Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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特に注記が無ければZ-ONEの一人称視点になります


Vol.0 プロローグ編
Z-ONE、絶望の化身に招待される


「彼女のミスでした」

 

 空も大地も無いただひたすら真っ白な空間の中、ただ一人"彼女"だけがいました。

 

「彼女の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」

 

 彼女は資料でだけ目にしたことがある一昔前の学校にあった生徒用の椅子に座り、こちらをただ見つめていました。

 

「結局、あの結果にたどり着いて初めて、彼女は"先生"が正しかったことを思い知ったでしょう」

 

 これももう久しく無縁だった清流を思わせるような長髪、空のように青い目、そして無垢を象徴するような純白な制服に身を包む彼女は未成年。おそらくは高校生という肩書が一番似合う年代だと見受けられます。

 

 360度ぐるりと見渡してこの空間には私と彼女だけが存在していることを確認します。そして改めて自分が何者で何故ここにいるかも整理するとしましょう。

 

 私は自分の名前をもうはるか遠くの過去に捨てました。そして私は一度は英雄となった決闘者として世界を救おうとし、救えませんでした。それから私は生き残った者達とともになおも世界を救おうと試行錯誤を繰り返してきたのです。

 

 故に私はZ-ONE。世界最後の生き残りです。

 

 ですが……私の記憶が確かならば、同志に先立たれた私は最終手段を実行に移すべくアーククレイドルを過去の世界に落とし、世界滅亡のきっかけとなったモーメントを破壊しようと試みました。そこで私は赤き竜に選ばれた決闘者と決闘し、彼らに未来を託すこととなったのです。

 アーククレイドルのモーメントを逆転させるために私が犠牲となって異変を終結させた。その筈だったのですが……。

 

「彼女が招待した"先生"は"先生"にしか出来ない大人の責務と義務をもって同じ状況で同じ選択をするでしょう」

 

 改めて自分を確認します。もはや老衰間近で生命維持装置ごとでしか動けなかった自分の体は五体満足でした。自分の足で立ち、自分の手で顔を触れます。それから自分の着ている衣服を観察し……ようやく自分がどのような姿になっているのかを把握します。そのうえで右側の頭部に手をやり、装置すら付いていないことも判明しました。

 

 間違いありません。私は今、不動遊星の姿をしています。

 あの私の到来による忠告を受け止め、未来を変えてみせた決闘者の……。

 

「彼女は捻れて歪んだ先の終着点とは別の結果を、そこに繋がる選択肢を見つけ出そうと何度でも、何度でも、な・ん・ど・で・も、やり直してきました」

 

 一方的に喋り続ける少女はデュエルディスク……なのでしょうか? それにしては小型なようですが。それを展開し、フィールド魔法を発動させました。すると何も無い虚無の空間が様変わりしていきます。

 

 変化した空間は墓場でした。黒い石碑が立ち並ぶ不毛の大地が広がり続けています。生命の息吹も一切感じられない、まさに滅びを迎えた終焉の世界と呼ぶにふさわしい光景でした。

 

「これらは全ての希望が尽き果てた歪んだ先の終着点。この墓標の一つ一つが彼女が巡ってきた希望の果てなのです」

 

 彼女は軽く笑います。

 

「私は彼女が望む希望が潰えた瞬間に生まれる世界の絶望を食らう絶望の化身。彼女は私に毎回とても味わい深い絶望を提供してくれました」

「貴方が何者かはだいたい分かりました」

 

 一方的に喋り続ける彼女を遮るために言葉を発します。人工声帯にも頼らない自分の声はとても久しく、そして違和感を覚えるものです。あの絶望の最中でも希望を捨てずに歩き回った頃の記憶が蘇ってきました。

 

「貴女が私をこの空間に招いたようですが、目的は何でしょうか? まさかこの私に手を貸せとでも言うつもりですか? この墓標作りに」

「まさか。彼女の世界は何もせずとも滅亡する要因が沢山ありますからね。私はただ座して待っていればいいだけですよ。さながらレストランでフルコースが運ばれるのをわくわくする客のようにね」

「意図が分かりませんね。であれば尚更私をここに呼ぶ理由が無いでしょう」

「あります。Z-ONE、貴方には彼女があがき続けるあの世界の立会人になってもらいます」

 

 彼女は発動していたフィールド魔法を新たなフィールド魔法の発動で書き換えます。すると墓標の世界は様変わりし、紫や赤を基準とした異世界が展開されました。そして彼女がフィールド魔法の効果を発動すると世界全体に光が走ります。まるでサーキットが繋がるように。

 

「あの世界をほんの一部だけ書き換えました。Z-ONE、貴方もこれからあの世界、キヴォトスで先生をしてもらいます。もっとも、"先生"が担任なら貴方は副担任のようなものですけれどね」

「拒否した場合はどうなるのですか?」

「貴方では無理です。拒否など出来ませんよ」

 

 彼女は私を侮るわけでもなく、そして馬鹿にするようでもなく、ただ事実を述べたようにあっけらかんとしていました。事実今私の手元には何も無く、彼女に飛び掛かったところで状況は打破出来ないでしょう。

 

「しかし途中で自分から降板する分には大いに結構です。貴方のDホイールなら元の世界に戻ることも不可能じゃないでしょう。そしてそうなったところであの世界の運命は大して変わりません。彼女には"先生"さえいればいいでしょうし」

「気に入らない、と言ったところで私の選択肢は限られているのですね」

「察しが良くて助かります。……歴史を修正してついには世界を救った貴方なら、もしかしたら"先生"が取りこぼすしかなかった生徒も……」

 

 彼女の最後の方のつぶやきは私にはあまり聞き取れませんでした。しかしその瞬間だけ彼女の頭部に何かが浮かび上がります。まるで蜃気楼のようだったそれは例えるなら天使の輪っか、つまりはヘイローと言えました。しかしすぐに消えてしまったため、単なる目の錯覚だったかもしれませんね。

 

「以上です。あ、そうそう、先生としての就任祝いに貴方が必要とするだろうデッキ、デュエルディスク、Dホイールは元の世界から引っ張ってきました。デッキの細かな調整はシャーレに就任した後に自分でやってくださいね」

 

 彼女がフィールド魔法ゾーンからカードを外して小型のデュエルディスクを畳むと世界は再び何も無い真っ白な空間になりました。一つ違うのは私の脇にDホイールがありました。一見遊星のDホイールですが、追加で私が搭載した機皇帝対策の兵装などもありますね。

 

 Dホイールにはヘルメット、デュエルディスク、そしてデッキの入ったホルダーが付いたベルトがかかっていました。私は何か細工が仕込まれていないかを確認してからそれぞれを身に付けていきます。

 

「貴女が何を企んでいるのかは知りませんが、私は私のやりたいようにさせてもらいます」

「勿論です。私は貴方を拘束したり操ったりはしません。Z-ONEという存在がキヴォトスにどのような絶望を、そして希望をもたらすのか。私はじっくりと観劇させてもらうとしましょう」

 

 本来なら全てやり遂げて終わる筈だった私の人生。残すは三人の同志達との再会を待ち望むばかりでしたが……彼らに謝らねばなりません。目の前の彼女が何者なのかはさておき、生きながらえたからには私が果たさねばならない使命があるのでしょう。

 

 その証拠に私のデッキ群の中には私に力を貸してくれた神々、《時械神》も残っています。ならば私はこの足とDホイールで走り出すまでです。明日に続く道をどこまでも、ね。

 

「最後に、貴女の名前を聞かせてもらえませんか?」

「私ですか? そうですね……。今の私は"□□□□□□"とも"■■■■"とも言えませんし……。仮称でいいならエラーとでも呼んでください」

 

 エラー。誤り、失敗、失策……ですか。

 成程。覚えておきましょう。

 

「ではZ-ONE、いってらっしゃい。そしてキヴォトスへようこそ。彼女が難色を示そうと私は歓迎しますから」

 

 エラーを名乗った彼女はお辞儀をするとやがて白い世界も消えていきます。私もまた幻覚に包まれて意識が朦朧としました。Dホイールを支えに足を踏ん張って耐えましたが、気がつくと私は先程とは違う空間にいました。

 

 そこは不動遊星の時代のシティと似た発展を遂げた都市でした。人が大勢行き交う様子は繁栄の証。高等部の生徒と思われる少女達が談笑をしながら私の横を通り過ぎていき、後ろからは犬や猫の姿をした者が前に進んでいます。

 

「ここがキヴォトス、という世界ですか……」

 

 と呟いたのはいいのですが、キヴォトスとはこの世界のことではなくシティどころではない規模の超巨大学園都市を指していることを知るのは少し後、連邦捜査部「シャーレ」という一種の超法規的機関に正式に赴任してからでした。

 

 それまでに発生したシャーレオフィスビル奪還については私から特筆するまでもないでしょう。"先生"と呼ばれた方が生徒へ巧みに指示を出して不良生徒を鎮圧していたのはこれからのキヴォトスにとっては日常の風景になるでしょうし。




二次創作はだいぶ久しぶりなので解釈違いが無いかとても不安ですが、その分執筆は楽しかったです。
書き溜め分がけっこうあるのでしばらく毎日投稿します。
ご意見、ご感想お待ちしています。
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