「お二人はよく飲みに行ったりってするんですか?」
「あぁ、任務を終えた時や一息付けたいときはやっぱ酒を飲むに限るからな」
「だな、疲れた時に飲むビールってのはそれはもう最高に美味いもんよ!」
「へぇー、そうなんですね!やっぱそういう風に飲みに行ったりするのって憧れるなぁ」
「フェリクスはあんま飲みにいかねぇのか?」
「一回だけ仲間内で飲んだことはありますけど…あまり記憶がなくて。それ以降は飲みに行くときは武器を置いて行けって言われたっけなぁ」
「……リリィ、もしものことがあったら止めれるか?」
「いくらオレでもAKWで斬られたら死ぬわ」
オリビアたち三人は何のとりとめのない話をしながら夜の繁華街を歩き続ける。この時間帯こそがフライハイトの本番と言っても過言ではない。周囲は朝と昼に比べ、圧倒的に人が多い。それだけにこの街で楽しもうとする者がたくさんいる証拠だ。
「そうだ!もしよければカジノにも連れて行ってくれませんか!実は行ったことなかったんですよね」
「いいじゃないか、なら私がギャンブルのお手本を教えてや…」
「いいかフェリクス、こいつの話は何一つとして参考にするなよ」
オリビアの話を遮るようリリィが割って入る。
「オイ、まだ話してるとちゅ…」
「え?どうしてですか?」
「今までオリビアとは何十回もカジノに行ったことあるが…勝ってる姿を見れたのは2、3回しかねぇ」
「…他の時には?」
「負けてる、それも家賃が払えなくなったレベルの大負けをしやがるんだよこいつ」
「調子が悪かっただけだ!特に今日はいつもに増して運が味方してる気がするし絶対勝てる!!」
「ああいうハマり方はするなよ、フェリクス」
「あー…ハイ、参考にします」
そんなことを雑談しながら歩いていると、オリビアはネオンライトで照らされたある看板に目が行く。
「…っと、話してたらあっという間についたな」
「フェアシュテック…たしかどっかで聞いたことがあるような…」
「いい店だぜ、広いし賑やかだし、何より酒もうまい!」
「店前で話しても何も始まらん、とっとと入るぞ」
オリビアとリリィが先に入り、フェリクスは後を追うように入店した。
店に入れば外とは違う賑やかさがあり、店内は酒や料理のいい匂いで広がっている。
「いらっしゃいませー!オリビアさんいリリィさんに…おや?初めて見る方ですけど、この子どうしたんですか?」
真っ先にオリビアたちのもとにやってきた店員メランは不思議そうな顔をしながらオリビアに問いかける。
「訳あってしばらくうちのところで働くことになったんだ、というわけでテーブル席まで案内してくれるか?」
「なるほど、そういうことですか!でしたらご案内しますね!」
メランは元気よく答え三人を空いている席まで案内すると、また別の客を案内すべく軽く頭を下げた後に去っていった。
「えーと…何から頼もうかな…」
「最初ならまずは酒だ!これがねぇと始まらないからな!」
「ならとりあえずビールでも頼むか。フェリクス、別に無理に酒を飲むことはない、好きなのを頼んでいいぞ」
「私だってお酒ぐらい飲めますよ!シュヴァルツアクスのメンツを守る為にもひとつ強いところを見せてあげますよ!」
「エへへへ!お酒っておいひいですねー!」
「もう二杯でダメそうになってるぞこいつ」
「こうなったらカジノはまた今度にするか…せっかく金用意したのに…」
まだ店に入って10分も経過してないが、フェリクスは既に頬を赤くし上機嫌な表情をしていた。騒動を起こさないよう刀型のAKWはオリビアが取り上げている。
「…ところでだが、フェリクスっていつからマフィアになったんだ?」
「んー、もう5年は経つかなぁ」
「確か今は20歳ってベルナデッタに聞いたから…15の時からマフィアやってんのかお前?」
「はい、でも何もおかしいことではないですよ。裏路地出身ならよくあることですから」
グロリア帝国において裏路地はスラム街などの一種に近く、ギャングやマフィアなどのアウトローが跋扈しており国内問題として挙げられてるほど規模も大きい。故に、そこで生まれ育つ者は大抵普通とは程遠い生活を送る、フェリクスもその一人だ。
「裏路地で路上生活するよりマフィアやギャングとして生きる人のほうが圧倒的に多いんですよ裏路地の人たちって。まぁ何の後ろ盾もなしで裏路地を生きるのは不可能に近いですし当然の選択だと思ってます」
「大戦前はまだマシだったが、今の裏路地はギャングやマフィアが更に幅を利かせ、市街にも広がるほどの勢いがあるよな」
「現に、連中の麻薬が広まってる、別の麻薬だが先日に麻薬を使ってたギャングに痛い目に遭ったよ」
オリビアはスリを追ってたはずがギャングと戦うハメになり、その戦いで殴り飛ばされたことを思い出し、さっさと忘れるべくビールを一気飲みする。満タンに入っていた大ジョッキはカラになり、オリビアの目はとろけはじめている。
「…ぷはぁ。あー、カチュアを見つけないといけないし、麻薬売りさばいてるローテ・ヘンドラーのやつらもどうにかしないといけないし、やることが…やることが多い…やっぱ気晴らしのためにカジノ行こう、そうしようツキを得ればどうにでもなる」
「なぁに!私とオリビアさんたちでやればどうにでもなりますよぉ!ローテ・ヘンドラーなにするものぞ!シュヴァルツアクスと便利屋イグニートにかかればらくひょうれす!」
「おいまて、まだオレ二杯しか飲んでないしシラフだぞ、二人して勝手に酔い潰れようとしてんじゃねぇ!」
流石にリリィも危機感を感じた。酔っ払い二人を介護しながら事務所まで帰るなど考えたくもない。これ以上酔ったら路上に置いていくことになると予感したリリィは無理矢理二人を立ち上がらせ、会計を済ませた。本当はもっと飲みたかったが、それはまた別の日にオリビアに奢らせ飲むことにした。
「うー…リリィさぁんAKW返してくださいよぉ。あれないと夜道は不安で落ち着かないんですぅ」
「酔ってるやつに武器を渡すわけねぇだろ」
千鳥足気味になってるフェリクスを支えながらリリィは歩き、オリビアは頭を振って酔いを醒まそうとしている。時刻は既に深夜前、まだ人が歩いているがさすがに数は減っていた。
「…悪い、ちょっと飲むペースが速すぎたな」
「いいんだよ、その代わり次飲むときは奢ってくれよ」
「あぁ、わかってる。だがもう一つ謝りたいことがある」
「ん?なんだ?」
「つけられてる、店を出てからずっとだ」
その言葉に、リリィは一瞬足を止めそうになったが、ペースを崩すことなく歩き続ける。
「…いつからだ」
「わからんが、さっきの店から追跡し始めたと思う。それも一人じゃない、複数いるぞ」
「なんとかまけそうですか?」
フェリクスもまた水を掛けられたかのごとく正気に戻っており、目つきも鋭くなっている。
「できないことはない、だが、タイミングから考えてローテ・ヘンドラーの手先のはずだ。調査も行き詰ってたとこだちょうどいい」
「…なるほど、確かにいいな。いちいち歩きまわるより手短に済むぜ」
何か察したかのようにリリィは二ヤリと笑う。
「裏路地に誘い込むぞ。返り討ちにして情報を吐かせる」
オリビアたちは裏路地のほうへ続く道に進むと、追跡していた複数の影が同じ道へと進んでいった。
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