Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ホシノ、過去を振り返る

 ◆三人称視点◆

 

「当時の私は、何もかもに憤りを感じててさ」

 

「アビドスの状況、息をつく暇もなくやってくる砂嵐に、止まらない砂漠化」

 

「無気力な市民、無責任な生徒、無能な前生徒会」

 

「自分の利益だけを考えて、悪事を働く大人……」

 

「そして、毎日毎日失敗ばかりの先輩と――」

 

「――理想だけは一丁前で、何も解決できない無力な自分に」

 

「ただただ、怒りに身を任せるしかなかったんだ」

 

 シロコすら今まで入ったことのなかった生徒会室に入ったアビドス生徒一同は、ホシノからユメに関する2年前の出来事、思い出話を聞く。それはホシノの青春そのもので、そしてホシノの今を決定づける出来事となった。

 

「ユメ先輩は、脱水症状で衰弱死した」

 

 コンパスも水も無く砂漠を彷徨った挙げ句に。

 彼女の遺体や装備品は回収したが、生徒会長手帳だけは見つかっていない。

 手帳があれば真相が分かるとホシノは確信しているが、未だ不明のままだ。

 

 そんな重苦しい雰囲気は、来訪者によるチャイムで吹き飛ばされた。やってきたのはセイント・ネフティスの幹部とハイランダー監理室のスオウだった。無論、「砂漠横断鉄道」に関して話すためだ。

 

 シロコやホシノたちは教室に戻り、スオウとネフティス幹部を招き入れた。ノノミとネフティス幹部は直に会うのは2年ぶりとなるため久々に交流するのだが、

 

「……お嬢様、今からでも戻ってくるつもりはありませんか?」

「……戻る、とは?」

「もちろん、ハイランダー鉄道学園に」

「それは……」

「ノノミちゃんが困ってるでしょ」

 

 この会話だけでノノミとノノミの実家たるセイント・ネフティスの関係は窺い知れるというものだ。

 

「さて、結論から申しますと、「砂漠横断鉄道」の裏にはアビドスとネフティスで秘密裏に進められた、「非対称戦力兵器」計画があります」

「はい!?」

「その名は――」

「――「列車砲シェマタ」。一昨日あのバカどもが召喚したアレの大元だ」

 

 当然ながらアビドス対策委員会一同は列車砲シェマタの存在を知ったのもヒカリとノゾミが召喚した時だ。アヤネがアビドスとゲヘナの校章が描かれた理由を調べても結局ヒットしなかった。それも当然、ユメや雷帝が記録を抹消したからだが。

 

「シェマタは破壊力も射程距離も、従来の規格と比べ物になりません。1トン以上の爆弾を500km先まで飛ばす、超長距離砲。そんな代物が、鉄道路線の上を走り回る計画です」

「もしそんなのが実在してたら、周辺自治区に対して圧倒的な抑止力になっちゃうね……」

「い、いったいなぜ!?」

「簡単じゃないか。借金を返済するため、だろう」

「そ、そんな……」

 

 スオウが冷たく発した憶測への反応のとおり、今のアビドス生徒たちにシェマタの真の目的は伝わっていない。ホシノは改めてユメの手帳さえ見つけ出せていたら、と思わずにはいられなかった。

 

「つまり……砂漠横断鉄道はシェマタを隠蔽するために作られたんですか?」

「お嬢様、それは違います! あくまでも非対称戦力兵器計画は、鉄道事業が動き出してから話に出たものです。おそらく、アビドス生徒会に入れ知恵をした者がいたのでしょう」

「誰がそのようなことを……!」

「そこまでは私も……。なにせ、詳しく説明されぬまま、秘密裏に進められたものでして……」

 

 ノノミの憤りの向く先は、しかしユメも知らないことだ。ユメは皆が雷帝と呼んでいた友人が野望のために生徒会長を唆した、とユメは考えていたが、シェマタの権利を回収するための交渉に出向いた際、雷帝はきっぱりと否定した。

 

「アビドスにユメちゃんのような真のファラオが現れることは読めていた。君を慕う小鳥遊ホシノだっている。君たちのせいで三幻魔こそキヴォトスの頂点だとの証明をやり直す破目になったのは余談として、どうしてこの私が率先してわざわざシェマタなんておもちゃを手間かけて作らなきゃいけないんだ?」

「でも、先輩は■■■ちゃんが提案してきたって……」

「黒幕がいるのさ。君の不甲斐ない先輩とこの私を結びつけた主犯がね」

「え、と。誰か教えてもらうわけにはいかない? 今度美味しいプリンお土産に持ってくるからさぁ~お願い!」

「……。プリンに免じてヒントだけ。ユメちゃんはいずれ「彼」と会うことになる。それも近いうちにね。それがファラオたる君の宿命だ」

 

 なお、その際のユメと雷帝の会話はゲヘナの記録に残っていない。

 

「落ち着いて話を聞くんだな、ご令嬢。すでに、この計画は破綻している」

「シェマタは正常に動かなかったのです。今も未完成のまま、アビドス砂漠のどこかに放置されています。そして計画は中止……となっていたのです。ほんの少し前までは」

「?」

 

 ネフティス幹部がノノミに語った内容はネフティスの認識であり、ユメはネフティスに対して「失敗しちゃった(・ω<)ごめんなさい!」と説明。シェマタがラーの再現だとも神の怒りをかって失敗したとも一切語っていない。

 

 生徒会長が疑問に思ったシェマタ11個目のスロットにどんなカードをセットするつもりだったか、についてユメは雷帝に聞いてみたが、なんと幻魔語で書かれたオリジナルの《降雷皇ハモン》のカードでラーの怒りを抑え込む仕組みだそうだ。

 

「ああ、言っておくけれどその機能はこの私がシェマタを運転する場合の外付けのようなものだよ。11個目のスロットには何も入れず、ユメちゃんや小鳥遊ホシノといったファラオが運転手を務めるのが本来の使い方さ」

「じゃあ■■■ちゃんは神の怒りを鎮める効果のある汎用的な制御カードは開発してないの?」

「好奇心でデザインだけはしたけれど、創造はしてないよ。設計図だって書き起こしてない。頭の中にある。だってする意味がないじゃないか」

「だよねぇ」

 

 と言った経緯もあってシェマタは未完成のまま放置されて今日に至る。

 

「最近になって再度シミュレーションをしたところ、シェマタの実現性は限りなく高いものとなっていました」

「いずれにせよ、保有しているだけで抑止力となり得る存在だと明らかになった以上、行動しない手はない」

「「私募ファンド」が砂漠横断鉄道の権利に執着しているのは、まさにこれが理由なのです」

「鉄道の権利さえ得てしまえば、列車砲も手に入るから……ですか」

 

 そんな危険な兵器は先に破壊してしまおう、とシロコは提案したものの、もはやユメから引き継がれなかったアビドス在校生はおろか、ネフティスやハイランダーすらシェマタの所在は知らない。記録も残っていない。

 

「……私募ファンドは、正式な契約をもって列車砲の権利を手に入れようとしています」

「正式な契約、ですか……?」

「ええ。権利関係を明白にしておけば、あとから生じるトラブルを避けられますし。……しかし、誰にも予想できなかった事態が発生しました。――アビドス生徒会長とネフティスの間で交わされた契約書が発見されたのです」

「!?」

 

 それはユメが夢の跡となったシェマタを解体処分するために権利を整理・集約した結果によるもの。もう生徒会長やホシノのように神のために犠牲になる生徒が出ませんように、とのユメの願いによるものだった。

 

「経緯までは分かりませんが……これがある以上、列車砲の権利はアビドスにあり、私募ファンドのものになりません」

 

 私募ファンドは先に契約書の問題を解決するべく、明日の12時にアビドス中央駅旧庁舎で総会を開くことにした。アビドス生徒会の代表者が総会で契約を破棄するか、欠席した時点で契約は無効になり、列車砲の権利はネフティスに渡る。

 

 なら、アビドス生徒会最後の一人、ホシノが出席して契約の継続を表明すれば列車砲の権利はアビドスが引き続き保有することになり、隠されたシェマタを発見して破壊すれば解決だ。

 

「それはどうだろうな」

「……!」

「私募ファンドは、あんたらの出席を妨害するに決まっている」

 

 スオウの指摘の通り、私募ファンドは傭兵やヘルメット団など多数の武装勢力を雇い、総会に参加させないよう防御を固めていた。もはや勝ちを確信した私募ファンドの代表たちはシェマタをどう活用しようかと既に皮算用を始めていた。

 

「えっ!?」

「……なるほどねぇ」

「うーん……」

「それだけの規模に対して、私たちは……」

 

 シャーレの先生たちを頼ろう、そもそも対策委員会に生徒会としての権限はあるのか、ノノミがハイランダーの生徒会長になれば済む話だ、などと議論がかわされたが、結局のところ解決策は見いだせなかった。

 

「ところで、おととい《超弩級砲塔列車シェマタ》と戦ったんだけどさー」

「アレはハイランダーが当時のアビドスと協力してオリジナルのシェマタからデータを得て創造したカードだ」

「列車砲の効果。アレとそっくりだったんだけど?」

「知らん。そんな事は私の管轄外だ。少なくとも私募ファンドの連中はシェマタを超強力な戦略兵器としか見ていないだろう」

 

 ホシノたちは正解に近づきつつあった。すなわち、シェマタとは太陽神ラーを再現するための装置ではないか、と。だとしたらどうやって制御するつもりなのか、との新たな疑問も浮かぶのだが。

 

「それと、シェマタにはゲヘナの校章も描かれてたけど?」

「おそらくシェマタを設計した、または技術の参考元がゲヘナだったのでしょう。当時はミレニアム顔負けの頭脳を持つ生徒がいたとは私どもも聞いています」

「あー……もしかしてゲヘナで雷帝って呼ばれてた万魔殿議長のことかな?」

「え? ホシノ先輩知ってるんですか?」

「ユメ先輩が友達だって言ってたし、あっちもユメ先輩のこと気に入ってたみたいだったかな」

 

 しかしホシノの聞く雷帝の評判とユメの所感は正反対と言って良かった。むしろ雷帝のことを良く言う生徒などユメを含めてごく少数だろう。ユメはデュエルモンスターズの腕で雷帝を上回っていたからそう言えるのだろう、とホシノは考えている。

 

「期限は明日の12時です。私のほうからも、良い解決策があればご連絡いたします。明日の総会で会えることを願っております」

 

 アビドスの生徒一同の意志は固まっていた。

 シェマタは必ず破壊する。そんなものはアビドスにあってはいけない。

 しかし……その目的のために見えている道は各々で違っていた。

 

 ノノミはネフティス幹部を説得しようとして失敗、逆に捕まってしまったことで、事態は急転直下を迎える。




しかしこの私募ファンドもシェマタ手に入れて本当にウハウハだったのでしょうかね。本概念の描写と違ってターンテーブルでの運用は避けられないでしょうし、準備を整えようとしたところでゲヘナ等に阻止されそう。

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