便利屋イグニート   作:文ノ雪

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狼の巣

「キュリア・カンパーニュ…ローテ・ヘンドラーのカポにして元アサシン。ホテルや飲食店といった複数の店舗を経営し、裏ではヒットマン稼業を行っている。現在は行方不明…すげぇなほんとに事細かく書かれてんぜこれ」

 

ネーベルから資料を受け取った三人は事務所に帰宅しており、資料の中を確認してる最中だった。ソファに座り込んでいるリリィが一枚の紙を手に取り、以前戦ったキュリアについて書かれてる内容を喋りながら目を通している。

 

「性別や年齢は勿論のこと、どんなシノギをしてるのかすら把握してるなんて…マフィアからしたらこんなの数十万は出してもいいぐらい価値がありますよ」

「逆に向こうにこれの存在が知られたら、意地でも始末しようと掛かるだろうな」

 

向かい側のソファでフェリクスが同じく資料を眺めて戦慄し、オリビアはリリィの持ってる資料を横で顔をのぞかせながら相槌を打つ。

情報というのは価値が高く、命と同等またはそれ以上の時さえあってもおかしくない代物だ。いまある資料は中でも価値が高く、道端にばらまこうものなら、大量の血がマレス全体で流れると言っても過言ではない。

 

「さてと、キュリアを除いたとしても、結構な数があるな」

 

バッと机の上に並べられた資料を目にしながらオリビアはそう言った。実際、ネーベルが用意した資料は人数にして20人はある。カポと言っても数はなかなかに多く、むしろそれだけの数を20人ほどまで絞り込んだだけでも凄いことだ。

いくら潜入捜査するにしても全部調べてたら何年掛かるかわかったものじゃない。要はここからいくつか絞る必要があるのだ。

 

「武器工場、警備会社…孤児院にサーカス?いくらなんでも多すぎじゃねェか?」

「ローテ・ヘンドラーは昔から商いを中心に行って成り上がってきたと聞く。そうしたのもあってかいろんな事業に手を出してるんだろう」

「…一番怪しそうだとすれば、こいつになりますかね」

 

数ある中でフェリクスが一枚の資料に指を刺す。犬…いや、狼のような耳をし、ズボンから灰色の尻尾が出ているスーツ姿の女が写ってる写真が記載されている。

 

「この頭の耳…もしかしてリカントか?」

「えぇ、そしてローテ・ヘンドラーのカポにして、カジノ【ヴォルファーレ】支配人のコラプスです」

 

資料を見れば更に詳細に情報が書かれていた。

 

『コラプス・メッテルニヒ。年齢31歳、身長約180cm、性別は女。男女関係なく性的な関係を持ってることからバイと推測。

娼婦とリカントのマフィアの間で生まれたコラプスは殺し屋や用心棒などで日銭を稼ぎ、その後はローテ・ヘンドラーの構成員となり、経った数年でカポにまで成り上がった。

自身にとってプラスになることならどんな手段を使うことも躊躇わない。確証はないがかつて上司ともいえる奴を殺した疑惑もある。

また、性格が極めて悪く、自分より弱い者が死ぬ姿を見ることが何よりの愉悦と感じている。欲を満たす為に人を殺した経歴があり、最低のカス。

普段は経営しているヴォルファーレで生活しているらしく、よく客の前に顔を出すと言われている』

 

「カスだな」

「わかりやすいほどのカスじゃねェか」

「読んでて思いましたけどほんとそうですね」

 

三人の感想はほぼ一致していた。

 

リカント。それはリリィのドラゴニュート同様、アステールに存在する種族の一種である。特徴的なのは頭に生えた狼のような耳と尻尾であり、身のこなしが早いことで知られている。

コラプスもまたその一人。子供のころから殺し屋としてやっていけたのもリカントという種族としての力による恩恵がデカい。

 

「まぁそいつについてはだいたい分かった。目的の為なら仲間ともいえる組織のやつさえ殺すようなやつだ。アンダーボスの席を得るために親衛隊とつながってても不思議ではないな」

「しっかし、肝心のヴォルファーレについては大したことが書かれてねェな」

「どういった内装だとか警備がどうとか何も書かれてないですね」

 

最早コラプスのもとへ潜入捜査をするのは実質確定したものの、そのコラプスがいるとされるヴォルファーレの情報があまり記載されていないのだ。

だが、その理由は資料内で記載されていた。

 

『先に言っておくとヴォルファーレに関する内部情報は全くと言っていいほど集められなかった。高級カジノで特定の客、要は富裕層みたいなお偉いさんじゃないと客として入ることができない会員制だったのと、中で行われてる行為は一切外部に漏らしてはならないという厳しい決まりが何よりの原因だ。

カジノの場所はなんとか特定できたので中に入りたいならそっちのほうでどうにかしてほしい』

 

「会員制か…となると客として潜入するのはかなり難しいな」

「殴り込みは論外でだな。前のホテルは何とかなったがあれと同じようにいくとは思えねェ」

「むしろそれの件もあってか向こうも警戒度は高まってそうですしね…」

 

これまでの依頼において真正面から突っ込む強硬的な手段で敵を倒したりしたことはあり、場所は割れてる以上やること自体は可能だが、流石にマフィア組織の幹部を相手にそれが通じると思うほど三人もバカではない。

 

「……いや、まてよ」

 

その時、オリビアに天啓が下りた。

 

「わざわざ客として入る必要なんてないんだ」

「え?じゃあどうやって入るんですか?中になにがいるかわかってない以上潜入はあまりにも危険ですけ…」

「フフフ…なに、そんな無茶をする必要はない。いや、潜入というの事態は合ってるか」

「…お前、まさかだと思うが」

 

何かを察したリリィはイヤそうな顔をし、フェリクスは何かわからず不思議そうな表情のままだ。オリビアはそんな二人にこう告げた。

 

「どうせでっかいカジノなんだ、従業員…バニーガールは何人いても向こうは困らないはずだろ?」

 

それすなわち、働いての潜入である。




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