◆三人称視点◆
梔子ユメ
ライフポイント:8,000
手札:2枚
モンスターゾーン:《邪神イレイザー》
ペンデュラムゾーン:《覇王門零》、《覇王門無限》
伏せカード:1
丹花イブキ
ライフポイント:11,000
手札:《幻魔皇ラビエル》
モンスターゾーン:《降雷皇ハモン》
魔法&罠ゾーン:《覚醒の三幻魔》、《七精の解門》
フィールドゾーン:《失楽園》
ユメとイブキのデュエル。対峙する三邪神の一体《邪神イレイザー》と三幻魔の一体《降雷皇ハモン》。この二体が激突すれば天変地異を巻き起こして世界を滅亡させてしまうのでは、と思わずにはいられない。
そんな強力な神と幻魔を従えた2人のデュエリストは、共に対戦相手とそのしもべを見据え、わくわくしつつもどのように攻略しようかと思考を巡らせる。敵はただのモンスターではない。慎重に越したことはない。
「んー。ドローしてから考えよっと。《失楽園》の効果で2枚ドローするね」
「ひぃん、そのドローソースやっぱずるくない? 三幻神にも《失楽園》が欲しいよ~。イブキちゃん、開発してお願い!」
「《蘇りし天空神》あげたからもうだめー!」
カードを2枚ドローしたイブキは手札、フィールド、墓地を今一度確認する。
「墓地の《スキル・サクセサー》を除外して効果発動~! 《降雷皇ハモン》の攻撃力を800ポイントアップ!」
「え。本物の三幻魔って罠カードの効果受けないんじゃなかったっけ?」
「カードテキストにはそんなこと書いてないよ~、ほら!」
「オフィシャル版とオリジナル版のいいところ取り出来るの酷いよぉ!」
イブキがユメに見せたカードは幻魔語テキストで書かれたオリジナルではなくキヴォトスに出回るオフィシャル版だった。
本来なら幻魔の力をイブキに最大限引き出された《降雷皇ハモン》が罠カードの効果を受けるわけがないのだが、キヴォトスのデュエルにおいて例外的処理が為されるのは日常茶飯事。TRPGと同様、もはや言ったもの勝ちである。
「バトル! これが邪神だって貫くハモンの破滅の雷だよ! 失楽の霹靂!」
ハモンの全身から電気が迸り、夜の世界を眩く照らす。その出力は先程まで出現していたセト、そしてオシリスに勝るとも劣らない。そして口に収束されて解き放たれた雷撃は一直線にイレイザーに向かい、その胴体をとらえた。
穿たれたイレイザーの巨体が砂漠の大地に横たわる。穴の空いた腹部からは漆黒の体液が流れ出て、砂漠に染み込まずに水たまりとなって広がっていく。やがてユメの、ハモンの、イブキの足元を浸していく。
「ふふん、《邪神イレイザー》は討ち果たされたらフィールドのあらゆるもの全てを道連れにするよ」
「《失楽園》の永続効果で《降雷皇ハモン》は効果破壊されないんだ!」
「それはどうかな~?」
「えっ!?」
漆黒の水たまりより伸びる無数の手が《降雷皇ハモン》をとらえる。ハモンはもがけど雷撃を発せど拘束からは逃れられない。そのまま闇の手はハモンを冥府の底にまで引きずり込んでいく。
「ど、どうして……」
「《邪神イレイザー》の道連れ効果は破壊じゃなくて墓地に送るから《失楽園》の耐性の範囲外だよ。それに《邪神イレイザー》は神を抹殺する神。もしカード効果の耐性があっても貫通するけどね」
「うぅぅ、そんな~!」
「あ、いけない。こっちのフィールドにも効果があるんだった。罠カード《ペンデュラム・スケール》を発動! ペンデュラムスケールの差が7以上あるから、《覇王門零》と《無限》を回収するね」
ハモンだけではない。イブキの発動していた《覚醒の三幻魔》、《七精の解門》もまた無数に伸びた漆黒の手によって闇へと沈む。更には《失楽園》のフィールド全てを侵食していき、巨木も暗黒へと落ちていった。
最後にはイブキとユメもまた闇へと取り込まれる。闇の中は生命の息吹が一切感じられない、まさに死者の世界。死の痛み、死の苦しみを訴える亡者の怨念が襲ってくるような恐怖心が襲いかかってきた。
「イブキちゃんのターンはまだ続いてるけど、どうする?」
「イブキ、このままターンエンドする」
しかし2年もの間死者と生者の境を彷徨っていたユメにとっては馴染み深い空気を吸っている感覚で、三幻魔を従えるイブキも特に気にしない。2人が見据えるのは死者などではなく、目の前の対戦相手なのだから。
やがて、闇は消え去り再び夜が訪れる。少し離れた位置では"先生"たちと黒服による制約解除戦が始まっており、轟音や衝撃波がこちらにまで伝わってくるものの、ユメとイブキは一切気にしない。
「じゃあ私のターンだよ。ドロー! 手札に戻してた《覇王門零》と《覇王門無限》でペンデュラムスケールをまたセッティングするね」
「ペンデュラムモンスターが2体……くるね!」
「現世と冥界を天に描かれる太陽の軌跡が結ぶ時、世界を照らしてみんな笑顔に! ペンデュラム召喚!」
空に再び暗雲が立ち込める。やがて暗雲が渦を巻き、稲光とともに巨大な竜が姿を見せる。それは先程もイブキたちが目の当たりにした、漆黒の太陽を貫いた天空を支配する赤きドラゴン。
「降臨して! 《オシリスの天空竜》!」
「きた……《オシリスの天空竜》……!」
ユメがここぞというときに召喚してきた大物の登場にイブキは武者震いした。恐れや慄きよりもこの強敵を相手にどう戦っていこうかと思考を巡らせることが楽しくてたまらなかった。
「《オシリスの天空竜》の攻撃力は手札の枚数の1,000倍になるんだよ。手札は2枚、だから今の攻撃力は2,000だね」
「それじゃあ次イブキが幻魔を召喚したら一撃だね」
「それはどうかなー? 装備魔法《神の進化》を発動!」
「え!? イブキそんなの知らない……!」
ユメが発動したカードの効果でオシリスの姿が少しだけ変化した。微細に造形が変化し、所々に縞模様が描かれる。アーカイブに残っていた古代エジプトの遺跡に描かれたファラオのようだ、と観戦するZ-ONEは思った。
しかしオシリスの存在感、威圧感が先程よりも増したようにZ-ONEやイブキは感じた。《神の進化》の名の通り、神にも位があると仮定して、それをより高みへ引き上げる効果もあるのだろうか?
「この効果で攻守は1,000ポイントアップするよ」
「手札が減ったから攻撃力2,000のままだよね。別の効果があるんだよね?」
「ふっふっふっ、お楽しみはこれからだよ。バトル! 《オシリスの天空竜》でダイレクトアタック! 超電導波サンダーフォース!」
「ふえぇ! い、イブキ負けないもん……!」
オシリスの口から放たれた雷撃をまともに受けるイブキは何とか堪える。有り余るライフが2,000削られただけでもこの衝撃。大ダメージを受けたりライフを0にされる攻撃を受けた場合、どうなるのだろうか。
「カードを1枚セットしてターンエンド。イブキちゃんのターンだよ」
「え? 手札減らしちゃうの? ってことは、その伏せカードはドローカードでしょ。イブキ分かるよ」
「んー。だとしてもドローカードって2枚がせいぜいでしょ? イブキちゃんの幻魔には敵わないよね」
「むー、とぼけちゃってー。イブキのターンだよ、ドロー! ……。《混沌の召喚神》を召喚するね」
イブキが出現させたモンスターに反応し、オシリスが咆哮を上げた。先ほど雷撃を発した口が閉じ、もう一つの口が開き、《混沌の召喚神》へと向けられる。口の中では雷が収束し始めた。
「《オシリスの天空竜》の効果発動! 召喚・特殊召喚・反転召喚されたモンスターに2,000ポイントのダメージを与えるよ」
「!? 相手ターンにも攻撃できるモンスター……!」
「モンスターじゃない、神だよ! 召雷弾!」
オシリスから雷撃球が放たれた。そのまま《混沌の召喚神》を粉砕するかと思われたが、着弾直前に《混沌の召喚神》の姿が消える。リリースエスケープだとユメが気づいた時には地面が割れ、巨大な手が中から出てきていた。
「《混沌の召喚神》の効果発動! このカードを生贄に捧げて、手札の三幻魔を召喚条件を無視して特殊召喚するよ」
「! だとしたら、次に来るのは、さっき手札に加えてた……」
「降来して! 第三の幻魔、《幻魔皇ラビエル》!」
巨大な悪魔が姿を表し、おどろおどろしい雄叫びを上げた。神を従えるユメも戦慄し、思わず一歩後ずさりそうになった。「いけないいけない」とユメは自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。
「《幻魔皇ラビエル》もオシリスの攻撃を受けてもらうよ。召雷弾!」
「ラビエルの攻撃力は4,000だから、破壊されないよ! それに三幻魔はモンスター効果を1ターンで無効するから、次のターンには4,000に戻るんだー」
「じゃあこのターンは何もしないの?」
「墓地の《混沌の召喚神》を除外して効果を発動! デッキから《失楽園》をサーチしてー、そのまま発動するね。《失楽園》の効果発動! 三幻魔がフィールドにいるから、デッキから2枚ドロー!」
「そこだね。罠発動!」
「!?」
「《逆転の宝札》! 相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた時、相手の手札の枚数と同じになるようカードをドロー!」
しまった、とイブキは思ったがもう遅かった。イブキは《失楽園》の効果で手札を4枚まで増やしている。よってユメはカードを4枚ドロー。そしてユメの手札が増えたことで、オシリスは攻撃力を装備カード含めて5,000まで増やした。
「ふふーん。これでラビエルもオシリスに手出しできないんじゃなーい?」
「え、えっとー……1枚伏せてターンエンドする……」
「じゃあ私のターンだね。ドロー! これでオシリスの攻撃力は6,000までアップ! じゃあオシリスでラビエルに攻撃……」
「……(ワクワク」
「……しないよ」
「……(ガーン!?」
年相応……いや、年よりも幼めなイブキはポーカーフェイスが苦手なのか、ユメがバトルフェイズに移行させようとする際にニヤけが抑えられていなかった。相手の表情、視線から察したユメは、メインフェイズ1のままで手札のカードを発動する。
「魔法カード《漲る宝札》を発動するよ」
「手札補充カード……?」
「ううん、「宝札」って付くけれど、これはドローカードじゃない。この効果で、オシリスの攻撃力をイブキちゃんと私の手札の枚数×500ポイントアップさせられるんだ!」
「ええっ!?」
ユメは《漲る宝札》を消費して4枚。イブキの手札は3枚。これにより合計7枚の500倍攻撃力を加算して……、
「攻撃力8,500!?」
「覚えてるよ、イブキちゃん。イブキちゃんにはいつだったか物凄く強くなった《邪神イレイザー》を倒すために使ってたカードがあったよね?」
「!?」
「バトル! 《オシリスの天空竜》で《幻魔皇ラビエル》を攻撃だよ! 超電導波サンダーフォース!」
オシリスは迸る雷をラビエルに向けて解き放った。慌てふためくイブキだったが、手札から1枚のカードを墓地に捨てるとフィールドに幻影の《幻魔皇ラビエル》が現れ、ラビエルを支えた。
「手札の《幻魔皇ラビエル-天界蹂躙拳》を墓地に捨てて、ラビエルの攻撃力を倍にするから! 天界蹂躙拳!」
「それでも攻撃力は8,000で、オシリスの敵じゃないよね! いっけーオシリス!」
ラビエルが拳に破壊のエネルギーを集めて爪を振り下ろすも、オシリスの雷撃はその上を行く。ラビエルはオシリスの雷撃を引き裂けず、その勢いをもろにその身に受けることとなった。
ラビエルが爆散。これによりイブキの三幻魔は全て撃破されてしまった。
ユメはオシリスとイレイザーを召喚する。イブキは三幻魔全てを召喚する。ここまでは本概念を書き始めた初期から決めてました。
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