Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ノノミ、人質になる

 ◆三人称視点◆

 

「執事さん……指示された通り、みんなには内緒で来ました」

「そのようだな。学校から尾行してきたが、間違いない」

「……あなたは! 執事さんはどこですか!?」

「……私ならここにおります、お嬢様」

 

 深夜の路地裏。ノノミは一人で抜け出し、ネフティス幹部とコンタクトを取った。ノノミの目的はネフティスの説得。ネフティスなら私募ファンドを抑え込めるのではないか、そんな期待を寄せて。

 

 ところが、真っ先にノノミに声をかけたのはネフティスの代理人だったスオウ。予期せぬ第三者に驚きの声をあげたノノミだったが、すぐにネフティスの幹部がソリッドビジョン体で姿を見せる。

 

「ところでお嬢様。昼間はシェマタをあのように説明しましたが、アビドスには真の狙いがあったことはご存知ですか?」

「え!? 真の狙い……?」

「アビドスの悲願、それは神を降臨させることにあります。アビドスの神といえばそう、三幻神のことですね。そう、当時のアビドスはシェマタという盛大な儀式によって太陽神ラーを降臨させようとしていたのです」

「……!」

 

 ノノミも《超弩級砲塔列車シェマタ》の効果、そしてラーをエクシーズ素材にする特殊なエクシーズ召喚条件など、ラーが深く関わっていることは薄々察していた。しかしそれをネフティスが把握しているとは思っていなかった。

 

 そして、ネフティスの家の令嬢であるノノミはアビドスの悲願も教えられている。神の降臨をもってアビドスを復興させる。神の威光に吸い寄せられる生徒などたかが知れてるだろうに、とノノミ本人は懐疑的な意見を持っている。

 

「全く、2年前に分かっていたらユメ生徒会長とあんな契約は結ばなかったでしょうに。してやられたものです」

「じゃあ2年前にシェマタが正常に動かなかったのって、神の怒りを買ったから……? だとしたら今だって相当危険じゃないですか!」

「ええ、そうです。シェマタがラーの器だと知らないで手に入れようとする私募ファンドの連中はなんて愚かなんでしょうね。もしお嬢様方が総会に間に合わなかったとしても、シェマタはネフティスが手に入れることになるわけです」

 

 ノノミは思わずぞっとする。

 ネフティスは始めからシェマタを独占するつもりだったのだ、と。

 

「で、でも! それならネフティスだって同じですよね。そんな扱えない兵器を手に入れても意味なんて……」

「おや、お嬢様は忘れてしまったのですか? ネフティスには「ラー」なんぞよりも高い神格を持つ神のカードがあることを」

「……!」

 

 ノノミが思い出すのはアトラ・ハシースでの死闘。そこでクロコはあちら側のノノミに託されたネフティス秘蔵の神のカード、「エーテリック」モンスターエクシーズを召喚していた。その最上位、ランク13の《エーテリック・アメン》は「ラー」を超える「アメン・ラー」の神秘を持つ。

 

「まさか、「アメン・ラー」でシェマタを制御しようと……!?」

「もし上手く行かなくても「ネフティスなら可能だ」と思わせることが重要なのです。これでネフティスは瞬く間に復活を遂げるでしょう」

 

 ネフティスはシェマタの建造に多額の資金を援助した。しかしユメがテヘペロで失敗を報告してきて何もかもが覆った。その時の損失を取り戻す最大のチャンスが回りに回ってきた。財界の元主として見逃す手などない。

 

「計算が狂ってしまうのではないかと不安でしたが……こうして、のこのこやって来てくださるとは」

「えっ……!?」

 

 結局、ノノミの子供らしい純粋な願いは大人の都合の良いように使われるだけでしかなかった。スオウの不意打ちを食らったノノミの意識は暗転。囚われの身となってしまったのだった。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「……ノノミちゃん、待っててね。もう二度と……あの過ちは、繰り返さない」

 

 私募ファンドの総会に出席すべくホシノは単身で向かった。止めようとするシロコ、アヤネ、セリカを振り切って。私募ファンドの私兵で固められた会場へと。それもしまっていた過去の武装を身にまとって。

 

「"先生"……」

「"先生"、ホシノ先輩が……」

 

 打ちひしがれる3人のもとにようやく"先生"が現れた。しかし"先生"は責められない。何しろ彼はシャーレが爆破されたせいでつい先程まで病院にいたのだから。むしろ大丈夫だったか聞くべきだが、今のシロコたちにそれほどの余裕はなかった。

 

"大丈夫、落ち着いて"

「うん……」

「はい……」

「そうね……片付けもしないと」

 

 対策委員会の教室に集まり、"先生"はこれまでのいきさつを聞く。ホシノはアヤネたちを置き去りにしたこと。止めようとして勝てなかったこと。グラウンドの墜落したアヤネのヘリはそういうことかと"先生"は合点がいった。

 

 事情をややこしくしているのは未だホシノがアビドス生徒会に所属していること。対策委員会が生徒会に相当するとみなすと組織が2つあることになる。ホシノはアビドス生徒会は無効だと主張し、アビドスとネフティスの契約をそもそも無かったことにしようとしているのだ。ノノミを助けるために。

 

 しかし、そうなればホシノはユメとの思い出を自ら否定しなくてはいけない。シロコたちはそうさせたくなかったが、ホシノの意志は固い。かと言って他に挽回策があるかと問われると、アヤネたちには思い浮かばなかった。

 

"まずは、そこから解決しようか"

「そこって……?」

"アビドス生徒会長は空席のままだよね。なら、補欠選挙をしよう"

 

 その時、アヤネに電流走る。

 新たに生徒会長を選出すれば複雑化した事情が一気に解決することを。

 

「あっ……、でも生徒会選挙には全校生徒の60%がいなきゃいけないんでした」

「え、でも私たち3人で5分の3……あ」

「でぶシロコともう一人のセリカがいない」

 

 対策委員会5名がアビドスの全生徒だった少し前なら問題なかったが、現在はクロコとテフヌトがアビドスに在籍している。2人はゼアル先生とともに百鬼夜行に行ってしまっているため不在だ。

 

 ダメ元で連絡を取ろうと試み、向こうとは数コールで繋がった。

 

「あ、セリカちゃん? アヤネだけど、今大丈夫?」

『アヤネちゃん! "先生"がテロに巻き込まれたってニュースで流れてたけど、大丈夫なの!?』

"私なら大丈夫だよ"

『……! よ……よかったぁ~……よかったよぉ……』

 

 向こうはスピーカーモードにしているらしく、真っ先に聞こえてきたのはテフヌトのもの。セリカ以上に狼狽えている様子だったが、"先生"の無事を聞くと安堵の吐息を漏らし、やがて泣き始めてしまった。

 

「え、と……セリカちゃん?」

『……ごめん。セリカは今ちょっと答えられないから、私が電話変わる』

「あ、シロコ先輩。実はこっちで問題が発生してしまいまして……」

『「列車砲シェマタ」のこと?』

「「!?」」

 

 電話を変わったクロコから予想もしなかった単語が飛び出した。アヤネとセリカは何故その名をクロコが知っているのか、と驚きを顕にしたが、シロコだけは合点がいった。

 

『そっち戻るのに少し時間がかかるから、待ってて。大丈夫、今回は私たちもいるし、何より"先生"がいてくれるから』

 

 クロコとテフヌトが戻ってくれるなら百人力だが、百鬼夜行から戻ろうとしても私募ファンドの総会には間に合いそうにない。シェマタの件を把握していたクロコなら総会の開催日時も把握している筈だが……。それとも、総会とは別にアヤネたちがまだ知らない何かが動いているのだろうか。

 

「それより、今はかくかくしかじかでして。新しい生徒会長の選挙をしようと思ってるんです」

『そ、そんな手があったなんて……無策に突撃した私たちがバカみたいじゃないの……』

『ん、しょうがない。こっちの時は"先生"がいなくて限界ぎりぎりだったし』

 

 そんな不甲斐ない自分を嘆くテフヌトと悔しそうな声を出すクロコの会話でアヤネやセリカもようやく察した。しかし今は1秒でも時間が惜しい。過去を振り返ってもらうのは後にして、生徒会長選出に専念する。

 

「はい! 私、奥空アヤネは生徒会長に立候補します!」

"では、挙手投票を行います!"

「とりあえず、私は賛成!」

「ん、賛成」

「私は立候補者なので、当然賛成です!」

『賛成する。ホシノ先輩は反省するべき』

『私も賛成よ。これでアイツ等をぎゃふんと言わせられるわね!』

 

 賛成多数によりアヤネが生徒会長に決定。それをシャーレの顧問でありアビドスの顧問でもある"先生"が立会人として選挙結果を保証する。これで名実ともにアヤネはアビドス生徒会長。

 

「対策委員会はアビドス生徒会に吸収合併されました!」

「えっ!?」

「ですが、名前は「対策委員会」とします!」

「ん、分かった。これで完璧」

 

 多少強引であったがこれで大義名分が出来た。アヤネたちはこれから債権者団体の総会に乗り込んでユメとネフティスの契約を維持することを宣言する。そしてネフティスにはノノミを返してもらうよう要求すると誓った。

 

「アヤネ、ホシノ先輩は?」

「あ、アヤネちゃん……?」

「ホシノ先輩は……書記に降格です!」

『自分の仕事を先輩に押し付けた……!?』

『ん、異議なし』

「これで先輩が契約に関する話を進めても、権限がないので効力はないです!」

 

 これで後は総会に殴り込みをかけるだけだが、準備のため動き出そうとしたシロコたちを電話の向こうのテフヌトが止めた。テフヌトはアヤネの名を呼び、少しの間沈黙する。

 

『……アヤネちゃん。今度はちゃんと守るから』

「……! う、うん」

 

 この一言で全員確信した。

 シェマタを巡る今回の件は、クロコたちのアビドスを破滅させた異変に関わっているのだと。

 しかし引き下がる選択肢などない。

 シロコたちは更に気を引き締めて挑むことにした。




本概念では対策委員会編3章と百花繚乱編1章は同時進行です。そうしないとゼアル先生たちが加勢してイージーモードになるので。

ご意見、ご感想お待ちしています。
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