Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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Z-ONE、アトラ・ハシースに突入する

「ゲマトリアは宇宙戦艦などと評していたが、そんなものではない。私の記録、そして調査が確かなら、あれは「アトラ・ハシースの箱舟」と同程度のスペックのはずだ。せいぜい成層圏に行くのが精一杯だろう」

「充分です。ではカイザーグループが確保している「お宝」を召し上げれば他の生徒もユウセイ先生に加勢出来るのですね」

 

 不動遊星になる前の記憶はもはや霞がかかっていますが、「ウトナピシュティムの本船」など私は知りません。名称自体はアトラ・ハシースの別言語ですが……どうも不安がよぎります。

 

 ……念には念を入れて手を打っておきましょう。万が一「ウトナピシュティムの本船」が私の予想通りの代物だとしたら、それを活用して「アトラ・ハシースの箱舟」に乗り込む場合、重大な懸案が一つあります。

 

「問題が一つ、しかし致命的だ。「ウトナピシュティムの本船」はもう誰にも運用できない」

「!? どういうことですか? デカグラマトンですら駄目だと?」

「アレは「アトラ・ハシースの箱舟」への対抗策として建造されたもの。私や天童アリスとは相性が最悪だ。サンクトゥムタワーを破壊されてしまったため、アクセスの方法はもうあと一つしか無い」

「一つ……では手があるのですね」

「教えて。それは一体どういった手段なの?」

「……。"先生"の姿が先程から見えないが、おそらくその唯一の方法を聞きに中座したのだろう」

 

 デカグラマトンに言われてこの場にいた一同はようやく"先生"がいなくなったことに気づきました。少し動揺が広がっている隙をつくようにデカグラマトンはこちらとのリンクを切断してしまいます。

 

 後は"先生"から聞けば良い、とデカグラマトンが判断したのならそれで良いのですが……。もしデカグラマトンが説明するのが憚られると考えてお茶を濁したのであれば、もしやその方法とは危険が伴うものなのではないでしょうか。

 

 いえ、「ウトナピシュティムの本船」については"先生"に一任しましょう。私は私のやるべきことをやるまでです。まずはDホイールの機能を再チェックしてから最終メンテナンスを施し、終わってからすぐ出発するとしますか。

 

 キヴォトスの危機に皆が一丸となって立ち向かう。

 "先生"を中心に皆が集った結果ですが、私も一役買えたでしょうか?

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ユウセイ先生、これでいかがでしょうか?」

「充分です。それと酸素ボンベはDホイールに積みましたので、ヘルメットを被っていても口を覆えるようにしておきなさい」

「シロコ先輩が着てたライダースーツとも違うのね」

「時速数百キロ出るモータースポーツでの転倒は危険ですから生地が厚いのです。もっともキヴォトスの人々は頑丈なのであれぐらいで充分なのかもしれませんが」

 

 ユカリは専門店で買ったレーシングスーツに身を包んできました。百花繚乱の制服では空気抵抗を受けますし、何より高度70,000mの寒さには耐えられません。私のDホイールにはそれなりに環境改善機能を備えていますが、限度がありますので。

 

 それから長い髪も束ねてヘルメットの中にしまってもらいます。空を飛んでいる間はホイールが動かないと言えど、「箱舟」の中に突入した後は遊星ギア目掛けてDホイールを走らせなければなりません。

 

「そのDホイール、本当に空も飛べるんですの?」

「勿論です」

 

 具体的にはアポリアが不動遊星のDホイールに施した追加機能と同じです。アレは元々私の技術によるもの。行くだけなら問題なく行けるでしょう。帰還するエネルギーが足りなければ《スターダスト・ドラゴン》を召喚して戻ればいいのです。

 

 程なく、ユウカを乗せたリオのDホイールがやってきました。大型バイクのようだった以前と異なり、そのフォルムはまるでアンチノミーのDホイール「デルタイーグル」に似ています。

 

 リオもユウカもきちんとライダースーツを着ています。リオは黒色、ユウカは青色。ユウカは恥ずかしいのかジャケットを上に羽織ってますが、リオは体型がはっきりと現れたスーツそのままです。

 

「待たせたわ。それで、ユウカのDホイールは準備しなくて良かったのね?」

「ミレニアムに成層圏まで到達できるDホイールは幾つありますか?」

「デュエル機能を搭載した飛行ユニットを含めても私のものだけよ。でも設計図はあるからエンジニア部に徹夜させれば……」

「事態は一刻を争いますので、ユウカの移動手段はこちらで確保しています」

 

 そんな会話をしていると、上空から轟音が聞こえてきました。何かと思って見上げると、今まで見たことのない巨大ロボットが接近し、瞬時に変形して勢いよく着陸してきました。頭部のヘイローはLINK VRAINSで見覚えがあります。

 

「デカグラマトン5番目の預言者ゲブラ……」

「お待たせしました。では行きましょう」

 

 その背中に乗っていたマルがこちらを招きます。

 

 どうしてゲブラを呼び出したのかマルに聞くと、シャトル輸送機のように途中まではゲブラに乗ったままである程度の高度まで昇り、その後我々だけで「アトラ・ハシースの箱舟」まで行くためとのこと。少しでもエネルギーを節約するためでした。

 

 マルと違って明確にロボットの形をするデカグラマトンの預言者と初めて遭遇したユウカはおっかなびっくりゲブラに乗り、リオはしっかりとワイヤーで自分のDホイールを固定します。ユウカが「え? 私のDホイールは?」と言いますが、マルが有無を言わさずユウカをゲブラに乗せます。

 

 そしていざ、出発。

 

 ゲブラは天高く昇っていき、やがて雲を突破しました。周囲には眩しい太陽以外は何一つ無い青空、下には白い雲と小さくなったキヴォトスが広がります。これぐらいなら飛行機に乗れば簡単に目にできる光景ですが、やがて段々と青空が薄くなっていきます。

 

「ゲブラが到達出来るのはここまでです。ここからは我らだけの旅となります」

「では、いざ。アクセラレーション!」

 

 私はテフヌトを、リオはユカリを乗せ、マルはユウカを抱えてゲブラから飛び立ちました。ゲブラが勢いを付けてくれたので充分に速度が乗った状態でアトラ・ハシースの箱舟に一直線に進みます。

 

「飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》! 希望の力、《フォーミュラ・シンクロン》!」

「来なさい、《TGハイパー・ライブラリアン》、《TGワンダー・マジシャン》!」

「え、えっと、レベル4《水晶機巧-クオンダム》! それからレベル5《水晶機巧-アメトリクス》!」

「アクセルシンクロで跳躍できる距離はほんの僅かです! タイミングはリオが算出したカウントに合わせなさい!」

 

 加速、加速、更に加速。

 段々と多次元バリアに覆われたアトラ・ハシースの箱舟が大きくなってきます。

 こちらを迎撃する様子なし。多次元バリアが変化する兆候もなし。

 

「クリアマインド! レベル8《スターダスト・ドラゴン》にレベル2シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

「クリアマインド! レベル5《TGハイパー・ライブラリアン》にレベル5シンクロチューナー《TGワンダー・マジシャン》をチューニング!」

「……。――クリアマインド。レベル5《水晶機巧-アメトリクス》にレベル4シンクロチューナー《水晶機巧-クオンダム》をチューニング」

「集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意志と化す! 光差す道となれ!」

「集いし絆が仲間の魂と重なり合う。未来のその先を照らし出しなさい!」

「クォンタムクァトロシリカ、プラス、アメトリン、イコール、フェニックス、プラス、シトリィ、プラス、クオン。計算完了!」

「アァクセルシンクロォッ!!」

「アクセルシンクロ、承認!」

「これで完璧! アクセルシンクロ!」

 

 そして多次元バリアに衝突する寸前、私たちは空間を超え、多次元バリアの向こうへと飛んだのでした。一切の光を通さなかった亜空間状態だったアトラ・ハシースの箱舟が眼前に広がります。

 

「生来せよ、《スターダスト・ウォリアー》!」

「随行なさい、《シューティング・スター・ドラゴン・TG-EX》!」

「《水晶機巧-フェニキシオン》、証明終了よ!」

 

 私が召喚した《スターダスト・ウォリアー》は不動遊星が使っていたもう一体のアクセルシンクロモンスター。《スターダスト・ドラゴン》と「ウォリアー」シンクロモンスターの力が合わさって誕生した新たなモンスターです。

 

 リオはアリスが創造した《シューティング・スター・ドラゴン・TG-EX》を召喚しましたか。どうやら《TGブレード・ガンナー》と同等に使いこなせているようです。実際に目にするのは初めてですが……なるほど、確かに不動遊星とブルーノが力を合わせたモンスターのような印象を覚えます。

 

 そしてユウカ。見事にアクセルシンクロを成功させましたね。それも特に揺るぎなくクリアマインドに到達できたこと、素晴らしかったです。この分だと他のミレニアムの生徒もこの境地に到れるかもしれません。

 

 と、多次元バリアの突破で浮かれている暇はありません。高速で飛行しているせいでこのままではアトラ・ハシースの箱舟に衝突してしまいます。回避……いえ、このまま呼び出した《スターダスト・ウォリアー》で壁を破壊すれば……、

 

「神解けの天罰」

 

 ハンドルを動かそうとした直前、マルが武装を前方に展開し、エネルギー砲を放ちました。それは単なる物理現象としてのレーザービームではなく、彼女に貸した《時械神サンダイオン》の力を存分に発揮した一撃でした。

 

 壁を破壊して我々は内部へと突入。気圧差で中にいた「名もなき神」の尖兵と思われしロボット兵器が外へと放り出されます。防御隔壁が落ちる前に我々は内部を突破し、隔壁が閉じたのを確認して一旦止まります。

 

 内部をスキャン。……どうやら私の知るオリジナルの「アトラ・ハシース」とそう構造は変わっていません。私は事前に打ち合わせた通り各々が分担する遊星ギアへのナビゲーションを起動させました。

 

「リオ、ユウカ、ユカリ、マル。ご武運を」

「先生こそ気を付けてちょうだい。特にもう一人のシロコが現れても戦おうとしないこと。いいわね?」

「大丈夫です。勝利を証明してみせます」

「この身共にお任せあれ! 必ずや成し遂げてみせますわ!」

「では、マザーモーメントで会いましょう」

 

 私、リオはDホイールを走らせ、マルは飛行したままでそれぞれ別れます。目指すは3つの遊星ギア。これを停止させるのは後続の"先生"たちに任せるとしても、立ちはだかる守護者は片付けたいところです。

 

 雑魚はもう一人のシロコがゲマトリアから奪ったとされる神秘が立ちはだかってきます。ユスティナ聖徒会の複製、機皇モンスター、デカグラマトンの兵器、等。しかし私とテフヌトでどれも蹴散らしていきます。

 

 そして見えてきた次元エンジンの機能を兼ね備えた遊星ギアですが……その前に立ちはだかった人物を見たテフヌトが愕然としました。そして絞るような悲鳴が出そうになるのを何とか飲み込みます。

 

「わ、たし……?」

 

 そう、待ち受けていたのはなんとセリカだったのです。

 

 

 ◆三人称視点◆

 

 

「ど、どうしてあの方がここに? 息を引き取ったのではなかったのですか?」

「……そう。シロコと同じように彼女たちもまた守護者なのね」

 

 リオとユカリの前に立ちはだかる奥空アヤネ。

 

「ターゲットを確認。排除します」

「え? ちょっと、どういうことなの……?」

 

 マルクトとユウカの前に姿を見せる十六夜ノノミ。

 

 「アトラ・ハシースの箱舟」攻略のデュエルの幕が切って落とされた。




立ちはだかったセリカ、アヤネ、ノノミの正体はいかに?

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