Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ミカ、アリウスの説明をする

「え、と。先生。もしかして私達、ワープしちゃった?」

「いえ、それよりも深刻です。私のDホイールには空間跳躍機能の他に時間跳躍機能も備えていて、何らかの影響で誤作動を起こしたようなのです」

「時間跳躍……それってタイムスリップ?」

「この年月日と位置に心当たりは?」

 

 連邦生徒会から支給されたタブレットは当然圏外。念の為にとDホイールに差し込んでいた道路地図を広げ、Dホイールのディスプレイに表示される数値を読み取ってろくに道路も繋がっていないような辺境の地点に印を付けました。

 

「えぇ? よりによってこの時代にここぉ?」

 

 それを見たミカは露骨に嫌そうな顔をします。

 

「心当たりがあるんですか?」

「んー。それを説明しようとするとすっごく長くなるから、元の時代に戻ってからにしない? すぐ戻れるんだよね?」

「まずは開けた直線道路を見つけないことには難しいですね」

 

 私は時間跳躍機能の発動条件をミカに伝えました。時速141km以上の速度が必要と聞いたミカは辺りを見渡して口をへの字に曲げます。

 

「既に日が暮れかけています。この地区の治安がどれほど悪いか分からない以上、夜間に探し回るのは得策ではないでしょう」

「じゃあ一旦空き家とかで一夜を明かして明日朝イチから探索する、ってことかな?」

「ええ、それがいいでしょう――」

 

 突然ミカは全く振り向かずに後ろへと銃撃。遠くの物陰からか細い悲鳴が聞こえてきました。それから人が倒れた音と金属物が落ちた音が直後に耳に入ってきます。

 

 何者かに狙われた。今はそれが分かれば充分です。

 

「先生、付いてきて!」

「分かりました、先導は任せます!」

 

 ミカは地面を蹴って飛び出し、私はDホイールを走らせて彼女の後に続きます。狭い道を縫うように駆け抜けているとは言え遊星のDホイールでもミカの後に続くのがやっと。つくづくキヴォトスの人の身体能力の高さには驚くばかりです。

 

 私達が退避行動に出たことで潜伏していた何者らかがこちらへ襲いかかります。正面に立ちふさがる者、建物の影から狙撃しようとする者など、その殆どをミカが返り討ちにします。私はせいぜい遊星号の武装で援護射撃を行う程度です。

 

 物陰に潜んで襲撃者をやり過ごし、裏路地を抜けて荒廃した町の更に奥の方へと進んでいきました。至るところに爆弾による破壊後や銃痕が刻まれていて、大規模な戦闘が行われたことは想像に難くありません。

 

「これは……普段キヴォトスで発生する騒動とは違いますね」

「……」

「どうやらひとまずは振り切ったようですし、一晩過ごせる空き家を探しましょう」

「……」

 

 口数を少なくして思い詰めた表情を見せるミカに声をかけ、私は周囲を伺います。玄関扉を失って廃墟とかした家屋もあれば扉を固く閉ざす家もあります。とすると、この町はまだ人が住んでいるのでしょう。怯えながら戦火が離れるのを待ち続けて……。

 

 とりあえず私は玄関扉が無いものの崩壊度合いが比較的軽度な家屋を指差し、そこに避難することを提案。ミカも同意したので私達は中へと入ります。

 

 家の中は家具や調度品が残っていて、住人は慌てて逃げたのだと推察出来ます。私達は表から見えない奥の部屋へと退避し、壊れていない椅子に腰を落ち着けました。Dホイールは居間にシートを被せて駐輪させてます。

 

「それで、ミカ。この時代この場所で何があったか、教えていただけますか?」

「知ったところで意味が無いよね。だって私達はすぐに元の時代に帰っちゃうんだよ? それともZ-ONE先生は事情を知ったら介入するの?」

「歴史の修正は大きな責任を伴います。何しろ今日語り合っていた友人が明日には存在しなかったことになっているかもしれませんからね。私は歴史の修正を最終手段と位置づけています」

 

 もっとも、私自身は力不足でその最終手段に踏み切らざるを得なかったのですがね。

 

「しかし状況を把握しないことには元の時代にも戻れません。まずは帰ることを最優先に考えましょう」

「……うん、いいよ。でもその前に何か食べるもの持ってない? 帰ってから夕食取ろうかと思ってたから、お腹ペコペコでお腹と背中がくっついちゃいそう」

 

 ミカのお腹からきゅるると音が聞こえてきました。ミカはお腹に手を当てて顔を真っ赤にします。私は気にしませんがミカは恥ずかしいと思ったのでしょう。なので聞こえなかったふりをしました。ミカが「聞いた?」と聞きたそうでしたが無視します。

 

 私はDホイール内にしまっていた防災袋から食料と水を取り出しました。ミカは目を丸くしながら防災袋の中身を覗き、「わーお」と感嘆の声を上げました。

 

「救急セットに非常用寝袋? もしかして災害時に持ってく防災バック? いっつもDホイールの中に入れているの? すっごく準備が良くない?」

「デュエリストなら遭難や異世界転移にも備えるのが常識では?」

 

 何しろデュエルモンスターズは単なるカードゲームではありません。古今東西全ての神秘をカードという形にした、いわば古の儀式の道具を再現したものです。その影響で別世界に飛ばされることも稀によくありますので。

 

「そうかな……そうかも……」

 

 どうやらキヴォトスでも似たような感じらしく、ミカは釈然としないながらも納得したようでした。

 

「食料と水は節制すれば一人で一週間生き延びられる量があります。数日間滞在するだけなら問題無いでしょう」

「二人だけなら、ね」

 

 そうミカは付け加えました。

 

 ミカが視線を向ける先は部屋の入口。完全に閉じていた筈だった扉は少し開かれています。あいにく私は科学者ですので人の気配を大して感じ取れませんが、ミカの様子から察するに誰かが扉の向こうにいるのでしょう。

 

 ミカは素早く、しかし物音を立てずに扉へ接近。勢いよく開け放ちました。

 

「うわぁっ!?」

 

 向こう側にいた者達が悲鳴を上げて尻餅をつきます。ミカの背中越しに何者なのかを覗き見たら……子どもが三名?

 

「どうしちゃう? 追い払えばいいかな?」

「彼女らの方が先にこの家屋に避難してきたのでしょう。なら邪魔するのは私達の方。宿泊費を払うのが筋です」

「うーん……先生がそう言うんだったら……」

「貴女達。大人しくするのでしたら食料と水を分け与えましょう」

 

 私は食料と水を綺麗に五等分しました。それでも大人がまる二日過ごせる量ありますから、身体の小さな子どもなら数日は保つでしょう。ただし空腹に負けて食べ尽くすかもしれませんから、一食に食べる量はあらかじめ伝えておきます。

 

 ちなみに一週間分の食料の大半は私の世界でいうカ◯リーメ◯トやス◯ッ◯ーズのようなかさばらない栄養摂取に優れたものばかり。羊羹一人一本ずつは最後のお楽しみですね。

 

「じゃあここで何が起こってるのか、簡単に説明するね」

 

 空腹が満たされたところでミカの講義が始まります。

 

「お願いします」

「その前にトリニティの成り立ちから説明しなきゃいけないんだ。私はあんまり説明上手じゃないんだけど……ちゃんと伝わるように頑張るから!」

 

 そこからのミカの説明を私なりに整理しましょう。

 

 トリニティ総合学園とはたくさんの分派が集まって出来た学校で、元々はバラバラでした。それぞれの分派が互いを敵視していて、毎日が紛争ばかりだったのです。そんな不毛な争いを止めて手を取り合おう、と総合されたのがトリニティでした。

 

 しかし、最後までその統合に反対した学園もあったのです。

 

「それが、アリウス」

 

 最後まで反対意見を覆さなかったアリウスは連合になって強大な力を持つようになったトリニティ総合学園と衝突。その大きな力でアリウスを徹底的に弾圧したのです。壊滅したアリウスの生き残りはどこかに逃げ延び、密かに再建したのでした。

 

 表舞台から姿を消したアリウスの場所をもはや誰も知らず、その存在すらも忘れ去られました。しかし今もなおアリウスがキヴォトスのどこかに生き残り続けているだろう、とミカは締めくくります。

 

「では、ここがそのアリウス分校の自治区だと?」

「本当なら衛星からも見つけられないし陸路でも行けない秘境にあるんだけど、Z-ONE先生ったらワープで飛んできちゃったから……」

 

 それは私のせいではありません。いずれかの時械神の導きでしょう。

 

「それにしても戦闘……いえ、戦争の形跡があるのが解せません。実はかつてトリニティがアリウス分校の在処を見つけ出していて、殲滅作戦が決行されたとでも?」

「ううん。この時代……今のアリウスは内戦の真っ最中。あ、私は戦争勃発のきっかけなんて知らないから」

 

 内戦……成程。では先程の襲撃者はアリウス分校の生徒ということですか。突然現れた私達が味方ではないから敵とみなして排除しようとした、と。

 

「厄介ですね……。迂闊にDホイールを走らせられません」

 

 もしこの町が戦闘区域だとしたら、下手に動けば銃弾の雨あられを浴びることになるでしょう。時間跳躍機能が作動する速度まで加速するにはもっと開けた場所に行かなくては駄目でしょう。

 

「明日一日は町全体にアリウスの部隊がどのように展開されているのかの偵察に専念しましょう。町中の道路での加速は諦めて明後日夜明け前に町を脱出、町から外れたオフロードで時間跳躍を決行します」

「りょーかい。それじゃあ明日は私が頑張っちゃうから☆」

 

 やはり私がキヴォトスに来た時代がまだ手遅れになっていない以上、過去に手を加えるわけにはいきません。この地で起こっている問題はこの地に生きる者達が解決しなければなりません。

 

 ……時を超えられる技術を持ち、時を超える神秘を持つ神の力を借りている私なら歴史を修正出来るでしょう。見捨てるのか、との指摘や非難があれば甘んじて受け入れます。

 

「今日はもう寝ましょう。明かりをつけていては外に漏れて人が中にいると分かってしまいますから」

「そうだね。うー、シャワー浴びないで寝るの何だか気持ち悪い……」

「我慢できなければウェットティッシュで気になる箇所だけ拭けばいいでしょう」

 

 防災袋に入っていた簡易寝袋を取り出し……子ども達が羨ましそうな眼差しを送ってきたので、無言で彼女達に差し出します。二つしかないのでもう一人には保温シートを渡しました。

 

 ミカにも残り一枚になった保温シートを渡します。「Z-ONE先生はどうするの?」と言われたのでレインポンチョを見せました。あいにく家の中に毛布はありませんでしたが、寒い時期でもないのでこれでも充分です。

 

 私は壁を背にして体重を預け、目を閉じました。

 子どもたちは部屋から出ていかずに私達と共に横になりました。

 ミカも文句を言いながらも背に腹は変えられずに保温シートに包まります。

 

「ではおやすみなさい」

「おやすみ。良い夢を」

「夢は……苦手ですね」




三人の子ども、一体誰でしょうか? 答えは少し後で。

◇聖園ミカ
使用デッキは【天輪】
エースモンスターは《天穹覇龍ドラゴアセンション》、《閃こう竜スターダスト》、《エンシェント・ホーリー・ワイバーン》
切り札は《■■■■■■■■■■・■■■■■》、《■■■■■■・■■■■■■■》

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