Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ヒカリ、シェマタを爆散する

 ◆三人称視点◆

 

 光の龍と太陽神は消え、融合が解除されたホシノは地面に叩きつけられた。シロコも衝撃波をまともに受けて地面を転がる。"先生"はとっさに伏せながら《ゴゴゴゴーレム》に盾になってもらって防いだ。

 

 爆発と光が収まり、ホシノはよろけながらも立ち上がる。シロコもまた膝に手をつきながらも何とか立ち上がった。

 

「……強くなったね、シロコちゃん」

「はぁ……はぁ……」

 

 シロコは自分のドローンが火花を発生させ機能停止していて、もう先程の戦法は使えないことを確認。次に銃の残弾と手榴弾の個数を視線をホシノから外さずにチェック。ホシノを倒し切るには心もとないが、やるしかなかった。

 

"もう充分じゃないかな、ホシノ"

 

 そんな戦闘の意思を見せるホシノに"先生"が語りかける。

 "先生"だけではない。アヤネも、ノノミも、セリカも、立ち上がってホシノに訴える。

 

「これは先輩だけの問題じゃありません! 対策委員会の……いえ、アビドスの問題です!」

「そうよ、一人で背負う必要なんて無いわ!」

「セリカちゃん……」

「話してくれていれば、一緒に考えられたのに……」

「アヤネちゃ……ううん、アヤネ会長」

「アヤネちゃん、で良いです……」

「アヤネちゃん……」

 

 臨戦態勢だったホシノの身体から力が抜けた。腕がだらんと下がる。

 

「……ユメ先輩を殺したのは私なんだ」

「!? ……先輩」

「……分かってる。あれは事故で、私のせいじゃない」

 

 ユメはどんな時も生徒会長として頑張った。優しくて、心配性で、何があってもホシノを抱きしめた。けれど、そんなユメが残したものを、自分は何も守れなかった。いつも不満を漏らして、怒ってばかり。あれだけ思い出を受け取ったのに、お礼を言う機会すらない。

 

 そう思いを打ち明けるホシノ。ノノミたちは今まで知らなかった、ホシノが必死に隠していたホシノの心の闇を一部だけでもようやく見れた、と思った。そして、そんなホシノに寄り添わないわけがなかった。

 

"帰ろう、ホシノ"

「……先生」

 

 そんなホシノに"先生"は歩み寄り、手を差し伸べた。

 ホシノは"先生"を、そして自分に笑顔を見せる後輩たちを見つめる。

 

"もう充分苦しんだよ"

「帰りましょう、対策委員会に」

「そうよ、先輩」

「私たちが一緒にいます」

「ん」

「……うん。ありがとう、みんな」

 

 ホシノはその手を取ろうとした。

 これでホシノがシロコたちと変える場所に戻り、騒動は収束する。

 この場にいた誰もが、ホシノ本人もそれを信じて疑わなかった。

 

 しかし、そんな幕切れを、悪意が許さない。

 

「《神縛りの塚》、発動……。起動しろ、列車砲シェマタ……!」

 

 ホシノが対策委員会と戦っている隙をつき、スオウはシェマタの機関室に侵入、11番目のスロットに《神縛りの塚》をセット。シェマタを起動させたのだ。あまりの大質量が動き出したことで地響きが鳴り、重い駆動音と共にシェマタが走行を始める。

 

「忌まわしきアビドス高等学校の歴史も、今日で最後だ! このシェマタで、アビドスが求めた神の力で何もかも吹き飛ばしてやる!」

「……!」

「列車砲を止めたいのなら、来ると良い! 「大オアシス駅」にな!」

「っ」

 

 スオウが通信を切った直後、ホシノは盾を畳んで背負い、シェマタを追いかけるべく足を動かし始める。止めようと立ちはだかったシロコを銃で攻撃して倒してしまう。

 

"ホシノ……!"

「ほ、ホシノ先輩……!」

「……ありがとうね、みんな。でも、この苦しみは私の物だから」

「ホシノ、先輩……駄目……」

「列車砲は私が壊す。本当は、二年前に解決しなくちゃいけなかったんだ。ユメ先輩も……きっと同じ選択をしたはずだから」

"待って、ホシノ!"

 

 ホシノは"先生"たちの制止を聞かず、駆け出した。もはやホシノに追いつけるほどの体力が残っていなかったシロコたちは彼女の背中を見つめるしかなかった。ここまで自分が無力だとは、と"先生"は自分に憤る。

 

「先生……お話ししたいことが……」

 

 ここでノノミはようやくあの列車砲シェマタの正体について"先生"たちと情報を共有した。過去のアビドスが《ラーの翼神竜》の再現を試みたこと、しかし制御法が無くて発射すれば神の怒りを買う失敗作なこと、ユメがシェマタの権利をアビドスに集約させて廃棄処分しようとしたことを。

 

「《神縛りの塚》でシェマタを……ラーの力を制御出来るかは分かりません。もしかしたら制御不能になって自壊しちゃうかも……」

「神を召喚することが最優先……? アビドスってそんなだったの……?」

「ん、でも今はそんなことない。きっとそのユメって人がホシノ先輩に伝えなかったんだと思う」

「じゃあホシノ先輩が過去のアビドスの妄執を知る最後の一人なんですね……」

"……"

 

 アヤネが感じる悪意、"先生"が気になる誰かの視線。

 あまりに偶然が重なり過ぎてまるで何者かが執筆するシナリオに沿ったかのような感覚。

 そして"先生"をアビドスに合流させまいとしたテロ行為。

 

 それらの腑に落ちなかった点が、プラナの報告で一本の線で繋がった。

 

「"先生"、今まで感じていた視線の正体が分かりました」

 

 裏で糸を引く今回の敵。その名をプラナは語った。

 

「正体はゲマトリア所属の「地下生活者」です」

 

 

 ◆◆◆

 

 

 地下生活者は"先生"に勝負を挑んでいる。

 地下生活者は小鳥遊ホシノを利用して何かを企んでいる。

 そんなプラナの推測を聞き、ホシノを止めなくてはならないと改めて誓った。

 

 それはシロコたちも同じ思いだ。

 満身創痍であっても立ち止まるわけにはいかない。

 "先生"たちはもう役目を終えた実験施設を後にし、追跡を開始した。

 

「待ってたわ、小鳥遊ホシノ」

 

 そして、単独でシェマタを追うホシノの前に、ヒナが立ちはだかる。

 "先生"からの救援に答えて、他の風紀委員を従えずに一人で。

 ここに、キヴォトス最高峰の実力を持つ両者の死闘が幕を開ける。

 

 戦いは一見互角にも見えたかもしれないが、ホシノはここまで連戦に次ぐ連戦。しかも一体化したラーをシロコに破壊されており、怪我と疲労が蓄積した状態。万全の状態で待ち構えていたヒナが徐々に有利に戦いを進めていく。

 

 やがて、列車ごと崖下に転落したホシノは体を引きずってでも向かおうとするも、ヒナが怪我を負いながらも立ちふさがる。それでもホシノは強引に突破を試み、ヒナに食い止められた。

 

「そのまま横になっていなさい。あなたの負けよ」

「……どうして? アビドスの問題に、首を突っ込んでくるなんて……」

「"先生"に頼まれたから。小鳥遊ホシノを止めてほしい、って。……それに、私も無関係じゃない」

 

 ヒナにとって二年前の万魔殿議長、雷帝の異名を持つ暴君の遺産は全て破壊対象だ。雷帝の置き土産は何度もキヴォトスを危険に晒してきた。二年前のゲヘナは雷帝の実験場、ゲヘナの生徒は雷帝のモルモット。そんな悪夢の残滓は全て消さねばならない。

 

 しかし、ヒナはそんな最優先事項を"先生"に託し、"先生"の願いを聞いてホシノを止めに来た。ヒナは信じていたから。"先生"が何とかする、と。"先生"がそう言ったならヒナは疑わないし、ホシノだって分かるはずだ。

 

「"先生"も、アビドスの子たちも、言っていたはずよ。私のとっても、そうだったように……」

「……」

「それでも、あなたは止まらなかった……いや、止まれなかった。梔子ユメがいたから」

「……!」

「確かに梔子ユメがシェマタの破壊を目指したのは事実。けれど、それは梔子ユメがアビドスの妄執にあなたを巻き込みたくなかったからよ。その証拠に、梔子ユメはシェマタを始めとしたアビドスの暗い側面を、決して話題にしなかったでしょう?」

 

 そうだ。ホシノは何も知らなかった。アビドスが神の降臨させることを命題にしていただなんて。自分がシェマタの犠牲にされそうだったなんて。ユメは明るいユメをホシノに見せ続けたから。

 

「梔子ユメの死に責任を感じる必要は無いわ。そして、梔子ユメがやり残したことをあなただけが背負う必要だってね。アビドスにはあなた一人じゃないんでしょう? 梔子ユメはあなたにアビドスの業を背負えと願うような人だったの?」

「……違う。ユメ先輩は……」

「だったら、もうあなた一人で戦う必要は無いわ。列車砲は"先生"たちが止めてくれるもの」

「……!」

 

 

 ◆◆◆

 

 

 同時刻、砂漠横断鉄道にて。

 

 射程距離500kmのシェマタなら実験施設のあった場所からもアビドス高等学校を狙えたが、それはあくまでもターゲットを衛星で捕捉するのが必須条件。スオウの腕では地平線の遥か彼方の目標までは狙い撃ち出来ない。

 

 故にスオウはシェマタを走らせてアビドスを狙える位置まで移動していたのだが、その後ろから猛追する列車の姿が段々と迫ってきていた。スオウが改めるまでもなく、ハイランダーの高速列車だ。

 

「もう少しで列車砲に追いつきます!」

「シロコちゃん、アヤネちゃん、セリカちゃん、飛び乗る準備を!」

 

 乗車しているのはアビドス一行と"先生"、運転しているのはヒカリとノゾミ。リミッターを外しての爆走でみるみるうちにシェマタとの距離が詰まっていく。障害物の無い砂漠を突っ切る線路なのを加味しても、追いつくのはすぐだ。

 

「ていうか、シェマタのオリジナルをぶっ壊しちゃえばいいんでしょ? 肉眼で見えるならもう射程距離じゃない?」

「らくしょーで壊せるー」

「さすがにまだ数キロメートル先のシェマタを破壊するには難しいんじゃあ?」

 

 疑問を口にしたアヤネだったが、ようやく気づいた。

 そもそも列車砲はハイランダーの標準武装じゃないか、と。

 肉眼で捉えられるならレーダーでの捕捉も必要ない。砲手の腕次第だ。

 

「分かりました。やっちゃってください!」

「おっけー、じゃあ早速やっつけちゃおう!」

「おー。ヒカリは永続魔法《千年の啓示》の(1)の効果をはつどー。《ラーの翼神竜》を墓地に送って《死者蘇生》を手札に加えるー。《千年の啓示》の(2)の効果でこのカードを捨てて魔法カード《死者蘇生》をはつどー。《ラーの翼神竜》を特殊召喚ー」

 

 アヤネやセリカたちがぎょっとしたのも無理はない。オフィシャル版だとしても先程ラーとは死闘を繰り広げたばかりだったから。そしてノゾミとヒカリがラーを呼び出した理由は一つしか無い。

 

「私は《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を妥協召喚! そんでレベル10の《ナイト・エクスプレス・ナイト》と《ラーの翼神竜》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

「エクシーズしょうかーん」

「パヒャヒャ! ランク10、《超弩級砲塔列車シェマタ》! 出発進行!」

 

 列車砲シェマタを超弩級砲塔列車シェマタで狙い撃つ、という何ともシュールな光景に"先生"もアヤネたちも苦笑いを浮かべるが、狙われるスオウにとってはたまったものではない。

 

『やめろぉこのバカども! お前らにシェマタを破壊する権利など……!』

「えー、ハイランダーへの苦情や問い合わせは事務官へどうぞ。私ったら超親切だからさ、きちんと転送しとくね!」

『ま――』

「ぽちっとなー」

 

 一方的にスオウからの通信を切ったノゾミとヒカリはシェマタでシェマタに照準を合わせた。向こうのシェマタが何か動きを見せているようだが、どうあがいてもこちら側が攻撃する方が早い。

 

「《超弩級砲塔列車シェマタ》の効果はっつどう! オーバーレイユニットを1つ取り除いて、列車砲シェマタを破壊するね!」

「「ラーの翼神竜」カードをエクシーズ素材にしてる時、耐性を貫通するー」

「ゴッド・フェニックス・キャノン!」

 

 シェマタから放たれた不死鳥の一撃が鳴き声を上げ、シェマタを破壊した。

 スオウの執念……いや、迷走とともに。




ホシノ対ヒナの激闘は全カットです。原作以上の白熱したバトルを書くのは自分には無理ゲー。というか書いても原作通りの結果になるので、別のシーンに注力します。
原作でのシェマタは結局ホシノ反転の前座になってしまったのが惜しいところ。せめてゲーム的な戦闘があれば違ったでしょうに。

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