Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ユキノ、ミヤコにSRT再建の方針を語る

 ◆三人称視点◆

 

「ホールドアップ! SRT特殊学園だ!」

 

 カヤの政策への反発から増加する重犯罪。カイザーPMCは契約に基づく業務しか行わず、ヴァルキューレは公安局が機能不全中。なので野放しになっているのが現状……ではなかった。

 

 民間軍事会社「SRT特殊学園」。ユキノたちFOX小隊が中心となって設立された会社である。社員は皆元SRTの生徒たち。半分以上がヴァルキューレに留学の形で転籍しており、残りは別の学園に転校していたり無配属だったりと、様々だ。

 

 主な業務は警備や交通整理などのヴァルキューレの仕事の補助。そしてヴァルキューレの手に負えない重犯罪や騒動の鎮圧を請け負っている。装備一式は元々SRTのものだった最新装備をシャーレが保管して借用する形を取っている。

 

 当然SRTは休校になっているのでSRTとしての治安維持権は無い。しかしヴァルキューレに籍を置いているため、ヴァルキューレの名のもとに業務にあたっている、との名目が成立する。

 

 「SRT特殊学園」としての作戦行動を、多少強引な解釈だが、トリニティの正義実現委員会やミレニアムのC&Cのようなヴァルキューレの委員会活動だと言い張っているわけだ。

 

「制圧完了。確保した容疑者を輸送するよう手配してくれ」

「了解」

 

 会社創設時はFOX小隊だけだったこの「SRT特殊学園」も次第に他のSRT生徒が参加するようになった。やっていることはあくまでヴァルキューレの延長線上でしかないが、それでもヴァルキューレで正義を執行出来ないもどかしさから逃れられるため、参加を申し出る生徒が続出した。

 

 その中にはRABBIT小隊の姿もあった。

 

 きっかけはFOX小隊との再会だった。

 

 Z-ONEの機転でSRTが廃校ではなく休校となり、FOX小隊が民間軍事会社を起業した、とはRABBIT小隊一同も風の噂で耳にしていたが、そんな先輩たちにミヤコたちは合流を促されたのだった。

 

「全員、長きに渡るキャンプで疲弊しているのでは?」

「それ、は……」

「これ以上、貴官がSRT特殊学園再建のために責任を追う必要はない。あとは我々に委ねて、各小隊員はSRTの一員としての本分に専念するように」

 

 RABBI小隊はSRT閉校への抗議として子ウサギ公園を不法占拠している。SRTの武装を勝手に持ち出し、余分な武装を売り払い、訓練や治安維持活動どころか日々の生活にも苦労している始末だ。

 

 自分たちがSRTの隊員として活動をしていれば一般市民にも理解者が増え、やがてSRT再建に賛同する声が増えてくる。そう思っての地道な活動だったが、「それが効果があるのか?」と問われたら「それしかやれることがない」としか答えようがない。何故ならRABBIT小隊は高等武官ではないのだから。

 

 迷った末にRABBIT小隊は「SRT特殊学園」への合流を決めた。ユキノがSRT在籍時からは想像もつかない提案、「気に入らなければ子ウサギ公園に戻っても良い」と言ってきたのが決め手になった。

 

「任務ご苦労だった、ミヤコ小隊長」

「恐縮です、ユキノ隊長」

 

 ヴァルキューレへの引き継ぎを終えて撤収準備に入ったSRT各員。ミヤコたちも各々作業に従事していたが、そんなミヤコにユキノが声をかける。ニコたち他のFOX小隊員はサキたち他のRABBIT小隊と話し始める中、ユキノはミヤコに面と向かう。

 

「本作戦に関するRABBIT小隊の評価は帰還してからするとして、率直な感想を聞かせてくれ」

「感想、と言いますと?」

「この「SRT特殊学園」をどう思うか、だ。遠慮せずに、包み隠さずに」

「……やはり元のSRTとは少し違う。それが私の率直な感想です」

 

 だろうな、と呟いてユキノは仮設作戦本部のパイプ椅子と机を畳んで車に運ぶ。ユキノもまた仮設作戦本部のテントを手際よく畳んでいく。

 

「そう思うのも無理はない。SRTは連邦生徒会長直属の超法規的機関だったが、その権利は失ったままだ。あくまでヴァルキューレの部活としてその権限を最大限に活用しているに過ぎないからな」

「それで各学園の自治区に派遣されないのですね」

「今は「SRT特殊学園」の名で実績を積む段階だ。ミヤコ小隊長らがやっていたことをより効率的に行っているわけだな」

「ふと思ったのですが、ユキノ隊長はカヤ防衛室長と仲が良かったと記憶しています。あの人が連邦生徒会長代行になったのなら、SRT再建も叶うのでは……」

 

 ミヤコが言い切る前にユキノは顔を横に振って否定を示した。

 

「防衛室長には期待できない。彼女の優先事項ははっきりしている。例え私たちが彼女の私兵になって働いたところで、先送りされて都合よく使い回されるだけだろう。本当にSRTを再建してくれるかは分からない」

「……驚きました」

 

 そんなユキノに対してミヤコは目を丸くする。

 

「どうした?」

「ユキノ隊長、以前は「武器に意志は不要。使われるためにあれば良い」みたいな考えでしたよね。一体どのような心境の変化が?」

 

 ユキノは作業する手を止め、つい昨日のようで遠い昔のような過去を振り返る。

 

「……SRT存廃の危機、それからエデン条約での作戦で考えさせられた。私たちは……SRTほどの武力なら、ふとしたきっかけで正義にも悪にもなる」

 

 サオリがエデン条約の件で連邦生徒会にSRT派遣を依頼していなければFOX小隊は連邦生徒会を襲撃していた。連邦生徒会の警備員にSRTを止められる者などいない。きっと多くの怪我人が出たことあろう。

 

 もしそうなっていたら今頃自分達は矯正局に入れられていたのだろうか?

 それとも指名手配者としてキヴォトス中を逃げ回っていただろうか?

 それともカヤ司法取引を持ち掛けられ、私兵として手を汚していたか?

 

 ユキノの悲願はキヴォトスの平和。SRT再建はあくまで手段であって目的ではない。それを危うくはき違えてしまうところだった。

 自分たちが正しいと思い込み、もしくは違和感に目を瞑っていたら、悪しき大人の言うがままにテロを起こしたアリウスと変わりない。

 

「連邦生徒会長の命令なら正義を疑う余地も無かったんだがな……。主席行政官にせよ防衛室長にせよシャーレの先生にせよ、作戦行動と目的が本当にキヴォトスのためなのかを考えなければいけなくなった」

 

 例えば、任務でシャーレの先生と敵対しろと言われたらどうする?

 例えば、命令でキヴォトスの市民に銃を撃てと言われたらどうする?

 昔なら躊躇いなく任務を遂行しただろうが、今は違う。

 連邦生徒会長がいなくなったことでSRTは過大な武力の責任を背負ったのだ。

 

「だからこその現「SRT特殊学園」だ。今はヴァルキューレの業務の範疇に留まっているが、いずれは権限を元のSRT並みに戻す予定でいる。しかしその際に連邦生徒会長の私兵に戻るわけにはいかない」

「連邦生徒会長から独立するのですね。しかし、それではSRTが誤った正義のもとにキヴォトスに被害をもたらす可能性も……」

「あるだろう。だからヴァルキューレにSRTへの調査権限は残さなければいけないと考えている。我らSRTこそ絶対正義、ではなく、SRTとヴァルキューレが互いに手を携えてキヴォトスの平和のために任務を遂行する。どちらかが誤った道を歩み始めればもう一方が摘発する。上も下も無い、相互関係になる」

 

 ユキノがこういった政治的な方針を考えるようになったのもトリニティの生徒会に相当するティーパーティーのサオリと交流を持つようになったことが大きい。

 サオリの過去を聞く限り、彼女とて本来は意思決定をする立場になっていなかったかもしれない。

 

 変わらなければいけない。

 エデン条約の一件はユキノにそう思わせるのに充分だった。

 

「虚妄のサンクトゥムの一件のように独立部隊のままでいる利点もあるだろう。だが、今のままではシャーレの先生を贔屓する自警団のようなものだ。総合的に判断するならRABBIT小隊は我々に合流するべきだ」

「……」

「今すぐ決断しろとは言わない。だがいつまでも先延ばしには出来ない選択だ。ただ上からの命令に従っていれば良かった時代は終わったのだからな」

 

 無論、ミヤコはユキノから現「SRT特殊学園」への参加を持ちかけられてからそれを考えない日はなかった。しかし今日に至ってもまだ結論には達していない。

 何が正しくて何が間違っているかは人に与えられるのではなく、自分たちで見極めなければいけなくなったから。

 

「期日を聞いていませんでしたが、いつまでに回答すればいいですか?」

「そうだな……」

 

 撤収準備を終えたSRT各員は車に乗り込み、現場を後にする。後始末はヴァルキューレやカイザーが請け負ってくれる手筈だ。

 

「防衛室長が連邦生徒会長代行を辞任するまで、が限界だな」

「……!?」

 

 ミヤコがユキノを驚きが混じった視線で見つめても、ユキノはこれ以上言葉を紡がなかった。

 車のエンジン音と排気音だけが彼女の耳をくすぐるばかりだった。




ユキノをエデン条約編で登場させている関係で彼女は原作より成長しています。そもそもカヤが別人のような感じなので、本カルバノグ編も全く別の雰囲気になっているような。

ご意見、ご感想お待ちしています。
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