Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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Vol.2 時計じかけの花のパヴァーヌ編~表~
Z-ONE、過去を少し思い出す


"合体変形ロボはロマンだよ。異論は認める"

「だからって職場の自分の机にプラモデルを飾るのは如何なものかと思いますが?」

 

 私がZ-ONEとなるはるか昔、私が不動遊星となるよりも更に前。

 世界が終焉へと向かっているとなんてつゆにも思っていなかった若い頃。

 私はモーメントについての研究、開発に携わっていました。

 

 もはや何十年も彼方の記憶なので細部は全く思い出せません。

 どんな研究室だったか、同僚の顔や声、どのデッキが流行っていたか、一切。

 ただ、今でも妙に印象に残っているやりとりが幾つかあります。

 

「ふっふっふー。そんな"◇◇"のために不肖この私、色々な開発プランを練ってきちゃいましたよ」

「青封筒ものが18枚? 要りません。"◇◇"に渡してあげてください」

「酷い!? ノータイム返答はさすがに傷ついちゃいますって」

"でも《サクリファイス》みたいにレベル1でも強い効果持ちモンスターもいるしなぁ。開けてみてもいい?"

「勿論。今回は自信作ですからとくとご覧あれ!」

 

 私とほぼ同い年の男性研究員の"◇◇"と飛び級で大学院を卒業しながら去年高校を卒業してきた新人女性研究員の"□□"。彼らとは単なる同僚以上の付き合いだった、とはかろうじて覚えています。

 

 ちなみに"◇◇"と"□□"は名前ではなくニックネームでした。私は"遊星"などと呼ばれてましたね。言い出したのは"□□"でしたか。確かに私の本名はかつての英雄にあやかってユウセイでしたけど、初めて呼ばれた際は複雑だったと記憶してます。

 

"《機皇帝ワイゼル∞》の設計プラン? え、もしかしてこれって5体のモンスターが合体して一つのモンスターになるの? しかも融合モンスターと違ってフィールドには残ったままになるんだ"

「"◇◇"の好みに合わせた自信作ですよ! この《ワイズ・コア》が破壊されたらデッキ・手札・墓地から出動して合体するんです」

「効果は……シンクロモンスター限定の吸収? 《Theアトモスフィア》のように表表示のモンスター全て対象に出来るようにすればいいでしょうに」

「それはね、この《機皇帝》がシンクロへの抑制を目的に開発を進めてるからなんです」

 

 彼女はどことなく寂しそうに呟きました。

 

 シンクロを抑制する。

 それは我々が今まで見て見ぬふりをしてきたツケに向き合うことに他ならない。

 モーメントの加速が予測以上なことを彼女は良くないと断じたのです。

 

「いずれモーメントは人々の心、願望を読み過ぎて破滅的な暴走を始めちゃうかもしれない。だから世界中のモーメントに《機皇帝》を配備してシンクロに一旦ブレーキをかけようと思うんです」

「いいのではないでしょうか。シンクロ一辺倒ではいずれ未来が先細りして限界を迎えてしまうでしょうから」

"賛成。世界は急激な発展を遂げたけれど、シンクロ召喚自体はアクセルシンクロとかバーニングソウルが編み出された不動遊星の時代から大して進歩してない。召喚条件を無視する脱法シンクロまでまかり通ってるぐらいだし。今こそ一回環境を変えてみるべきだと私も思う"

 

 私と"◇◇"が賛同したことが意外だったのか、"□□"は目を丸くしてきました。

 世紀の天才だの稀代の超人だの言われている"□□"もまだ20歳未満。まだ子供らしさが感じられて微笑ましいです。

 

「でしょう? でしょう? じゃあ次!」

「今度は紫封筒ですか」

"《機皇神マシニクル∞》……これは3体の《機皇帝》が更に合体したのかな?"

「正確には3体の《機皇帝》のコアで動く大ボスですね。この《機皇神》ならそんじょそこらのシンクロモンスターなんてけちょんけちょんに出来ますよ!」

「もはやシンクロ環境に喧嘩を売っているようにしか思えませんね……」

 

 "□□"が披露した自分の考えを"◇◇"は耳を傾けて、褒めて、それでいて公正に評価する。私は自分のロードを突き進む"◇◇"や真面目で他者に寄り添いながらも時折クソボケになる"□□"の関係を調整する。それがあの頃の日常風景でした。

 

 まあ、結局のところ"□□"の懸念は最悪の形で現実のものとなり、"□□"が人々の防波堤のために実用化に踏み切った機皇軍団は人々へ絶望と破壊をもたらす破滅の使者へと成り果てたのですがね。

 

 《機皇帝》共が本格的に動き出した後、"◇◇"や"□□"とは会っていません。おそらくは亡くなっているでしょう。暴走したモーメントに彼らが何を思ったのか……知りたい気持ちと知りたくない気持ちが同居しています。

 

「じゃあ最後にこれ! じゃーん。《機皇帝》が部隊長、《機皇神》が懐刀で、機皇を統べる女王ユニットの開発プランー」

 

 どうやら"□□"にとっては最後のがとっておきだったらしく、紫封筒から取り出した設計図を期待を込めた眼差しでこちらに差し出してきました。

 

「……。質問ですが、どうして人型、それも少女の姿なんですか?」

 

 機体性能は《機皇神》と遜色ありませんし小型化はやるべきでしょう。だからといってどうして明らかにティーンエイジャーな少女の姿にしたのでしょうか。理解はしますけれどね。理解だけは。

 

""遊星"は分かってないなぁ。少年少女がロボットに乗って戦うのはロマンだよロマン。少女司令官なんていかにも人気出そうじゃない?"

「そうです、さすが"◇◇"です! 良く言ってくれましたよ! 少女だから良いんじゃないですか! 可愛い女の子が健気に頑張る姿が萌えるんですって」

「……。そもそも少女なのに女王? 王女と呼ぶ方が外見年齢的に似つかわしくないですか?」

「あ、それいい。採用しちゃおっと」

 

 "□□"は制服にさしていたペンで紙の設計図に記された"女王"の文字に二重取消線を引き、丸っこい文字で"王女"と書き直しました。そんなあっさり変えていいのか、と若干呆れてしまいましたが、そんな柔軟性も"□□"の魅力でしたっけね。

 

「うーん。この子の名前何にしよう?」

"え? そこ重要? 作ってから名付けるんでいいと思うけれど"

「子どもの名前は生む前に考えておくようにって雑誌で読みましたから。産後うつって言うんですけど、知りませんか?」

「ツッコミどころ満載なのですが、指摘が必要ですか?」

「あ、そうだ! 私ったら天才かも! 名前をもじって機体番号にしちゃえばいいんだ。えっと……これで!」

 

 "□□"は舌を出しながら設計図に自分のひらめきを書き綴りました。

 

 さすがにそこに何を書いたかまでは全く思い出せません。

 かろうじて覚えているやり取りは、確か……。

 

「"□□"。これアラビア数字の"1"ですか? アルファベットの"I"ですか?」

「ちょっと捻ってるんでアラビア数字の"1"ですね。一見間違っているように見えるこの綴り。ですがこれで正しいんです! 私達だけがこの子をちゃんとした名前で呼んであげられれば――」

 

 記憶の残滓はここまで。

 今となってはとても懐かしい遥か彼方の思い出。

 そして取り戻せない過去でもあります。




本作品ではネームドオリキャラは出さないつもりですが、例えばネオ童実野シティにいるブルアカのキャラが出る場合があります。"◇◇"と"□□"が誰なのか判明するのは本概念のラストになるかと思います。

ご意見、ご感想お待ちしています。
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