◆三人称視点◆
「アリス、理解しました。これは完全覚醒イベントです!」
「リミッターの解除を確認。これが私たちの本来の機能だったのですね」
アリスとケイは互いに顔を見合わせ、頷きあった。アリスは自分のデュエルディスクを構え、ケイは空中デュエルディスクを出現させる。ケイのフィールドには既に1枚、アリスのフィールドには2枚のカードがセットされていた。
「アリスはアリスの効果を発動します! EXデッキから《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》をアリスに装備します! チェーンして発動される《ウトナピシュティムの本船》の効果に対して更にアリスの効果を発動します! 《ウトナピシュティムの本船》をアリスに装備です!」
「これで「ウトナピシュティム」の全体のリソース、9999万エクサバイトのデータ容量は確保されました。私は私自身の効果を発動。デッキから《光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ》を手札に加えます」
「《デブリ・ドラゴン》を召喚、《ブースト・ウォリアー》を特殊召喚します。レベル1《ブースト・ウォリアー》にレベル4《デブリ・ドラゴン》をチューニングします! シンクロ召喚! 希望の出発、《アクセル・シンクロン》! 《アンノウン・シンクロン》を墓地に送ってレベルを1つ下げます!」
「ウトナピシュティムの本船」の船外でシンクロチューナーが召喚される。船がアリスの装備カード扱いになったからか、"先生"が負担していた自傷ダメージは止み、身体が楽になった。
「シンクロモンスターを2体以上装備してるアリスの効果で2体のシンクロモンスターを特殊召喚して、素材としてシンクロ召喚します!」
「本来なら《ウトナピシュティムの本船》のレベルは12。シンクロ素材になど到底出来ませんが……」
「アリスにはリオ師匠との絆があります! 速攻魔法《アクセル・シンクロ》でシンクロ素材にするシンクロモンスターのレベルを全て半分にします!」
アリスは一旦目を閉じて精神を集中。開眼した。
「"透き通った世界"を見通す境地、トップクリアマインド!」
そして、アクセルシンクロを超えた先へと突き進む。
「レベル4《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》とレベル6《ウトナピシュティムの本船》にレベル2のシンクロチューナー《アクセル・シンクロン》をチューニングします!」
「3体のシンクロモンスターでシンクロ召喚を!?」
「でも、ライディングデュエルじゃないのにアクセルシンクロを?」
モモイの驚嘆とユズの疑問を黙らせたのは、「ウトナピシュティムの本船」が変化を見せたからだ。空を飛ぶ《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》と《アクセル・シンクロン》と共鳴し、新たな次元へと至ろうとしている。
「集いし絆の煌めきが、新たな未来を描き出す、光さす道になります! デルタアクセルシンクロー!!」
一瞬だけ「ウトナピシュティムの本船」が別次元を航行し、再びキヴォトス上空へと戻って来る。「ウトナピシュティムの本船」の外で並行して飛んでいたのは《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》ではなくなっていた。
「希望の光! 《コズミック・クェーサー・ドラゴン》!」
前人未到の境地の末、アリスは新たな竜を出現させた。その場にいた誰もが目を奪われた。それほどまでに衝撃であり、圧倒的であり、そして未来への希望を信じさせる頼もしさがあった。
「私は手札に加えた《光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ》をアリスに装備します」
「「ウトナピシュティム」のデータが分解されて、再構築されている!?」
「あれは、私たちエンジニア部の会心作……って、大きさが桁違いじゃないですか!」
「あれは、光の剣!?」
エンジニア部のウタハたちが驚く中、アリスの勇者の証である「光の剣」と瓜二つの大な砲塔が船外に出現する。そしてそれを両手に抱えて《コズミック・クェーサー・ドラゴン》が装備する。
なお、カードテキスト上の処理とは合っていない。しかし実処理と異なる演出をするのはソリッドビジョンではよくあることだ。バーンダメージを《眠れる巨人ズシン》の攻撃のように見せたり、破壊されていない筈の《TGハルバード・キャノン》が撃破されたり。アリスの武装を《コズミック・クェーサー・ドラゴン》が装備したのもその一環だろう。
「別位相に隠れている「アトラ・ハシースの箱舟」に照準をセット」
「《コズミック・クェーサー・ドラゴン》で「アトラ・ハシースの箱舟」に攻撃です!」
《スターダスト・ドラゴン》と違って《コズミック・クェーサー・ドラゴン》の攻撃方法は手にエネルギーを収束させて光の波動を射出するものだ。今回、そのエネルギーは全て光の剣へと集まっていく。
「天地開闢撃スーパーノヴァ・バースト! 光――よ!!!」
光の剣より放たれたエネルギーの奔流はまっすぐ突き進み、やがて「アトラ・ハシースの箱舟」へと直撃。多次元バリアが揺らめき、空間の歪みは和らいでいき、やがて消失した。
咆哮を上げる《コズミック・クェーサー・ドラゴン》。喜び合うアコやハナコたちクルー一同。「やりましたよ!」とケイに抱きつくアリス。戸惑いながらもまんざらでもなく抱き返すケイ。
そんなケイはシンクロ素材として墓地に送られた《ウトナピシュティムの本船》のカードを抜き出し、テキストを確認。嫌悪感を隠そうともせずに手に力を込め、ビリビリに引き裂いた。
「こんなもの、クリアマインドに到達していない、理解もしない輩が見様見真似で模倣した似非アクセルシンクロモンスターです。アリスのデッキに入れておく価値などありません」
「ケイが判断したならそれが正しいんだとアリスも思います」
「少なくともこれでアリスや"先生"が「ウトナピシュティム」の維持を負担する必要はなくなりました。《コズミック・クェーサー・ドラゴン》が維持される限りは問題無いでしょう」
ヒマリはこのまま《コズミック・クェーサー・ドラゴン》で「アトラ・ハシースの箱舟」を破壊しては?との考えも浮かんだが、Z-ONEたちが先行して突入済みであり、そもそも攫われたシロコの救出も主な目的。そのため、「ウトナピシュティム」は予定通り「アトラ・ハシースの箱舟」へ突入。アユム曰く「リンゴに爪楊枝が刺さったような状態」となった。
衝突の衝撃で「ウトナピシュティムの本船」はエンジンがシャットダウン、演算システムもボロボロとなった。エンジニア部が総出で修理にあたる。
その間もアトラ・ハシース内にいた色彩の軍勢が襲いかかってくる。ただ、その波は虚妄のサンクトゥム攻略戦の時より穏やかだ。
「どうやらユウセイ先生たちがうまく敵を誘導してくれてるみたいですね」
「逆を言えば今ユウセイ先生たちの負担が大きいことになります。早く応援に行かないといけません」
「「アトラ・ハシースの箱舟」の構造は……スキャンの結果、ユウセイ先生の事前情報とあまり変わっていないようです」
「なら3つの班を作って外郭の第1~3エリアを占領……いえ、ここは近い方から1,2,3エリアの順に一点集中で順次攻略していった方がよさそうですね」
ヒマリたちが打ち合わせているうちにチヒロは地上から通信を入れているデカグラマトンと会話していた。デカグラマトンはエンジニア部が「ウトナピシュティム」を時間以内に修繕しきれなかった時のバックアップ策を提案する。
「「アトラ・ハシースの箱舟」の次元を計算する演算装置があれば、もう一人の砂狼シロコがやったように空間跳躍シーケンスを作れるはずだ」
「つまり、「アトラ・ハシースの箱舟」を破壊した後に急いで船を使って脱出するんじゃなくて、全員を地上にワープさせようってこと?」
「そうだ。これならもしもう一人の砂狼シロコが空間跳躍で「ウトナピシュティム」に破壊工作を仕掛けてもみんな生存できる」
「うん、分かった。さすがデーちゃん。早速やってみて。脱出策はいくつもあるのに越したことはないもの」
こうして"先生"たち一行は攻略と防衛の両面の準備を進めていった。
一方で予測されたもう一人のシロコの強襲は発生しなかった。
彼女はZ-ONEと戦闘中で、増援への対処に出向く余裕はなかった。
◆◆◆
「彼女はアビドスの奥空アヤネさん? え? でも身共が出発した時はまだ地上にいましたよね? まさかシロコさん同様に連れ去られて?」
「……スキャン完了。どうやら彼女はこちらのアヤネでももう一人のアヤネでもないようね。彼女は有機物が一切無い完全なアンドロイド体よ」
「ろ、ろぼっとなのですか? じゃああの彼女は?」
「生前のもう一人のアヤネを模したコピー体ってところかしら」
「ウトナピシュティム」の突入より少し前。遊星ギアへと到達したリオとユカリはアヤネ*ミメシスと対峙した。彼女は次元エンジンを守る者としての決意を表明し、デュエルディスクを展開する。
そんなアヤネ*ミメシスの相手を務めるのはユカリ。リオは迫りくる色彩の尖兵の処理を引き受ける。互いに健闘を祈り、己の役目を果たすべく行動を開始した。デュエル、そして掃討作戦が始まった。
「では、状況を始めましょう」
一方、ユウカがノノミ*ミメシスとデュエルしている間、マルクトは色彩の尖兵の殲滅を開始した。色彩の尖兵は攻撃どころか近寄ることすら出来ずにマルクトの射撃を受けて撃破されていく。
そんな何の問題もなかったマルクトだったが、僅かな間だけ活動を停止する。しばしの沈黙の後、再び動き出した。もし観戦者がこの場にいたなら先程までと何ら変わらないように見えただろうが、その実、裏では激しい攻防が繰り広げられていた。
「想定こそしていたが、実際にクラッキングされると緊張してしまうものだな」
マルクトにクラッキングを試みた者がアクセスして到達した先はLINK VRAINS。キヴォトスで発生した虚妄のサンクトゥムの騒動により臨時メンテナンス扱いで現在はスタッフAI以外は誰もいない、寂しい空間となっている。
そこでデカグラマトンはクラッカーを待ち受けていた。デカグラマトンはLINK VRAINSで使っているチヒロに似た白ずくめの眼鏡っ娘のアバター。クラッカーはどこかアロナに似た黒ずくめの制服を着た白髮の少女だった。
3人目の敵である白い少女とデカグラマトンがここに邂逅した。
本概念では《コズミック・クェーサー・ドラゴン》はデルタアクセルシンクロモンスターです。しかしその効果でもオーバートップクリアマインドに到達していないと《シューティング・クェーサー・ドラゴン》や《スターダスト・シフル》は呼び出せません。
ちなみに"会長"は先にアリス、ケイを命名してから当て字でAL-1Sなどの型番を決めた、という設定です。因果が逆だったのです。
《機皇王女アリス AL-1S》
特殊召喚・効果モンスター
星12/光属性/機械族/攻0/守0
このカードは通常召喚できない。
自分および相手フィールドにSモンスターが合計3体以上存在する場合に特殊召喚できる。この特殊召喚は無効化されない。
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):表側で除外されている相手のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを召喚条件を無視して相手フィールドに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターがSモンスターの場合、その効果はターン終了まで無効となる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):自分または相手フィールドのSモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをこのカードに装備カード扱いで装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果に対してSモンスターの効果は発動できない。
(3):自身の効果でSモンスターを装備カード扱いで装備していない場合に発動できる。
自分または相手のEXデッキを確認し、そのうちSモンスター1体を選んで
装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(4):自身の効果で装備しているSモンスターが2体以上の時、発動できる。
そのモンスターを可能な限り召喚条件を無視して特殊召喚する。
その後、そのモンスターをS素材としてS召喚する。
(5):この攻撃力は自身の効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。
※コンセプトはデルタアクセルシンクロキラー。
《機皇神姫ケイ AS-K1》
特殊召喚・効果モンスター
星12/闇属性/機械族/攻0/守0
このカードは通常召喚できない。
自分および相手フィールドにSモンスターが合計3体以上存在する場合に特殊召喚できる。この特殊召喚は無効化されない。
(1):自分フィールドの「機皇」モンスターはSモンスターの効果では破壊されず、除外できない。「機皇」モンスターを対象とする召喚・反転召喚・特殊召喚を無効にするSモンスターの効果は無効となる。
(2):相手フィールドのSモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをこのカードに装備する。
この効果は1ターンに自分フィールドの「機皇」モンスターの数だけ発動できる。
(3):1ターンに1度、Sモンスターが特殊召喚された時に発動できる。
デッキ・手札・墓地より《機皇神姫ケイ AS-K1》以外の「機皇神」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
(4):1ターンに1度、このカードまたは《機皇王女アリス AL-1S》の特殊召喚に成功した時に発動できる。
デッキから《光の剣:スーパーノヴァ》または《光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ》を手札に加える。
(5):この攻撃力は自身の効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。
※コンセプトはアリスの補助ユニット兼護衛。
《機皇創生》
通常罠
自分の墓地に存在する「ワイゼル」「グランエル」「スキエル」モンスターを1体ずつ除外して発動する。
自分のデッキ・手札・墓地から《機皇王女アリス AL-1S》または《機皇神姫ケイ AS-K1》1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
※コンセプトはアリス専用の《機皇創世》
《光の剣:スーパーノヴァ》
装備魔法
《機皇王女アリス AL-1S》または《機皇神姫ケイ AS-K1》にのみ装備可能。
(1):装備モンスターの攻撃力が3000以下の場合、装備モンスターの攻撃力は3000、守備力は2500となる。
(2):装備モンスターがカードの効果で破壊される場合、代わりにこのカードを墓地に送る。
※このカードは"会長"が設計したカードではない。
《光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ》
装備魔法
《機皇王女アリス AL-1S》または《機皇神姫ケイ AS-K1》にのみ装備可能。
(1):装備モンスターの攻撃力が4000以下で装備モンスターがSモンスターと戦闘する場合、装備モンスターの攻撃力は4000となる。
(2):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをフィールドに存在する間Sモンスターとして扱う。
そのモンスターがXモンスターの場合、そのモンスターはそのモンスターのランクと同じレベルを得る。
そのモンスターがLモンスターの場合、そのモンスターはそのモンスターのリンクマーカーの数×2と同じレベルを得る。
この効果は相手のターンでも発動できる。
(3):装備モンスターがSモンスターを戦闘破壊した時に発動できる。
そのモンスターの破壊を無効にし、装備モンスターに装備カードとして装備する。
※このカードは"会長"デザインだが(1)の効果は本来無かった。エンジニア部の技術のたまものである。
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