Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

151 / 195
クロコ、応援に駆け付ける

 ◆三人称視点◆

 

「……。ゆめ、せんぱ……」

 

 倒れたヒナ。暴走するホシノ。

 そんな光景を目の当たりにして"先生"は戦慄してしまう。

 "先生"は生理的反応を無理やり押さえ込み、変わり果てたホシノを見据えた。

 

"いったい何が……!?"

「ほ、ホシノさんは……」

「……存在が反転しました。もう、これでは……」

「ほ、方法はないのでしょうか!?」

「……否定。ありません」

 

 プラナの無慈悲な見解にアロナは愕然となる。"先生"も絶望しそうになるが、ここで諦めるわけにはいかない。もう一人のシロコがそうだったように、今のホシノだって声が届くかもしれないから。

 

「今のホシノさんは、恐怖へと反転しホルスになりました。このままでは世界を崩壊させていくでしょう」

"……! ……。そんなこと、ホシノにさせるわけにはいかないね"

 

 決意を新たにした"先生"はそこでようやく付近で倒れたヒナの姿を捉える。身体が急速に冷えていくのを味わいながらヒナへと駆け寄り、命に関わる怪我が無く、意識がはっきりしていることを確認。安堵の息を漏らした。

 

"ヒナ、大丈夫!?"

「止められ、なかっ……」

 

 "先生"が間に合って安堵したのか、ヒナの意識は暗転し、身体から力が抜けた。

 "先生"はヒナの身体を抱きかかえて少し離れた位置に移動させる。

 

 他のアビドス生徒たちも驚きの声をあげながらもホシノを止めようと立ち塞がた。

 

「あ、アレがホシノ先輩なの……!?」

「何が起きて……」

「ホシノ先輩、しっかりして!」

 

 ホシノの双眸がシロコたちを捉える。ホシノは新たに現れた者たちを敵と認識したのか、銃口を向け、ためらわずに引き金を引いた。発射されたのは鉛玉ではなく、周囲一帯を薙ぎ払う衝撃波そのもの。

 

「きゃああぁぁっ!?」

 

 悲鳴を上げて最接近していたセリカが、次にシロコとノノミが、最後に"先生"が吹き飛ばされて地面を転がる。倒れたセリカが顔を上げると、自分たちのいた場所は地面が大きくえぐれているではないか。

 

 アロナすら防ぎきれない攻撃。"先生"は無力感に襲われる。今度ばかりは諦めざるをえないのではないか。死んだ人は蘇らせられないし、過去だって変えられない。生徒のような神秘も、ゲマトリアのような技術も、Z-ONEのような科学も持ち合わせていない、ただ生徒に寄り添うだけしか無い大人なのだから。

 

 そんな絶体絶命の状況を更に悪化させる要因が、顕現する。

 

 稲妻とともに姿を見せたのは、かつてユメが命をかけて退散させた災厄、セトの憤怒が姿を表したのだった。まるで反転したホシノ、ホルスの神格に応じる……いや、その存在を否定するために。

 

 ホシノの頭上に浮かんでいた邪神アバターもまたセトの招来と共に姿を変容させる。それはこの場で最も厄介なセトの姿を象る。

 

 セトはアバターを敵と見なし、アバターは障害を排除するため、戦い始めた。

 

 神々の戦いはもはや介入できるレベルを越えており、巻き込まれないようその場を離れるのが精一杯。セリカとノノミは互いを支え合って距離を離すが、シロコはその場に留まってホシノを見据えたままだ。

 

「今、ホシノ先輩を止められるのは私だけ」

 

 セリカとノノミが必死に呼びかけても2人の声はシロコに届かない。シロコは決意と共に虚空へと手を伸ばすだけ。シロコの目は決意が込められていたが、それがかえってノノミたちに焦りをもたらす。もうシロコが戻ってこれないところに行ってしまうような気がして。

 

「アヤネも、セリカも、ノノミも、ホシノ先輩も、"先生"だって絶対助ける」

 

 手を伸ばす。シロコには見える、この状況を解決する力の源が。

 もう取り返しがつかなくなったって構わない。

 そのために、自分は今ここにいるのだから。

 

 そうして伸ばされたシロコの手が出現した存在、色彩へと届く直前……、

 

「そんなものに手を出しちゃダメ」

 

 砂漠へと降り立ったクロコに掴まれた。

 

 クロコだけではない。続いて空からテフヌトが地面に着地。最後にゼアル先生が五点着地してきた。ノノミが空を見上げると、クロコたちを運んできただろう複数機の《ゴブリンドバーグ》がサムズ・アップしてからソリッドビジョン体を消していく光景を目にする。

 

「ん……大丈夫。砂狼シロコは強い。あのホシノ先輩にだって負けない」

「あのホシノ先輩ズルすぎるぐらい強いのよね……。前みたいに勝てるかな?」

「あの時いなかった"先生"がいるから百人力。今度は誰一人犠牲は出さない。そうだよね、"先生"」

"うん。任せて"

 

 ゼアル先生の身体が光の粒子に包まれアストラル体と化した。そして変形、最後にはホープ・ゼアルの姿となる。"先生"としてクロコたち生徒を指揮していた頃と違い、今度はクロコたちと肩を並べる。

 

「じゃあ、勝負しようか、ホシノ先輩」

 

 

 ◆◆◆

 

 

 クロコたち3人とホシノの死闘は激戦となった。あまりの激しさにシロコたちはその場に留まるのが精一杯。加勢しても足手まといになりかねない。これは実力の開きとは別の要因が大きい。

 

"シロコ! ノノミのマシンガンで一斉射撃!"

「ん、お仕置きの時間」

"セリカ! その衝撃波はバナナボートで回避!"

「飛んでくわよ!」

"シロコ! ドローンで援護を!"

「ドローン、作動開始。火力支援を始める」

"そして私が……ホープ剣・フューチャー・スラッシュ!"

 

 ゼアル先生を中心にクロコとテフヌトが息の合ったチームワークでホシノを翻弄していたからだ。もしクロコとテフヌトが"先生"の指揮下なら話は違うだろうが、ここで下手に横槍を入れて邪魔になってしまってはいけない。

 

 クロコたちはゼアル先生の巧みな指揮のお陰で戦局を有利に進める。テフヌトはホシノがそれほど圧倒的でなく困惑してしまうが、それは彼女の実力が以前の世界で反転したホシノと戦った頃より大きく向上したのと、ゼアル先生の指揮が本能でのみ戦う今のホシノと相性抜群なのが主要因だ。

 

「これ、行けるんじゃない?」

「ここままいけばホシノ先輩も助けられるかも……」

「……!? でぶシロコ!」

 

 ホシノを追い詰め始めたクロコたちだったが、突如戦局は一変する。なんとセトと対峙していた邪神アバターがその姿を変え、なんとクロコの姿を模してクロコたちの前に立ちはだかったからだ。この場でセトではなくクロコが最も脅威と見なされたが故だった。

 

 邪神クロコがクロコへと襲いかかる。姿が漆黒に染まっている以外は戦法、武装、何もかもがクロコと同じ。ただ一つ、表情のない顔と何も映さない虚無の瞳だけが自分たちとは相いれぬものだと物語っていた。

 

「っ! 《邪神アバター》!?」

「《邪神アバター》は絶対に二人がかりじゃないと倒せない……」

"邪神は私とシロコで何とかする。セリカはこっちの"先生"たちと連携してホシノを止めようか"

「先生、セトが……!」

 

 邪神アバターがターゲットをクロコたちに切り替えたため、セトの憤怒がフリーとなる。テフヌト一人ではさすがに今のホシノと渡り合えず、シロコや"先生"たちが総出で阻む他ない。

 

 結果、セトはこの場の脅威であるホルスことホシノとアヌビスことクロコをまとめて葬るべく、エネルギーをチャージし始めた。慌てて"先生"は《希望皇ホープ》を召喚し、セトによる雷撃、刹那を駆ける矢をムーンバリアで阻む。

 

"私は《RUM-ヌメロン・フォース》を発動し、《希望皇ホープ》でオーバーレイネットワークを再構築! カオスエクシーズ・チェンジ! 現れろ、CNo.39、《希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》!"

 

 "先生"がランクアップさせたホープの進化先はエデン条約の異変でヒエロニムスを撃破したCNo.だ。《ホープレイ・ヴィクトリー》の効果は相手モンスターの効果を無効にしてその分攻撃力をアップさせるもの。

 

"私は《希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》の効果を発――"

「ダメ、"先生"!」

 

 これで一気にかたを付けようとして、テフヌトの声で何とか留まった。

 

「《邪神アバター》はこの場にいる一番強いヤツの姿になるのよ!」

「今はセトの憤怒より強い私の姿になってるけれど、《ホープレイ・ヴィクトリー》の効果でセトの憤怒の攻撃力が加算されたら……」

"シロコが邪神ホープレイ・ヴィクトリーに負けてしまうから!"

 

 これがテフヌトやクロコがモンスターを迂闊に出さない理由だった。劣勢ながらもアバターと戦えている今だからこそ他のメンバーでホシノとの戦いに専念出来るのだ。セトとアバターがにらみ合いを続けていたらスムーズにことが運べたのだが、文句を言っても仕方がない。

 

"なら、私は《RUM-ゼアル・フォース》を発動して、《ホープレイ・ヴィクトリー》でオーバーレイネットワークを再構築! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れろNo.39! 《希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!"

 

 "先生"は再びRUMを発動。《ホープレイ・ヴィクトリー》が再びアストラル体へと姿を変えて異世界への渦へと消えた。異空間でホープへとホープレイ、ホープレイV、ホープレイ・ヴィクトリーなどの力が結集し、新たな戦士となり姿を表す。

 

"《ビヨンド・ザ・ホープ》の効果を発動! 《ビヨンド・ザ・ホープ》がエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力は0になる!"

 

 《ビヨンド・ザ・ホープ》の頭上から光線がセトへと放たれる。セトは手の部位で光線を防御。それでも構わうものかと《ビヨンド・ザ・ホープ》の光線は注がれ続けるが、セトは弱体化どころか怯みもしない。

 

"き、効いていない……?"

「セトの憤怒の耐性は多分三幻神に匹敵する。だからモンスター効果は……効かない」

 

 迂闊に攻撃力で上回れない、更に相手を弱体化出来ない。

 もはや打つ手がない。

 愕然とする"先生"に向けてセトの憤怒の雷が降り注がれようとしていた。

 

「"先生"!」

 

 シロコが"先生"を守るべく駆け出す。その隙を狙うホシノをテフヌトが必死の思いで食い止める。最前線でホシノと戦い合うテフヌトの制服はボロボロ、ところどころから出血や打撲痕が見られる。満身創痍も同然だ。もう時間の猶予は残されていなかった。

 

 シロコが"先生"を押し倒し、雷鳴が耳をつんざいた。

 しかし、いっこうに自分たちに雷撃が襲ってこない。

 シロコが恐る恐る目を開いて上空を見上げると、信じられない光景を目にした。

 

 なんとセトの憤怒に空を引き裂く巨大な落雷のごとき太さの雷撃が襲いかかり、セトの憤怒が地面に倒れ伏したからだ。轟音とともに砂埃が舞い上がり、セトが纏う雷が弱々しく光度を下げ、火花が周囲に飛び散る。

 

 雷撃が放たれた先にいたのは、巨大な赤いドラゴン。

 この場にセト、アバター、ホルス、アヌビスといった神秘がいてもなおその存在感は計り知れなかった。

 

「《オシリスの天空竜》……」

 

 アビドスの生徒たちはホシノが召喚したラーと対峙した直後だから分かった。あのオシリスはオフィシャルカードのソリッドビジョン体なんかではなく、本物の神なのだと。

 

 そんな圧倒される一同、暴走するホシノすらも含まれている、の耳に何やら楽器の音色が入ってきた。音程を所々外してお世辞にも上手とは言えない、気の抜けるハーモニカの演奏だった。

 

 困惑する先生と生徒たちだったが、一部の者は大きく反応した。意識を取り戻したヒナが「嘘……」と呟きながら目を見開き、ホシノは攻撃の手を止めて音の出る方向を見つめるばかりだった。

 

 丘の上にアビドスの生徒がいた。彼女が下手な演奏を披露していたのだ。

 

「ユメ……せんぱい……?」

「冥府の底から……舞い戻ったよ、ホシノちゃん!」

 

 死んだはずの梔子ユメが、雲一つない青空のように澄み切った笑顔でホシノに答えた。




本概念で書きたかったシーンの一つがここです。ちなみにユメ先輩が実装されたら真っ先に引きに行きます。

ご意見、ご感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。