"先生"たち、"絶望"について情報共有する
虚妄のサンクトゥム出現と色彩の尖兵出現による甚大な被害の復旧作業は各所で行われています。D.U.シラトリ区もその一つ。ペロロジラ退治のため特に被害の規模が大きかったものの、既に摩天楼が幾つも建設中。活気溢れる姿を取り戻しつつあります。
シャーレではゼアル先生赴任にあたって執務室内のレイアウトをどうしようか、それとも部屋を分けるべきか、と議論がかわされましたが、結局3人一緒の部屋で仕事をすることになりました。とはいえ執務室内の掃除と整理に追われた一方で仕事机とパソコンを準備しただけでしたか。
もう一人のシロコとテフヌトはアビドス高等学校の生徒として編入させました。戸籍がない云々は連邦生徒会とシャーレの権限で何とでもなりますし、アビドス側も大歓迎状態だったので問題なしです。肝心のもう一人のシロコとテフヌトはかなり渋っていましたが……、
"ちゃんと学校に通わないと駄目だよ。2人とも生徒なんだから"
と、ゼアル先生に言われたので通うようにしているようです。
懸念点が一つありまして、同じ世界に同一の存在が2人いて世界が修正をかけてこないかと心配でしたが、今のところゼアル先生やもう一人のシロコ、そしてテフヌトの前に抑止の守護者が現れる兆候も、世界からはじき出される現象も発生していません。
これはおそらく、既にゼアル先生たちがこちらの"先生"たちとは別の存在となってしまったからかと。ゼアル先生は精霊に、もう一人のシロコは色彩、テフヌトは邪神の影響を受けて変質してしまっています。しかしこれはあくまで仮説。証明出来るまでは観察を続けた方がいいでしょう。
ゼアル先生が赴任するにあたって業務の割り振りをどうするか話し合いましたが、結局は各々で担当を決めるのではなく今まで通り3人で処理していく方針としました。誰か必ずシャーレの執務室に残る、それ以外はゼアル先生も送ってきたシャーレでの生活模様と同じようです。
「シャーレの先生として赴任されるにあたり、デュエルディスクとデッキも支給します」
"いや、私は精霊になってしまったから、もう自分ではデュエルしないよ。どうしてもって時はシロコにデュエルしてもらうから"
「……。念の為お聞きしますが、要りますか?」
「ん、デッキは自分のと"先生"のを混ぜて使うからいい。デュエルディスクは"先生"のと同じ機種使いたいからD・パッドを貰う」
「ではケースに入ったこちらを使ってください」
ホープ・ゼアルになったゼアル先生は自分のデッキをもう一人のシロコにあげてしまいました。そしてA.R.O.N.A改めプラナに預けていた各種「ホープ」カードもシロコに託します。早速もう一人のシロコは応接用のテーブルの上にカードを広げてデッキの再構築を初めました。
"先生"相手に切り札として使った《インフィニティ・ダークホープ》は色彩の影響に染められたホープの形態かと思っていましたが、"ダークヒーローみたいで格好いいよね"とゼアル先生が自分でデッキに入れた切り札だそうです。
"《絶望皇ホープレス》は、私がプレナパテスになった後、"彼女"から与えられた"
一方、《絶望皇ホープレス》入手の経緯は違いました。
""彼女"?"
""彼女"は連邦生徒会長と世界をかけて決闘をしているらしい。そしてその決闘はこの世界だけじゃなく、私たちの世界を含めてでもなく、あらゆる世界にまたがって何度も行われているんだとか"
"?? どういうこと?"
"私にもよく分からない。少なくとも"彼女"が何かしてキヴォトスが滅ぶことはなさそうなんだ。けれど……"彼女"を倒さなきゃいけないのは分かる"
ゼアル先生が私たちに見せたカードは白紙のエクシーズカード。どうやらこれが元々《絶望皇ホープレス》だったらしく、プレナパテスとしての役目を終えたので書き換わったのでしょうか。
「エラー……」
連邦生徒会長と決闘し続け、世界から希望が潰えた瞬間に「青春の世界のアーカイブ化」を行う絶望の化身。そして私をこのキヴォトスに導いた存在。そして何より気になるのは……私が会った時のエラーの姿です。
エラーの外見は、連邦生徒会長だったのですから。
考えられる理由はざっと3つあります。
1つ、連邦生徒会長がエラーに洗脳されている。エラーとの果てしない決闘の果て、絶望の連続で心の隙をつかれたのだとしたら? 時折ヘイローが出現したのも連邦生徒会長としての自我を一瞬だけ取り戻したから?
1つ、連邦生徒会長がエラーに肉体を乗っ取られた。この場合も要因は洗脳パターンと似たようなものでしょう。おそらくはゼアル先生の世界が捻れて歪んだ先の終着点に行ってしまった後の出来事かと。
1つ、そもそも連邦生徒会長が諸悪の根源。海岸の砂浜で城やトンネルを作りながらも最後は壊してしまうのと同じようにキヴォトスを何度も作っては壊しを繰り返し、希望と絶望を搾取しているとしたら。もはや邪神と呼ぶべきでしょう。
"そうなんだ……。てっきりユウセイも連邦生徒会から推薦されたのだとばかり思ってたよ"
"「絶望」……。ゲマトリアも認識していたのか"
この際なのでエラーについて洗いざらい明かしました。こうなってはもはや私一人の問題では済まされませんし、私だけで対処可能な領分を超えています。情報を共有することで事前対策、いざ異変に直面した際の心構えも出来るでしょう。
そして、おそらく連邦生徒会長もエラーも何回かやり直しているのでしょう。平行世界を渡り歩いている線が濃厚そうですが、過去の自分に今の自分の記憶を上書きする疑似タイムトリップ、または世界を書き換えてリセットしているなど、手段は色々と考えられます。
そう言えば、連邦生徒会長を幼くすると丁度アロナのアバターにそっくりになるようなのです。ゼアル先生側ではシッテムの箱の常駐AIがプラナで連邦生徒会長は健在。一方こちら側ではアロナがプラナの代わりを務めて連邦生徒会長は行方不明になっています。
"連邦生徒会長がエラーに乗っ取られる前に自分のデータをプラナに移してアロナになった、みたいな?"
"【ヌメロン】デッキは私たちのキヴォトスだと連邦生徒会長が使ってたからね。ヌメロン・コードへのアクセスもあの子じゃないと無理だった。もしかしたらエラーに負けそうだったからアロナに託したのかもしれないね"
「それで、アロナは何か連邦生徒会長について記憶しているのですか?」
私が問いかけるもシッテムの箱からソリッドビジョン体が出現する様子は無し。"先生"たちにしか聞こえない音声を発したらしいのですが、覚えてないの一点張りなのだとか。さすがに強引に聞き出すことも出来ません。
なら視点を変えて、ゼアル先生側では連邦生徒会長はどのような最後を迎えたのか、を調べるとしましょう。不幸中の幸いでしたがプラナがその時のやり取りを記録していたので、映像を再生してもらいました。
"シロコ。辛かったら仮眠室で休んでてもいいよ"
「大丈夫。過去とはちゃんと向き合う。それでもう二度と"先生"を悲しませないし苦しませない」
場所はサンクトゥムタワーでしょうか。もう一人のシロコが立ちふさがるヴァルキューレや連邦生徒会の生徒を一方的に蹂躙し、その後ろをプレナパテスとなった"先生"が付いていきます。
カヤが《極神皇ロキ》を召喚したのは驚きましたが、もう一人のシロコの敵ではありませんでした。【アルカナフォース】を駆使したアユムも、【U.A.】で戦ったハイネも敗れました。最後に立ちふさがったリンも多彩なドラゴン族シンクロモンスターで応戦しましたが、プレナパテスの召喚した《インフィニティ・ダークホープ》に両断され、虫の息となりました。
そして、生徒会長室に突入したもう一人のシロコとプレナパテスは連邦生徒会長……いえ、連邦生徒会長の姿をした何かに拍手で出迎えられたのです。背後の窓から見下ろすD.U.区が地獄絵図となっているにも関わらず、彼女……エラーは歓喜で打ち震えていました。
「ようこそ、アヌビスとプレナパテス。それとも今も"先生"、そしてシロコちゃんって呼んだ方が良かった?」
「連邦生徒会長……じゃない? あなたは誰?」
「私は「エラー」。絶望の化身」
エラーは自分のデッキからカードを一枚引き抜くと、それをプレナパテスへと放り投げました。もう一人のシロコは危ないからと銃で撃ち落とそうとするものの、プレナパテスがシロコを制してカードを受け取ります。
白紙のエクシーズカードはプレナパテスが見た途端、《No.98絶望皇ホープレス》へと書き換わりました。プレナパテスがD・パッドにセットすると、闇に染まったホープが出現します。
「"先生"が色彩の嚮導者になってくれたおかげで私は連邦生徒会長との決闘に勝利目前です。彼女の身も心も、ヌメロン・コードにアクセスできる能力も、彼女の掌握するキヴォトスも私のものになります。ありがとうございます、せ・ん・せ・い」
「……あなたがキヴォトスで発生する異変の元凶?」
「違いますよ。私は手を出さない。それが彼女と決めたルールですから。貴女達は勝手に滅亡して、勝手に絶望に染まって、勝手に私の口に飛び込んでくるんです。嗚呼、キヴォトスとはなんて素晴らしい世界なんでしょうね」
プレナパテスは僅かな挙動でホープレスに命令。ホープレスがエラーへと斬りかかります。それに対してエラーは応戦も逃げもせず、諸手を上げて攻撃を受け入れようとしているではありませんか。
「希望を託したはずの"先生"の手で殺される。これで今度こそ彼女は絶望に染まりきって私の完全勝利です!」
「……!? "先生"、ちょっと待――」
様子がおかしいことに気づいたもう一人のシロコが声を上げるも、時既に遅し。ホープレスの剣がエラーの……いえ、連邦生徒会長の身体を斜めに両断。上半身が床に倒れ伏し、おびただしい量の血が水たまりを作っていきます。
そんな命の火が消えかかる連邦生徒会長の頭に、プレナパテスたちが部屋に入って初めてヘイローが浮かびました。
連邦生徒会長は最後の力を振り絞って胸ポケットから4枚のカードを取り、軽く放りました。それで何か起こるわけでもなく床に落ちる……と思いきや、光となって窓を割り、外から散り散りになって飛んでいきました。
「かっとビングです……"先生"……」
その言葉を最後に連邦生徒会長は事切れました。
4枚のカードがゼアル先生の精霊化に繋がる「ホープ・ゼアル」だったのを考えてもまだ連邦生徒会長は希望を諦めていません。となれば連邦生徒会長は今もなおエラーと戦っているのでしょう。キヴォトスの未来をかけて。
そして連邦生徒会長は舞台上から去り、エラーは引き続き観客席から見守るばかり。とすればこの世界がどうなるかはキヴォトスで生活する生徒、そしてシャーレの先生の肩にかかっています。
「これで私たちの世界での連邦生徒会長最後の記録は以上に……」
「エラー……!」
プラナが見せた過去の映像を見て様々な感情がこもった声を発するアロナ。私にも聞こえるぐらいですからよほどの思いを抱えているのでしょう。ソリッドビジョン体で姿を見せたアロナの目に宿るのは不屈の闘志でした。
「私も"先生"も決して負けはしません! 私たちの青春は必ず守りますから!」
それはこの場にいた私たちの総意でした。
アロナの宣言で改めて私たちは負けない決意を明確にしたのです。
エラー、あなたの野望は必ず食い止めます。
そして……どうやら"先生"もゼアル先生も同じ意志のようです。
エラーとたった一人で戦い続ける連邦生徒会長……アロナ。
あなたも我々シャーレの先生が守るべき生徒なのをお忘れなく。
◇七神リン
使用デッキは【■■■】
エースモンスターは《太陽龍インティ》、《月影龍クイラ》、《■■■》、《■■■ ■■■■■■・■■■■■■》、《■■■ ■■■■・■■■・■■■■》
切り札は《■■■ **************》、《■■■■ ■■■■■■■・■■■■■■■》
エクストラデッキは全てドラゴン族シンクロモンスターで占められている。
◇岩櫃アユム
使用デッキは【アルカナフォース】
エースモンスターは《アルカナフォースXXI-THE WORLD》
切り札は3体のアルカナフォースEX
◇◯◯ハイネ
使用デッキは【U.A.(ウルトラアスリート)】
エースモンスター兼切り札は《U.A.フィールドゼネラル》と《U.A.プレイングマネージャー》
ご意見、ご感想お待ちしています。