◆三人称視点◆
梔子ユメ
ライフポイント:7,200
手札:4枚
モンスターゾーン:《オシリスの天空竜》
ペンデュラムゾーン:《覇王門零》、《覇王門無限》
丹花イブキ
ライフポイント:8,500
手札:2枚
モンスターゾーン:なし
フィールドゾーン:《失楽園》
伏せカード:1枚
ユメのフィールドに君臨するのは天空を舞う冥界神オシリス。一方イブキは三幻魔3体を全て撃破されてしまった。
【三幻魔】デッキの真骨頂はこの三幻魔を過労死させるほど使い回して敵を圧倒する戦術。イブキは墓地に眠る三幻魔の蘇生手段を複数用意している。伏せた《ハイパーブレイズ》を使えばいずれかの三幻魔を蘇生させられる。
しかし、イブキはユメに攻略された三幻魔を復活させようとはしなかった。既にユメに討ち果たされたものを呼び戻すのは失礼に値する。三幻魔を撃破したなら、それ相応の奥の手を見せねばなるまい。
「へへ、えへへっ……あははははっ!」
「……!?」
「昂ぶる、昂ぶるよ!」
いつも実年齢より幼い言動が多かったイブキが声を張り上げ、闘争心をむき出しにしてユメを見据えた。
「ユメちゃんとのデュエルはいつだってそうだったね。知略と精神を張り巡らせた、ぎりぎりの戦い。ずっと■■■お姉ちゃんを介してしかデュエルしてなかったけれど、それがずっとイブキをワクワクさせてた! イブキの全身からアドレナリンを掻き出して、この身体中の血液を沸騰させてたよ!」
「え……え、と。イブキちゃん?」
「でも、キヴォトスに2人の覇者は要らない。ユメちゃんに勝って、幻魔こそがキヴォトスの頂点だから!」
そんなイブキを始めてみたイロハはショックを隠しきれず、愕然としながら口元を押さえた。本当のイブキを知るマコトですら衝撃を覚えずにはいられない。
「……手札から《運命の宝札》を発動するね。サイコロを振って出た目だけデッキからカードをドローするよ。サイコロの目は……3。だから3枚ドロー」
「インチキ! またインチキドローソース!」
「え、えっと。禁止カードに指定しない連邦生徒会が悪いってことにしない? 1枚セットしてターンを終了するね」
「イブキのターン、ドロー! 墓地の《幻魔の召喚神》を除外して効果を発動するね。デッキからこのカードをサーチして~……」
オシリスの攻撃力は《漲る宝札》の効果が切れて元に戻り、手札5枚×1,000+1,000の合計6,000。生半可なモンスターでは全く太刀打ちできない圧倒的な攻撃力となった。更にはオシリスには召雷弾もある。もはや敵はいないに等しい状況と言えよう。
しかし、そんな絶対的存在を前にしてもイブキは一切諦めてはいない。むしろ更に目を輝かせ、興奮気味に神に挑もうとしている。いや、神に挑戦しようとしているのではない、神を超越しようとしていた。
「ねえ、ユメちゃん。どうして■■■お姉ちゃんはアビドスに知恵を貸してシェマタを作ったと思う?」
「え? えっと……三幻神を分析するため、かな?」
唐突な質問に困惑気味なユメは、とりあえず思いついた憶測を口に出した。的確な分析に満足したイブキは大いに喜んで笑顔を浮かべた。
「イブキはね、三幻魔には先があると思ってたの。だから■■■お姉ちゃんといっしょに色々やったんだ。シェマタもその一つだよ」
「……!?」
「マコト先輩が「雷帝の遺産」って呼んでるイブキと■■■お姉ちゃんの研究の集大成、ユメちゃんに見せてあげる!」
イブキの表情はいつものようなあどけない、しかし自信満々なもの。だからこそ恐ろしいのかもしれない。イブキは変化せず、意識を切り替えず、無邪気な幼子のままで悪魔へと変貌することの証でもあるのだから。
そう、イブキにとってはシェマタを始めとするデュエルモンスターズに関わる雷帝の研究、遺産。そしてユメを復活させた《蘇りし太陽神》も、この1枚のカードを創造するための過程に過ぎない。
「《次元融合殺》、発動!」
「次元、融合殺……?」
イブキが1枚のカードを発動すると、なんとデッキから新たな《神炎皇ウリア》、《降雷皇ハモン》、《幻魔皇ラビエル》が召喚された。三幻魔が揃い踏みしてユメも驚いてしまったが、呼び出された三幻魔の変化はそれだけではなかった。
「デッキの2枚目の《神炎皇ウリア》、《降雷皇ハモン》、《幻魔皇ラビエル》を除外して……幻魔を束ねる!」
「三幻魔の融合!?」
「三つの幻魔が一つになった時、混沌の深淵から最強の幻魔を呼び覚ます! 融合召喚!」
三体の幻魔が光の柱を発し、互いの身体が混ざり合っていく。それはやがて三幻魔を超越し、その力全てを取り込んだ究極の存在へと姿を変えていく。それは先程ホシノが召喚したホルアクティとは対極に位置する、混沌そのものだ。
「現われろ、《混沌幻魔アーミタイル》!」
三幻魔全てが混ざり合った究極の幻魔の登場にさすがのユメも恐怖で顔が引きつった。観戦しているイロハやノゾミヒカリ姉妹もそう。雷帝と死闘を繰り広げたマコトや時械神を所有するZ-ONEすらも戦慄を覚える他なかった。
それは少し離れた位置で決闘とする"先生"や黒服たちにも伝わる。さすがのヒナでもそちらに視線が向いてしまい、アーミタイルの姿に声にもならない悲鳴を上げた。黒服もまたアーミタイルを観察し、感嘆の声を上げる。
「くっくっくっ、融合幻魔ですか。専門外ですが実に興味深い」
「違う……アレは雷帝が召喚したアーミタイルよりずっと強い……」
イブキは《失楽園》の効果でカードを2枚ドロー。その間にユメはデュエルディスクの機能で公開情報であるアーミタイルのカードテキストを確認した。戦闘で破壊されず、自分のターンでのみ攻撃力を上昇させる効果を持つ。
「攻撃力10,000!? でも、まずはオシリスの洗礼を受けてもらうよ。召雷弾!」
「攻撃力10,000だから2,000へったっていたくもかゆくもないよ」
オシリスの召雷弾が発射されるも、直撃したアーミタイルはびくともしない。幾つもあるアーミタイルの双眸がオシリスを捉えたのみだ。
「でもね、アーミタイルの本当の力はもっとすごいんだよ。《混沌幻魔アーミタイル》の効果を発動! 1ターンに1度、相手モンスターに10,000ポイントの戦闘ダメージを与える!」
「バトルフェイズ以外でも攻撃出来るの!?」
「オシリスの神の位を《神の進化》で上げててても、アーミタイルの神秘の位は三幻神より上だから効果はきくよ。いっけーアーミタイル! 全土滅殺転生波だ~!」
アーミタイルの左腕、右手、口からそれぞれ三幻魔の攻撃、ハイパーブレイズ、天界蹂躙拳、失楽の霹靂が放たれた。さすがのオシリスでもひとたまりもなく、あっけなく破壊されてしまった。
「きゃあぁぁああっ!?」
ユメの身体は他の女性生徒の平均より大きいが、それでもピンポン玉を弾くように衝撃波で吹き飛ばされてしまう。砂の地面を転がったせいでユメの髪や服は砂だらけになってしまった。
「これでトドメだよ。バトル! アーミタイルでユメちゃんにダイレクトアタック!」
「ううっ、リバースカードオープン……! 永続罠《アマゾネスの強襲》を発動! この効果で手札の《アマゾネスの剣士》を特殊召喚するね」
「っ! 戦闘ダメージを相手に与えるモンスター……。戻って、アーミタイル」
アーミタイルがさらなる攻撃を仕掛けようとする直前、ユメを守るように《アマゾネスの剣士》が出現。2年前に雷帝やホシノが散々返り討ちにされたモンスターでもあり、除去札の無いイブキは攻撃をやめざるを得なかった。
「ふふーん。これで私のターンになったらアーミタイルはただのカカシだね」
「それはどうかな~?」
「えっ!? まさか、アーミタイルには隠された効果が……!?」
「そうだよ。メイン2に移行して《混沌幻魔アーミタイル》の効果発動! アーミタイルのコントロールをこのターンの間ユメちゃんに移す」
イブキの背後にいたアーミタイルの姿が蜃気楼のように消えた。直後に背中から伝わる威圧感でユメが振り返ると、すぐ後ろでアーミタイルがユメを見下ろしていた。まるで今にも食いつきそうなほど間近に。
「カードを2枚伏せてターンエンド。このエンドフェイズ、《アーミタイル》の最後の効果を発動。アーミタイル以外の自分フィールド、つまりユメちゃんの場のカードを全部除外するよ」
「フィールド一掃効果!?」
「虚無幻影羅生悶!」
アーミタイルの2つの口が開き、闇の瘴気を吐き出す。フィールドにいた《アマゾネスの剣士》の姿が霞み、やがて消えていった。そしてペンデュラムゾーンにいる《覇王門無限》と《覇王門零》にも瘴気がまとわりつき、消去される。
「アーミタイルのコントロールはイブキに戻ってくる。これで2体の神もいなくなってペンデュラム召喚も出来なくなったね」
ユメのフィールドががら空き、一方でイブキの場にはアーミタイルとそれを補助する《失楽園》。ライフの差も圧倒的かつユメの方は風前の灯。絶体絶命の危機に陥った、と言っても過言ではなかった。
しかしユメはまだ諦めていない。闘志をみなぎらせた強い眼差しがそれを物語っている。イブキはそんな思いを心地よく受け止める。これこそが真のデュエルだとの実感が湧いてきて、とても楽しかった。
(それでこそ■■■お姉ちゃんもイブキも認めた最強のデュエリストだよ!)
そんな2人の様子にイロハは羨ましいと思い、Z-ONEは素晴らしいと感じ、マコトはイブキが全力でぶつかっても対等なデュエルが出来ることを喜んだ。そしてそんなユメのことをどうしても欲しいとの欲求が増す。
「行くよ、イブキちゃん!」
「来て、ユメちゃん!」
「私のターン! ドロー! れでぃーすえーんどじぇんとるめーん! 今からお見せするのは一世一代の大逆転劇! とくとご覧ください!」
そんな前置きとともにユメがペンデュラムゾーンに置いたのは《覇王門の魔術師》。その効果で自壊させ、2体目の《覇王門の魔術師》をペンデュラムゾーンに置く。「覇王門」ペンデュラムモンスターを使ってユメが動くのはイブキも初めて見るため、最大限警戒する。
「《覇王門の魔術師》が破壊されたから、手札の《アストログラフ・マジシャン》を特殊召喚! そして、このカードをリリースして効果を発動するね」
「いったい何を……?」
「エクストラデッキからハルナちゃんにあげた《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》と……」
ハルナ? どうしてここで美食研究会のハルナの名前が出てくる?
「ネルちゃんに譲った《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》と……」
ネル? あのミレニアムの誇る約束された勝利のネルか?
「アズサちゃんに送った《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》と……」
アズサ? 確かトリニティにいる元アリウスの生徒だったか。
「メインデッキからホシノちゃんに託した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を除外して……」
ホシノ。確かにホシノはホルスやラー以外のモンスターを使ったこともあったか。オッドアイのドラゴンの姿も確認されたこともあったが……。
「四天の龍を束ね、第5の次元の天駆ける究極の龍よ! 今こそ全ての絆を一つにして笑顔あふれる新たな世界へ!」
4体のドラゴンが光の柱と共に天へと昇っていき、異次元の渦へと飲み込まれていく。その異次元の渦から虹色の光が差し込み、夜の世界を彩った。まるで観客を楽しませるサーカスみたいだ、とイブキは思った。
「統合召喚!」
そして現れたドラゴンは、神ではない、強大なモンスターでも言い表せない。ただひたすら雄々しく、蠱惑的で、荒々しく、美しかった。イブキはモンスターの召喚で果たしてここまで心震わされたことがあっただろうか。
「出てきて、《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》!」
その姿に死闘を繰り広げていた"先生"や黒服たちまで一時中断して見入ってしまった。そしてアヤネだったかノノミだったか、それともシロコか。誰かがそのドラゴンを見つめ、こう呟いた。
「あれは……もしかしてユメ先輩から見たホシノ先輩なのかな……?」
イブキがアーミタイルを召喚する、とまでは決めてましたが、じゃあユメはどう迎え撃つんだ、と散々悩みました。アークレイ・ドラゴンにしたのはユメの中の人繋がりです。(遊戯王ARC-Vで柚子シリーズの元になったレイ役。【アマゾネス】使いのグレーズ・タイラーと兼任)
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