Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ユキノ、SRTに帰還する

 リンが所有する神のカードはカヤの極神皇トール1体よりも強力らしく、これまで巡ってきた世界のことをほとんど覚えているとのことです。自分が殺された結末も、自分が滅ぼした終着点も、もう一人のシロコの手にかかった世界線のことも。

 

"……謝って済む話じゃないけれど、ごめん"

「"先生"……いえ、ゼアル先生は苦しむシロコさんに手を伸ばしたんですから、先生は悪くありません。私がシロコさんと先生を止められなかったのが悪いんです」

"でも……いや、よそう。これ以上は不毛になりそうだからね"

「ふふっ。そうですね。大事なのは今と未来ですから」

 

 リンとゼアル先生は向こう側で起こった終焉を謝り合いました。いえいえいやいや合戦になりかけたのをゼアル先生から引き下がります。そして最後には二人して笑みをこぼしました。過去の塊根を洗い流した、といったところでしょう。

 

「お話は以上です。何か質問があれば可能な限りお答えしますが」

「ああ、では私から一つ。先日SRTが回収した「G・O・D」のカードですけど、カイザーへの研究委託の許可証を作ったのは連邦生徒会長。これで合ってますか?」

「半分合っていますが半分違います」

 

 カヤはカイザーが目論んだ大規模テロ計画については完全否定しています。そして証拠品としてカイザーが提供した証拠資料は捏造されたものだと言い張っています。サインはカヤのもので判子は連邦生徒会のもの。

 

 本物か偽造か確かめるため鑑識に回していたのですが、結果は驚くべきものでした。なんと鑑定結果は連邦生徒会長のものだったのです。つまり連邦生徒会長がカヤをはめるために偽造したことになりますが……、

 

「連邦生徒会長が生徒会役員のサインを真似る特技をエラーが利用した、と私は見ています。「G・O・D」のカードパワーで別次元から伝説級のモンスターカードを引っ張ってこようとしたのでしょう」

「なら回収した「G・O・D」のカードは百害あって一利無しでしょう。アレはキヴォトスの脅威に成り得ます。直ちに廃棄処分することを防衛室長として提言します!」

「……。それについては申し開きもないのですが、奪われました」

「……は?」

 

 奪われた、強力な力を持つカードが。

 連邦生徒会で厳重に保管していたのに?

 

「セキュリティには引っかからっていません。クラッキングで突破されないよう物理的に厳重な金庫にしまっていたのですが、いつの間にか持ち去られていました。まるで異次元から直接金庫の中に手を伸ばしたように」

「ちょっと待ってください。「G・O・D」の隠し場所は私と首席行政官しか知らない筈ですよね。保護ケースも交換しましたから発信機も付いていなかったと断言出来ます。どうやって場所がバレたんですか?」

「いえ、もう一人います。連邦生徒会長失踪後、カイザーに「G・O・D」のカードを渡した連邦生徒会所属の誰かが」

「……!」

 

 執務室内がしんと静まり返りました。

 私は直接見ていませんが、"先生"曰く神のカードに匹敵する存在感を放っていたというカードが野放しになったのは深刻な事態と言えます。

 そして、盗み出したのは連邦生徒会の誰かの可能性が高そうです。

 

「内部犯の仕業だと? エラーの協力者が潜んでいると?」

「やはり引き続き用心が必要ですか……カヤも気をつけてください。三極神召喚なんてパフォーマンスをしたんです。脅威とみなされて排除されるかもしれません」

「望むところですよ。返り討ちにしてやります。そのために多少無茶をしたんですから」

 

 これで打ち合わせは終わりました。私たちは執務室から去ろうとし、リンに呼び止められました。何かと"先生"が振り向くと、リンは"先生"が持っていたシッテムの箱に手を添え、そちらをじっと見つめます。

 

「……あなたが守ってきたキヴォトス、そして生徒の青春は先生たちが、そして私たちが必ず守り続けます。ですから、絶対に一緒に卒業しましょう」

 

 リンの言葉にシッテムの箱の中にいるアロナがどんな反応を示したか、私には分かりません。後で"先生"に聞いたところ、アロナは感極まって泣いてしまったそうです。プラナがずっとあやしていたのだとか。

 

 

 ◆三人称視点◆

 

「SRT特殊学園よ! 私は帰ってきたー!」

 

 新SRT開校初日。訓練を積み重ねた一流の特殊部隊とはいえ、SRTの生徒たちはこの日ばかりは規律より感情の方が勝った。無論、以前のように連邦生徒会長の名のもとに正義を執行するわけにはいかないが、それでも再出発の第一歩としては上々だろう。

 

 ヴァルキューレに留学扱いで籍を移していたSRT生の半分以上が復学した。全員でないのは新SRTを半端な紛い物だと吐き捨てる者やヴァルキューレでも正義を果たせると確信した者など、別の道を歩み始めていたからだ。

 

 そして、新SRTに大きくのしかかった負担があった。

 

「え、と……。今日の訓練で消費した弾頭は……」

 

 これまで充実した最新の装備を気兼ねなく使い、弾頭も無尽蔵に消費していたのだが、それを全て連邦生徒会から与えられた予算内に抑えろと厳命が下ったのだ。おかげで新SRTは財務部と総務部を作り、事務仕事もしなくてはならなくなった。

 

 ユキノたちは金勘定を自分たちでやってみて、いかに旧SRTが贅沢だったかを初めて思い知る。そして「そりゃあ連邦生徒会もこんな金食い虫は取り潰したいよなぁ」と納得してしまったのだった。

 

「これはヴァルキューレもカイザーと癒着したくなるわけだ……。もっと効果的な、そして予算内に収める効率的な訓練プログラムを組む必要があるな……」

 

 そしてそんな重要な決定事項を担うことになったユキノが事務机でノートいっぱいに書き込みをしていたところ、部屋の戸が叩かれた。入室を許可するとにミヤコが入ってきて、ユキノに敬礼する。

 

「RABBIT1、参りました」

「ご苦労。楽にしていい」

 

 RABBIT小隊の4人はSRTへの復学を選んだ。けれど寮には移らず子ウサギ公園に留まる予定だ。ミヤコたちなりに考え、カイザーのサンクトゥムタワー占拠や虚妄のサンクトゥム出現の経験を踏まえ、居住区は別にしようとの結論に至った。

 

「連邦生徒会から滞在許可は貰ってきた。よってRABBIT小隊各員の子ウサギ公園の滞在をSRTとして許可する。近隣住民に迷惑をかけず、地域の治安維持に務めるように」

「ありがとうございます」

 

 ユキノは許可書の原本の1枚をミヤコに手渡した。ミヤコはきれいに折りたたんで封筒に入れたあと、ポケットの中にしまう。これで何の負い目もなく子ウサギ公園に留まれると思うとミヤコの心が温まった。

 

「それと、子ウサギ公園で生活するうえで何かと不便だろう。給湯機付きの屋外風呂シャワーユニット、あと発電機を用意したから使え。子ウサギ公園は防災公園でもあるから、給排水、ガスを引っ張ってくるのも難しくない」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「だから、くれぐれもシャーレに迷惑かけないように。分かったら復唱」

「? シャーレに迷惑はかけません」

 

 ユキノは眉間にシワを寄せてミヤコに報告書を突き付けた。

 それはRABBIT小隊の面々、特にモエ、サキ、ミヤコが頻繁にシャーレにお邪魔してシャワー室を使用しているというものだった。

 しまった、まずい、という表情をミヤコは浮かべたが、もう遅かった。

 

「当番でもないのに頻繁に通ってるらしいな。いくら先生方がいつでも来てもいいと言っているからとはいえ、何度もシャーレに行き過ぎだ……!」

「し、しかし、こうも暑くなると汗を洗い流す風呂を沸かすのも一苦労で……」

「ならこれで解消されたな。他のゲヘナやトリニティの生徒からお前たちが何と言われているか知っているか? 卑しい兎だ。くれぐれもSRTの評判を落とす真似はするな」

「い、卑しい……!? 心外です! 撤回を求めます!」

「子ウサギ公園の滞在許可を取り消されたくなければ節度を持て。復唱命令! 私たちはシャーレに迷惑をかけません!」

「わ、私たちはシャーレに迷惑をかけません……!」

「よし、下がっていい」

 

 ユキノから下がるように言われてミヤコは退室した。ユキノは深くため息を漏らして椅子にもたれかかる。

 

 柔らかいソファーに座る連邦生徒会役員の尊大な態度に内心苛立ったこともあったが、いざデスクワークを自分でやりだして長時間座ると、椅子の座り心地のありがたさが身にしみた。

 

「最高だよ。SRTの復活だ。けれど……これで終わりじゃない。これが新しい始まりなんだ」

 

 ユキノは自分の信じる正義を貫くため、今日も頑張ろうと意気込んだ。




これにてカルバノグ2章は終わりです。一時期全略することも考えてましたが無事書ききれました。次はいよいよ対策委員会編3章です。結構長丁場になりそうな予感。

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