Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ミカ、アクセルシンクロする

 ◆三人称視点◆

 

「やだ~! 遅刻遅刻ー!」

 

 一方、トリニティとD.U.を結ぶハイウェイでは今日のシャーレ当番であるミカがDホイールを飛ばしていた。明日シャーレの当番だとワクワクしていたら興奮して眠れず、朝上手く起きれなかったせいだ。

 

 いっそモンスターに乗ってひとっ飛びするか、とも考えたが、ミカはZ-ONEに感化されて一式揃えたものの埃を被りつつあったDホイールがあるのを思い出し、車庫から引っ張り出していざD.U.に向けて出発した。

 

 トリニティからD.U.なら普通に考えれば高速鉄道に乗るのが最適解だが、トリニティとD.U.を結ぶハイウェイはライディングデュエル専用レーンが構築出来る。なので時速300km以上で飛ばしても全く問題ない。

 

「ヴァルキューレ交通局です! そこのDホイーラー、ライディングデュエルでもない速度超過は違反ですよ!」

「うん、だからあなたに相手になってもらうね」

 

 そのためにわざとスピード違反してヴァルキューレの生徒を誘い出し、取り締まりを返り討ちにすれば良い。これで何の違法行為も無く法定速度という限界を超えたスピードで突き抜けられるわけだ。

 

 一方のヴァルキューレ生。抵抗自体は想定の範囲内だったが、相手はトリニティ屈指の実力者たる聖園ミカ。果たして最強の一角に自分で勝てるだろうか、と不安が脳裏によぎる。

 

 しかし取り締まらない選択肢はない。それがキヴォトスの平和のためヴァルキューレに進学した自分の使命だから。

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!」」

 

 こうしてミカとヴァルキューレ生のライディングデュエルが開始された。

 こちらもミカの想定通りに。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「本官はレベル4《エインヘリアル・トークン》2体にレベル2《極星天ヴァルキュリア》をチューニングします!」

「またぁ? ヴァルキューレの生徒ってそのモンスター好きなんだね」

「北辰の空にありて、全知全能を司る皇よ! 今こそ、星界の神々を束ね、その威光を示しなさい! シンクロ召喚!」

 

 ヴァルキューレの生徒が召喚した《極星天ヴァルキュリア》は手札から捨てられた「極星」モンスター2体を糧としてトークンを生成。ヴァルキュリアが剣を振るうとシンクロの輪が2つ形成させる。そして回転する輪にトークンが吸い込まれると、天に向けて光の柱が立ち上った。

 

「天地神明を統べよ! 最高神、《極神聖帝オーディン》!」

 

 そして、雲まで届かんばかりの超巨大な賢者がゆっくりと天から降臨し、着地した。遥か遠くにいる筈の《オーディン》の姿がまるで山のようになってミカたちを見下ろす。

 

 無論、ヴァルキューレの生徒が召喚する《オーディン》はレベル10天使族の超大型シンクロモンスターだ。カンナが召喚した幻神獣族、すなわち星界の三極神として十全の力は発揮出来ない。それがキヴォトスの共通認識だ。

 

 その筈だが……ミカが対峙する目の前の《オーディン》から感じられるのは、天を、地を、そして生きとし生ける者全てを超越する圧倒的な存在感。Z-ONEの「時械神」とは違った迫力に、ミカは思わず息を呑み、震えた手を抑え込んだ。

 

「《極神聖帝オーディン》の効果を発動します! 神はターン終了時まで魔法・罠カードの効果を受けません! インフルエンス・オブ・ルーン!」

「前から思ってたけどさ、三幻神とか三幻魔と比べて効果しょぼくない? これじゃあ本物の神様も大したことないかもね」

「本官も激しく同意しますがそれでもヴァルキューレの象徴ですので! 《極神聖帝オーディン》で《閃珖竜スターダスト》に攻撃します!」

「罠カード《シンクロ・ストライカー・ユニット》を発動して攻撃力を1,000上げるから。それから《閃珖竜スターダスト》の効果を発動するね。戦闘・効果では破壊されないよ」

「ですがダメージは受けてもらいますよ! ヘヴンズ・ジャッジメント!」

 

 《オーディン》がその巨大な杖を《スターダスト》に向けて突き出した。《スターダスト》は光のバリアを展開して防御するも、錐揉み状に弾き飛ばされる。それでも破壊されることなく体勢を立て直し、再びミカの傍を飛び続ける。

 

「私のターン。ドロー☆ んー、どうしよっかなー」

 

 ミカはD.U.に着くまでライディングデュエルを長引かせたかったため、さほど手札を消費していない。なので手札に攻撃力が依存する《ドラゴアセンション》をシンクロ召喚すれば容易く《オーディン》を撃破出来るのだが……、

 

「ワンパターンだと飽きちゃうもんね。《天輪の葬送士》を召喚して効果発動。蘇生させたレベル1《天輪の剣士》にレベル1《天輪の葬送士》をチューニング。シンクロ召喚、《天輪の双星道士》」

「合計レベルは10……来ますか、ミカさんのエースモンスター、《ドラゴアセンション》が……!」

「あ、やっぱり警戒してるんだ。でも残念、期待には答えてあげないよ」

 

 ミカは宣言と同時にDホイールを加速させる。まるで対戦相手のヴァルキューレの生徒を置いてきぼりに、従えるシンクロモンスターと共に光の彼方へ突き抜けるのではないかと思うほどに。

 

「透き通る世界を見通す境地、クリアマインド!」

「えっ!? クリアマインド!?」

 

 既にこの頃にはミレニアムの一部生徒が行えるアクセルシンクロについての情報がキヴォトスに出回っており、その際にどんな現象が起こるかも記録されている。しかしトリニティのミカも使い手だとはデータに無かった。

 

「レベル8《閃珖竜スターダスト》にレベル2シンクロチューナー《天輪の双星道士》をチューニング! 集いし想いが絆と共にこの世界を満たす。光さす道になれ!」

 

 《天輪の双星道士》が同調を促す光の輪となり、《閃珖竜スターダスト》がくぐり抜ける。しかし通常のシンクロ召喚で見られる非チューナー側がレベル分の星になる演出は発生しない。光の竜はミカと共に加速が最高潮に達する。

 

「アクセル・シンクロー!」

「き、消えた……!? 一体どこに……?」

 

 ミカの姿が光となって彼方へと消え、次の瞬間にはヴァルキューレの生徒を後ろから凄まじい速度で追い抜いていく。彼女の傍らで飛ぶのは《スターダスト》ではなく、黄金色に輝く新たな竜だった。

 

「生来して、《真閃珖竜スターダスト・クロニクル》!」

 

 《スターダスト・クロニクル》が雄叫びをあげた。体の大きさには歴然とした差があったが、それでもアクセルシンクロモンスターの《スターダスト・クロニクル》は《オーディン》に存在感で負けていなかった。

 

「バトルだよ! 《真閃珖竜スターダスト・クロニクル》で《極神聖帝オーディン》に攻撃するね」

「《スターダスト・クロニクル》にどんな効果があるのか知りませんが、《オーディン》の攻撃力は4,000で圧倒していますよ! 《オーディン》でそのドラゴンを返り討ちにします!」

 

 《スターダスト・クロニクル》は口から光線を発するが、《オーディン》が突き出す杖に弾かれてしまい、逆に杖が《スターダスト・クロニクル》に直撃。先程の《スターダスト》と同じように弾き飛ばされてしまう。しかし破壊されずに健在なのも《スターダスト》と同じだった。

 

「残念、進化前と同じように破壊耐性持ちでしたか……」

「リバースカードオープン、罠カード《シンクロ・ヘイロー》を発動するよ。相手モンスターを破壊できなかったから、《スターダスト・クロニクル》の攻撃力を倍にしてもう一度攻撃するね」

「えっ!? そんなぁ……!」

「これで《スターダスト・クロニクル》の攻撃力は6,000だよ。いっけー《スターダスト・クロニクル》! シューティング・シャイン・ブラスト!」

 

 《スターダスト・クロニクル》が吠え、再び光の奔流が放たれた。それは《オーディン》の身体を直撃し、大きく穴を開ける。《オーディン》の身体から光が溢れ出て、やがて戦闘破壊された。

 

「きゃあぁぁっ!」

 

 その余波がヴァルキューレの生徒に襲いかかり、危うくクラッシュしかかるのをかろうじてハンドル操縦で持ちこたえる。

 

「で、でも……神はエンドフェイズに蘇りますから!」

「それはあなたのライフポイントが残ってたらの話でしょう?」

「……え?」

「罠カード《シンクロ・デストラクター》を発動。戦闘破壊したシンクロモンスター《オーディン》の攻撃力分のダメージを与えるね」

「なっ……! そんなぁ……!」

 

 ヴァルキューレの生徒は《オーディン》の前にも《トール》を召喚したことで手札消費が激しく、もはや止めの一撃になるカードの発動に対して対抗手段が残されていなかった。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! スピード違反であってもこのキヴォトスでの犯罪は許されな……うわああっ!」

 

 効果ダメージを受けたヴァルキューレの生徒、今日だけたまたま人手不足で交通局の助っ人に駆り出された生活安全局のキリノは、効果ダメージを受けてライフポイントが尽き、減速してコースから外れていった。

 

 ライディングデュエルに勝利したミカの目の前にはD.U.区が見えてきており、これ以上速度を出し続けなくてもいいと判断し、法定速度までスピードを落とした。同時にハイウェイ上のデュエルレーンも収納されていく。

 

「星界の三極神、かぁ。ただのモンスターであんな迫力なんだから、本物はやっぱ凄いのかな?」

 

 と素直な感想をミカは漏らしたが、対戦相手だったミカも、そして召喚した当の本人であるキリノも知らない。キリノが無自覚のうちに《極神聖帝オーディン》だけは幻神獣族として召喚していたことに。




◇中務キリノ
職務中の使用デッキは極星天ベースの【極星】
エースモンスター兼切り札は《極神聖帝オーディン》他星界の三極神3体。
なお、《オーディン》のみ神として召喚できることを本人は全く自覚していない。
彼女個人が使用するデッキは別にある。

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