Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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シロコ、太陽神と対峙する

 ◆三人称視点◆

 

 アトラ・ハシースの箱舟、第4エリア。

 中枢となる区画には太陽ギアとそれに結びつく次元エンジンが駆動していた。

 

 そんなエリアに真っ先に足を踏み入れたのは"先生"でもZ-ONEでもなく、正体不明の生気無き存在に拉致されていたこの世界のシロコだった。Z-ONEの強襲で箱舟内を徘徊する色彩の尖兵が慌ただしく動いたのを見計らい、脱出してきたのだ。

 

 覆面を付けて徘徊するのは金目の物を物色して懐に収めてしまおうと目論んでいるからだが、どの部屋ももぬけの殻。必要最低限の機材すら置かれていない。まるで次元エンジンだけあればいいとばかり、または完成したての新品と言ったところか。

 

「うへ~。まさか一番最初に来たのがシロコちゃんだなんてねー」

 

 そんな次元エンジンの前で待ち構えていたのはシロコがよく知る人物だった……と、シロコは声を聞いた時、そしてひと目見た時は思った。しかし、違う。ショートカットにしたり黒尽くめの制服に着替えていたりとイメージチェンジはしていたが見た目は間違いなくあの人の筈なのに、違うと己の直感が告げてくる。

 

「……ホシノ先輩?」

「どうしてそこで疑問符が湧くのかな? ま、でも今回はその直感は大正解だよ」

 

 シロコの先輩、小鳥遊ホシノでありホシノではない。そんな異様な存在は虚空よりデュエルディスクを出現させる。

 

「ドッペルホシノ、コピーホシノ、ホシノ*ミメシス。まー好きに呼んでよ。少なくとも私は私をホシノだって認識してるけれど、シロコちゃんはニセモノだって断言してくるんだよね。まあ、キヴォトスの情報を元にコピー、再現したなんちゃってだからしょうがないんだけどさ」

「ん、難しいことはよく分からないけれど、ニセホシノ先輩はあのミイラみたいな大人と同じ。私の敵! 滅びのバーストストリーム!」

 

 拉致された際に没収された武装やデュエルディスクとデッキは回収済み。シロコは最初から全力全開とばかりに《青眼の白龍》を召喚し、ホシノ*ミメシスに攻撃を仕掛けた。しかし、そんな《青眼の白龍》の攻撃にホシノはびくともしない。正確にはホシノに届いていなかった。

 

 《青眼の白龍》の攻撃を受け止めたのは太陽のように輝く黄金の球体だった。そんな球体は光を発したと思うと解体されていき、やがて一帯の鳥のような竜が出現した。そのモンスター……いや、神はシロコも良く目にする存在だった。

 

「色彩の尖兵3体を生贄に捧げて、起動せよ! 《ラーの翼神竜》!」

 

 三幻神の頂点に君臨する最高神、ラーの降臨である。

 

 シロコから見たホシノはお世辞にもデュエルタクティクスは高くない。というのも相手がどんなモンスターを召喚して魔法カードを駆使したところでホシノは自分一人でどうにか出来る実力があるため、カードプレイングが必要無いのだ。ホシノ曰く「うまく立ち回れば相手がカードセットする間に銃弾をお見舞い出来るよー」とのこと。

 

 そんなホシノもキヴォトスの流行には勝てず【ホルス】デッキを組んでいるが、実戦で召喚するのはもっぱら《ラーの翼神竜》だけだ。ホシノ曰く「歯車と歯車ががっちり噛み合ったみたいに相性がいいんだよねー」とのこと。ホシノは基本的にラーをポン出しして自分と神で暴れまわる戦闘スタイルを貫いている。

 

 ところでZ-ONE赴任時にチナツやハスミたちが三幻魔を例に説明したが、三幻神もまた一般流通している。ただしそのカードテキストは神の面影など無い。特にラーは神の怒りを恐れてか過度なぐらい念入りに調整されており、もはや「ラーではなくヲ―だ」や「ライフちゅっちゅギガント」だのと呼ばれて馬鹿にされる始末だ。

 

 ホシノの召喚する《ラーの翼神竜》は正真正銘の神だった。上級魔法以外への完全耐性、ヒエラティックテキストを読んで起動する制御権、3つの絶対的効果。そして何より威圧感、存在感がまるで違った。君臨するとはまさにこのことかとシロコは実感させられたものだ。

 

「《ラーの翼神竜》の攻撃力は私のライフを100にして7,900アップ。これで攻撃力は11,900になったよ。《青眼》が相手でもワンショットキル範囲内だね」

 

 一方でこの《ラーの翼神竜》はどうだろうか? 確かにソリッドビジョンで姿は神を忠実に再現できているが、これっぽっちも圧倒されなかった。シロコは記憶を掘り起こし、ノノミが「これじゃあウドの大木ですねー」と言ったのを思い出す。

 

 ああ、そうか。このニセホシノ先輩は《ラーの翼神竜》を神として召喚出来ないんだ。だから自虐的に自分を偽物だって言っているんだ。別に神を呼び出せなくたってホシノ先輩はホシノ先輩なのに……と思ったシロコだったが、神を相手できないとがっかりしている自分もいるとも分かっている。

 

「ゴッド・ブレイズ・キャノン!」

「ん、ニセホシノ先輩の攻撃宣言にチェーンして罠カード《破壊輪》を発動する。《ラーの翼神竜》を爆破して攻撃力分のダメージをお互いに与える。チェーンしてカウンター罠《地獄の扉越し銃》を発動する。私が受ける分の効果ダメージをニセホシノ先輩に被せる」

「……! そうはさせないよ!」

 

 《ラーの翼神竜》に爆弾付きの首輪が付けられたが、それが爆破する前にニセホシノは自分の銃で首輪を狙撃。爆弾を爆発させずに首輪は砕かれ、ラーから外れて床に落ちた途端に爆破した。ラーが破壊されなかったため《破壊輪》と《地獄の扉越し銃》は不発に終わる。

 

 しかし、そんな《ラーの翼神竜》は《青眼の白龍》が口から放った光弾の直撃を受け、爆発四散した。攻撃力で圧倒的に劣る《青眼の白龍》の攻撃で何故破壊されたか理解出来なかったニセホシノにシロコは1枚のカードを見せびらかせた。

 

「魔法カード《滅びの爆裂疾風弾》を発動してた。ニセホシノ先輩、効果破壊出来る神なんて神じゃない。ただのモンスターだよ」

「……。だよね。おじさんじゃあ本物みたいに市販されてるただの紙のカードに神の力は宿らせられないよ」

 

 ニセホシノは処理されたラーをどこか諦めた表情で見つめた後、シロコへと向き直る。その瞳に宿るのは決して諦めないという闘志。まだ戦いは終わっていないとシロコは警戒心を強めた。

 

「でも、こっちのシロコちゃんはまだコレ知らないでしょ?」

「……!? ラーが墓地から蘇った……!?」

 

 ホシノの背後で容易く葬られたラーが炎とともに蘇る。それはまさに不死鳥のごとし。更にその黄金の身体は太陽のごとく燃え上がり、炎の鳥と化した。このラー不死鳥形態はシロコも知っているが、本来ラー第3の能力だった筈だ。

 

「そんな。キヴォトスのラーはただの焼き鳥。特殊召喚なんて出来ないのに」

「あるんだよ、こっちには。キヴォトスのラーを補うカードが。この《ラーの翼神竜-不死鳥》もその1枚。そっちはまだコレの獲得イベント起こってないみたいだけどさ」

「?? こっちとかそっちって何?」

「簡単に言うとこの異変は並行世界からの侵略ってこと」

 

 《ラーの翼神竜-不死鳥》が突撃して《青眼の白龍》を燃やし尽くす。しかしそれをただ眺めているわけにもいかない。ラーが羽ばたいたのと同時にニセホシノが盾を前方に掲げて距離を縮めてきたからだ。

 

 シロコはドローンを起動してニセホシノへの射撃を開始。しかしニセホシノの小さな体は巨大な盾に収まってしまい、全ての弾丸が弾かれてしまう。唯一露出させている手も銃を握っており、的確な狙撃にシロコは回避行動を取るしかなかった。

 

 そんなシロコに向けてラーが飛び込んできた。神にあらずともその攻撃力は4,000。ダメージが現実のものになればひとたまりもない。

 

「《青眼の白龍》が破壊されたことで手札の《ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン》を特殊召喚する。ん、迎え撃つ」

「なら攻撃対象を《ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン》に変更するね」

「ダメージステップ開始時に《ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン》の効果発動。ラーをバウンズする」

「無駄だよ。《ラーの翼神竜-不死鳥》はラーと違って完全耐性だから」

「神に近づけてるんだ。でも狙いはラーを返り討ちにすることじゃない」

「……何だって?」

 

 ラーに焼き尽くされた《ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン》は落ち、床に倒れ伏した。しかしその巨体はシロコとホシノを隔てるように間に落ちたため、ホシノは突撃を中断せざるを得なかった。

 

 2体の青眼竜を熱殺したラーはけたたましく鳴くとその身を丸くし、炎とともにやがて黄金の球体と化した。ラー球体形、これもキヴォトスのラーでは決して取れなかった形体だ。

 

「そっちにもなれるんだ」

「エンドフェイズに不死鳥は墓地に舞い戻り、大地を燦然と照らす太陽に戻る。《ラーの翼神竜-球体形》もまたラーのサポートカードの1枚だよ」

「ならそのカードには今度《ラーの翼神竜》になれる効果もあるの?」

「ご明察だよー。どう? 本物の神様じゃなくても神の力は再現出来るんだね」

 

 そんな発言をしたニセホシノだったが、浮かべた笑いはとても乾いたものだった。




◇ホシノ*ミメシス
使用デッキはOCG版ラーの活用に特化した【ラーの翼神竜】
エースモンスター兼切り札は3種類のOCG版ラー。
なお、《ラーの翼神竜-不死鳥》や《太陽神合一》などのラーサポートカードは「シェマタ」の一件で入手したものなので、本概念のホシノは未取得

ラーの翼神竜は原作効果でしか使わない予定だったのでOCG版はここにねじ込みました。こんな介護マシマシになるぐらいなら真祖ラーをOCG化してくれないかなー。

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