Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

101 / 195
ベアトリーチェ、強襲で制圧する

 何かとんでもない発言をしたユカリもユカリですが、ベアトリーチェもベアトリーチェで結構盛大に反応しましたね。これまでの彼女の印象からだと軽く受け流すだけの方が自然だと感じますが。

 

 深く息を吸って吐いたベアトリーチェは口元を拭い、ユカリに激しい感情がこもった視線を投げかけました。しかしユカリは全く気にする様子がありません。むしろ美しいと素直な感想を述べたのにどうして、といった顔をしています。

 

「貴女は……」

「これは失礼、自己紹介していませんでした。身共は勘解由小路ユカリと申します! 百鬼夜行の誇り高き百花繚乱の一員です!」

「やはりそうでしたか。道理で……。その感想を告げられたのは二度目ですよ」

「そうでしたのね! ふふふっ! ではその御方も見る目があったのですね!」

 

 ベアトリーチェはうんざりといった表情を浮かべましたが、過去をどこか懐かしむようでもありました。しかし昔のことだと顔を横に振り、ユカリへ返事しませんでした。まるでこの話を打ち切らんばかりに。

 

 しかしそんなベアトリーチェの思いなどどこ吹く風。彼女の回答に興味が湧いたのか、ユカリは若干前のめりになります。それを見たベアトリーチェはこの先どうなるか察したらしく、顔を引きつらせます。

 

「その御方はどんな方だったんですの? やはり百鬼夜行の生徒でしたの? 百鬼夜行の先輩と同じ見る目だったなら光栄ですわ~」

「……はぁ。丁度貴女のような感じの生徒でしたよ。百花繚乱の委員長にまで昇り詰めていましたか」

「百花繚乱の委員長! それは素晴らしいすーぱーえりーと先輩だったのですね! 身共もいつかその方のように百花繚乱を背負って立つ身に……」

「純粋で真面目でひたむきで、そしてとっても愚かでした。最後には誇りも名声も、自分すら失って行方をくらましましたね」

 

 ベアトリーチェが告げたその人物の末路にユカリは息を呑みました。口元を手で覆いかけますが、顔をぶんぶんと振ります。ベアトリーチェへ向ける眼差しが真剣なものに変わります。

 

「行方をくらましたとは、どうして……?」

「継承戦。貴女「ユカリです」……ユカリも知っているでしょう?」

「え、ええ」

「彼女はとある失敗の隙をつかれて継承戦に敗れたんですよ」

 

 私は百鬼夜行の資料に目を通しただけなので文面でしか知りませんが、「百花繚乱継承戦」とは、紛争を調停する役割を担う由緒正しい委員会である百花繚乱の上に立つに見合わないものがいると幹部クラスが判断した場合、委員であれば誰でも継承戦を申し込んで下剋上が出来る。そんな制度だそうです。

 

 そのとある失敗と継承戦での敗北で全てを失ったその委員長は、百鬼夜行に伝わる大預言者クズノハを探したのですが、結局会えず。その後彼女の名が記録されることはなくなったのだとか。

 

「全く、今思い出すだけでも腹が立ってきます! 置き手紙も残さずいなくなってしまったせいで百鬼夜行の生徒ではなかった私たちまであの寒い大雪原の中を探す破目になりましたし、やっとの思いで見つけ出したと思ったら勝手に絶望してこちらの話に一切聞く耳持たず! 挙げ句の果てにゴミ掃除まで押し付けられたんですよ!」

 

 当時を振り返って愚痴を零したい衝動に駆られたのか、あちらから過去を暴露していきます。というか、その口ぶりですとベアトリーチェは当時の百花繚乱の委員長と知り合い……いえ、もしかしたら……。

 

「あの、付かぬことをお伺いしますが、その元委員長の方とはご友人だったのですか? 大雪原まで足を運んで探すだなんて相当深い関係じゃなければ……」

「誰が彼女と友人ですか! 腐れ縁ですよ腐れ縁!」

 

 ベアトリーチェは胸の谷間を弄って自分のデッキを取り出し、サイドデッキから1枚のカードを取り出してユカリへと投げつけました。回転したそれは明後日の方向に飛ぶことなくユカリの手に収まります。

 

 ハッと息を呑むユカリ。そのカードには傍目からでも尋常ならざる力が宿っているように感じられます。しかし力の質が違うので時械神や三幻魔とは比較出来ません。圧倒的存在感が無い代わりにどこまでも澄んでいるようでした。

 

 《陰陽神クズノハ》

 

 そのカードはミカがアリウスで召喚した《スターダスト・ディヴィニティ》と同じマッチキルモンスターでした。しかし私の世界のデータベースに記録された絵柄ではなく、仙人のような雰囲気をした妖狐の少女が描かれています。

 

「このかぁどは……?」

「「百蓮」とかいう武器と同じように百花繚乱の委員長に代々継承されてきたカードだそうですよ。彼女が私の前で破り捨てたのを可能な限り修復しました。「崇高」に至る手段になるかと期待したのですが、私には全く扱えない代物でしたので、もうユカリにあげます」

「みみ、身共に!?」

「ここで会ったのも何かの縁なのでしょうから。自分で隠匿するのか今代の委員長に渡すのかは勝手になさい。何なら捨てた本人に突き返したって構いません。その時の彼女の顔はさぞ見ものでしょうね」

 

 くっくと笑ったベアトリーチェはどうやらその元委員長が見せる表情を想像して笑っているようでした。ユカリは真剣に託されたカードを見つめ、自分のサイドデッキの中に入れました。

 

「百花繚乱紛争調停委員会の委員、勘解由小路ユカリがしかとお預かり致します。現委員長ら先輩方と相談して決めたいと思います」

「そうですか」

「それで、ベアトリーチェさんのおっしゃる元委員長のお名前を伺っても? お会いする機会があればその方ともお話出来ればと思いますわ」

「言ったところで勘解由小路の記録からは抹消されてるでしょうし、今や名前すら捨ててる可能性があるので意味は無いと思いますけれどね」

 

 そうしてベアトリーチェが口にした名前を聞き、私とユカリは思わず顔を見合わせました。

 

「勘解由小路コクリコ。それが彼女の名前です」

 

 そう、つい先日のデュエルモンスターズの講義で現れた淑女ではありませんか。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 次の日、私たちは第三の蜃気楼の街がある百鬼夜行にやってきました。ここもやはり破壊し尽くされていますが、ミレニアムとは異なり機械兵器は一切ありません。もしかしたらこのキヴォトスでは破滅の要因が複数重なったのかもしれません。

 

 コクリコの名を口にしたベアトリーチェに対して講義でコクリコと会ったことを説明したユカリ。ベアトリーチェは熟考の後、ユカリに対して忠告、そして願いを口にしたのでした。

 

「「すーぱーえりーと」を目指すユカリとコクリコさんとは必ず近い内に相対することになるでしょう。その際、運命に打ち勝つかはユカリ次第です。……コクリコさんを呪縛から解放してあげてください」

 

 ベアトリーチェとコクリコとの間に何があったかは存じませんし、彼女たちの青春時代を調べて知った気になるのも野暮でしょう。ただ一つ、ベアトリーチェからコクリコに向けられた矢印は決して小さくはないだけ分かっていれば充分です。

 

 ちなみに4人になった旅は私のDホイールに全員乗って移動しています。サイドカーにはユカリとテフヌトが狭そうにしながらも座席を共用し、ベアトリーチェには私の後ろに回ってもらいました。ベアトリーチェは嫌がっていましたが、最後は渋々従ってくれました。どうやら落ちないように私にしがみつくのを嫌がったようです。

 

「Dホイーラーがライディング中に雑念を浮かべるわけがないでしょう」

「そう当たり前のように言われると女としての沽券に関わってくるのですけど?」

 

 閑話休題。

 

 百鬼夜行跡地の上に顕現した蜃気楼の街は……一見すると百鬼夜行とそんなに変わっていませんでした。しかし、雰囲気が似ているからこそ違いは鮮明になるもの。愕然としたユカリは顔を白くし、朝食を全部戻してしまいました。

 

「こんな、こんなのが百鬼夜行の最後だなんて……」

「……急ぎましょう。もたもたしていたら世界の崩壊に間に合わなくなります」

 

 例によって段ボールを使って移動し、百鬼夜行で陰陽部の部室があった敷地にそびえ立つ巨大寮へ侵入しました。どうやらここは陰陽に関する養成をしている施設なのようで、墨汁で書いたばかりの札が至る所で干されていました。

 

 そして陰陽部の部長室に相当する奥までやってきた私たちは段ボールを取り払います。早速中にいるだろうカードの番人とのデュエルに向けて準備するユカリでしたが、それより前にベアトリーチェがデュエルディスクを展開しました。

 

「とどのつまり、この部屋の何処かにあるカードを奪えばいいのでしょう? 律儀にデュエルで決める必要などありません。実力で沈黙させれば済む話です」

「り、りありすと! ユウセイ先生、この方はりありすとですわ!」

 

 ベアトリーチェは手札をデッキから抜き、モンスターを召喚。障子を打ち破って突貫させます。中にいた陽炎の住人は強襲にも即座に対応して応戦の構えを見せますが、時既に遅し。ベアトリーチェのモンスターによって瞬く間に制圧されます。

 

 ベアトリーチェが召喚したのは3体の天使族上級モンスター。

 《The splendid VENUS》、これがエースモンスターですか。

 《大天使クリスティア》、これで相手の特殊召喚を封じたのですね。

 そして《運命の女王エターニア》。まさかのマッチキルモンスター。

 いずれも以前は使役していなかったモンスターでした。

 

「【デスピア】デッキはどうしたんですか?」

「アレはアリウスでの実験用のデッキ。これは私が小娘だった時期に使用していた【天使族】デッキです。次の研究の題目が決まるまでのつなぎに過ぎません」

 

 《大天使クリスティア》に取り押さえられた陽炎の住人(名前は闡帑ケ玖痩繧後>、やはり読めませんね)は《The splendid VENUS》にデュエルディスクを付けた腕も拘束されていて、もはや何も出来ません。その間にベアトリーチェは悠々と最奥に安置されていたカードを取り、こちらに投げつけました。

 

 《FNo.0未来龍皇ホープ》。

 どうやらお目当てのカードだったようです。

 

 存在の支えとなっていたカードを失った蜃気楼の街、そして陽炎の住人は最初からいなかったように儚く消えていきました。残ったのは崩壊した百鬼夜行の町並み、そしてシンボルにもなっていた巨大な桜の木が折れた跡だけとなります。

 

「皆さんの無念、身共が必ずや未然に防いでみせます」

 

 百鬼夜行から去る間際、ユカリは手を合わせて犠牲となった者たちに向けて冥福を祈りました。そして新たな決意を胸に秘め、兵どもが夢の跡となった地を後にしたのでした。




◇ベアトリーチェ
使用デッキは上級天使族モンスターを主体とした《ヴァルハラ》軸の【天使族】
エースモンスターは《The splendid VENUS》、《大天使クリスティア》、《アテナ》
切り札は《運命の女王エターニア》

ご意見、ご感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。