Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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白い少女、その正体を明かす

 ◆三人称視点◆

 

 アトラ・ハシース多次元解釈エンジン管制室、「ナラム・シンの王座」。

 シロコたちアビドス一同が到着すると、程なく"先生"が現れた。

 合流した"先生"一行は管制室に突入し、ついにプレナパテスと対峙する。

 

 シロコをさらったプレナパテスについてはホシノたちも情報を共有している。確かに目の前の人物は生気が無く、まるでミイラが動いているようだった。故に気配が一切感じられず、何も伺えなかった。

 

「止まれ! 少しでも動いたら……撃つ!」

 

 シロコは銃口をプレナパテスに向ける。

 そんなプレナパテスは衣の内側に手を入れたまま動こうとしない。

 いや、正確には少しずつ動いている。懐の何かを取り出そうとしている。

 

 プレナパテスが手にしたそれは、タブレットだった。

 銃撃で何箇所か穴の空いた。

 タブレットはキヴォトスで珍しくもないが、その機種には見覚えしか無い。

 

"……我々は望む、ジェリコの嘆きを"

 

 それは、シッテムの箱ではないだろうか?

 

"……我々は覚えている、七つの古則を"

 

 "先生"しか所有していない、キヴォトスで唯一無二の。

 

 もう一人のシロコ。

 滅んだもう一つのキヴォトス。

 アロナに似た超高性能AIの白い少女。

 そして、もう一つのシッテムの箱。

 

 導き出せる答えは、もう一つしかなかった。

 

「ああぁぁああっっ!!」

 

 シロコは叫びながら発砲する。

 恐怖を振り払うように、絶望を紛らわすように。

 そんな筈はない、そんなことはあってはならない。と自分を言い聞かせて。

 

 引き金を引いても弾丸が出なくなるまで撃ち尽くし、シロコは愕然となった。

 プレナパテスは無傷だった。弾丸は見えない壁に弾かれたり力場で逸らされているようだった。

 代わりにプレナパテスの前にはデカグラマトンが相対した少女が立つ。

 

「「シッテムの箱」の常駐メインOS、A.R.O.N.A。命令待機中」

 

 A.R.O.N.A、と名乗った白い少女を見た"先生"は驚愕する。

 デカグラマトンからの情報でアロナに酷似した容姿だとは知っていた。

 しかし実際に見て実感した。目の前の少女は確かにアロナとほぼ同じだ、と。

 

「……「シッテムの箱」の権限でも管理者IDで停止ロックされた「アトラ・ハシースの箱舟」の次元エンジン再起動は不可能。クラッキング進行中。解除完了までの予定時間は800秒。除外状態に戻れば「アトラ・ハシースの箱舟」に装備状態の「ウトナピシュティムの本船」は自壊されます」

「……だから言ったでしょう? 定められた運命を変えることはできない、と」

 

 そして、プレナパテスの背後からもう一人のシロコが姿を見せた。

 

 もう一人のシロコとA.R.O.N.A.を従えた大人。

 プレナパテスの正体、それは……、

 

「さあ、行こう。私の――"先生"」

 

 ――もう一人の"先生"だ。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「プレナパテスの正体は"先生"の並行同位体、ですか……」

「ええ。私たちの"先生"よ」

 

 Z-ONEはテフヌトを乗せてDホイールを走らせる。あれだけ撃破してもまだ色彩の尖兵たちは出現し続ける。《シューティング・スター・ドラゴン》で道を切り開いているが、中々速度を出し切れずにいた。

 

「ではデカグラマトンと対峙したAIはアロナの同型なのですね。それなら「アトラ・ハシースの箱舟」を運用出来たのも頷けます」

「でも私たちの"先生"のシッテムの箱はシロコ先輩に壊されたって聞いてたわ。どうしてまだOSが動いてるの?」

「パソコンや携帯機器のモニターを壊してもメモリが無傷なら内部データは無事です。プレナパテスはおそらく「ナラム・シンの王座」をシッテムの箱代わりにしてもう一人のアロナを常駐させているのでしょう」

 

 「ナラム・シンの王座」には王女とその従者のみが君臨する空間となるよう"会長"は設計した。これ以上遊星粒子の影響を受けないよう、次元、時間、存在の有無などが確定されず混ざり合う混沌の領域にして。

 

 本来、世界は矛盾を嫌う。例えば全く同一の存在が同じ世界に存在した場合、世界はその矛盾を修正するように抑止力を働かせる。故にプレナパテスは極力「ナラム・シンの王座」の外での活動を控え、シロコを誘拐してもう一人のシロコをキヴォトスで活動できるようにしたのだ。

 

「しかし、その同一存在の一方の定義が変わってしまっていたら話は別です。別の存在と世界から見なされて修正力は働きません。セリカとテフヌトがそうだったように、おそらくシロコともう一人のシロコが同時にいてもさほど問題無いでしょう」

「……シロコ先輩が変わっちゃったせいだから複雑よ、それ」

「……。そろそろ聞かせてもらえませんか? そちらの世界で"先生"がどうなったのかを」

 

 もう一人のシロコが色彩に魅入られたのは察した。

 しかしもう一人の"先生"がなぜ「色彩の嚮導者」になったかは語っていない。

 テフヌトは大いに躊躇ったものの、やがて重い口を開いた。

 

「……私に邪神を授けたアイツは言ってた。シロコ先輩を助けるために"先生"は自ら身を色彩に捧げた、って」

「こちらの"先生"が黒服から聞いた話によれば、そちらのシロコは死の神アヌビスと化してキヴォトスを滅ぼしたそうですね。そんな中で"先生"がシロコを救うために犠牲になったとしたら……」

「うん……。シロコ先輩は、"先生"も自分が殺したって思ってる」

 

 Z-ONEのDホイールは箱舟の中を疾走する。

 "先生"やもう一人の"先生"たちのいる場所へ向けて。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「嘘だぁっ!」

 

 もう一人のシロコの告白を受けて、シロコは発砲した。

 

「世界を滅亡させて、先生を殺す……? そんなわけない!!」

 

 しかしもう一人のシロコはシロコの攻撃をかいくぐり、回し蹴りでシロコの銃を逸らす。そして自分の銃をシロコへと向けた。

 

「あなたがいくら否定したところで、これは既に定められたこと。あなたも……こうなる」

 

 近距離から射撃を受けてシロコは倒れ伏した。すぐさま起き上がるがもう一人のシロコは追撃しない。

 

「ゴホッ……っ……うぅっ……」

「私はあなたより強い。あなたにはない事を経験し、知らないことを知っている。この差は埋まらない」

 

 シロコは足元をふらつかせ、また倒れそうになる。

 そんなシロコの身体をノノミが支えた。

 シロコの前には盾を構えたホシノが立ちふさがった。

 シロコの横ではセリカが銃を構えた。

 

「うん、確かにもう一人のシロコちゃんは強いよ。見てるだけで分かる。でもごめんね。こっちのシロコちゃんにはまだおじさんたちがいるんだ」

「例えもう一人のシロコちゃんでもこれ以上シロコちゃんを好きにはさせません」

「違うシロコ先輩でもキヴォトスは滅ぼさせないわ!」

「……。そうだね、ホシノ先輩たちはそうするよね」

 

 ホシノは盾の裏側に取り付けたデュエルフィールドに1枚のカードをセットした。すると「ナラム・シンの王座」に太陽が昇り、やがてその太陽は形体を変え、黄金の鳥竜と化した。

 

 《ラーの翼神竜》。ニセホシノが駆使したキヴォトスで一般流通している調整版ではない、正真正銘の神。その存在感、威圧感、共に仲間のハズのセリカやノノミにも毛並みが逆立つほど伝わってくる。

 

「最初から全力全開でいかせてもらうよ。恨みっこなしだからね」

「……ただでさえ強いホシノ先輩が本気で《ラーの翼神竜》と連携したら誰も勝てない。今の私も例外じゃない」

 

 しかし、そんな《ラーの翼神竜》の姿がブレた。

 

「だから、神には退場してもらう。私の、死の神アヌビスの力で」

 

 《ラーの翼神竜》の姿は朧になり、やがてその場からいなくなってしまった。

 

「嘘……効果には無敵のラーがどうして……」

 

 上級魔法以外のいかなる効果も受け付けないラーではあるが、例外は存在する。もう一人のシロコが発動したカードもその1枚だ。Z-ONEがこの場にいたならかつて武藤遊戯の時代に発動されたそのカードを説明しただろう。

 

「永続罠《光のピラミッド》を発動してた。この効果でどんな神でも除外する。創星神も、地縛神も、夢幻虚神も。三幻神だって例外じゃない」

 

 ホシノは改めて気を引き締める。

 目の前にいるシロコは命をかけて戦わなければ勝てない強敵である、と。

 ノノミとセリカも衝撃は受けたが、ホシノの背中を見て改めて覚悟を決める。

 シロコは目の前のもう一人の自分には絶対に勝たなければと決意を固める。

 

 キヴォトスの存亡をかけた決戦の火ぶたが切って落とされた。




◇A.R.O.N.A(後のプラナ)
使用デッキは【方界】
エースモンスターは《方界超獣バスター・ガンダイル》
切り札は《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》、《暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ》
なお、彼女のスキル「プラナーズマインド」は除外状態のカードを別次元送りにする。アンクセルシンクロ涙目。

光のピラミッドは中々面白い映画でした。機会があればぜひご覧ください。

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