、エンジン付けた直後に爆発させた実績を持っている。
今回もその例にもれなかった。引き金を引いた瞬間、拳銃そのものが白く輝く。当然この光は仕様ではない。
「あっ」
結末を察したオリビアは情けない声を上げ、そして。
地上に聞こえるまでの爆発音が響き渡った。
「お前よぉ、少しは学習したらどうだ?」
オリビアの腕に包帯を巻きながらリリィは愚痴めいて話しかける。オリビアはしょんぼりとした表情のままだ。
「前もそうだったが一回目は絶対失敗して八割は爆発すんだからせめてプロテスシールドは着けとけよって言っただろ?」
「…魔石の魔力を消費させるのモッタイナイ」
「お前だから生きてるが普通なら死ぬからなあの爆発」
そんな会話をしてる様を、フェリクスはお茶を飲みながら眺めている。まだここに来て一ヵ月も経ってないが、既にこのやり取りを8回は見ているのもあってか既に慣れてる様子だ。
「ところでリリィさん。確か前に言ってたローテ・ヘンドラーに関する情報が集まったって話でしたよね?」
「あぁ、ビーチで仕事してる間にはもう終わってたみてぇだ。今日はそいつに会いに行くぞ」
包帯を巻き終えたリリィはフェリクスの方に振り返り返事を返す。
「…しかし、お前に情報屋のツテなんて持っていたか?今までそんな奴と会ったことないが」
「え?しょちょーもその人の事について知ってないですか?てっきりお二人ともその情報を集めてる方と面識があると思ってましたけど」
オリビアの言葉にフェリクスは訝しむ。ここの所長であるオリビアさえ知らず、リリィだけが知っているというのはどうにも不自然に感じたのだ。
「今まではそこまでせずともオレたちの独力でどうにかやってこれたからな。頼る機会がなかっただけだし…何よりアイツは金にうるさいからできるだけ頼りたくねぇんだよ」
それを聞いた二人は何となく納得した。実際、ここの事務所の経済状況はあまり良好とはいえない以上、使うのを躊躇うのはなんらおかしくないことだ。
「とはいえ、今回ばかりはケチケチしてるようじゃ調査なんてできやしねぇ。つうわけで手を貸してもらったってわけよ」
「でもそこまで言うとなると集めてもらった情報も安くないんでしょう?お金の方は大丈夫なんですか?」
「…それについてはアイツが直接オリビアと会ってから話すと言ってた」
「私に?」
突然の指名にオリビアは少し困惑する。
「アイツもどうやらウチの便利屋については興味があったらしい。そこで金については直接お前と会ってから決めたいと言いやがった」
「…試されてる、と解釈していいのか?」
「間違ってはねぇと思う」
その言葉にオリビアは不敵な笑みを浮かばせ、立ち上がる。
「ならとっと行くぞ。私もその情報屋について興味が湧いてきた」
「…やっぱこうなるよなぁ」
どこからか気合と負けん気を感じる声に、リリィは何となくオリビアの心境を理解し溜息を吐いた。
挑発され負けず嫌いな面が出ており、そいつをギャフンと言わせないと納得できない。そんな状態だ。
意気揚々とオリビアは出かける準備をするべく別室へと向かった。
「何も問題が起きないといいですけどねぇ…」
「待ち合わせ場所的にそれは無理だな。絶対何か起こす」
「…ん?その人が待ってる場所に何かあるんですか?」
リリィの言葉に少し疑問を感じたフェリクスが問いかけると。リリィは二ヤリと笑いフェリクスに告げた。
「あぁ、そうだ。フェリクスお前って、ブラックジャックやポーカーのルールってわかるか?」
便利屋イグニートにて、新たな任務が始まろうとしてた。
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