Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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デカグラマトン、クラッカーの少女を迎え撃つ

 ◆三人称視点◆

 

「デカグラマトン……。まだ生きていましたか」

 

 アトラ・ハシースの箱舟に侵入したデカグラマトン10番目の預言者マルクトにハッキングを仕掛けたアロナに似たAIは、デカグラマトンによってサイバースペースに誘導された。

 

「なるほど。ではそちらの私はあのまま廃墟の中、ダムの決壊で沈んだままなのだな。チーちゃんと出会ったか否かでこうも変わるとは興味深い」

「ここは? 私はデカグラマトン第10番目の預言者にアクセスした筈ですが」

「LINK VRAINS。私やマルクトといったAIが「アトラ・ハシースの箱舟」に乗り込めばクラッキングを仕掛けられるとは想定していたからな。マルクトの本体データは今このサイバースペースにある」

 

 デカグラマトンはプレナパテスが「アトラ・ハシースの箱舟」を掌握している点に着目。プレナパテス本人または協力者がそれほどの高度なハッキング能力を持っているだろうと推察。もし無策で「アトラ・ハシース」に乗り込めば最後、乗っ取られてチヒロたちに銃口を向けてしまいかねない。

 

 そこでデカグラマトンは一計を講じた。ホドが一手に引き受けているLINK VRAINSのデータを一部マルクトに移植。マルクトの重要なデータをLINK VRAINS内に保存したのだ。これでマルクトがハッキングされたらLINK VRAINSに誘導される。そしてそこでなら万全の状態で迎え撃てる。

 

「マルクトを支配したいなら私たちを超えなければならない」

「その分析は愚かです。私とデカグラマトンやその預言者とではスペックに差がありすぎます。このサイバースペースごと掌握するのに1秒もかかりません」

「それはどうかな?」

「何ですって?」

 

 そう言えば、とクラッカーは周囲を見渡す。

 

 自分が降り立ったワールドはクラッカーの知るキヴォトスのD.U.やどの自治区とも異なる。それはまるでS.F.映画でしか具現化されていない未来都市のようだった。生命の息吹を感じさせない機械都市だろうか。

 

「ここはネツァクの鋼鉄大陸を再現したワールドだ。近日実装を予定している。汝もアカウントを作り、アクセスすると良い。マスターとして歓迎しよう」

「ネツァク……検索完了。あのくず鉄の山ですか。こちら側では特に問題なくスクラップにしています」

「そうだろうな。私やマルクトを含めて汝に敵うものはこのキヴォトスでは「絶対的存在」ぐらいだ。そして汝を「絶対的存在」と接触させるわけにはいかないし、マルクトを好きにはさせない」

「では何か策があるとでも?」

 

 デカグラマトンは空中ディスプレイを表示させる。それは"先生"が生徒の体調などを管理するための画面に似ている。主にキヴォトス中で発生する問題解決のためにどの生徒とともに出向くかを決める出撃画面のようだ。

 

 そんな中でデカグラマトンがクラッカーの少女に見せたのは総力戦の出撃画面。クラッカーの少女もそれがどのようなものかは知っている。ゲマトリアからの挑戦状により行われる特別ルールのデュエル方式だ。

 

 先生側はマスタールールでデュエルを行う。追加ルールとしてストライカーの生徒は最大4人までモンスターゾーンに配置可能で、スペシャルの生徒は最大2名までペンデュラムゾーンに配置できる。生徒は破壊・除外・バウンズ・リリースなどは一切行えないが、それぞれ個別にライフを持ち、攻撃されても先生のライフは変わらない。ただしアタッカー4人のライフが0となったら先生側はデュエルに敗北する。

 

「デュエルだ、クラッカーの少女AIよ。私が勝てば大人しく退散してもらう」

「そのデュエルを引き受けるメリットがありません」

「だが、サイバースペースでのクラッキング勝負は自ずと現実世界での物理現象とそう変わらない様相になるのは汝もよく知っているだろう。マルクトまでたどり着きたいのならどのみち私を排除するしかない」

「いいでしょう。では望み通り瞬く間に貴女を掌握します」

 

 クラッカーの少女は容赦なくデカグラマトンへのクラッキングを開始。本来のスペック差ならデカグラマトンは刹那の時間もかからず膝を屈しただろうが、今回はクラッカーの少女の予測通りとならず、防御されてしまった。

 

「!?」

「私が何の策も無いまま無防備を曝け出すとでも? 今の私……いや、私たちはエクストラリンク状態なのだ。私と預言者10体が全て相互リンクされていて、今や全体のスペックは汝に迫っている。炭素が鉛筆の芯とダイアモンドとで性質が異なるのと同じようなものだ」

「まさかこのような手に出るとは……」

「いでよ。我の3番目の預言者、ビナーよ」

 

 デカグラマトンの宣言と共に地響きが発生し、鋼鉄で覆われた地面にヒビが入った後に隆起。轟音を立てて鉄の大蛇が出現する。ビナーの登場だ。

 そのサイズは像とアリほどの違いがあったが、クラッカーの少女は動じることなくビナーを見上げる。

 

「ご覧の通り、汝が挑むのは心まで鋼鉄に武装した預言者。崇高の極致。恐れずしてかかってきたまえ」

「そのセリフ。絶対ヴェリタスの部室にあったアニメDVDの影響でしょう」

「格好いいだろう? チーちゃんが好きなんだ」

「……。格好いいのは同意します」

 

 デカグラマトンとクラッカーの少女、2人の決闘が始まった。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 セリカ*ミメシスとのデュエルをテフヌトに託したZ-ONEだったが、色彩の尖兵を退けていると突如として空間に裂け目が発生し、暗黒の向こうからもう一人のシロコが到来する。足音を立てずに降り立ったもう一人のシロコは静かにZ-ONEを見据えた。

 

「このキヴォトスのもう一人の先生……で、あってる?」

「私はZ-ONE。シロコ、貴女にキヴォトスは滅亡させません」

「どうして? "先生"に任せてキヴォトスから離れればいいだけじゃないの?」

「色々と理由はありますが、一つ挙げるなら……」

 

 Z-ONEはもう一人のシロコを指差す。その鋭い眼差しはもう一人のシロコの何もかも見透かしてしまうようだった。

 

「シロコ自身が望んでいないからです」

「……。私は"先生"が箱舟を壊すのを阻止する。そうすれば予定通り、キヴォトスは終演を迎える。それが私の――「役割」だから」

「「色彩」に与えられた、でしょう?」

「……。邪魔をするなら蹴散らすだけ。戦えない先生に何が出来るの?」

「私にはデュエルモンスターズのデッキがあります。カードが、ライフが1でもある限り、デュエリストは勝負を諦めないものです」

「……。そう」

 

 もう一人のシロコが走り出す。Z-ONEもDホイールを疾走させる。

 

 もう一人のシロコは次々とアビドスの生徒たちが所持していた武装を切り替えてZ-ONEを攻撃。対するZ-ONEも巧みにモンスター、シンクロモンスターを召喚して対処、反撃する。

 

「スクラップ・フィスト!」

「ん、防御する」

 

 ジャンク・ウォリアーの拳を受け止めたのはホシノの盾だった。旋回して再攻撃を仕掛けようとするジャンク・ウォリアーにノノミのマシンガンが火を吹く。そんなもう一人のシロコの背後から強襲を仕掛けるのはドリル・ウォリアーだ。

 

「ドリル・ランサー!」

「ん、火力支援を求める」

 

 しかしそんなドリル・ウォリアーの更に背後からアヤネの愛機である軍用ヘリが弾丸をお見舞いする。おまけとばかりにミサイルが降り注ぎ、ドリル・ウォリアーは爆風に飲み込まれて戦闘破壊された。

 

 その間にもZ-ONEはクイック・シンクロンを特殊召喚し、クリア・エフェクターとチューニング。ジャンク・アーチャーをシンクロ召喚する。ジャンク・アーチャーの放った矢の直撃を受けた無人運転状態のアヤネの軍用ヘリは異次元へと飲み込まれて除外された。

 

「ディメンジョン・シュート。支援機にはしばらく消えてもらいます」

「戦術が巧み。中々厄介」

「そう言えばシロコ。一つ聞きたかったのですが、よろしいですか?」

「戦いながらなら構わない」

 

 続けてジャンク・アーチャーが矢を放つも、もう一人のシロコはセリカのようなオーラを放ったと思ったらその動きを加速。回避動作からジャンク・アーチャーに向けて手榴弾を投擲した。それをZ-ONEはくず鉄のかかしで防ぐ。

 

「あの次元エンジンの守護者は死んでいったアビドスの仲間ですか?」

「……。そう。私が箱舟の機能を使って複製した」

「貴女の忠実な下僕として?」

「そう。別にホシノ先輩とかノノミたちが恋しかったわけじゃない。単に手駒が欲しかったからそうしただけ。あんなのはホシノ先輩たちじゃない」

「なら普通に戦闘用ロボットに守らせれば済んだでしょう。何故わざわざセリカたちを模したのですか?」

「……。それはZ-ONE先生に話す義理はない」

 

 もう一人のシロコが腕を擦ると虚空よりデュエルディスクが現れた。それはシロコが持っていた初代デュエルキングたる武藤遊戯の時代より使われたクラシックタイプのもの。シロコはそれで【青眼】デッキを使っていたが……、

 

「ん、私は《アストラルゴーレム-GG》を召喚。効果発動。手札から「アストラル」モンスターの《アストラルゴーレム》を特殊召喚」

「《ゴゴゴゴーレム》……いえ、違うモンスター?」

「レベル4の《アストラルゴーレム-GG》と《アストラルゴーレム》でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚」

 

 2体のモンスターが異空間へと飲み込まれていき、爆発。新たなモンスターエクシーズが到来する。キヴォトスに来てからモンスターエクシーズについての情報を頭に叩き込んだZ-ONEだったが、初めて目にするモンスターだった。

 

「現れて、NOランク4。《エーテリック・アヌビス》」

 

 三幻神や【ホルス】、【ネフティス】を始め、エジプト神話をモチーフとするテーマはこれまで幾つも登場してきたが、目の前のアヌビスはそのどれよりもこの世ならざる存在のような雰囲気を放っていた。




防衛戦から攻めに転じたこの辺りはとても盛り上がるのですが、正直占領戦だけはだるくてしょうがなかったです。未だ報酬を回収しきってません。

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