便利屋イグニート   作:文ノ雪

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実力差

(あ、あんな奴が、親衛隊の機関長…?)

 

フェリクスは息をのみこみ声を殺す。彼女からしてビルセントからは覇気や威厳などの風格は感じられない。10cm以上低いのでそう思うのも無理もない。

 

(やるなら、今か?)

 

親衛隊を含めても今ここにいる人数は10人程度だ。フェリクスの実力と分身体を今ここに呼び出せば何とかできる。情報収集をするなら捕らえるのが一番だが、親衛隊相手に手加減して勝てると思うほどフェリクスも甘く見ていいな。

 

(爆裂手裏剣…いや、飛び道具は弾かれたりガードされたら終わりだ。やっぱりこのカタナの一撃で)

「ところで」

 

先ほどまで隊長の前にいたはずのビルセントは、いつの間にかフェリクスの前に立っている。その眼差しは複眼めいて輝いている。

 

「君、誰」

「…どういうことで」

「とぼけても無駄だよ」

 

ビルセントは言い訳させる間も与えず、一方的に話し続ける。

 

「アタイさぁ、すっごく視界が良くて、細かい所からでも暗闇でもよく物が見えるんだよ。そのヘルメットから薄っすらと空いてる視界用の穴に映るものを言い当てれる」

「そんな冗談な…」

「赤茶色の髪の子って、アタイの調べだといなかったはずなんだけどね」

 

それを聞いた他の警備員たちは一斉にフェリクスの方へと振り向く。

 

「赤茶色?確かアイツの髪色はそんなんじゃ…」

「セイヤァッ!」

 

瞬間、フェリクスは重装甲のスーツを内側に仕舞っていたカタナ型AKWのホオズキに手を取り、スーツごと切り裂いてビルセントに斬撃を放つ!

 

「よっと!」

 

だが、ビルセントは華麗に後ろへ下がりフェリクスの斬撃を避ける!

 

「チッ!」

「て、テメーはシュヴァルツアクスの」

「セイヤァッ!」

 

正体を知り、他の警備員たちがサブマシンガンを構えようとするその前に、フェリクスは数枚の爆裂手裏剣を投擲!

 

「ガッ!?」「ウグッ!」

 

何人かは重装甲のスーツの隙間を通り抜け生身に直撃し、他はスーツの首元などに突き刺さる。そして、数秒もしないうちに、手裏剣は爆発!警備員たちは断末魔を爆炎で消されながらそのまま死亡!

 

「貴様ァ!」

 

一人残された隊長は剣型のAKWを取り出そうとしたが、スーツを脱ぎ捨ていつもの和服姿になり、既にエンジンを起動させてるホオズキを振り下ろそうとするフェリクスが目の前にいた。

 

「あっ」

「セイヤアッ!」

 

隊長はあっけなくスーツごと斜めに一刀両断され、そのまま二つに分かれ地面に崩れ落ちた。

 

警備員が全滅したのを確認すると、残された親衛隊の隊員たちは冷静に武器を取り出そうとする。

 

「待て」

 

だが、それはビルセントの制止により止められ、彼女は拍手をしながら近づいて来る。

 

「まさかあんな一瞬でアイツらを殺してしまうとはやるねぇ。褒めてあげるよ」

「黙れ、次はお前を斬る!」

 

バレた以上この場にいる全員を斬り捨てるつもりでいたフェリクスは刃を向けながら告げると、ビルセントはきょとんとした顔をし、そしてすぐにケラケラと笑う。

 

「マジ、マジ、マァジ?アタイまで戦おうとするの?」

 

ビルセントの薄ら笑いながら人をバカにする態度に、フェリクスは若干の苛立ちを募らせる。

 

「その余裕、いつまで続くか見ものだな!」

 

怒りを剥き出しにフェリクスはホオズキで斬りかかる!

 

「おっと!危ないなぁ!」

 

ビルセントはまたしてもフェリクスの斬撃を回避。だが、一度避けられたところで諦めはしない。そのまま連続的に斬る、斬る、斬る!

 

「セイッ!セイッ!セイヤァ!」

「元気が合っていいなぁ!」

 

だが、回避はするもビルセントは一切反撃を行おうとしない。明らかにナメた態度にフェリクスの怒りはどんどんたまっていった。

 

「避けてばっかりか!何故武器を持たない!」

「野良犬のしつけをするのに、そんなもの取り出したらかわいそうじゃん」

「ッ!お前!!」

 

フェリクスは懐から数枚の爆裂手裏剣を投擲!ビルセントはそれを、なんとブリッジ回避した!

 

「当たらなければどうとでも…」

「セイヤアアァッ!」

 

だが、ビルセントがブリッジ体勢のまま天井を眺めたその先には、飛び掛かり頭目掛けホオズキを突き刺そうとするフェリクスの姿があった!このままの頭を避けられても抑え込み一発殴ることはできる!だが。

 

「よっと!」

 

ビルセントはブリッジ体勢のままバク転してフェリクスの攻撃を避けた!

 

「なに!?」

 

思わぬ回避にフェリクスはそのまま床にホオズキを突き刺してバク転したビルセントの方へ顔を向けようとした。

 

「少しだけ遊んであげるよ」

 

だが、その時には既に床を蹴り上げ、握り拳を構えフェリクスの眼前まで近づいてきたビルセントがいた。

 

「まずはいっぱァつ!」

「ンアッ!?」

 

ビルセントの拳がフェリクスの顔面に直撃!ホオズキを手から離しフラフラと後ろに下がるが、ビルセントは逃げられないよう腕を掴み追撃を行う。

 

「ほら二発!三発!」

「ングッ…ンアァッ!?」

 

無防備な体に何発も拳を当て続け、反撃の隙さえ与えようとしない。

 

(早く…せめてホオズキを…)

 

意識が飛びかけるも何とか抵抗しようとするが、それをあざ笑うようにビルセントは一旦手を離し、右足に力を入れる。

 

「ハイトドメェ!」

「ッッ!!??」

 

ビルセントの鋭い蹴りがフェリクスの股間へと無慈悲な一撃を当てる。フェリクスはもはや言葉さえ出せずその場に崩れ落ち、もがき苦しんだ。

 

「アッハッハッ!アー…やっぱこういう奴を躾けるのたーのし!」

「戯れは結構では?機関長」

 

決着がついたと見た一人の隊員がビルセントへ呼びかける。

 

「あーうん、もういいや。いやぁ楽しかったぁ」

「それで、この者をどうしますか?」

「んー、実際結構強かったし…それに、単独で来たとは考えられん」

 

さっきまで玩具で遊ぶ子供のように笑っていたビルセントの表情は一変し、冷徹な顔に変貌する。

 

「殺さずここの連中に引き渡しとけ。ただし、すぐには殺さず情報を全て吐き出させるように指示しろ」

「了解です。ところで、視察はどうしましょうか」

「…いや、それもどうでもいいや。もう十分楽しめたし、こいつを引き渡したらとっと帰るぞ」

「了解です」

 

近づいて来る隊員たちに抵抗すら敵わず抑えらるところを最後に、フェリクスの意識は途絶えた。




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