◆三人称視点◆
ハイランダーのノゾミを模した影人が汽車を爆走させたことでデカグラマトン6番目の預言者たるティファレトは機能を停止した。もっともLINK VRAINS内で敗れても現実世界でデータが消失するわけではない。しばらく復旧作業が必要となるが。
これでケテル、コクマー、ビナー、ケセド、ゲブラー、ティファレト、ホドの計7体の預言者が謎の白い少女クラッカーに敗れた。残りはマルクトを含めて3体。
しかしデカグラマトンからすれば予測より時間が稼げていることを懸念する。あまりに順調すぎるからだ。
「既にシャーレの"先生"たちは第4エリアの次元エンジンも停止させた。汝がマルクトを洗脳する前に「アトラ・ハシースの箱舟」は天童アリスの所有カードと化すだろう。この勝負、私たちの勝ちだ」
「……。いえ、まだ勝負は分かりません。そしてこちらの逆転の一手は既に私の手札に来ています」
ティファレト攻略要因となる生徒の生徒証6枚をデュエルディスクから取った謎の白い少女は手を天にかざした。するとデータストームの風が少女に手に集まっていき、新たなカードが生成された。
「ストームアクセス……!? 馬鹿な、データストームの波に乗らずに自分の手にデータを圧縮させただと……?」
「これまで預言者を攻略するためだけに生徒を模した大規模容量のデータを使っていたわけではありません。どのデータもこの現象を起こすためのプログラムをばらまいたに過ぎません」
白い少女は生成したカードをそのままデュエルディスクのフィールドにセットする。そして召喚されたモンスターを見たデカグラマトンは一瞬驚き、そしてその手があったかとこの可能性に思い至らなかったことに後悔した。
「LINK VRAINSは私から見ても素晴らしいサイバースペースです。各学園だけに伝わるマイナーカードでも普通にプレイング出来ますし、先程天童アリスが召喚した《コズミック・クェーサー・ドラゴン》もバグ無く召喚されることでしょう」
「私は……利用されたということか」
「だから、現実世界で天童ケイが破いたこのカードも、一度カード化されればLINK VRAINSにデータが記録され、私も入手出来るようになるのです」
白い少女が召喚したモンスターは《ウトナピシュティムの本船》。これにより「ウトナピシュティム」は白い少女のコントロール下に入り、思うがままに指令を出せるようになった。
「《ウトナピシュティムの本船》の効果発動。フィールドに「機皇」モンスターがいるプレイヤー、つまり天童アリスのいる「ウトナピシュティム」側に2,000ポイントのダメージを与えます」
「しまった……! チーちゃん今すぐ……!」
白い少女の宣言と共に「ウトナピシュティムの本船」で小規模な爆発が発生。エンジニア部の尽力で修理が完了していた船は再び中破してしまった。中にいたチヒロたちが無事なのを確認してデカグラマトンはほっと胸を撫で下ろす。
「更に《機皇方舟アトラ・ハシース》の効果を発動。除外状態のこのモンスターを特殊召喚し、フィールド上のシンクロモンスター1体を吸収します。私は《ウトナピシュティムの本船》を選択」
「機皇の共通効果か……。だがこれで「アトラ・ハシース」に「ウトナピシュティム」が接続され……」
「そう、数ターン後に「虚妄のサンクトゥム」6柱が再び顕現します」
そして、キヴォトス中の空が再び真っ赤に染まる。まるで空一面に鮮血を垂れ流したかのように鮮やかな真紅に。
地上に残る生徒たちは"先生"や「アトラ・ハシース」に向かった生徒代表を案じ、そして己のやるべきことをやるべく動き出す。誰もが信じているから。きっと"先生"たちが解決してくれると。
「なら、「アトラ・ハシース」のコントローラーたる汝のライフを0にするまでだ! 《アコード・トーカー@イグニスター》で攻撃する!」
「10番目の預言者を乗っ取れなかったのは誤算でしたが、この結果は想定の範囲内です。ではログアウトさせてもらいます」
デカグラマトンがけしかけたサイバース族の戦士が剣を振り下ろすが、白い少女がLINK VRAINSから脱出する方が早かった。ログアウトを管理者権限で阻むことも出来たが、「絶対的存在」並の処理能力があると推察されるあの少女相手にそれは悪手だと諦めた。
「マルクト。あの白い「絶対的存在」に逃げられた。あとは汝等に任せる。私は最後まで汝等をサポートするが、ホドたちは虚妄のサンクトゥム再出現に備えさせる」
「充分です、主よ。後は我たちにお任せください」
「……。場合によっては私のリソースを使って汝たちを地上に転移させる。そうなればその後の存在証明は汝に託す」
「その想定が不要となるよう我らは最善の選択をするだけです」
通信を切ったデカグラマトンはログインさせていた預言者たちを解散させ、LINK VRAINS内のミレニアムタワー中枢へと転移する。モニターに表示させたのは「アトラ・ハシース」「ウトナピシュティム」「キヴォトス」それぞれの様子だ。
なお、以前チヒロはそんなデカグラマトンの作業の様子を見て非効率的だと正直な感想を漏らした。データ上で処理できるならこんなアバターの視覚情報に頼らなくてもいいのに、と。
デカグラマトンはそんなチヒロに笑った。チーちゃんに格好良く仕事をこなしているように見せるために可視化させているだけだ、と。チーちゃんはそれもそっかと笑いながらデカグラマトンのコーヒーを飲んだ。
「チーちゃん、マルクト……。汝らは必ず生還させる。デカグラマトンの名にかけて」
デカグラマトンは自分で煎れたコーヒーを啜りながら画面をチェックし続ける。
◆◆◆
「"先生"、悪い話よ。サイバースペースでデカグラマトンと交戦してた3人目の敵が「ウトナピシュティム」のコントロールを掌握。虚妄のサンクトゥムを出現させようとしているわ」
「じゃあ、今までの戦いは無駄に終わったってこと……?」
「いえ。今ならまだ3人目を倒して「ウトナピシュティム」のコントロールを奪還して元の軌道に乗せられるわ。ウタハ、3人目の居場所は掴めたかしら?」
「……確認完了。「アトラ・ハシースの箱舟」第4エリアの中央部です」
混乱する「ウトナピシュティム」のクルーや「アトラ・ハシース」攻略部隊を冷静にさせるためにリオは素早く状況を分析する。
ヒマリ、ヴェリタス、エンジニア部、美食研究会は第1エリアの「ウトナピシュティム」で待機中。
Z-ONEとテフヌトは第1エリアから第4エリアに向かっている途中。
"先生"、ゲーム開発部、リオたちは第3エリアから第4エリアに向かう途中。
ホシノたちアビドス一行はシロコと合流して第4エリアにいる。
リオはDホイールのオートパイロットモードを起動。目的地までのルートを設定した。それからモンスターゾーンに《TGブレード・ガンナー》をセットしてDホイールを降りる。
「"先生"、これに乗って先に行ってちょうだい。ホシノたちには"先生"の指揮が必要よ。道中の雑魚なら《ブレード・ガンナー》が蹴散らしてくれるわ」
「でしたら後方の守りは身共の《BF-あーまーど・うぃんぐ》にお任せ下さいませ! そのお背中には傷一つ付けさせやしませんわ!」
ユカリもDホイールから降りる前に自分のカードをセットする。アリスやモモイも自分のもと言い出すものの、アトラ・ハシース内の通路はそれほど広くない。走行するなら前後1体ずつ展開するのが限度だろうとの判断で見送られた。
「先生、すぐに私たちも駆けつけます。それまではどうかご無事で」
"うん、分かった。行ってくるよ"
Dホイールに乗った"先生"はオートパイロットモードで疾走していき、すぐにユウカたちの視界から消えていった。"先生"の前に立ちはだかる色彩の尖兵はリオの想定通り《TGブレード・ガンナー》が処理しているようだ。
一方、そんなリオのDホイールの速度に追いつけるだろうマルクトは先程から後方に視線を移したままだった。巨大な質量が床に叩きつけられる重厚な音と、壁に反響する大規模機械の駆動音が嫌でも耳に入ってくる。
「我は殿をします。すぐに追いつきますので先に行ってください」
「……。分かったわ。気を付けてちょうだい」
一同は"先生"が向かった方へと駆け出し、その場にはマルクトだけが残る。
程なく、滑り込むように現れる色彩化ケテル。反転したヘイローが頭部に浮かぶ。
マルクトは武装を展開、照準を色彩化ケテルに合わせた。
「「色彩」の傀儡に堕ちた預言者ケテル。このマルクトが断罪します」
色彩化ケテルが飛び出したのとマルクトが発砲したのはほぼ同時だった。
概念特有の設定をいかに原作とつじつま合わせるか考えるのはとても楽しいです。それが出力出来たら脳汁いっぱい出ます。
《機皇方舟アトラ・ハシース》
星10/闇属性/機械族/攻0/守3050
このカードは通常召喚できない。
このカードの(2)(3)の効果は除外状態時しか発動できない。
(1):このカードを手札から除外して発動できる。
デッキから《機皇創生》または《機皇創世》を手札に加える。
(2):フィールドにSモンスターがいる場合、そのモンスターを対象に発動できる。
このカードを特殊召喚し、そのモンスターをこのカードに装備カード扱いで装備する。
(3):1ターンに1度、以下の効果から1つ選択して発動できる。
・「機皇」モンスターを対象とするカードの効果を発動した時に発動できる。
その効果を無効にする。
無効にしたその効果はターン終了まで発動できなくなる。
・「機皇」モンスターを対象とする相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
その攻撃を無効にする。
・自分フィールドの「機皇」モンスター1体を対象として発動できる。
そのカードはターン終了時までリリースできず、融合・S・X・L召喚の素材にもできない。
この効果は相手のターンにも発動できる。
(4):エンドフェイズ時に自分フィールドにこのカードが存在する場合に発動する。
このカードに装備されたSモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
その後このカードを除外する。
ご意見、ご感想お待ちしています。