Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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Z-ONE、ミカと共に時を超える

 ヒナが当番を務めてから数日後、昼休み中に私は自分のデッキを改めて整理、調整します。ヴァルキューレの生徒を相手した時はSP(スピードスペル)を抜いて慌てて代わりの魔法カードで補いましたからね。

 

 私が今所持しているデッキは5つ。

 私が不動遊星として活動していた際の【遊星】。

 私が人類最後の一人のZ-ONEとして活動した際の【時械神】。

 人類の絶望をそのまま一手に引き受けたアポリアの【機皇】。

 別の形で破滅を回避しようと可能性を模索したパラドックスの【Sin】。

 人類の希望を信じ続けたアンチノミーの【TG】。

 

 全てのカードテキストがキヴォトスに来た際に書き換わっていて、特に【機皇】は弱体化が著しく、体をなしてませんね。私には【機皇】からテキスト以上の神秘を引き出せるかは未知数。やはりメインは【遊星】デッキを使い、ここぞという時に【時械神】を行使しましょう。

 

 【機皇】、【Sin】、【TG】……。これらのデッキは私の友であり仲間であり同志だった三人が生きた証。しかし、もし私以上に使いこなせる者がこのキヴォトスに現れたなら譲ろうと考えています。

 

 私がいつまでも形見として所持するだけより現役決闘者にデュエルで使ってもらった方が供養になるでしょう。もう我々は本懐を果たしましたから、これらのデッキだって新たな道があっても良いかと。

 

「へぇ、Z-ONE先生って色んなデッキ持ってるんだね」

 

 座席の後ろから覗いてくるのは本日の当番である聖園ミカ。トリニティ総合学園で生徒会に相当するティーパーティーのメンバーです。つまり本来ならシャーレに当番として来れるような時間のある生徒ではない筈なのですが、

 

「ゲヘナの風紀委員長がこの前当番だったんでしょう? じゃあ私が来るぐらいじゃないと釣り合いが取れないんじゃん」

 

 とのこと。

 

 "先生"がまだアビドスに出張中なのは少し残念がってましたが、それでも彼女はきちんと仕事をこなしてくれました。どうもゲヘナ関連の仕事を回すと嫌がるので自分で処理出来る分を処理して残りは明日に回しますか。

 

 そして現在、デッキ調整中の私をミカが後ろから眺めていましたが、途中から見慣れないカードを手に取って眺め始めました。意外にもミカが興味を持ったのは《スターダスト・ドラゴン》でした。

 

「へぇ、Z-ONE先生って《スターダスト・ドラゴン》なんてシンクロの王道を使ってるんだね」

「そう言うミカはどんなデッキを使っているんですか?」

「じゃーん。光属性シンクロモンスターを主軸にした【天輪】デッキだよ☆ え、見てみたい? しょうがないなぁ、はいコレ」

「ありがとうございます。拝見します」

 

 ミカは自分のデッキを私に差し出しました。私も興味があったので確認させてもらいます。

 

 メインデッキはローレベルの天使族で統一。エクストラデッキは光属性シンクロモンスターが大半ですね。《天穹覇龍ドラゴアセンション》は《魔王龍ベエルゼ》等と同じく特別な力を感じますが、一番驚いたのはとあるカードでした。

 

「《閃珖竜スターダスト》……?」

 

 まさかこれは《レッド・デーモンズ・ドラゴン》に対するアルの《琰魔竜レッド・デーモン》と同様に《スターダスト・ドラゴン》の別の可能性なのでしょうか? ならこのドラゴンにも《シューティング・スター・ドラゴン》のような進化形態も?

 

 あと《天輪の双星道士》、これはシンクロチューナーですね。でしたらミカがクリアマインドに目覚めれば、いずれはアクセルシンクロモンスターも召喚出来るようになるかもしれません。本人が望むかは別にして。

 

 感謝を述べながらデッキを返そうとしたら、ミカは一枚のカードをじっと見つめていました。それは広げていた私のデッキを構成するカードの一枚。そしてそれはよりによって私に力を貸している神のカードの一枚でした。

 

「ねえ先生。このモンスターは何?」

「《時械神ミチオン》ですか。私に手を差し伸べてくれた神のカードの一枚です」

「へぇ、何がモチーフなの?」

「時械神は無と無限と無限光から生まれ、生命そのものを司る。互いに絡み合う10の神からなる全能の神。モチーフはセフィロトの樹とその守護天使です」

 

 時械神自体は無機質な鎧がそれぞれのセフィラに相当する守護天使を宿して神になる存在。私はこの神々の力も借りながら破滅の未来を回避しようと歴史の修正を試みたのです。

 

「《時械神ミチオン》は第6のセフィラ、ティファレトの守護天使ミカエルの力を宿します。10体の時械神の中からそれを選ぶとは、何か気になる点でも?」

「え? あ、ううん。なんだかよく分からないけれど、目にとまった途端にこのカードが気になっちゃって……」

 

 もしかしたらヒナが《魔王龍ベエルゼ》を、アルが《琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル》をエースモンスターにするのと同じで、《時械神ミチオン》がミカを惹き寄せているのでしょうか?

 

「私のデッキとはあまり相性良くなさそうなのに、うーん。どうして気になるんだろ?」

「それでしたら少しの間貸しましょうか? 実際にデッキに入れてみて使い心地を確かめてから判断しても遅くはないでしょう」

「え、いいの? 大丈夫? 神って言うぐらいだからとんでもない超レアカードなんじゃない?」

「構いません。もう【時械神】デッキを使うことは無いでしょうから」

「わーお。ありがとう先生! 大事に使うね☆」

 

 ミカは幼子のようにはしゃぎながら自分のデッキに《時械神ミチオン》を刺し入れました。ローレベルの大量展開で高速シンクロを行う【天輪】デッキで活用するには工夫が必要でしょうが、そこはミカの腕次第でしょう。

 

 さて、日が沈む前に今日の業務は終了。ミカにお疲れ様と声をかけましたが、ミカは送ってくれないかとおねだりしてきました。当番の送り届けまではもちろんしていないのでやんわりと断ったのですが、

 

「ゲヘナの風紀委員長とは二人仲良くツーリングしたのに私とは駄目なんだぁ……」

 

 と言われてしまいました。

 

 この後の関係にも響きかねませんでしたし、今日これからの予定も入れてなかったので、私はミカをトリニティまで送り届けることにしました。重苦しい雰囲気を漂わせていた直前と対象的に眩しい太陽のような笑顔で彼女は喜びました。

 

「ところで、ゲヘナの風紀委員長の髪を丁寧に結わえたって聞いたけれど、その……私のもしてもらえない?」

「いいですよ。どんな髪型がいいですか?」

「えっと、そんなに種類あるの?」

「そこにファッション雑誌が立てかけてあるので、そこから選んでください」

「あ、いや。別に左右の団子を大きくする感じでいいかな……」

「では一回団子をほどいてからまた作り直しましょう」

 

 さすがにヒナの一件もあってクシは買いました。ミカの髪をブラッシングしてから結わえていきます。それなりの時間練習したのもあって上手く結わえました。鏡で自分を見たミカが「わーお」と感動してくれて何よりです。

 

「凄いよ先生! こんな特技があったんだね!」

「手入れを欠かしていない艷やかな髪で結わえやすかったですよ」

「そ、そう? 嬉しい……」

 

 ゲヘナのヒナがきっかけだとはミカに語らないようにしておきますか。

 喜んでいる彼女の気分を害する必要はありませんから。

 

「では行きましょう。道中翼は畳んでください」

 

 こうして帰宅する前にミカをトリニティに送り届けることにした私はDホイールを走らせました。ヒナの時のように急いでいるわけでもなかったので表定速度に基づいた安全運転を心がけます。

 

 さすがに退勤時間は車が多くて渋滞していますが、D.U.の都心部を抜けたあたりで少し空いてきました。なので少し速度を上げます。さすがにライディングデュエルのように時速300km前後とはいきませんが、郊外の表定速度は時速120km。時速140kmぐらい出しても捕まらないでしょう。

 

 そう思って時速140km以上の速度を出したその時でした。

 

「……!? これは……」

 

 Dホイールが妙な……いえ、覚えのある挙動をし初めたのです。

 

 私の使うDホイールこと通称遊星号は不動遊星が使っていたオリジナルから幾つか機能を追加しています。世界中を蹂躙する機皇帝を撃退するための武装もそう。そして私の同志パラドックスが万が一にと我々のDホイールに追加した機能もあります。

 

 それは時速141km以上の速度を出している最中に1.21GWに相当するエネルギーをモーメントから出力して発動します。しかしその機能をオンにしていないのに何故勝手に作動しているのかが分かりません。

 

「いや、まさかこれは神による干渉?」

 

 私達が所持している《時械神》がモーメントと共鳴して現象を起こしているのだとしたら、強制的なシャットダウンも不可能。もはや我々にはなるがままに委ねるほかありません。

 

「ね、ねえ先生。何かDホイールの様子がおかしいんだけれど?」

「ミカ」

「うん、何?」

「振り落とされないようにしっかり掴まっていてください」

 

 Dホイールのモーメントがフル回転し、私達を乗せたDホイールはその場から姿を消します。

 

 そして次の瞬間、私達の眼前の光景は様変わりしていました。具体的には都市間を結ぶ賑やかなハイウェイではなく、荒廃した町並みに。

 

 突然起こった現象にミカは理解出来ないようで困惑の声を上げ続けます。私はすぐにDホイールを停車させて当該機能の設定値を確認。画面の数値を見て思わず手をヘルメットに当てて天を仰いでしまいました。

 

 私達はタイムスリップしていました。それも見知らぬ土地に。




今回からエデン条約編の序章みたいな内容になります。
Z-ONEはその気はないのに時械神が勝手に!

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