しかし飛ばすと大きく変わるラスト付近の説明が出来ないので、必要な描写だけダイジェストでお届けします。
◆三人称視点◆
「お願いです、説明してください……。アビドス自治区で何をしていたんですか?」
「大方、そちらも察しがついているのでは?」
「監督官!」
「へるぷみー」
ハイランダーの列車を停止させてアビドスの生徒に包囲されたヒカリとノゾミ。そんな2人を救う……かはさておき、第三者の声が割り込んできた。ハイランダー監理室の制服を身にまとう生徒がこの場に現れる。
「……どなたですか?」
「私の名は、朝霧スオウ。ハイランダー鉄道学園、理事会直属の管理監督官だ。私たち監理室とそこのバ……CCCは互いに監理、牽制し会う関係にある……そこだけ理解してもらえれば」
「っていうか敵! 工事の敵で納期の敵! あとバカとか言いかけてなかったか!?」
「双子じゃなくてバカなんだけどー。あれー?」
ノゾミとヒカリの非難を一切無視してスオウは続ける。
「現在アビドス砂漠横断鉄道の開発権は我々ハイランダーのもとにある。ネフティスではないのか、だって? ハイランダーがネフティスから強力を要請されて提携している」
「ネフティスがハイランダーに……」
「とにかく、そのバカどもを解放してもらえないか? 本件の詳細説明は後日、正式にアビドスで行うことを約束する」
「……放してあげて」
最上級生のホシノに言われてはシロコもセリカも従わざるをえず、解放された双子はスオウの方へと駆け寄った。当のスオウ本人は双子に完全にそっけないままではあるが。
「質問があれば当日までにまとめてほしい」
「……あのシェマタってモンスターエクシーズについても説明してくれるんですか?」
「むしろそれを語らなければ今回の件は説明できない。では、失礼する」
ハイランダーの生徒が退散したことでアビドス一行も自分たちの学校へと戻っていく。今回の騒動は始まりに過ぎない、誰もがそう思いながら。
◆◆◆
「ハイランダーから来たCCCだけど、早く入れてくんない?」
「ヒカリ選手の必殺ピンポンダッシュ秒間16連打ー」
「ええぇっ!?」
「な、何よこいつら?」
後日、スオウはヒカリとノゾミを連れてアビドスまで足を運んできた。ヒカリとノゾミのペースに翻弄されるノノミとセリカ。そんなやんちゃな2人をスオウがたしなめた。セリカはそんなスオウを保護者みたいだ、と感想を抱く。
"それで、本題なんだけど……以前の件について説明してくれるんだよね?"
「ああ、今日はそのために来た。私の口から説明しても構わないが……別の者を呼んでいる」
そんなスオウの紹介とともに部屋に入ってきたのはアビドスの債権を買い取った団体の者たちだった。ネフティスでないことに困惑するセリカたちだったが、彼らはネフティスと共に投資した、言わば私募ファンドだと名乗る。ネフティスの名で債権を購入したのはグレーゾーンの商売もしているからだとか。
怪しい彼らを保証する、とソリッドビジョンで姿を投影したのはネフティスグループの幹部。債権購入の証明書も彼がアヤネに提示する。アヤネが確認したところ本物で、現在ネフティスを筆頭とする私募ファンドが権利を得ていた。
「私たちの目的は、砂漠横断鉄道の全権利を手に入れることです。少なくとも鉄道の開発権利は既にこちらのもの。ハイランダー学園の行為には何の問題もありません」
「そーそー。私たちが工事を始めたのは債権を確保してからなんだし。何も問題ないっしょ?」
「イエース、問題なーし」
全く悪びれもしない双子にシロコの堪忍袋の緒が切れかけるが、なんとかこらえた。
債権者団体の代表がアビドス生徒会以外の者は席を外すように促したため、ヒカリとノゾミは退室。ネフティス幹部はスオウを代理に立ててログアウト。対策委員会が現在の生徒会に相当する機関だと説明し、ホシノ以外も部屋に残った。
「では、こちらをご覧ください」
「これは……」
「先日、ハイランダー学園の倉庫から発見された書類です。……アビドスの前生徒会長、梔子ユメの名で、ここにサインがあるでしょう?」
「「「「……!」」」」
「ユメ先輩がサインした、契約書……?」
「アビドス生徒会が、砂漠横断鉄道における関連施設の使用権をネフティスから買い入れるという契約です」
「ネフティスから……」
その契約書にはアビドスが借金返済の足しにすべく手放した砂漠横断鉄道を買い戻す契約がなされていた。ネフティスは二束三文でアビドスに譲り渡すものとの内容で、ユメの直筆でサインがされている。
「忘れるわけない……これは、先輩の……。い、いつの間にこんなものを……私が知らない間に……」
「おそらく……契約が完了していないので、伝えなかったのではないでしょうか? なにせ、まだ支払いが済んでいないのですから」
それはユメがゲヘナ、ハイランダー、ネフティスと結んだシェマタ解体処分への段取りのうち最後のもの。ネフティスに契約の残金を納めればシェマタはアビドスのものとなる筈だった。
……支払いのために外出したユメがセトと戦っていなければ。
「これが偶然発見され、私どもとしても悩ましい状況なのですよ」
「この契約の影響で関連施設の使用権は売買中のため手がつけられません」
「そ、それで……?」
「そこで、「この契約を保持する意志があるのか」を確認していただきたいのです」
「この件さえ解決できれば我々は、二日後に開かれる債権者団体の総会で、砂漠横断鉄道の持ち分を主張できます」
砂漠横断鉄道の保持のために更に借金を重ねるか、それとも権利を放棄するか。この二択を迫られ迷うホシノだったが、"先生"が待ったをかけた。考える時間をもらえないか、と。
しかし契約書が交わされたのは二年前の二日後、つまり明後日になれば契約は自動的に失効される。契約を維持したい場合は総会に来てほしい。債権者団体の代表はそう説明し、帰っていった。
忘れられた契約に関する怪しすぎる動き。失敗した事業に固執する理由も不明。どんな秘密が隠されているのか、を調べることでアビドス一同と"先生"は一致。そして話題はそんな契約を結んだユメへと移っていく。
「ユメ先輩はね……簡単に言うと、すぐ騙されちゃうタイプだったんだ。それで、いつもトラブルに巻き込まれてた。なのにデュエルになったらもう強くてさー。おじさん、結局先輩には一度も勝てなかったなぁ」
「そ、そうなんだ……よく卒業できたね、その先輩」
「……卒業、できなかったよ。――卒業前に失踪したから」
突然行方不明になり、それから33日後にヘイローが破壊された状態のユメがアビドス砂漠で発見された。どうして砂漠で遭難してしまったのか。何で砂漠に行ったのか。何を考えていたのか……それはホシノには分からない。
そんなホシノの独白を聞いた"先生"はあえて口を閉ざす。今砂漠を彷徨っている死者がユメかもしれないなんてホシノには言えない。Z-ONEもこの件は任せてほしいと言っていたので、彼が解決するのを待つべきだろう、と考えながら。
「きっと、あの手帳には書いてあったはずなんだ。ユメ先輩は何かがあると、絶対手帳に記録してたから……」
「手帳……?」
「契約を交わしてから2年も経ったのに、どうして今になって……」
そしてホシノは気づく。気づいてしまう。この契約が交わされたのが、ユメがホシノと喧嘩して失踪した日だ、と。
◆◆◆
「執事さん、あの……」
「砂漠横断鉄道について、お知りになりたいと?」
「もちろん、存じております」
「ネフティスは何を企んでいるんですか? 私募ファンドの目的は?」
「明日、そちらへ直接お伺いします。今日はもう遅いですから、詳しいお話はその時に」
あのあとホシノはその場から駆け出し、シロコが追いかけて追いついたものの、ホシノはそのまま下校した。明日には登校すると述べて。
ノノミはネフティスの幹部と連絡を取り、2年ぶりのコミュニケーションを取り、更に詳しい説明をしてもらうために足を運んでもらうことになった。
砂漠横断鉄道、債権者団体の総会、アビドス生徒会。
偶然発見された契約書、ユメの失踪。
アビドス一同の知らない大きな何かが動いている。そんな気がしてならない。
アヤネはそれを悪意だと表現した。
今日はもう遅いからと解散になり、"先生"はシャーレに戻っていった。
しかし翌日、"先生"はアビドスに戻ってこなかった。
それどころか"先生"とは連絡が取れなくなってしまったのだった。
ネフティスがどうやってシェマタで再興しようとしてたか計画書を見てみたいものです。
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