Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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キリノ、最高神オーディンを鎮める

 ◆三人称視点◆

 

「不知火カヤ――あなたが子ウサギ駅爆破未遂事件に関わっていたという証拠を、関係者から確保しました」

 

 連邦生徒会サンクトゥムタワー、連邦生徒会長代行執務室。

 そこでカヤはSRTのRABBIT小隊に包囲されていた。

 ミヤコたちの後ろには"先生"が控えている。

 

 カヤはいわゆる詰んでいる状態に陥っていた。

 

「あなたを職権乱用、職務怠慢、賄賂供与の疑いで緊急逮捕します」

「……」

 

 証拠品として提示された書類には確かにカヤのサインと連邦生徒会の判子が押されている。これを突き付けられたカヤは愕然としたことからも、ミヤコはこれが本物だと確信した。

 

 一方の"先生"、カヤが書類のサインを確認するなり同じ部屋で執務にあたっていたリンへと視線を向け、リンもまた深刻な表情を浮かべ、その反応にカヤは憤りを隠さなかったのを見逃さなかった。

 "先生"は2人の様子からこの書類は偽造されたもの、しかし偽造した者は連邦生徒会の中にいると推測する。

 

「……潔白を証明しようにも時間がかかります。それよりもクロノスに報道されて支持率がガタ落ちし、退任に追い込まれる方が先でしょう。潮時ですか」

「じゃあ責任を取って連邦生徒会代行の座から退くのか?」

「ええ。治安改革が理解されなかったことは私の力不足です。しかしヴァルキューレの強化と予算増額。そしてSRT復活の道筋は立てたので、防衛室長としてやりたかった最低限のことは済んでいます。及第点は取れているので、この立場にすがりついたりはしませんよ」

「随分と潔いですね……」

 

 カヤはゆっくりと席から腰を上げた。そして両手を手の頭の後ろに回す……素振りも見せず、腕に付けたデュエルディスクを展開した。それを抵抗の意思ありと受け取ったミヤコたちは警戒態勢を取る。

 

「それ以上指一本動かさないように! 動くと撃ちます!」

「動く? もう必要ありません。必要なカードは既にフィールドにセット済みですので」

「……!?」

「では、見せてあげましょう。私の神を」

 

 天高くそびえ立つサンクトゥムタワー。連邦生徒会長代行執務室は摩天楼が立ち並ぶD.U.区を一望出来るほどの高層フロアに位置している。開放的なガラス張りの窓から眺められる景色は絶景だ。

 

 そんな窓の外が急に暗くなった。飛行船のような巨大な物体が通り過ぎたか、とサキは一瞬思ったが、次の瞬間、巨大な瞳が部屋の中を覗いてきた。ミヤコは息を呑み、ミユはたまらず悲鳴を上げる。

 

「星界より生まれし気まぐれなる神よ、絶対の力を我らに示し世界を笑え! 光臨せよ、《極神皇ロキ》!」

 

 ヴァルキューレが誇る星界の三極神が一角、ロキが召喚された。

 その神は空中で浮遊していることを加味しても巨大で、先日カンナが召喚したトール並の大きさだろう。

 

「そして、連邦生徒会長代行の座にこだわった目的はもう一つありまして、このサンクトゥムタワーを掌握することです」

「……なぜ?」

「あいにく私はロキにしか認められていません。幸いにもトールの担い手はカンナが見つかっていますが、肝心のオーディンの所有者は未だ見つからずじまいです。普段であれば後輩に託す望みなのですが……状況が神を必要としています。なら、私がやるしかないじゃないですか!」

 

 カヤのデュエルディスクにセットされたモンスターカードは3枚。その内の1枚は《極神皇ロキ》。カヤが吠えるように述べると、もう2枚のモンスターカードが輝き出した。

 

「い、一体何を……?」

「私自身に能力がないのならサンクトゥムタワーで補助すればいい。カイザーが箱舟をサンクトゥムタワーで制御しようとしたのと同じ理屈ですよ」

 

 そして、カードの輝きと同時にD.U.区から二本の巨大な光の柱が天高くまで立ち上っていく。それは天空を覆っていた淀んだ雲を貫き、太陽の日差しを地上にもたらした。

 

「星界の扉が開くとき、古の戦神がその魔鎚を振り上げん。大地を揺るがし轟く雷鳴とともに現れよ! 《極神皇トール》、光臨!」

 

 D.U.区の外れに位置する海が割れ、戦士の巨人が立ち上がる。

 ミヤコたちが苦労して退けた戦神が再び彼女たちの前に姿を見せた。

 トールはゆっくりとした足取りで三車線道路を歩き、向かってくる。

 

「そして! 北辰の空にありて、全知全能を司る皇よ! 今こそ、星界の神々を束ね、その威光を示せ! 《極神聖帝オーディン》よ、光臨しなさい!」

 

 天よりゆっくりと神が降り立った。

 威厳に満ちた最高神は山のようにそびえ、カヤたちのいるサンクトゥムタワーを見据えた。

 

 単独での三極神召喚。

 誰も成し遂げられなかった偉業の達成にカヤは歓喜の声をあげ、打ち震えた。

 こんなカヤを見たのはリンも初めてで、目を見開いて驚く他なかった。

 

「やりましたよ会長! この私が、カヤがとうとう神の召喚を成し遂げたんです! この神々の力を持って必ずや私があなたの不安を取り除いてみせますよ!」

「カヤ! いくらサンクトゥムタワーの補助があるからって三極神全てを一人で召喚するなんて無茶です!」

「リンは黙っていてください! これぐらいしなければキヴォトスの平和を守るなんてとても出来やしな――」

 

 カヤが怒鳴り声をあげた直後だった。突然彼女は膝から崩れ落ち、受け身も取らずに倒れてしまった。カヤも何が起こったか分かっていない様子で、起き上がろうにも痙攣するばかりで指一本動かせないでいた。

 

「カヤ!」

 

 すぐさまリンが彼女のもとに駆け寄り、神のカードをデュエルディスクのフィールドから引き剥がそうとする。しかし電撃のような衝撃が彼女の手を襲い、反射的に手を離してしまった。三極神のカードはデュエルディスクのフィールドで輝いたまま張り付いている。

 

「無理に神を顕現させたせいでその分負担が重くのしかかっているようですね……」

「速やかに神を退場させましょう」

「三極神はコスト無しで蘇生する、とカヤは以前説明してくれました。それが正しければ戦闘破壊しても無駄でしょう」

「なら前にトールにやったみたいに除外すればいいんだな!」

「……それしかありませんか」

 

 リンとRABBIT小隊4名がデュエルディスクを展開しようとしたその時、扉を蹴破る勢いで開け放ち、カンナが部屋の中に飛び込んできた。よほど急いで来たのか、肩を動かしながら荒く呼吸している。

 

「やはりそういうことでしたか……!」

 

 カンナはカヤへと駆け寄り、彼女のデュエルディスクから《極神皇トール》のカードを剥がし、自分のデュエルディスクにセットする。そのうえでカンナは神のカードを自分のエクストラデッキに戻すと、召喚されたトールは再び海へと戻り、やがて消えていった。

 

「三極神全てを一手に引き受けるなんて、無茶もいいところです」

「カンナ局長……」

「神の力が必要でしたら私が手伝います。一人で背負う必要はありません」

「……私では「超人」になれませんか。残念です」

 

 負担が二柱分になったことで少し楽になったカヤは疲弊しながらもなんとか上体を起こした。カンナの肩を借りながら大地に君臨し続ける最高神オーディンを眺める。オーディンはまるで何かを待っているかのように微動だにしない。

 

「ヴァルキューレの生徒が召喚したモンスターとしてのオーディンは何度も目にしましたが、本当の神に会えたのは初めてです。そうですか、これがオーディン……」

「オーディンに認められた生徒がいれば脅威に備えられたのですが……召喚が出来ると分かっただけでも実験したかいがありました。いざという時は――」

 

 そんな中、倒れ込むように部屋の中にキリノとフブキがなだれ込んできた。

 彼女たちも全力で疾走したのか、全身から汗が吹き出ている。

 

「ぜー、ぜー、う、うぷっ、き、気持ち悪い……吐きそう……」

「ひー、ひー、か、カンナ局長……足早すぎますよぉ~……」

「キリノ、フブキ……。お前たちには待機を命じたはずだがな」

「だ、だってキリノが行かなきゃって言い出してー……」

「そ、そうでした! 本官にはここでやらなきゃいけないことがあるような気がしたんです! えーっと……あっ、本官を呼んでいたのはあなたでしたか!」

 

 キリノは額の汗を袖で拭うと、早足でカンナたちの方へと向かう。そして何気ない動作でカヤのデュエルディスクにセットされた《オーディン》のカードを外し、自分のデュエルディスクにセットする。

 

「神様、本日はお疲れ様でした! またお呼びしますので、その時はまたよろしくお願いします!」

 

 そしてキリノが神のカードをフィールドから外すと、オーディンは浮上し始める。そして天高く昇っていき、やがてその姿を消していった。それを見届けた残った神であるロキもいたずらっぽく笑い、亜空間へと飛び込んで退場した。

 

 カヤとカンナは見た。オーディンを見つめるキリノの瞳でルーンが輝いていたことに。カヤが探し求め、ヴァルキューレが悲願としていた最高神オーディンを召喚する生徒がここにいたのだ。

 

 当のキリノ本人に偉業達成の自覚は全く無いのだが。

 

「会長代行もお疲れ様です。新しいソリッドビジョンの実験でしたか? いやー、召喚された三極神が本物の神様みたいでしたね! この技術がヴァルキューレに反映されれれば治安維持はますます盤石に……って、あれ? どうかしましたか?」

「……キリノ。話がある。別室で詳しく聞かせてもらおうか」

「入学してからこれまでのデュエルの内容など、全てを洗いざらい喋ってもらいますよ」

「え? え?」

 

 カヤとカンナが左右両方からキリノの腕を掴んだ。

 困惑するキリノを2人は別室に向かって引きずっていく。

 カヤもカンナも一応笑顔を浮かべているが、目は全く笑っていない。

 

「あ、あの、2人とも目が怖いですよ。せ、"先生"~! 何か言ってくださいよ~!」

"ごめん。3人でちゃんと話し合ってね"

「ふ、フブキ! お願いですからお2人を止めてください!」

「お達者でー。私はドーナッツ食べながら待ってるよー」

「そ、そんなぁ~!」

 

 この日、キリノの取り調べは日が暮れるまで行われた。

 

 こうしてカヤのクーデターに端を発する騒動は一旦幕を下ろすこととなる。

 しかし、幾つかの謎はまだ残されたままとなってしまった。

 その内の一つ、「G・O・D」のカードが部屋の金庫の中で静かに在り続ける。




原作でのFOX小隊4名の実装、首を長くして待ってます。

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