Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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イブキ、ビナーを一蹴する

 次の日、早朝にゲヘナを出発した我々はアビドス自治区へと侵入。砂漠横断道路をひた走り、途中で道を外れて砂漠をひた走ります。

 

 今日もアビドス砂漠は雲一つ無い快晴で太陽の光が容赦なく降り注ぎます。湿気が無いのが救いです。黄金色に輝く砂が反射して輝いていて天地共に眩しく、ヘルメットのサンバイザー無しでは目がやられてしまいそうです。

 

「先生、虎丸の中とってもすずしいよ~」

「Dホイールはゲヘナに置きっぱなしにしても良かったんですよ」

「私はDホイーラーですので。それにいざ戦闘になれば的が2つあった方がいいでしょう」

「冷蔵庫の中にアイスもあるから、暑かったらイブキに言ってね!」

 

 虎丸、我々の世界ではティーガーⅠと名付けられた重戦車の速度は本来自家用車にも劣ります。しかしゲヘナ・アビドス間は高速鉄道で移動しても数時間かかるほど距離があり、重戦車のペースでは何日もかかってしまいます。

 

 しかし、現代化改修された虎丸は砂漠環境でもかなりスピードを出せています。さすがに速度を追求したDホイールには遠く及びませんが、スポーツカー一歩手前の速さで爆走する戦車というのは迫力があります。

 

 やがて、ゲヘナの計算通りにデカグラマトンの預言者ビナーが出現しました。砂漠が隆起し、噴火したように爆発。中から姿を見せた機械の大蛇は早速今回の獲物である私達の姿を捉え、機械音声で咆哮を上げます。

 

「あぁ……毎度毎度ビナーを倒さなきゃいけないなんて、面倒くさい。それで、今回はどうやって倒します? この前はラビエルで殴り倒しましたけど」

「たまにはこの子を使ってあげよっかなーって!」

 

 キューポラから頭を出したイブキはデュエルディスクを展開、落ち着いた様子でビナーを見据えました。ビナーもまた過去に己を撃破したデュエリストを感知したようで、心なしか怒りに燃えているようにも見えました。

 

「イブキは《暗黒の招来神》を召喚するね! 効果を発動してー《暗黒の召喚神》をサーチ! 《暗黒の招来神》をリリースしてー《暗黒の召喚神》をアドバンス召喚! 効果を発動してーこのカードをデッキから特殊召喚するよー!」

 

 《暗黒の召喚神》は確か遊城十代の時代にユベルに乗っ取られたマルタンが使っていたと記録されていました。しかし《暗黒の招来神》は初めて見ます。ユベルが見せなかっただけで存在はしていたのか、イブキのオリジナルカードなのかは分かりません。

 しかし、いずれにしても前回の《幻魔の召喚神》同様、このモンスターは……。

 

「降来して! 第一の幻魔にしてイブキの下僕、《神炎皇ウリア》!」

 

 三幻神に匹敵する力を持つ三幻魔を召喚するための下僕。

 イブキはまたしても正規ではない召喚方法で三幻魔を召喚してみせたのです。

 

 その赤き幻魔竜が相手と同程度の巨体でビナーと対峙します。

 

 しかし、確か《神炎皇ウリア》は墓地の罠カードの枚数を参照して力を増すモンスター。脱法召喚したウリアの攻撃力は0。単なる木偶の坊を立たせたわけではないでしょうし、ここからどう墓地肥やしをするのか、見せてもらいましょう。

 

「そう言えば……いつもの【三幻魔】デッキでもないんですね」

「だってウリアちゃん、ラビエルとかハモンとかといっしょだと強くないんだもん。つよつよにしたいなら……えっと……そう! 「せんよーこーちく」じゃないとだめなの!」

「って、デッキが60枚なのはまさか……」

「えへへ、こうするんだよ! 魔法カード《隣の芝刈り》を発動~。デッキの枚数の差分を墓地に送っちゃうね」

 

 ……思ったよりも簡単で明快な手でした。《隣の芝刈り》を手札に引き寄せているのはデュエルに愛されしデュエリストならさほど不思議ではありませんが……随分とリスキーなことをするものです。

 

「これで《神炎皇ウリア》の攻撃力は墓地に送った罠カードの枚数だけアップ! だから攻撃力は……じゃ~ん、10,000!」

「む……ビナーがこっちを狙ってきましたね。回避します」

 

 イブキが攻撃命令を出す前にビナーの方から動き出しました。大道の劫火と名付けられたミサイル一斉射出の中を重戦車とDホイールがかいくぐります。重戦車の操縦手はイロハですが、中々のドライブテクニック。今度ライディングデュエルに誘ってみますか。

 

 その間にウリアの全身が赤白い炎で燃え上がり、熱気が私にも襲いかかりました。確か《暗黒の召喚神》での特殊召喚は攻撃制限が付くデメリットがありましたが、リアルファイトではもう1ターン過ぎた扱いになるのでしょうか。

 

「地獄の業火で灰になっちゃえ! ハイパーブレイズ!」

 

 ウリアの口から放たれた火炎は瞬く間にビナーを焼き上げます。ビナーは地中に潜っての消火を試みますが、ウリアの攻撃は単なる火にあらず。まるでマグマのような粘性をもってビナーが沈んだ穴へと注がれていきます。

 

 やがて少し離れた位置からこんがり焼けたビナーが地上へと再浮上、砂漠の上をのたうち回りました。ウリアは今度はビナーへと直接攻撃。ビナーは砂漠の上を跳ね、動きを鈍らせ、やがて沈黙しました。

 

「勝ったあ! イブキ、えらい?」

「こんなに簡単に処理してしまったらアビドス生徒会長がやってこないのでは?」

「うーん。大丈夫だよ、ほら」

 

 しかしこれはまだ前哨戦。本番が残っています。

 

 周囲に目を光らせると……いました。太陽が沈む西側より一人の少女が姿を見せます。ボロボロの生徒服に身を包み、俯いた顔は髪が垂れ下がって見えず。ヘイローは消えているものの、ゆっくりとぎこちなくデュエルディスクを起動します。

 

 カードがセットされると、あれだけ晴れていた空模様が一変、どす黒い雲に覆われていき、それがやがて渦を巻きます。中心から徐々に降下してきたのは禍々しき姿で暗黒の瘴気を発する、邪神イレイザーでした。

 

「イブキね、今日こそユメちゃんを救うから!」

 

 ウリアとイレイザーが対峙します。三幻神と三邪神の衝突にまるで天地も興奮しているようで、雷鳴が聞こえ、風が吹き荒び、大地が激しく揺れます。ウリアとイレイザーは互いに口にエネルギーを集中させ初めます。

 

 ウリアはイブキが述べた通り墓地の罠カード10枚を参照して攻撃力10,000。イレイザーは私、イブキ、イロハ、ウリアを参照して攻撃力4,000。勝敗は火を見るより明らかなのですが……、

 

「いっけーウリアちゃん! ハイパーブレイズだ~!」

 

 イブキの攻撃宣言と同時にウリアが炎を吐き、イレイザーもまた闇を伴った破壊光線を放ちます。互いの攻撃は中間地点で衝突、押し合いが始まります。このまま順当にウリアが押し切るかと思いきや、なんとウリアは押され始めたではありませんか。

 

 何事かと周囲を伺うと、私のDホイールに搭載したデュエルディスクのフィールド上にいつの間にかカードが3枚置かれているではありませんか。これは確か、ジャック・アトラスが使っていた「ナイトメア・デーモン・トークン」……!

 

 更に虎丸の周囲には万丈目準のフェイバリットカード「おジャマトークン」3体の姿も見えます。どうやらユメは相手フィールドにトークンを生成する罠カードを発動していたようです。ウリアの効果で破壊されないようイレイザーの攻撃を目眩ましにして。

 

 無論、展開妨害のためではありません。相手フィールドを増やすことでイレイザーを強くするために。

 

「ひぃん……イブキのウリアちゃんが~!」

 

 イレイザーの攻撃を受けてウリアが絶叫と共に破壊されました。衝撃波がこちらにも襲いかかり、危うくハンドルが取られそうになるのを何とか耐えます。イブキとイロハの虎丸も進行方向を変えて衝撃波を凌ぎました。

 

 一方、トークン6体で攻撃力を上げていたイレイザーの攻撃力は10,000。ウリアと相打ちだったようで、地獄の業火に焼かれた躯がぐずぐずに崩れていき、やがて闇一色に大地を染め上げ、私たちのフィールドのトークンを飲み込みました。

 

「ユメちゃんのデッキにトークンを作るカードなんて入ってなかったのに……」

「カードは拾ったのでしょう」

「でも、これでユメちゃんのフィールドはがら空きだね。チャンスだ~!」

「イブキ、危ない!」

 

 イレイザーの真骨頂たるファイナルアタックから逃れるためにユメとはかなり距離が離れてしまいました。私とイロハはDホイールと重戦車を反転させますが、上半身を外に出しているイブキにゾンビ状態となって所々内臓がむき出しになった虎が牙を向いて襲いかかってきました。

 

 アレは確か《アマゾネスペット虎獅子》……! まさかユメはイレイザーが破壊された際、その闇の道連れから我々が逃げることを見越してこの虎を迂回させ、奇襲を仕掛けたというのか。

 

「飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》! 装備魔法《傷竜の鞭》を装備して、《アマゾネスペット虎獅子》を迎撃する!」

 

 私に呼び出された風のシグナー竜が今まさにイブキの喉元に牙を突き立てようとしていた虎に閃光を放ちます。その巨体は不意をつかれたのもあって攻撃をまともに受け、戦闘破壊されました。




ビナーの攻撃力は4,000相当を想定しています。デカグラマトンではマルクトと並んで最も高いです。なお最弱はケテルではなくデカグラマトン本人。

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