Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ユメ、イブキとデュエルする①

 ◆三人称視点◆

 

 ゲヘナにとって三幻魔はアビドスの三幻神、トリニティの創星神、ヴァルキューレの三極神といった絶対的な立ち位置ではない。しかし神に匹敵する伝説的モンスターだとは伝わっており、三幻魔全てを従えられればゲヘナはおろかキヴォトス全てを従えられるとまで語り継がれていた。

 

 そんなゲヘナに現れた傑物。後に雷帝と呼ばれる生徒は一年の後半より頭角を現し、進級する頃にはゲヘナを掌握。その卓越した頭脳でゲヘナを1年半近く支配した。現3年生は口を揃えて彼女の治世をこう比喩するだろう。悪夢、地獄、と。

 

 ゲヘナはおろかキヴォトスでも彼女が天才かつ鬼才の類だとの評価で一致していた。雷帝は知識欲と向上心を満たすためなら周囲への影響を一切顧みなかった。雷帝の実験の犠牲になった生徒をリスト化すれば電話帳ほどの厚さとなるだったろう。

 

 しかし、マコトとカヨコだけは知っている。ことデュエルモンスターズが関わる作品が完成した際の雷帝は普段とは全く違っていた。まるで子どもが憧れのものを見つめる時のように目を輝かせていたことを。

 

「子どもの夢を実現するのが大人だろう? 私は相棒の夢を実現させ、自分の目で見たいのさ」

 

 一度だけ雷帝がそのように語ったことをマコトは今なお覚えている。雷帝にパートナーがいるなどとマコトもカヨコも他の誰にも、口が裂けても言えなかった。もっとも、謎のパートナーが表舞台に出ることはなく、誰かをマコトが知ったのは雷帝が卒業した後になってのことだが。

 

 雷帝に不信任決議案を叩きつけて失脚させた際、マコトは当時の1年生、今の3年生と共に当時の万魔殿体制と全面的に衝突した。雷帝と直接戦ったのはヒナとマコトの2名。三幻魔と正面切って戦うことは想定済みだったが、雷帝はマコトたちの想像を軽く越えてきた。

 

「まさか私が三幻魔を従えただけで満足していると思ったのかい?」

「なんですって……?」

「見せてあげよう、幻魔の真の力の一端を。……まだ研究途中だから不完全なのが残念だけどね」

 

 雷帝が不完全だと言ってのけた彼女の切り札相手に大苦戦した2人だったか、死闘の末に打ち破った。もし完全体となっていたらどれほどの力を発揮したか、を想像するだけでヒナもマコトも今でも体が震えてしまう。

 

 今のゲヘナにとって三幻魔は雷帝の象徴だ。

 

 三幻魔はオフィシャルカード版としてゲヘナからリリースされ、キヴォトス中に出回っているが、使っているのは雷帝時代を知らない下級生のみ。それも3年生がいない場所でだけだ。それほど3年生にとって雷帝、そして三幻魔は禁忌の存在となっており、ましてや三幻魔の神秘を引き出せる雷帝の再来が現れることを恐れている。

 

 ゆえに、ヒナにとって目の前の光景は信じがたいものだった。

 

「《神炎皇ウリア》、ですって……!?」

 

 あのイブキが三幻魔を従えている事実に。

 そしてそれをマコトが許容……いや、当たり前のように受け止めていることに。

 

 召喚された《神炎皇ウリア》は明らかにただのソリッドビジョン体ではない。その迫力、存在感、威圧感、五感全てで感じられる情報が目の前の幻魔が本物だと語っていた。それこそ、先程まで出現していた三幻神に匹敵するほど強大だ。

 

 まさかマコトは雷帝の後継者を見つけ出したのか? だから飛び級でゲヘナ高等部に進学させ、自分の手元に置いたのか? キヴォトスの征服など冗談半分だったが、本気でするつもりなのか? それとも……イブキもまた雷帝なのか?

 

「マコト! どういうことなのか説明して」

「んん? お前は"先生"のデュエルがあるだろう。こっちにかまってる暇があるのか?」

「答えなさい!」

「ならヒナにも分かりやすく、一言で説明してやろう。《降雷皇ハモン》を従えるデュエリストを雷帝と呼ぶなら、それは■■■ではなくイブキだ」

「……!」

 

 雷帝の三幻魔が借り物だと知っているのは貸したイブキを除けばマコトとカヨコだけだ。そもそも雷帝はそれを隠していなかった。それでもなお三幻魔の神秘を存分に引き出した雷帝も傑物なのだが、雷帝に雷帝とは誰かという質問を投げかけたら彼女は迷うこと無く「相棒だよ」と答えただろう。

 

 つまりは、雷帝とは前万魔殿議長とイブキ、2人を指す称号なのだ。

 

「ウリアちゃんの攻撃力は墓地の罠カードの枚数×1,000ポイント。だからウリアちゃんの攻撃力は3,000にアップするよ~」

「オフィシャル版みたいに永続罠カードだけを参照するんじゃないんだね」

「それから、フィールド魔法《失楽園》を発動するね」

 

 イブキのフィールドが砂漠から禍々しい雰囲気を放つ荒野へと変貌し、枯れた大樹がイブキの背後に生える。大樹の割れ目からは幻魔らしき存在の目が無数に輝いて、対戦相手のユメを見つめる。

 

「ウリアちゃんがフィールドにいるから《失楽園》の効果で2枚カードをドロー! そのままセットしてターンエンドだよ」

「じゃあ私のターンだね。ドロー!」

「この瞬間、永続罠《覚醒の三幻魔》を発動! えへへ、これでユメちゃんがモンスターを召喚・特殊召喚する度にライフを回復するよ!」

「ひぃん、三幻魔を相手に大量展開とか大型モンスターの抑制をするなんて酷いよぉ~」

 

 発動された永続罠カードの効果に泣き言を言いながらもユメは自分の手札を確認。それからユメは2枚のカードを手札から抜いてフィールドにセットしようとし、途中で動作と止めた。「あ、これ先輩がまたしょうもないことを思いついた顔だ」とホシノは黒服と戦いながら思った。

 

「はい、ここでイブキちゃんに問題だよ!」

「えっ?」

「神としての三幻神は特殊召喚出来るでしょうか、出来ないでしょうか?」

「えっと~……上級呪文じゃないカードの効果は受けない、で合ってたかな?」

「うん、そうだよ。だから《リビングデッドの呼び声》とかだと無理なんだ」

 

 通常なら三幻神は3体のモンスターを生贄に捧げて呼び出される。墓地に眠る神を呼び覚ますのなら《死者蘇生》などの上級呪文と評されるカードが必要だ。それ以外のカードの効果は受け付けない。

 

 更に上級呪文だろうと神は1ターンで効果を無効にするため、復活した神は1ターンで墓地に戻ってしまうのだ。神専用に設計された《蘇りし天空神》でも神として呼び出されたオシリスの維持は1ターンが限界だろう。

 

 ……そう、三幻神が神として君臨した時代であれば、この認識で合っている。

 しかしデュエルは時代を経て進化していくもの。

 

 三幻神とてカードであるので、デュエルの枠組みからは外れない。逆に言えば、枠組みが広がれば三幻神もまた可能性を広げていくのだ。

 

「れでぃ~すえ~んどじぇんとるめ~ん!」

「へ?」

「いっつしょ~た~いむ、だよ!」

 

 ドヤ顔をしたユメは2枚のカードをセットした。

 そのカードは光の柱を形成し、宙に浮かんでいく。

 その光景を目の当たりにしたイブキは……いや、一同驚く他なかった。

 

「私はスケール0の《覇王門零》とスケール13の《覇王門無限》でペンデュラムスケールをセッティング! これでレベル1~12が召喚可能になるから」

「ペンデュラム召喚!?」

「現世と冥界を天に描かれる太陽の軌跡が結ぶ時、世界を照らしてみんな笑顔に! ペンデュラム召喚!」

 

 後の時代で追加されたデュエルの新たなルールによる特殊召喚。

 カードの効果ではないため三幻神の耐性に引っかからない。

 後にセリカはこう表現した。神の脱法召喚だ、と。

 

 空に暗雲が立ち込めた。やがて暗雲が渦を巻き、稲光とともに巨大な竜が姿を見せる。しかしそれは決して天空竜ではない。禍々しい邪気を発し、恐怖と絶望を振りまくその神は、生きとし生ける全ての生命を抹殺する悪しき邪神だ。

 

「降臨して! 《邪神イレイザー》!」

 

 邪神が咆哮を上げた。イブキは目を擦ってユメを観察したが、ユメは邪神に操られている気配もなく、ゾンビ状態にも戻っていない。ユメは正気のままで邪神イレイザーを制御しているのだ、と悟った。

 

 なお、後にユメは「ふふん、光と闇が備わり最強に見えるでしょ?」とドヤ顔で語り、それに対してホシノは「古すぎますって。2年前でも懐古扱いだったじゃないですか」とうんざり気味だったりする。

 

「《邪神イレイザー》の攻守は相手フィールドのカードの枚数の1,000倍。イブキちゃんのフィールドには4枚あるから、攻撃力は4,000だよ」

「っ!」

「バトル! 《邪神イレイザー》で《神炎皇ウリア》に攻撃するね! ダイジェスティブ・ブレス!」

「ひゃっ……!? う、ウリアちゃん~!」

 

 イレイザーの口から放たれた闇の波動がウリアを飲み込み、消失させた。衝撃波がプレイヤーのイブキにも襲いかかる。危うく飛ばされそうになるのをイブキはしゃがみながら何とか堪える。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド。さ、イブキちゃんのターンだよ」

「イブキのターン、ドロー! リバースカードオープン、永続魔法《七精の解門》を発動するね。発動時の処理で《幻魔皇ラビエル》を手札に加えちゃうよ。《七精の解門》の(2)の効果を発動! 《幻魔の召喚神》を墓地に捨てて、効果で特殊召喚!」

「《幻魔の召喚神》……来るね、2体目の幻魔が」

「《幻魔の召喚神》をリリース! 効果でデッキからサーチしたこのカードを召喚条件を無視して特殊召喚するよ!」

 

 先ほど対峙したセトが出現させたオベリスクのような水晶の柱が生えだし、それが割れたかと思うと中から雷を司る幻魔が出現する。腕と腕の間で雷光を発生させ、邪神イレイザーの前に立ちふさがった。

 

「降来して! 第二の幻魔にしてイブキの下僕、《降雷皇ハモン》!」

 

 《降雷皇ハモン》。雷帝の象徴たるモンスターが満を持して登場した。




ユメとイブキをデュエルさせよう、とはかなり前から思っていたものの、その内容をどうするかは悩みました。結果自分でも予想しなかった方向に行きました。

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