Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ホシノ、ユメと再会する

「冥府の底から……舞い戻ったよ、ホシノちゃん!」

 

 《オシリスの天空竜》の一撃でセトの憤怒を倒したユメは暴走するホシノに向けて力強く宣言しました。一方でそれまで暴れまわっていただろうホシノはユメを目にして動きを止めます。

 

 そんな再会に水を差すようにセトの憤怒が起き上がり、纏う雷を激しく発光させました。オシリスの到来で更に激しく怒り狂ったようで、その様子はまるで大嵐で地上に何度も落ちる雷のようでした。

 

「セトはあと! まずはホシノちゃんを止めなきゃ!」

 

 しかしユメはそんなセトを一刀両断、ユメはホシノだけを見据えます。

 

 そんなユメのもとに私が途中で追い抜いたイブキたちが合流します。イロハやスオウたちがセトに圧倒される中、マコトとイブキは平然とセトを観察しました。そしてマコトは余裕そうに微笑を浮かべます。

 

「キキキッ、アレがセトか! あの程度なら雷帝の使役する三幻魔の方がよっぽど厄介だな!」

「んー、イブキが《降雷皇ハモン》を召喚して戦わせる?」

「イブキが出るまでもない。あれぐらいならマコト様一人でも充分だぞ。それに……」

 

 暴走したホシノと戦っていたであろう"先生"たちのそばには横たわるヒナの姿もありました。意識は戻っているようで、我々の登場に驚いているようです。

 

「あそこでだらしなく伸びてるヒナにそろそろマコト様の偉大さを思い出させないとなぁ!」

 

 マコトに見下されていると分かった瞬間、何とも言えない顔をしたのはご愛嬌でしょう。それがとても愉快だったのか、マコトは気分良く笑います。しかしすぐにヒナから視線を外し、セトを鋭い眼差しで睨みつけました。

 

「じゃあ行くぞ! 私は魔法カード《聖なる薊花》を発動する! 手札の《微睡の罪宝-モーリアン》と《原罪宝-スネークアイ》を墓地に送り、このカードを融合召喚扱いで特殊召喚だ!」

 

 マコトが召喚したモンスターは「聖」の称号を持つにはあまりに禍々しい存在でした。長く伸びた黒髪は茨と化しており、毒々しい花の中心には美しくも狂気に満ちた赤いドレスの女性がいます。堕ちた魔女と呼ぶのが相応しいでしょう。

 

「来い、《聖アザミナ》!」

 

 レベル10、攻撃力0で守備力4,000の超大型モンスター。これがマコトのモンスターですか。幻想魔族はデュエルモンスターズ最初期には存在していましたが、アドバンス召喚設定時の種族整理で魔法使い族などと統合した筈。幻竜族同様に後の時代に増やしたのでしょう。

 

 更にマコトは《聖アザミナ》に《ミスト・ボディ》を装備させて展開を終えました。攻撃表示で無防備な《聖アザミナ》に向けてセトが落雷による攻撃を容赦なく仕掛けます。《ミスト・ボディ》で戦闘破壊はされませんが、ダメージは……いや、逆に攻撃をしたセトが怯んだ?

 

「キキキッ、《聖アザミナ》が受ける戦闘ダメージは相手が受ける! プレイヤーがいないセトなんぞ本能と神秘にしたがって攻撃するだけだろう? 《聖アザミナ》を棒立ちさせて自滅を待つだけで攻略完了だな!」

「マコト先輩。セトが《聖アザミナ》以外を攻撃してきたらどうするんですか?」

「装備魔法《磁力の指輪》で《聖アザミナ》だけをターゲットにさせれば全く問題無い。ま、デュエルではこんな装備カードをデッキに入れる余地は無いがな!」

 

 マコトは腕を組んで観戦モードに入ります。イブキも元気よくはしゃぎ、イロハはタブレットで文章を打ち込みます。そんな余裕たっぷりな万魔殿一同ですが、セトが《聖アザミナ》1体に弄ばれているのは事実です。

 

 一方のユメとホシノですが、ユメが丘を下ってホシノの方へと歩み寄ると、ホシノが頭を抱えながら喉の奥から絞り出すようにうめき声を上げました。弱々しくよろめく姿にユメが一瞬だけ動揺します。

 

「違う……違う……ユメせんぱいは……死んだ、私が……殺したんだ……」

「ホシノちゃん……」

「にせものめ……ユメせんぱいを……騙るなぁ!」

 

 ホシノはエネルギーを収束させユメに向けて衝撃波を放ちました。空を裂き、大地を抉るほどの強烈な一撃でしたが、それで大きく吹っ飛ばされたのはホシノの方でした。

 何が起こったのかシロコたちも理解出来ないようで、唖然としました。

 

「《アマゾネスの剣士》が受ける戦闘ダメージは相手が受けるよ」

 

 どうやらユメは瞬時に《アマゾネスの剣士》を盾代わりにしたようです。これではリアルファイトでユメと戦う場合、一切の飛び道具が通用しないことになります。味方なら頼もしいことこの上ないですが、敵なら恐るべき脅威でしょう。

 

「ホシノちゃん、覚えてる? ホシノちゃんが入学したての時、デュエルしたよね。いきなり《ラーの翼神竜》を召喚してワンショットキル狙ってくるんだもん。すっごく驚いちゃった。でも棒立ちさせてた《アマゾネスの剣士》のカードテキスト確認しないで攻撃してきてさ。文句言いながらも私をしたってくれるようになってくれたよね」

「……!」

「次のデュエルの時は……えっと……あ、そうそう! 《アマゾネスの剣士》をラー最後の効果で破壊したのはいいんだけどさ、伏せカード警戒しないでワンショットキル狙ってきたよね。あの時はごめんね、《魔法の筒》で容赦なく返り討ちにしちゃって。でもスイーツ奢ったからチャラだよね!」

「ユメ……せんぱい……」

 

 ホシノの恥ずかしい過去を暴露する間、ユメは《天よりの宝札》を発動。まさかの武藤遊戯の時代の効果だったようで、手札が6枚になるようドローしました。これでオシリスの攻撃力は6,000となります。

 

 すると、もう一人のシロコと死闘を繰り広げていた闇に染まったもう一人のシロコの姿が変わりました。膨れ上がり、翼が生え、巨体となり、終いには闇に染まったオシリスへと変貌を遂げます。

 

「そんな可愛かったホシノちゃんもこんなに沢山の後輩が出来て、すっかり先輩になったんだね。ホシノちゃんなら絶対に良い先輩になれてるだろうし、後輩みんなから慕われてるし、私なんかよりずっと頼もしいんだろうなぁ」

「……そんな、ことは……」

「ホシノちゃん頑張りやさんだから、ちゃんとみんなと協力できてる? 一人で問題を解決しようとしてない? 駄目だよ、たまには「うへ~」って笑えるぐらいのんびりしなきゃ。アヤネちゃんたちが困っちゃうよ」

「……でも……」

 

 オシリスが咆哮を上げました。するとオシリスの全身に雷を纏り付きます。光り輝いた状態でオシリスはもう一人のシロコに化けていた邪神アバターへと突撃していきます。

 

 邪神アバターは口から漆黒の超電導波サンダーフォースを射出。オシリスを撃ち落としにかかります。邪神アバターは相手より必ず上回る能力を持ちますので、オシリスがどんなに強くなろうとアバターには敵いません。

 

 しかし、オシリスはむしろアバターの攻撃を押し返しているではありませんか。

 

「オシリスがアバターを上回ってる……?」

「シロコ先輩! オシリスの上、あそこに人影が……!」

「あれは……《アマゾネス女帝》でしょうか?」

「剣を構えてオシリスと一緒に突撃してます……」

 

 ユメがホシノに見せたのは魔法カード《ユニオン・アタック》。確かモンスター1体の攻撃力を他のモンスターに加算する効果だったはずですが、後にユメ曰く、オフィシャル版となる前のオリジナル効果は、モンスターの攻撃力をそのままに戦闘ダメージだけ加算する、正真正銘同時攻撃を行うものなのだとか。

 

「一人ひとりが弱くてもいいんだよ。手を携えればどんな困難だって乗り越えていけるし、どんなに強い相手にも勝てちゃうんだから」

 

 《アマゾネス女帝》が声を張り上げ、《オシリスの天空竜》が吠えました。

 その剣、その牙が邪神アバターへと襲いかかり、暗黒の身体を貫きました。

 大穴の開いた邪神アバターの姿はかすれていき、やがて消滅しました。

 

 ユメの歩みは止まりません。再び《アマゾネスの剣士》を盾にされることを警戒してホシノは迂闊に攻撃出来ず、頭を押さえながらユメへと駆け出しました。至近距離からユメを撃ち抜くつもりなのでしょう。

 

 そんなユメの頭に狙いを定めた銃を持つホシノの手をめがけて、ユメは盾を振り上げました。それは確かホシノが愛用している、皆を守るための、けれど暴走状態となって捨てていた盾でした。

 

「……!?」

「私の盾、ずっと大事に使っててくれてたんだね。きっと盾も喜んでるよ」

 

 がら空きになったホシノの胸元めがけてユメはもう片方の手を突き出します。手に持つのは銃ではなく1枚のカード。それをホシノの胸元に浮かぶ手帳サイズの四角い文様めがけて突き刺しました。

 

「永続魔法《千年の啓示》の効果を発動! これでホシノちゃんの墓地で眠る、アバターに反転して特殊召喚出来なくなった《ラーの翼神竜》を目覚めさせられるよ!」

 

 それはシェマタから回収したラー関連カードの1枚でした。

 更にユメは指を起用に動かしてもう1枚のカードを手にします。

 

 そうはさせまいとホシノはフリーになっている手の拳を握りしめてユメに殴りかかりました……が、まずシロコが腕を取って抑えようとし、次にセリカが手首を掴んで阻止しようとし、最後にノノミが拳を受け止めました。

 

「ん、今がチャンス」

「何だかよく分からないけど、早く先輩をお願い!」

「ユメ先輩……ホシノ先輩を頼みます!」

「うん、任せて!」

 

 アビドスの3名に向けてユメは力強く頷きました。

 

「魔法カード《死者蘇生》を発動!」

 

 ユメが発動した魔法でアンクが浮かび上がり、紅色に染まった一帯を明るく照らし出します。すると徐々に光がホシノの頭上で集まっていき、太陽のように光り輝きます。その太陽はやがて翼を展開し、黄金の竜へと姿を変えました。

 

 三幻神の一体、太陽神ラーの力を持つ《ラーの翼神竜》。

 

 黄金の不死鳥竜が咆哮を上げると、紅色に染まった空が浄化されるように澄み切った星空へと変わっていきます。

 そしてまばゆい光が大地を、そしてホシノたちを照らしました。

 

 オーラとも言うべきホシノが纏っていた全てを否定するような激しい闘気が和らぎ、うつむき加減だった顔がゆっくりと上がります。暫くの間虚ろだった眼差しがやがて目の前にいるユメを映します。

 

 ホシノは自分の頬を抓りました。

 

「……痛くない。ここは……あの世ですか?」

「え、と。痛くないのはアドレナリンのせいじゃないかな?」

「はぁ……。どうせゲマトリア辺りが用意した複製体でしょう。ユメ先輩がこんなに格好良すぎるわけないですもんね」

「ひぃん。酷いけどそう言われてもしょうがないような……」

 

 ホシノは目の前のユメが本物だと信じられないようです。それもそうでしょう。幻を見ていると考えた方が納得いくでしょうから。それほどホシノにとってユメの死は絶対なものだったのですから。

 

「小鳥遊ホシノ。それは違うわ。アレを見なさい」

「風紀委員長ちゃん……?」

 

 ヒナが負傷した身体を引きずりながらも空を指さします。つられてホシノが見上げると、《アマゾネス女帝》を乗せた《オシリスの天空竜》が上空を飛行し、《聖アザミナ》に気を取られているセトの憤怒を警戒していました。

 

「あのモンスター……いえ、神は間違いなく《オシリスの天空竜》。キヴォトスがいくら広くてもオシリスを神として召喚できる生徒は梔子ユメ唯一人しかいないわ。複製体でも無理なのは貴女も知っているでしょう?」

「ん、ニセホシノ先輩は神の《ラーの翼神竜》を召喚出来なかった」

 

 ヒナとホシノの言葉を受けてホシノはゆっくりとユメを見つめ直します。ユメはホシノに微笑みました。

 

「……。じゃあ、本当に……?」

「うん。本物の私だよ。遅くなっちゃったけど、ただいま」

「……先輩」

 

 ホシノの手から銃が落ちました。

 ホシノはユメに向けて歩みだし、やがて駆け出しました。

 そして、ユメの胸に飛び込んだのです。

 

「ユメ先輩っ!!」

 

 それは2年越しに叶った再会でした。

 私が語るのは野暮でしょう。

 どれだけホシノにとって嬉しいものかは、泣いてユメの名を呼び続けるホシノを見れば分かります。




この場面は本概念執筆前の構想段階から思い描いていたものです。書けて感無量です。

◇羽沼マコト
使用デッキは【アザミナ】
エースモンスターは《聖アザミナ》
切り札は《贖罪神女》
何故マコトがこのデッキを使うのか、を知る者はゲヘナでもヒナやカヨコ等ごく少数。主に雷帝のせい。

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