Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ユメ、生徒会長になる

 ◆三人称視点◆

 

 ゲヘナに利用されただけだった。

 その残酷な現実は生徒会長の心に闇を生じさせる。

 しかし、万魔殿書記官は更に追い打ちをかけた。

 

「生徒会長殿。シェマタは言わば補助輪付き自転車なんだよ」

「補助輪付き自転車……だと……!?」

「歴代のアビドスが自転車をこげない連中ばかりだったからこの私が補助輪を付けてやったんだ。けれど漕ぎ手を見つけるのは生徒会長殿の仕事だろう? ハードルは下げたんだからそう遠くないうちにシェマタの担い手は見つかるさ」

「……そうか」

 

 ゲヘナはシェマタから手を引いた。実験データは得たのでもう用は無かった。

 ハイランダーも離脱した。超弩級砲塔列車としてのデータは取ったからだ。

 アビドスだけが引き続きシェマタに固執した。もう後戻り出来なかった。

 

 生徒会長は早速他の生徒会役員にシェマタを操作させたが、結果は無惨なものに終わった。少女はシェマタに触れた瞬間に「あ、駄目だこれ」と確信したが、生徒会長の命令で実際にやってみせた。神の怒りから逃げ回ることになったが。

 

 皮肉なことにゲヘナやハイランダーとの共同研究が更にアビドスを窮地に追い込んだ。もはや先がない、これ以上生徒会長についていけないと判断した生徒が今回の伝手を利用して次々と転校していったからだ。

 

「逃げたい奴は勝手にしろ! 神さえ、神さえ召喚できればこんな逆境は……!」

 

 もはや妄執に動かされる生徒会長を少女は見ていられなかったが、それでも少女は生徒会長を支え続けた。決して諦めずに自分たちの高校を救おうとする生徒会長をどうしても見放せなかった。

 

 生徒会長はアビドスの在校生のみならず自治区に済む住人を片っ端から試して回った。無論シェマタで直接試すわけにもいかないため、万魔殿書記官のアドバイスを参考にラーのコピーカードを持たせて反応を確かめていったのだった。

 

 大人は全滅。次に自分たちの後輩になるだろうアビドス中等部へと手が伸びる。少女は反対したが生徒会長を初めとする生徒会役員一同は強行した。3年は駄目、2年生を試して回り……見つけた。見つけ出してしまった。

 

「ホルス……」

 

 小鳥遊ホシノ。

 彼女が手にした途端、ラーの反応はこれまでと全く異なるものだった。

 まるで現人神たるファラオの誕生を待っていたかのようだったのだ。

 太陽神ラーはホシノを認めた。アビドスの悲願は達成されたのだった。

 

 しかし、ここでめでたしめでたしでは終わらなかった。

 生徒会長たちはこの現実を認められなかった。

 どうして自分たちではないのか。

 こんな小娘にかしずかなければいけないのか。

 いっそこの小娘を利用すれば神の力を手に出来るのではないか。

 

「小鳥遊ホシノをカード化し、シェマタに組み込む」

 

 その果てに、生徒会長は最悪の決断を下したのだった。

 シェマタをホシノの神秘で制御し、自分たちが力を行使する。

 後輩一人の犠牲など大義の前では些事だ、と言わんばかりに。

 

「は?」

 

 少女は初めて我を忘れるほどの激しい怒りを覚えた。

 けれど直に怒りを鎮めてなんとか思い留まるよう説得を重ねる。

 しかし生徒会長は少女の提言を一蹴、すぐに実行に移すべく行動を開始する。

 

「……駄目です、会長。行かせるわけにはいきません! ホシノちゃんを、アビドスの未来を担う子を私たちのエゴに巻き込むなんて、間違ってます!」

「どけ! どかないと言うならお前を押しのけてでも行くまでだ!」

 

 ああ、もう何を言っても無駄なんだ。

 少女は悲しみ、そして怒りを使命感に変えて、生徒会長たちの前に立ちふさがる。

 闘志の宿る強い眼差しは生徒会長を初め、誰も見たことがなかった。

 

 無茶だと分かっていても少女は守りたかったのだ。アビドスを、これから青春を送るだろう後輩を、そして……これまで自分たちが送ってきた青春を。もう取り返しがつかなくなる前に。

 

 デュエルディスクを展開、手札となるカード5枚を取った。

 カードを手にした瞬間、これまでと全く違った手応えを感じた。

 

 カードが脈動しているようだった。手にする指がとても熱い。

 少女は導かれるようにそのカードをフィールドにセットした。

 

「降臨して、《オシリスの天空竜》!」

 

 光の柱が天まで立ち上り、空が唸った。

 やがて雷鳴と稲光とともに空より巨大なドラゴンがゆっくりと降下してくる。

 その神々しい姿は生徒会長もよく知っていたが、決して認められなかった。

 

 天空に雷鳴轟く混沌の時、連なる鎖の中に古の魔導書を束ね、その力無限の限りを誇らん。

 

 《オシリスの天空竜》自体は既にオフィシャルカードとしてキヴォトス中に出回っている。何なら少女も自分のデッキとあまりシナジーが無いのにピン刺ししているし、何度かデュエルで召喚もしている。

 

 しかし、今少女が召喚したオシリスはどうだろうか?

 怒りを撒き散らすだけだったラーの片鱗はおろか、あの憎たらしい万魔殿書記官が召喚した三幻魔をも凌ぐ戦慄、畏怖を感じないだろうか?

 

 間違いない。

 目の前のオシリスはモンスターではない。神だ。

 

「ば、馬鹿な……! 奇跡を起こしたというのかぁぁっ!!」

「《オシリスの天空竜》で《The supremacy SUN》に攻撃! 超電導波サンダーフォース!」

 

 オシリス第一の口が開かれ、雷撃が放たれた。太陽のごとき何度も蘇る生徒会長のエースモンスターも神の前ではなすすべがなく、神の一撃に飲み込まれて消し飛ばされてしまった。

 

 蛇に睨まれた蛙のように固まっていた生徒会役員一同はようやく自分たちのモンスターを召喚するも、今度はオシリス第二の口が開かれ、雷弾が次々と放たれる。まるで神にひれ伏す資格もなし、と言わんばかりに尽く破壊された。

 

「会長。生徒会規約に書いてました。神を召喚した生徒はファラオだから生徒会長にする、って」

「……っ! そ、それは……」

「引退してください。そして新しく生徒会長になった私が指示します。もうこんな虚しくて悲しいことは止めましょう!」

「く、ぅ……! うううっ!」

 

 この日、アビドスで政権交代が行われた。

 少女は新しく生徒会長となり、旧体制の役員たちは総辞職することとなる。

 そして、元生徒会長たちは自分たちで悲願を果たすことなく、卒業した。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「奇跡なんて起きっこないですよ、先輩。それよりも現実を見てください!」

「は、はう……」

「こんな砂漠のど真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずがないでしょう!? 夢物語もいい加減にしてください!」

「うえぇ、だってホシノちゃーん……ご、ごめんね?」

「もっとしっかりしてください! あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!?」

 

 それから2年の月日が経過した。

 もはやアビドスには少女と新しく入学したホシノしか残っていない。

 それでも少女たちは懸命にアビドスを立て直そうと頑張り続けた。

 

 その日、たまたまホシノは苛立ちを募らせ、少女と喧嘩した。

 ホシノは怒りを少女にぶつけて先に帰った。

 少女はまだ帰れなかった。ようやく負の遺産の一つが片付こうとしていたから。

 

 2年前の生徒会役員が軒並み卒業して代替わりし、少女はようやく動き出した。ゲヘナとハイランダーとの共有資産であるシェマタの所有権をアビドス単独にし、解体処分するために。

 

 ゲヘナは簡単だった。万魔殿議長にまで上り詰めた万魔殿書記官はあっさりとシェマタを放棄した。シェマタで得たデータで研究は順調に進んでいるとのこと。なお、雷帝からはお互い全力でデュエルをしないかと誘われたが、少女は丁重に断った。

 

 ハイランダーも衰退の一方だったアビドス自治区への鉄道網に魅力を感じなくなったため、アビドスを通る砂漠横断鉄道もろとも二束三文で手放す契約を結んだ。ハイランダーの幹部はシェマタのデータから作ったカードを見せびらかせてきたが、少女は無難な感想を返すに留めた。

 

 そして、ネフティス。アビドスがシェマタ建造のために助力を求めたキヴォトスを代表する一大グループ。ゲヘナとハイランダーが手放したものの借金の抵当になっていたシェマタの所有権という木の葉を砂漠横断鉄道という森の中に隠しつつ奪還した。少女の気質が同情を買ったのだろう、とは後のネフティス幹部談だ。

 

 その日は少女がネフティスと結んだこの契約の件で出向くことになっていた。これが成立すればシェマタは晴れてアビドスだけのもの。解体処分は少女が《サンダー・ボルト》を発動するだけでおしまい。ゴールはあと僅かだった。

 

「久しぶりだな……」

「先、輩……?」

 

 2年前に追い落としたアビドス元生徒会長が立ちはだからなければ。




これで原作でゲヘナ編があっても大幅改変確定です。というかその前に逃げ切って本概念を完結させる可能性すらあります。

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