Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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Z-ONE、アトラ・ハシース攻略の別案を出す

 このキヴォトスで再び虚妄のサンクトゥム出現の兆候だろうエネルギーの流れが観測されました。その流れを辿っていくことで発生源を突き止めました。しかし問題の一つとして、その問題はなんと空の遥か彼方、上空75,000メートルだったのです。

 

 虚妄のサンクトゥムより高密度のエネルギーを持つ構造物がある、とまでは地上から観測出来ましたが、その詳細は構造物を覆う何らかの膜が覆っていて電磁波も音波も素通りしてしまうのです。

 

「どんな美しい鐘も叩いてみないと音色は分からない。最初に言ったのはユズだったかしらね」

「巡航ミサイルを使うんですか? あまりスマートとは言えないやり方ですね」

「対案があるのなら聞くけれど?」

「リベートをしてる暇はありません。出来ることは試していかないと」

 

 リオの指示でミレニアムからミサイルを発射。構造物から迎撃はされずにミサイルは目標物に着弾……すると思いきや、なんと構造物をすり抜けて遠ざかっていくではありませんか。

 

「ターゲットとの距離、1,000m……1,500m……」

「さすがにただのミサイルでは効果が無いみたいね。次弾発射準備」

「二度やっても結果は変わらないのでは?」

「エデン条約締結の場にアリウスがミサイルで攻撃を仕掛けたでしょう。アレと同じでカードの効果を付与すればいいわ。対象のモンスター効果を無効にする《無限泡影》、魔法カードの効果を無効にする《マジック・ディフレクター》。あと《白のヴェール》でも装備させましょう」

「なるほど……。どんな効果が発動していようと無効にしてしまえばいいのね」

 

 こうして発射されたミサイルでしたが、結果は同じでした。ミサイルに搭載したカードの効果が発動していることは観測出来たため、カードの効果を無効化されなかったにも関わらず攻撃が通らなかったのです。

 

「まるで幻影を相手にしているみたいね」

「フィールド上全ての効果を無効にしたのに攻撃が効かないのなら理由はただ一つ。アレは見えているけれどあそこには無い。除外状態でこの世界に効果を及ぼしていると考えて良さそうね」

「除外状態での永続効果を無効化する術はありませんね。《D・D・R》を相手フィールドで発動させて引きずり出しましょうか?」

「《ネクロフェイス》が発動するようにコンボを仕込むのも試してみましょう」

 

 リオとヒマリが色々と議論しているうちにハナコがトリニティで調査し、「状態の共存」のような現象が発生していると仮説を立てました。あの構造物を包む膜は並行世界全ての可能性が分岐しないまま混ざり合った状態なのだと。

 

 無数の可能性が混ざりあった混沌のバリアだからこそいかなる干渉も受け付けない。おそらくはミサイルにどんなカードを仕込んでもあの混沌の多次元バリアは無効化出来ないでしょう。

 

「おそらく……周囲の膜だけがその状態なのだと予測しています。内部の構造体そのものの状態が不安定なのであれば、各サンクトゥムへのエネルギー伝達もできないはずですので」

「なるほど……それでしたら辻褄が合います」

「はい。そして、あのバリアを破壊できれば……おそらく、本体への攻撃も可能になるでしょう」

「理屈は分かるけれど、どうやって……?」

 

 ふと、リオが私と見つめた後にヒマリから視線をそらしました。ヒマリは気づいた様子でしたがまずはハナコやユウカたちとの打ち合わせに集中します。

 

「方策はあります。まず一つ、こちらもあのバリアと同じ状態になれば良いのです」

「なるほど……あの多次元空間で繰り広げられている「状態の共存」を、一種の振動と捉えるのなら、解析して同じパターンを持てばその影響を受けない、と……」

「はい。同じ状態なら多次元内部の確率や状態の共存とは関係なく、互いが「同じ空間」に存在することになります」

「ですが、どうやって……」

「……現状では物理的に不可能です」

 

 物理的に、と限定したヒマリにハナコとカヨコが疑問符を浮かべました。

 

「理論的にはミレニアムのミレニアムタワー、そしてエリドゥの中枢モーメントなら分析が可能よ」

「ただし、一回分析してハイお終い、とはいきません。絶えず変動する多次元空間を分析し続けて常に「同じ空間」の状態を維持しないと駄目です。それこそ中枢モーメント、そしてその子機を丸ごと上空の構造体の傍まで持って行くほどじゃないと」

「量子コンピュータ並の処理能力を持つモーメントの小型化は間に合わなかったわ。かと言って中枢モーメントごと浮上させる空中要塞を建造する技術力もまだ無い。この案は使えないわね」

「つまり、今の私たちじゃ何も出来ないってこと?」

 

 もう一つ、とヒマリがもう一本指を立てました。

 

「神秘はより強い神秘に淘汰されるものです。理不尽なぐらい圧倒的なエネルギーをぶつければ薄皮一枚ぐらい簡単に引き裂けるでしょう」

「神って、アビドスの三幻神とかヴァルキューレの三極神みたいな?」

「それも一体だけでは無理でしょう。三幻神や三極神なら三体が結集して道を切り拓くぐらいじゃないと」

「《虹の橋ビフレスト》でしたら発動出来ませんよ。《極神聖帝オーディン》を扱える生徒はこれまで一度も現れてませんから」

 

 いつものようににこやかに指摘したカヤは自分のエクストラデッキから《極神聖帝オーディン》のカードを取り出しますが、「極神」カード自体はキヴォトスでも一般流通しているシンクロモンスターです。神の力を発揮できる生徒が現れていない、ということなのでしょう。

 

 ちなみに私の時械神ならどうでしょうか? あいにく力の象徴たるサンダイオンをマルに貸していますし、デュエルでもない状況ではセフィロンも召喚出来ません。他の手持ちの時械神の力を結集すればあるいは……と言ったところでしょう。

 

「もう一つ手があります。もう一人のシロコがやってみせたように多次元バリアを飛び越える空間跳躍をすれば中に入り込めるでしょう」

「ワープなんてキヴォトスで実用化されてたっけ?」

「《緊急テレポート》を使えばあるいは……?」

「いえ、もっと確実な方法があります」

 

 私の発言に一同の視線が集中しました。

 

 私はホワイトボードに対象の構造体と周囲を覆う多次元バリアを書き、地表の線から矢印をそちらへと伸ばします。そして、多次元バリアのところだけ途切れさせて矢印線をバリアの中まで引きました。

 

「多次元バリアの膜はさほど厚くはないでしょう。でしたらバリアを通過する一瞬だけこの世界からいなくなればいい」

「でもどうやって……」

 

 と、聞こうとしたユウカが息を呑みました。

 私は自分のエクストラデッキからあるカードを皆に見せます。

 アクセルシンクロモンスター、《シューティング・スター・ドラゴン》を。

 

「アクセルシンクロなら可能です」

 

 そう、高速であの浮遊する構造体に接近。アクセルシンクロした瞬間だけ消える現象を利用して多次元バリアに衝突せずにくぐり抜ける。これが障害を突破する最も確実な手段でしょう。

 

 高度70,000mに関してはさほど問題でもありません。不動遊星がオーバートップクリアマインドの境地に達した時に成層圏まで飛んでいたことからも、アポリアが彼のDホイールに施した技術で飛んでいけるのは実証済みです。

 

「……。このキヴォトスでクリアマインドの境地を会得してる生徒は限られています。虚妄のサンクトゥムが再出現した際の対処を考えるとネルにその役は任せられません」

「ええ。ですので……」

 

 私が視線を向けた先にいるのはソリッドビジョンで姿を投影させているリオ。

 ……リオの考えは手に取るように分かります。ですがそんな真似はさせられません。ですので私から先に言うことにします。

 

「私一人で行きます」

「ちょっと待ってちょうだい!」

 

 すぐさまリオが言葉を挟んできました。

 彼女にとってまさかの発言だったのか、とても慌てた様子でした。

 興奮を抑え込むように一旦落ち着いてから彼女は私を見据えます。

 

「どうしてそんな結論になったのか根拠を教えて」

「虚妄のサンクトゥム攻略の場に私はいませんでした。私が防衛に回らなくても問題ないことは証明されています。ですので私が攻撃側で攻めても問題無いでしょう」

「あの多次元バリアの向こうがどのようになっているかはまるで分からないのよ。ユウセイ先生一人でどうにか出来るとはとても思えないわ」

「いえ、おおよそで見当はついています。リオもそうなのでは?」

 

 驚愕の声を「えっ!?」と挙げたのはユウカだったでしょうか、それともヒマリでしたか。視線が自分に集中するのを受けてリオは気まずそうに視線を逸らしますが、やがて観念して口を開きます。

 

「アレは「アトラ・ハシースの箱舟」ね」

「アトラ・ハシースの箱舟?」

「ええ。超古代文明の「名もなき神」の遺産。本来ならアリス……AL-1Sこと「名もなき神々の王女」が君臨すべき旗艦よ」

「「「……!」」」

 

 ミレニアムの皆が一斉に息を呑みますが、他の学校の生徒はきょとんとした様子でした。あの一件はミレニアム内の異変で片付きましたが、手遅れになれば先日まで巡っていた世界のようにキヴォトスが滅ぶ要因になりえた危機でした。

 

「そしてあの《機皇方舟》の構造をユウセイ先生は知っている。そうでしょう?」

「私が見たのはだいぶ前ですし、それも設計図だけです。キヴォトスで建造されたあの構造体はアレンジされているかもしれないし、全く別のものに改良されているかもしれません」

「だとしても情報は大事よ。ユウセイ先生一人の問題じゃないのだから、共有はすべきでしょう」

「……。そうですね」

 

 私は自分のデュエルディスクにケーブルを刺し、モニターに構造図を表示させます。それは後に私がアーククレイドル建造の参考としたアトラ・ハシースの箱舟が描かれています。

 

「「アトラ・ハシースの箱舟」はシンクロ召喚で加速した遊星粒子の反応から王女やマザーモーメントを守るために設計されました。世界からの完全隔離を目的にしているため、ハナコの言った多次元解釈演算のためにマザーモーメントとそのサーキットで構造の大半を占めています」

 

 そしてアーククレイドル同様にアトラ・ハシースの箱舟は4つの区画があり、周囲の3つの遊星ギア、そしてマザーモーメントの要である中心の太陽ギア。これらを全て掌握すれば箱舟は無力化します。

 

 しかし、アーククレイドルはイリアステルのアポリアやアンチノミー、そして協力を仰いだシェリーの3名のみが守護者だったのに対し、アトラ・ハシースはおそらく機皇モンスターを初めとする障害が山程立ちはだかるでしょう。

 

「時械神や《シューティング・スター・ドラゴン》だって無敵じゃないわ。守るのがモンスターだけならともかく、プレナパテスが見出した強力なデュエリストが待ち受けてるかもしれないじゃないの」

「そ、そうですよ! あの並行同位体のシロコだって実力はまだ未知数。ユウセイ先生一人じゃあ危険すぎます!」

「では他に手があると? 代案があれば聞きましょう」

「……。遊星ギアは3つ。なら、3手に別れてそれぞれで攻略すべきよ」

 

 そう言うとリオは自分のデッキから《TGブレード・ガンナー》を取り出しました。

 

「私も一緒に行くわ。その方が合理的でしょう」

 

 そして、私の懸念通りリオもアトラ・ハシース攻略に参加を表明したのです。




◇明星ヒマリ
使用デッキは「トロン」「スペース」モンスターを主軸にするラッシュデュエル版【サイバース族】
エースモンスターは《天帝龍樹ユグドラゴ》
切り札は《ディープスペース・ユグドラゴ》

◇和泉元エイミ
使用デッキは【サラマングレイト】
エースモンスターは《転生炎獣ヒートライオ》
切り札は《転生炎獣パイロ・フェニックス》

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