Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

120 / 195
シロコ、もう一人のシロコと死闘を繰り広げる

 ◆三人称視点◆

 

 もう一人のシロコと対策委員会5名の死闘は、A.R.O.N.Aの想定と異なりアビドス生徒側が善戦していた。シロコ時代から遥かに実力を増したもう一人のシロコならホシノ込みでも圧倒できると踏んでいたが、予想を覆された形だ。

 

"ホシノ! 盾で防御しつつ前進して!"

「私が耐えてる間に、攻撃して」

"シロコ! 大物釣って防御力低下!"

「ん、狙いは正確……逃さない……!」

"セリカはそのタイミングで波乗りしてバナナボートロケット!"

「飛んでくわよ! 避けなくていいから!」

 

 "先生"の指示が的確なのはもう一人のシロコの方も同じ。もう一人のシロコは行方不明になったセリカ以外のアビドス全員の武装を所持しており、技能も一通り使える。なのでこちらの世界のアビドス側がどのような手に出ても対処可能の筈だったが、苦戦を強いられているのが現実だ。

 

「ん、シロコ、行く」

"ノノミ! 応戦して!"

「ノノミ~行きま~す♪」

 

 そして実際に比較してようやくA.R.O.N.Aも理解した。同じように攻撃したとしても、もう一人のシロコとアビドスの皆では違うのだ、と。

 

 例えばノノミがマシンガンを乱射する際、ノノミは身体の軸心も銃口も一切ブレずに安定しているのだが、もう一人のシロコは身体のブレを身体能力で強引に押さえ込み、銃口をわずかにブレさせながら乱射しているのだ。

 

「ん、タイミングはばっちり」

"アヤネ! ホシノに回復を!"

「はい! タイミングばっちりですね!」

 

 アヤネの救急箱投下にしても敵の妨害をかいくぐるドローンの操縦技術、そして戦闘中の盾役の呼吸に合わせて上手く投下するタイミング、どれももう一人のシロコは及ばない。

 

 おまけにアビドス全員が個人の戦闘に注力しているのもあってもう一人のシロコはデュエルモンスターズをプレイングする暇が無かった。隙を伺ってデッキに手を伸ばそうとすると即座にホシノに間合いをつめてくるため、断念せざるを得なかった。

 

 アビドス一行は結束の力でもう一人のシロコに立ち向かい、彼女を確実に追い詰めていた。

 

「なら火力支援で行く」

"《TGブレード・ガンナー》で攻撃! シュート・ブレード!"

 

 もう一人のシロコがアヤネの軍用ヘリに支援要請をしたところ、出現した途端に"先生"が召喚していたシンクロモンスターの集中射撃を受けて爆散、墜落して役目を果たせずに終わる。

 

 もう一人のシロコは決して行わないが、もし彼女が"先生"へのダイレクトアタックを仕掛けた場合は《BF-アーマード・ウィング》が盾役になることを想定している。だからユカリは《フルアーマード・ウィング》ではなくこちらを選択している。

 

 そして"先生"は2体のシンクロモンスターでもう一人のシロコを攻撃しようとは決してしなかった。かつプレナパテスやA.R.O.N.Aにも攻撃していない。あくまでシロコたちへの指示に専念し、もう一人のシロコに勝とうとしていた。

 

 そこで、もう一人のシロコは起死回生の一手を打つため、大きく飛び退いた。

 

「私は永続罠《光のピラミッド》の効果でレベル10《アンドロ・スフィンクス》とレベル10《スフィンクス・テーレイア》を特殊召喚して……」

"あっ! シロコ、そんな急に飛び退いたら……!"

 

 "先生"からの警告も時すでに遅し。もう一人のシロコは更に加速しようと床を蹴ろうとしたが、けつまずいて派手に転んだ。盛大な音を立てて身体の前面と顔を床に打ち付けて、数秒の間全く動けないほどの痛みが彼女を襲う。

 

 あまりの光景にさすがにホシノもシロコも言葉を失う。本来なら絶好の機会とばかりに追撃すべきなのだが、もう一人のシロコが起き上がるのを待つ。

 

 ようやく起き上がったもう一人のシロコだったが、漆黒のドレスに覆われていない露出した顔や胸元が紅くなっている。恥ずかしさと悔しさで若干涙目になっているのは触れない方がいいだろう。

 

"仕切り直されたら困るから永続魔法《つまずき》を発動してたんだ。まさかもう一人のシロコ本人が引っかかるとは予想してなくて……ごめん"

「ん……謝らなくていい」

「そうだよ先生。引っかかったでぶシロコが悪いんだから」

「その通りだけどよわシロコに言われるとムカつく」

 

 もう一人のシロコは引き続き戦う気満々だが、このままでは負けてしまうかもしれない。A.R.O.N.Aはちらりとプレナパテスを横目見るが、プレナパテスは黙したまま動こうとしない。もう一人のシロコが虚妄のサンクトゥムを顕現させる時間までは粘ると計算しているのだろうか。

 

 その時、「ナラム・シンの王座」に警告音が鳴り響いた。何事かとシロコたちはうろたえたが、一番動揺したのはA.R.O.N.Aだ。セキュリティシステムがリオたちの手でダウンさせられたからだ。

 

 復旧しようにも平行世界との同期は多次元エンジンがZ-ONEのIDでロックされているせいで不可能。修理ドローンを派遣したところで再起動にこぎつけるには時間が足りない。もはやこの作戦の間は諦めるしかなかった。

 

 だが今更セキュリティが無力化されたところで箱舟内に跋扈する色彩の尖兵が消えることはない。「ナラム・シンの王座」はスタンドアローン。なら影響は小規模に留まるだろう、とA.R.O.N.Aは早々に切り替えたが、これがいけなかった。

 

「《光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ》を装備したアリスの効果を発動します!」

 

 A.R.O.N.A.は「ウトナピシュティムの本船」のコントロールを得たことで船のリソースを虚妄のサンクトゥム再出現のプロセスのため活用している。つまり「ウトナピシュティムの本船」とアクセスし続けている。

 

 そんな中、セキュリティが無効化されて最下層の中継端末に到達した美食研究会が「中継点」を破壊しようとしたが、そこに現れたのはゲーム開発部一行だった。アリスがケイの補助を受けて中継端末に接続、A.R.O.N.Aに逆にハッキングを仕掛けたのだった。

 

「「アトラ・ハシースの箱舟」はシンクロモンスターです! 誰が何を言おうとシンクロモンスターなんです!」

「は? 一体何を言って……」

「ですからアリスはシーフにジョブチェンジして、「アトラ・ハシースの箱舟」をアリスのものにします!」

「!? しま……!」

「シンクロ・アブソープション!」

 

 サイバースペースの遠く彼方から伸びてきた光の縄が《アトラ・ハシースの箱舟》のカードを拘束、引き抜く。A.R.O.N.Aが必死に手を伸ばしてもカードに手が届かず、「アトラ・ハシースの箱舟」はアリスに装備される。

 

 すなわち、「アトラ・ハシースの箱舟」に装備カード状態で装備してコントロールを得ていた「ウトナピシュティムの本船」もまた破壊されてアリスの墓地へと戻ってしまう。

 

 ここに虚妄のサンクトゥム再出現は失敗に終わった。

 

 更にコントロール権を取り戻したことでヒマリやヴェリタス部員が「アトラ・ハシースの箱舟」の自爆シーケンスを作動。箱舟をカード化して無力化する当初の計画を続行させた。

 

 乗組員は直ちに退避するよう箱舟内に警告音が鳴り響く。退避する時間を充分に確保するためか、カウントダウンの数値は3桁秒はある。

 しかし箱舟に乗り込んだが退避するだけならまだしも、もう一人のシロコやプレナパテスとの決着には余裕がない。

 

「……そっか。時間稼ぎ。みんながやり遂げるって信じてたんだ」

"みんなを信じてるからね"

「そう。私一人の力が及ばなくたっていい。みんなとの絆パワーで勝てばいいんだから」

「絆パワー、ね……」

"うん、もうすぐみんなが来てくれるよ"

 

 コントロール権を失っていてもまだA.R.O.N.Aは「アトラ・ハシースの箱舟」内、それも「ナラム・シンの王座」にいる。であれば「ウトナピシュティムの本船」への再アクセスまたは多次元エンジン再起動の対抗策を講じれば――、

 

「……いや、必要ない」

 

 A.R.O.N.Aが演算に処理を裂こうとしたところ、もう一人のシロコに止められた。彼女は過去を懐かしむように"先生"を、そして過去を振り払うようにプレナパテスを見つめ、やがて"先生"に銃口を向けた。

 

「"先生"なら何度だって危機を乗り越える。みんなと力を合わせて立ち向かってくる。"先生"はそうやって、今まで何度も奇跡を生み出してきたから」

"シロコ……"

「なら、最初に"先生"を始末すればいい。そうしたらいくらでもまたやり直せる。そう、"先生"さえいなければ……全部、崩れるから」

 

 その言葉はテフヌトから事情を聞いている"先生"にとって、まるで自虐に聞こえてならなかった。"先生"が傷ついて倒れたから自分たちのキヴォトスは滅んでしまったんだ、と。

 

「だから、私たちの力を全てぶつける」

 

 もう一人のシロコはフィールドに出しっぱなしにしていたレベル10の《アンドロ・スフィンクス》と《スフィンクス・テーレイア》でオーバーレイネットワークを構築。ランク10の《エーテリック・ホルス》をエクシーズ召喚する。

 

 そして、これまで静観していたプレナパテスが動き出す。

 

 プレナパテスが衣から出した腕にはD・パッドが装着されていた。骨と皮だけのように痩せこけてバンドのサイズが合わなくなったからか、包帯で無理に縛り付けて固定されている。

 

"……《ガガガガンバラナイト》を特殊召喚。効果で《ガガガガール》を特殊召喚"

 

 プレナパテスが召喚した「オノマト」モンスターは"先生"も愛用するモンスターだが、その姿は豹変していた。その変わりようは"先生"にも覚えがある。アビドス砂漠でビナーを相手していた亡霊のような少女が召喚した「アマゾネス」モンスターのように、生気を失ったアンデット風になっているのだ。

 

"……レベル4の《ガガガガンバラナイト》と《ガガガガール》でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚"

 

 "先生"なら希望皇ホープを出すものだが、ホープもまた反転した状態なのだろうか? 実際に相対したシロコを除く対策委員会一同と"先生"は見たいような見たくないような複雑な気分に駆られたが……、

 

"……現れろNo.98。《絶望皇ホープレス》"

 

 現実は更に残酷だった。




◇プレナパテス
使用デッキは"先生"と同じく【オノマト】だが、全員色彩の影響を受けて変質している。
エースモンスターは《No.98絶望皇ホープレス》。これは"■■"に渡されたカード
切り札は《No.XXインフィニティ・ダークホープ》。これは元からプレ先のカードで、彼のデッキのモンスターで唯一変質していない。
「希望皇ホープ」各種は色彩の影響を受ける前にA.R.O.N.Aに預けたので未所持

ご意見、ご感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。