Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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シロコ、行方不明になる

 ◆三人称視点◆

 

 キヴォトス全域で超高密度のエネルギー体がいくつか観測されたことを受けて連邦生徒会は非常対策委員会の設立を宣言。各学園に対して招集命令を発令した。これを受けて各学園は大衆の予想に反して首脳陣を派遣する。様々な思惑はあれど、大方の意見は一致していた。

 

 シャーレの先生が参加するなら方針もまとまるだろうから参加する。

 要するに連邦生徒会そのものへの信頼は完全に揺らいでいた。

 リン首席行政官も重々承知だったため、"先生"の参加も要請した。

 

 アビドス高等学校の生徒会に相当するようになった対策委員会も例外ではなく喚び出されたものの、シロコはアビドス自治区内のカイザーPMC兵士たちが大挙してアビドス砂漠の方に向かっていることに違和感を抱き、追跡を開始した。

 

 そこでシロコは、正体不明の存在と遭遇する。

 

 その者は大柄で、妙な衣を身にまとい、仮面で顔を覆っていた。そして衣の隙間から覗かせる手は病人のようにやせ細り、包帯でぐるぐる巻きにされている。何より異質なのが、死人が動いているかのように生命の息吹を一切感じさせないことだ。

 

「ん、私は《融合》を発動。《青眼の白龍》3体を融合して《青眼の究極竜》を融合召喚。アルティメット・バースト!」

 

 意思疎通は不可能。排除する。

 

 直感に従ってシロコはキヴォトス内屈指の攻撃力を誇る最強格の融合モンスターを召喚、すぐさま攻撃を仕掛けた。まずは最大級の攻撃を撃って相手の出方を見る。それがシロコが好む序盤の一手だ。

 

 そんなシロコの先制攻撃だったが、正体不明の存在に命中する前に掻き消えてしまった。相手が防いだ兆候も無かったためシロコが《青眼の究極竜》を見上げると、なんといつの間にか守備表示になっているではないか。

 

 気が付くと正体不明の存在の傍らには暗黒の戦士が控えていた。召喚されたモンスターの効果で守備表示に変更されたのだと判断したシロコだったが、驚いたのは攻撃が防がれたことではなく、防いだモンスターを目にしてだ。

 

 まるで"先生"のエースモンスター、《希望皇ホープ》が反転したようではないか。

 

 そんな反転した《希望皇ホープ》は異次元へと通じる渦へと吸い込まれ、別の暗黒戦士が降り立つ。その新たなモンスターをシロコは見たことがなかったが、"先生"が召喚する《希望皇ホープ》から希望と安心感を抱くのに対して、その暗黒戦士から感じられるのは絶望と不安感。見事に対照的だった。

 

 そんな暗黒戦士が大剣を一閃させると《青眼の究極竜》は両断され、爆散した。いくら守備表示といえど守備力3,800もある《青眼の究極竜》を撃破するほどの高い攻撃力。推察だが4,000はあるに違いない。

 

「それなら《死者蘇生》を使って……!?」

 

 再び《青眼の究極竜》を召喚しようとしたが、なんと倒された《青眼の究極竜》は相手フィールドに召喚されているではないか。まさか自分が発動するより前に蘇生札を使われたか、それとも目の前の暗黒戦士の効果によるものか。

 

「……。まずいかも」

 

 この日、シロコがアビドスに戻ってくることはなかった。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 シャーレの先生、"先生"とZ-ONEの両者が行方不明。

 そんな情報に連邦生徒会に激震が走った。

 彼らが参加するから招集に応じた学園もあるというのに。

 

 非常対策委員会にはトリニティのティーパーティー、ゲヘナの万魔殿、ミレニアムのセミナー等が参加したものの、やはりシャーレの先生不在の状況で連邦生徒会の下でまとまる筈がなく、トリニティ、ゲヘナ、レッドウィンターが席を立つ。

 

「……?」

 

 ティーパーティーとして参加したサオリはミカたちと共に退室しようと腰を上げたものの、ミレニアム一行が一向に動こうとしないのが気になった。そのためナギサたちに断りを入れて残る決断を下す。

 

 そんなサオリの独断に興味を持ったミカもまた席に戻って大人しく座った。ミカとしてはゲヘナの連中は当然のこと、レッドウィンターやミレニアムなんぞに興味は無いし、連邦生徒会への義理だって微塵も無い。

 

「ミレニアムの会長さん。何か企んでるの?」

 

 そして、ミカは遠慮なくミレニアムの会長リオに話を振った。

 

「この現象を解明する程度ならミレニアム単独でも造作もないことだわ。ミレニアムに近い2個所は既に分析済み。対処も難しくないでしょう」

「独力で何とかなるなら連邦生徒会なんていらないじゃん。どうして残ってるの?」

「この6つの特異点が連動している場合、2箇所を抑え込んでも他の4個所が健在なら再び同じ現象が起こり得る。きりがないわ」

「あーなるほど。自分たちが一生懸命になっても他の学園に足を引っ張られたらたまらない、とでも言いたいの?」

「さすがにミレニアムの戦力だけで6箇所を封じ込めるのは無理よ。そして各学校に任せっきりではD.U.地区がどうにもならないでしょう。連邦生徒会ご自慢のSRTが健在だったらまだしもね」

「ぷっ。それ言っちゃうんだ」

 

 リオは単に事実を並べただけに過ぎない。D.U.地区に発生した特異点は2個所。日々の治安維持で精一杯なヴァルキューレでは逆立ちしても対処不可。しかし重大事件や異変対策だった懐刀は自ら叩き折ってしまっている。こう述べただけで連邦生徒会の判断が誤っていたなどと非難はしていない。

 

 痛いところを突かれてリンは眉をひそめたが、何も言い返せなかった。確かにあれだけカヤたちに反対されたのにSRT廃校を押し進めたのは自分たちだ。武器を捨てたのに危機が訪れたら武器を貸しては都合が良すぎるだろう。

 

「……そもそも、この超高密度のエネルギー体が脅威になるかもまだ判断出来ていません」

「連邦生徒会には自分たちでデータを分析する能力も無いの? ただ現象だけを眺めていても合理的ではないわ」

 

 リオはスクリーンに映している映像を自分のパソコンに切り替えるようリンに要求。リオが表示させたのはキヴォトスの地図に記された6箇所のポイント。いずれも超高密度のエネルギー体が発生した地点だ。

 

 同じデータを見せて一体何の意味が、と抗議しようとしたリンだったが、それが別のデータだと先に気づいたのはアオイだった。はっと息を呑んで思い詰めた表情を浮かべる。次にモモカが「げげっ」と声を上げた。

 

「シャーレの"先生"が報告書を提出したとおり、これまでゲマトリアを名乗る者たちが複数回"先生"と接触して異変をけしかけたでしょう。超高密度のエネルギーはこの6箇所から発生しているわ」

「デカグラマトンの預言者ビナー、ケセド、ホド。シロ&クロ。ヒエロニムス。そしてペロロジラ、ですか……」

「デカグラマトンの預言者が高エネルギーに影響を受けてないことは調査済み。だとしたら高エネルギーはその複製体を形成するためのものか、それともそれ以上の現象を発生させようとしているのか。どちらにせよろくなものではないわ」

 

 と、さも自分たちがデカグラマトンの預言者の動向を把握しているような言い方をしたリオだったが、実際のところはチヒロがホドやケセド本人に聞いた内容をそのまま右から左に流しているだけだ。

 

 そんな事情など知らない連邦生徒会の面々は既にデカグラマトンの預言者への対策案を講じているミレニアムに驚き、そして警戒した。今までミレニアムはキヴォトスにおける優等生、さほど大きな騒動を起こしていなかったが……、

 

「何にせよ各校がバラバラに対処しては解決できそうにない、とだけ伝えとくわ。けれどどの特異点にどの戦力を派遣するかの采配はシャーレに委ねた方が良さそうね。エデン条約を途中で放り投げたことといいSRTを廃校しようとしたことといい、連邦生徒会はあまりにも危機管理がなってないわ。そんな組織にミレニアムの生徒たちを委ねようとはとても思わないもの」

「賛成ー。話は"先生"かユウセイ先生が戻ってきてから続けよっか」

 

 アユムががっくりと項垂れたのも無理はない。お前ら連邦生徒会では話にならないと面と向かって言われているも同然だ。連邦生徒会長が失踪して空中分解寸前だった連邦生徒会が今なお維持できているのはひとえにシャーレのおかげではあるが、現実を改めて突きつけられると堪えてしまう。

 

「あ、そうだ。リオに聞きたかったんだ。デュエルディスクの位置情報から"先生"とユウセイ先生がどこにいるか探知出来ないの?」

「ユウセイ先生はシャーレの地下駐車場を最後に信号が途絶えてるわ。シャーレの当番だった百鬼夜行の生徒と共にね」

「デュエリストがデュエルディスクのメンテナンスを怠るなんてありえないよ。ましてやユウセイ先生はDホイーラーだよ? Dホイールはデッキと同じぐらい、もしかしたら命よりも大切でしょう」

「空間転移でどこかに飛んだ、としか観測出来てないわ。行き先は最低でもキヴォトスの外。もしかしたらこの世界ではないかもしれない」

「……。ま、ユウセイ先生だったら戻って来るでしょ。それで、"先生"の方は?」

「ちょっと待ってちょうだい。"先生"はてっきりこの会議に参加するものだとばかり思ってたから追ってなかったのよ」

 

 リオはヴェリタスに連絡を入れてD.U.側のシステムにハッキングさせ、ヴァルキューレに引率されたはずの"先生"の行方を探らせる。"先生"の持つシッテムの箱は途中で電源が切れたのか追えず。他のタブレットや携帯端末機器も同様。しかしD・パッドはどんな環境でもデュエル可能なように高性能なため、大半の妨害や障害を突破する。

 

「……"先生"は今ヴァルキューレの第3分校にいるようね。中の様子は通信が物理的に遮断されているのか探れないわ」

「だ、そうだけど、どういうことかな? ヴァルキューレは貴女達連邦生徒会が飼ってる番犬なんだよね?」

 

 机に肘をついて手で顎を支える姿勢のミカだが、彼女が投げた言葉と視線には鋭さがこもっていた。武器やデュエルディスクは会議に参加するにあたり預けてきたが、彼女がやろうと思えば素手でだって暴れられる。

 

 どういうことも何もリンたちはそんな情報初耳だった。ヴァルキューレには"先生"を引率してこいと指令を出しただけで何故ヴァルキューレの校舎に連れて行かれるのかなど分かるはずもない。

 

「やはりそういうことでしたか!」

 

 そんな中、突然会議室の扉を開けて中に入ってくる者が一人。

 現れた乱入者の姿を見たリンたち連邦生徒会一同は目を見開いた。

 

「カヤ防衛室長……」

 

 何故なら会議を開催するにあたって連絡が取れなくなったカヤだったからだ。




◇砂狼シロコ
使用デッキは【青眼】。気分次第で何を軸にするか変えている。
エースモンスターは《青眼の白龍》
切り札は《青眼の究極竜》
とっておきは《ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン》

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