◆三人称視点◆
「おかえり、ホシノ先輩」
「また、その言葉を聞く日が来るとはねぇ……」
"ホシノ、止めに来たよ"
「"先生"までいるし、手ごわそうだなぁ」
シェマタの実験施設、軍事要塞を彷彿とさせせる場所にてスオウを下したホシノにアビドス対策委員一同と"先生"が間に合った。ハイランダーの橘姉妹の協力があっての急行だった。
「でも、どうして? 列車砲を破壊しないと、アビドスは……いや、キヴォトスは大混乱に陥る」
「それでも、勝手に学校をやめないでください!」
「後輩に迷惑をかけるわけにはいかないからね」
「どうして一人で決めてしまうんですか? それでは、前と変わりません!」
「先輩が話し合いに応じないなら……捕獲します!」
こうして"先生"が指揮するアビドス対策委員4名とホシノとの戦いの幕が切って落とされた。……のだが、ホシノの実力はアヤネが想像を軽々と越してきた。事前にシロコと情報共有していたにも関わらず、だ。
「はっきり言っておく。ホシノ先輩は強い。キヴォトスでも最強かもしれない」
「最強格の一人なのは分かりますけれど、やっぱりホシノ先輩が召喚する《ラーの翼神竜》が強すぎるんですか?」
「ホシノ先輩のラーは鬼に金棒なだけ。ホシノ先輩の場合はホシノ先輩だけでも強すぎる。こっちがカードをプレイしてる隙も与えてくれない」
このキヴォトスにおいて最強は誰か? との質問でよく名前が挙がる生徒たちでも得意とする戦法はそれぞれ異なる。ネルやミカは相棒のモンスターを召喚してともに戦うことを得意とし、ホシノは単独での戦闘を好む。ホシノがモンスターを召喚する際は相手がモンスターを召喚した際の応戦要員に過ぎない。
そのため、シロコが間合いを置いて《青眼の白龍》を召喚しようと試みてもホシノは一気に踏み込んで間合いを詰めてくる。彼女にとっては全身を覆うほど大きい盾すら武器になる。鈍器にするもよし、シールドバッシュするもよし。何なら投擲してしまうことだってある。
「こういう場合、後列から潰すのが定石だよね」
「えっ!?」
そして、ターゲットを取れる盾役がいない今のアビドス一行相手にホシノが後ろへ回り込むなど造作もない。セリカ、シロコ、ノノミを突破され、後方で援護射撃をするアヤネの軍用ヘリに盾を投げつける。回避する暇無くプロペラを壊されて制御不能に陥り、煙を上げて墜落してしまった。
「まず一人。次」
"セリカ! スーパーハイテンションになってノノミと位置交代を!"
「んぁーっ、マジムカついてきたぁ!」
"シロコ! ドローンでセリカとノノミの援護を!"
「ユニット起動。火力支援を始める」
地面に激突する前に脱出したアヤネをノノミが抱きかかえる。セリカが呼び出してホシノに接近。迎え撃とうとするホシノをシロコと彼女のドローンが妨害する。ホシノは指揮官を潰そうと銃口を向けようとし……"先生"を狙ってどうする冷静になれ、と自分を叱った。
セリカがその隙を絶好のチャンスだとばかりに狙い撃とうとするが、ホシノは手で何か手繰り寄せる動作をする。単なるジェスチャーかと思ったが、次の瞬間、軍用ヘリの墜落に巻き込まれたホシノの盾が彼女の元に飛んで戻って来るではないか。何故、と思う間も無く、盾を構えて全身をガードしたホシノがセリカを狙う。
("そうか、ホシノの盾はデュエルディスクの機能も兼ね備えてる。リアルソリッドビジョンのワイヤーか紐で引き寄せたのか……!")
「今度はおじさんの番だよ~」
ホシノの前進しつつの射撃がセリカを襲う。相打ちを狙おうにも盾どころかホシノが張ったシールドに阻まれて傷一つ負わせられない。フルヒットされたセリカはたまらず膝から崩れ落ち、砂の上に倒れ込んだ。
「狙いは正確……逃さない……!」
シロコはリアルソリッドビジョンによる大物釣りでホシノを攻撃。シールドは割れたが衝撃は盾でいなされてしまった。ノノミがホシノに弾丸の雨あられをお見舞いするお膳立ては出来た。
「覚悟してくださいね~!」
「それだけ? おじさんガッカリしちゃうな~」
ノノミのマシンガンが火を吹く直前、ノノミの顔面に何かがめり込んだ。不意打ちだったこともあってノノミは一発で気を失い、仰向けに倒れ込んでしまう。そんなノノミの傍に彼女を襲った石畳のブロックが転がった。
何のことはない。盾がホシノの身体から外れて懐ががら空きになり、かつ銃の照準が向いていなかったことで油断したのだ。敷地内に敷き詰められた石畳を蹴り上げて放たれた飛び道具、それがホシノの身体能力と合わされば充分な威力を持つ攻撃となる。
既にアヤネ、セリカ、ノノミが戦闘不能になっており残ったのはシロコただ一人。ホシノは隙だらけだったが、おそらくこれも誘っていると判断してシロコは間合いを保った。
「もうやめよう。4対1でも勝てなかったんだから、一人で来たところで結果は分かってるでしょ」
「ん、今度こそ負けない。秘策があるから」
「秘策? 面白いじゃん。おじさんに見せてみなよ」
「なら遠慮なく行かせてもらう」
ホシノがとっさにその場から飛び退いたのは直感によるものだった。直後、ホシノがいた位置が爆発を起こす。シロコの挙動も見逃していないし彼女のドローンにも注意を配っていた。"先生"が何かした様子も無く、ノノミたちも戦いの行方を見守るだけ。
なら、とホシノが瞳だけ動かして周囲を見渡し、天空にいる筈のないドラゴンが飛んでいるのを目にした。
「《青眼の白龍》……!?」
シロコのエースモンスター、キヴォトスでも一番有名なモンスターだろう。しかしシロコが召喚していないとは断言出来る。そんな余裕は与えていなかった。まさか"先生"のタブレットの常駐AIが何かしたのか?
そこでようやく気づいた。ソリッドビジョンでカードの発動を示す演出がされているのは、シロコのドローンだと。魔法カード《融合》が発動され、大空を飛ぶ白い竜は三つ首の究極竜へと進化する。
「ドローンにデュエルAIをインストールした。今私のデッキはドローンの中。これで私が戦ってる間にドローンがデュエルモンスターズで援護してくれる」
「うへぇ。一人でタッグデュエルしてるようなもんじゃん」
「普通の手じゃホシノ先輩には勝てない。これが今私に出来る全力全開」
「なら、受けて立つよ」
しかしさすがのホシノもシロコと《青眼の究極竜》が相手では分が悪かった。ホシノがカードのプレイングをするなら一旦銃をホルダーにしまわなくてはならず、「ホルス」モンスターやラーでの迎え撃ちは難しい。
なら、とホシノは盾を地面に突き刺して装備した左腕を解放。右手で射撃しつつ左手でデッキからカードを抜いてフィールドにセットした。《青眼の究極竜》の攻撃が直撃して吹っ飛ばされそうになるが、何とか身体で盾を支えて堪えた。
「起動せよ、《ラーの翼神竜》!」
羽ばたいたのは、黄金の太陽神竜だ。
先日相手にした超弩級砲塔列車シェマタ、そしてニセホシノが召喚したラーなど比ではない圧倒的なプレッシャー。神に逆らってはいけないという生命としての本能からくる恐怖と畏怖。絶対的存在が今、シロコの前に姿を表した。
ホシノのラーを敵として初めて見るセリカは絶望のあまり漏らしそうになってしまった。アヤネは涙をこぼしながら悲鳴をこらえるのが精一杯だ。ノノミもラーと相対したのはこれが初めてで、味方でないとこんなにも自分がちっぽけに感じるのか、と歯を震わせた。
「生贄なしで召喚されたラーなんて怖くない。もし攻撃力4,000だったとしても《青眼の究極竜》には勝てないよ」
「そうだね。だからこうするのさ」
するとどうしたことか、ホシノの身体が足元から段々と煙となって消えていくではないか。そして煙は霧散するのではなくラーへと収束していき、やがてホシノの姿はラーの頭部に現れた。ラーと一体化して。
「《ラーの翼神竜》第二の効果を発動。私自身とラーを合体させる。太陽神合一!」
「ホシノ先輩とラーが一体化した……! 本気だね」
しかし、そんな相手を前にしてもシロコの闘志は揺るがなかった。
ホシノがラーと合体している間にドローンのデュエルモードをオートからマニュアルに切り替え、ソリッドビジョンの空中フィールドで手札を確認する。
「私は魔法カード《絶望の宝札》を発動する。デッキからカードを3枚手札に加えて、残りは墓地に捨てる」
「うへぇ、さすがにデュエルモンスターズに疎いおじさんもそれはぶっ壊れカードだって思うんだけどなー」
「元は連邦生徒会専用カードだって。でぶシロコがくれた」
正確にはクロコが向こうの世界で【ギャラクシー】使いのアオイを倒した際に奪い取ったカードだ。しかし「エーテリック」モンスターエクシーズにデッキを切り替えたクロコには使いようもなかったし、ゼアル先生のデッキと混ぜ合わせた今も使い道が無い。なのでシロコにあげたのだった。
「それから、《青眼の究極竜》をリリース」
「えっ!? 《究極竜》を……!?」
「究極のドラゴンから召喚できる、全てを消し去る光の龍」
ラーと対峙する《青眼の究極竜》の全身にヒビが入り、光が溢れ出した。そしてラーに負けないほど眩く輝くと、蛹から羽化した蝶の如く《究極竜》から光の化身たる竜が姿を表した。
「現れて、《青眼の光龍》!」
《ラーの翼神竜》と《青眼の光龍》。この一大決戦をノノミたちも"先生"も固唾を飲んで見守る。ホシノは《青眼の光龍》とシロコ両方に気を配り、シロコはラーとホシノを警戒する。
「《青眼の光龍》の攻撃力は墓地のドラゴン族モンスター1体につき300ポイントアップする」
「あー、納得。それで墓地を肥やしたのか」
「更に装備魔法《使い捨て学習装置》を装備。墓地のモンスター1体につき200ポイントアップする」
「そのカードにチェーンして永続罠《カノプスの守護者》を発動。手札から《ホルスの栄光-イムセティ》を特殊召喚。ラー第一の効果で生贄に捧げて、その攻撃力分ラーの攻撃力をアップさせるね」
「くっ……! 《王の棺》で次の生贄要員を召喚される前に倒す。シャイニング・バースト!」
「迎え撃つ。ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
《青眼の光龍》の口から破壊光線が放たれ、《ラーの翼神竜》の口からプラズマ光弾が発射された。双方の攻撃は空中で激突し、辺りを覆い尽くすほどの発光と大爆発を巻き起こした。
そろそろ《青眼の光龍》はリメイクしてほしいところ。映画版の効果でも今では弱いので効果マシマシで。
ご意見、ご感想お待ちしています。