Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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Z-ONE、ゲヘナに出向く

 ――話は1日前に遡ります。

 

 Dホイールで生活圏から直接ゲヘナへとやって来ました。ゲヘナの開校時間に合わせてだったので日が昇る前に出発。久々のツーリングだったこともあって気分爽快。心が洗われるようでした。

 

 今回私を呼び出したのはゲヘナの生徒会に相当する万魔殿。何でも極秘作戦を決行するので引率してほしいのだとか。詳しい話は今日聞かせてもらうため、詳細は現時点でも存じていません。

 

 ゼアル先生は百鬼夜行に出張中。"先生"はオフィスワークの予定でしたがアビドスに出向くことになったのだとか。シャーレは3人体制になっても忙しいのですが、いつぞやのように徹夜をすることはなくなりました。

 

「ああ……おはようございます、ユウセイ先生」

 

 ゲヘナに到着した私を出迎えたのは万魔殿所属のイロハでした。彼女は気だるそうに会釈をして戦車に乗るよう促しますが、私のDホイールを目にして前言撤回。操縦手に指示を送って戦車を走らせます。

 

「万魔殿の幹部のイロハが直々に出迎えとは。そこまで重要な作戦なのですか?」

「ええ……極秘も極秘。何なら詳細はマコト先輩、私、イブキの3人しか知りません。特に風紀委員会には一切情報を漏らしていないほどです」

「徹底していますね……。風紀委員会と連携が取れない厄介事なのですか?」

「はあ、そうなんですよねぇ……。面倒くさいのでさっさと風紀委員会、特に風紀委員長と行政官は巻き込むべきだって思うんですけどね」

 

 風紀委員長と行政官……ヒナとアコでしたか。風紀委員会と万魔殿の仲がよろしくないのは知っていましたが、わざと距離をおいているのか互いに相手が気に食わないのかは存じません。しかし面倒事を風紀委員会に押し付けずに万魔殿で処理するとなると相当なのは分かります。

 

「あ、ユウセイ先生! おはよー!」

「はい、おはようございます。イブキ。今日も元気いっぱいですね」

「うん! 今日もイブキはぜっこうちょーだよ!」

 

 案内された応接室にいたのは飛び級でゲヘナに入学したイブキ。何やらお勉強の真っ最中だったようですが、私を見ると挨拶してきました。私も思わず顔をほころばせて挨拶を返します。

 

 そしてもう一人は大人の男……なのでしょうか。あまり詳しくない私が見ても高級そうなスーツに身を包んだ黒尽くめの男性は、私を見ると立ち上がり、淀みない動作で会釈をしました。

 

「あなたとこうして直にお会いするのは初めてでしたね、ユウセイ先生」

「あなたは……"先生"が言っていたゲマトリアの黒服、で合っていますか?」

「くっくっくっ。シャーレの先生方に認知されているとは光栄です」

 

 黒服、と最初に言い出したのはアビドスのホシノらしいですが、と名刺交換をして、お互いにネームプレートが置かれている席に腰を落ち着かせます。私、黒服、イロハ、イブキ、そしてマコトの5人が本日の会議の出席者のようです。

 

 マコトを初めとする万魔殿の皆さん女との接点は彼女たちがシャーレの担当になった時ぐらいしかありません。なのでゲヘナと親交を重ねている"先生"が来るべきとも思ったのですが、デュエルモンスターズの知識は私が一番上だと判断して指名してきたとのこと。

 

「キキキッ、時間通りだな。では、早速始めようじゃないか」

 

 指定時間の数十秒前になり、マコトが会議室に入ってきました。彼女は会議室内で一番豪華で柔らかそうな、所謂社長椅子に腰掛けます。そして他の万魔殿役員を退室させ、イロハに始めるよう促します。

 

 イロハは会議室内の照明を落とし、スクリーンにパソコンの画面を投影させました。映し出されたのは……アビドス自治区の広範囲地図? いくつかの箇所にバツ印が付けられ、日付と時刻が注記されています。

 

「前提条件として、ユウセイ先生はアビドス砂漠を彷徨う亡者について知っているか?」

 

 単刀直入に聞かれましたが返答するかは躊躇ってしまいます。しかし"先生"がヒマリたちと行ったデカグラマトンの預言者調査の際にイロハとイブキがビナーを対峙した後にマコトの言うアビドス砂漠の亡者と戦ったので、彼女たちは既に把握しているのでしょう。なら私から隠す情報はありません。

 

「2年前に亡くなった筈のアビドス生徒会長、梔子ユメのことですか」

「キキキッ、結構結構! じゃあ梔子ユメが実は死んでないが生きてもいない、アンデッド状態なのも把握してるんだろう?」

「そんなユメをイブキたちが助けようとしていることも」

「ふむ、そこまで分かっているなら話は早い。アレを見てくれ」

 

 マコトは満足そうに手を叩いた後、レーザーポインターでスクリーンに表示されたバツ印を指し示します。その箇所の日時は明日の昼頃のようでした。地図の表題はビナー出現予測地点と記されています。

 

「察しの通りこの地図にはデカグラマトン第3の預言者ビナーが次に出現する予測地点と日時を示した。明日、この地点でまずビナーを片付ける」

「そしてビナーの出現に呼応して現れたユメを倒す、ですか」

「キキッ、その通りだぞユウセイ先生。そして梔子ユメをマコト様たちが蘇らせるのだ!」

「どうやって? イブキが《死者蘇生》を発動させても効果が無かったのに?」

 

 マコトが顎をしゃくるとイロハは表示画面のページをスライドさせました。次に表示されたのは人とドラゴンのピクトグラム。双方が矢印を向け合っています。イロハがマウスを操作すると、ドラゴンにバツ印が付けられました。

 

「え、と……アンデッド状態のアビドス生徒会長が使役する《邪神イレイザー》をイブキが撃破して、それからアビドス生徒会長を蘇らそうとした……そして失敗した。それはご存知なんですよね?」

「ええ。《死者蘇生》を発動してソリッドビジョンで投影されたアンクが黒く染まり、破壊したところも映像で見ました」

「それは邪神と梔子ユメが相互関係にあるせいだ、とマコト様は見ている。梔子ユメがアンデッドで、邪神が邪神である限り、どちらかを引きずり戻そうとしたところで無駄ってことだな」

「だから、《邪神イレイザー》を撃破した後に、ユメちゃんの墓地に眠ってる《オシリスの天空竜》を蘇らさなきゃいけないの」

 

 漆黒のピクトグラムのうちドラゴンの方が純白の姿に変わりました。するとドラゴンから人に向けられる矢印も黒から白へと変わります。そして《死者蘇生》が表示されると人もまた白へと変わったのでした。

 

 理屈は分かりました。イレイザーを反転したオシリスとみなせば、イレイザーを再反転させればそれにつられてユメもまた蘇らせやすくなる、と。しかし問題はオシリスを通常の蘇生札で呼び戻せるか、でしょう。

 

「いかに《死者蘇生》が三幻神にも効果がある上級呪文だったとしても、邪神に堕ちた幻神獣を元に戻せるのですか?」

「キキキッ、心配するなユウセイ先生。オシリスの蘇生札はイブキが開発済みだ!」

「はい、これがオシリスを復活させる魔法カードだよ」

「《蘇りし天空神》……」

 

 イブキが私に差し出したのは私も見たことのない三幻神サポートカードでした。絵柄はおそらくは初代決闘王たる武藤遊戯の時代に武藤遊戯が名も無きファラオと最後のデュエルをした際の一場面がモチーフなのでしょう。

 

 もしイレイザーが顕現しているせいでオシリスが特殊召喚出来なくなっていても、神のために設計されたサポートカードなら召喚条件を無視して特殊召喚が出来る、という理屈でしょう。

 

「データ、シミュレート上は問題ありません。しかし三幻神、そして三邪神の力は未だ全容を解明できていません。この《蘇りし天空神》の効果が正常に処理されるかは実際に発動してみなければ分からないでしょう」

「なるほど。では懸念はその《蘇りし天空神》なのですね」

「オシリスについてはな。だがしかし、それから《死者蘇生》で本当に梔子ユメが蘇るかは全く分からん!」

「ユメちゃん、2年間ずっと邪神の仲良しだったから……」

 

 しかし、それでもマコトとイブキの表情が浮かないのはどうしてかと思っていたら、どうやらユメの状況はアビドスを彷徨っている現状で停滞しているのではなく、刻一刻と悪化しているそうなのです。

 

「梔子ユメは邪神イレイザーの影響もあってナイル川を西側に渡りきってはいません。言わば舟に乗って川を浮かんでいる状態。しかし手をこまねいていれば西側へと流れ着いてしまうでしょう」

 

 ここで黒服が初めて口を開きました。"先生"はどうも黒服に関していい感情を持っていないようですが、それは彼が以前カイザーと手を組んでアビドスで暗躍していたからのようです。今はこうしてマコトたちと一緒にいますが、おそらく彼は彼の目的のために途中まで道が一緒だから同行しているに過ぎないのでしょう。

 

 ナイル川。このエジプトを流れる大河は信仰上とても重要です。大河を隔てた東側、つまり太陽が昇る方が現世、太陽が沈む西側が死者の世界、冥界とされたほどに。つまりユメは刻一刻と死へと近づいているのですね。

 

「ここで大人しく生を終えられれば良かったのですが、梔子ユメはオシリスの天空竜を使役出来たことからも、とても強力な神秘を持っています。邪神イレイザーで染め上げられたまま死を迎えれば、冥界の神オシリスとして覚醒してしまう危険があります」

「そうなったら最後、このキヴォトスは死の世界と化すだろうな! ……あのお人好しを絵に描いたようなユメ先輩にそんな真似させられるか!」

「本当だったらもっと用意したかったんだけど……もう時間が無いの」

「梔子ユメが表舞台から姿を消した当時、オシリスに完全覚醒されるまでの猶予は約2年間と見込んでいました。それがちょうど明日になります」

 

 それは由々しき事態です。であれば《蘇りし天空神》が開発出来た以上、すぐにでも行動を開始ししてユメを救うべきでしょう。ユメの目を覚まさせられるか、との不安材料は残りっぱなしですが、躊躇っている余裕はありませんか。

 

「それで、今回はどうして私を招いたのですか? 《邪神イレイザー》は相手が多ければ多いほど力を増す神。いたずらに人数を増やすべきではないでしょう」

「くっくっくっ。その梔子ユメを蘇らせる際にユウセイ先生が必要なのですよ」

「私の……? あいにく私が所有する時械神といえどそれほど万能では……」

「ご謙遜を。ユウセイ先生が黄昏のホルスから何かを受け取ったのは我々ゲマトリアも存じていますよ」

 

 黄昏のホルス……? もしやゼアル先生たちの世界、向こうのキヴォトスにいた、反転したホシノのことを言っているのでしょうか? "先生"の話では黒服はホシノを暁のホルスと呼んでいたはずですが……。

 

 彼女から託されたのはゼアル先生を救うための切り札《FNo.0未来皇ホープ・ゼアル》、そして……魔法カード《真実の名》。これをもって武藤遊戯は名もなきファラオの名を伝えたのだそうです。

 

「これはユメのために使うものだと貴方は考えているのですね」

「ええ。暁のホルスの無念となれば限られていますから。ああっと、今そのカードについて説明しなくても結構。実際にその効果を見せてもらえば充分です」

 

 ……なるほど。重要な役目を任されましたか。

 それでは私も答えなければいけません。

 この場にいるマコトやイブキたちのみならず、ホシノたちの悲願のために。

 

「と、言うことで明日作戦を決行する! ま、ユウセイ先生も言った通り《邪神イレイザー》は人数が多いほど力を増す邪神。私は後方で見物するだけだがな!」

「私がイブキとユウセイ先生を虎丸に乗せてビナーに接敵。これを撃破した後にアビドス生徒会長を攻略します。主攻はイブキ、私がバックアップ、ユウセイ先生はサポートをお願いします」

「分かりました」

「ユウセイ先生! いっしょにがんばろうね!」

 

 元気いっぱいに意気込みを顕にしたイブキでしたが、その目には並々ならぬ決意が込められていました。そんなイブキをマコトは暖かかな眼差しで見守ります。マコトがイブキを大層可愛がっているとは聞いていましたが、単なる親愛とは違うような印象を覚えました。




マコトの出番は本来無かったのですが、原作でゲヘナ編が出る様子も無く本概念では今後出番がない可能性があるので、満を持しての登場です。

ご意見、ご感想お待ちしています。
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