Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ユメ、アビドスに復学する

 シェマタの一件から少し経ちました。

 

 マコトたち万魔殿の3名は早速シェマタ、そして雷帝の研究施設だった場所を完全に処分するための計画を練るためにゲヘナに戻りました。マコトは雷帝の遺産が発見されるたびに全てに優先して処分に取り組んでいます。そうさせるほど雷帝の遺産がキヴォトスにとって危険なのでしょう。それこそ雷帝の遺産によってキヴォトスが滅んだ世界線もあるほどに。

 

 デュエルモンスターズに関わるイブキが知恵を貸した雷帝の遺産は全部リストアップ出来ていましたが、シェマタの件で処分状況の見直しが必要だと判明。万魔殿は当分の間ろくに眠れない日が続きそうです。もっとも、成長盛りのイブキは除きますが。

 

「うん。シェマタのデータ、確かに受け取ったよ」

 

 ユメはイブキからの戦利品であるシェマタの設計図と研究データを空中に放り投げ、オシリスの天空竜で跡形もなく焼き払いました。これでシェマタが建造されることは二度と無いでしょう。イブキ単独でも再現は出来ず、雷帝が戻ってきても彼女一人では無理。そういうものですから。

 

「ねえユメちゃん……だめ?」

「だめだよ。私はアビドスの生徒だから。まだ残ってるならそこに帰らなきゃ」

「……イブキ、分かった。でもイブキさびしいから、あそびに来て」

「もちろん。イブキちゃんもアビドスにおいでよ。歓迎するよ」

「……! うん!」

 

 虎丸に乗って帰っていくイブキはユメへとずっと手を振っていました。ユメも彼女が戦車の中に戻るまで手を振り続けました。

 

 ヒナは自分の足で戻るつもりでしたが、マコトが声をかけてイロハの虎丸に同乗しました。ヒナにとってはあまりに意外だったのか、マコトを見つめたまましばらく動かなかったのが印象深いです。

 

「どんな風の吹き回し?」

「キキキッ、単なる気まぐれだ。マコト様の寛大さに感謝して頭を向けて眠るようにするんだな」

「雷帝の残影にでもあてられた? 不安にならなくてもいいわ。マコト一人が背負わなくても、私たちがいるもの」

「……。イブキ外案件の時は存分にこき使ってやるさ」

 

 ヒナとマコトの間でこんな会話がされるほど彼女たちには雷帝の影響が残っているようです。もしかしたらこの先、雷帝の遺産に関わる異変が巻き起こる可能性が十分考えられます。引き続き調査が必要でしょう。

 

 ハイランダーは大破した上に動力源を根こそぎ失って器だけになったシェマタを解析し、オフィシャル版のシェマタをランクアップさせるデータ取りを行うのだとか。「オフィシャル版の延長なら許容範囲ギリギリかぁ」とユメが言っていたので、ホシノは複雑な表情を浮かべていましたが、黙認することに決めたようです。

 

 シェマタの所有権については、カイザープレジデントが《洗脳》でアヤネを操ってアビドスがネフティスとの契約の延長を主張出来なかったため、ネフティスと私募ファンドを束ねるカイザーのものになった筈でした。しかしラー関連カードを抜き取られて本来の力を発揮できなくなったシェマタはただの列車砲。処分をアビドスとハイランダーに押し付けたのでした。

 

「アヤネ。帰ったらまずゆっくり休んで、それからユメの扱いをどうするかを皆で話し合って決めてください。もしユメの死亡届を取り消ししてアビドスの生徒として復学させるのでしたら書類を作成してシャーレに提出を。こちらで処理します」

「ありがとうございます。色々ありましたから……まずはおちついてからゆっくりと決めていきたいと思います」

 

 梔子ユメは最終的にアビドス高等学校3年生として復学になりました。2年前の時点で出席日数も足りていたので卒業扱いでも良かったのですが、本人やホシノの強い希望もあってそのように処理しました。いきなり大人扱いになるか大学生となってキヴォトスを離れるよりは段階を踏んだ方がいいでしょう。

 

 もう一人のシロコはあの後、彼女たちの世界から持ってきていたホシノ、アヤネ、セリカ、ノノミ、ヒナの武装を手放そうとしたのだそうです。過去のことを振り返らず未来へ歩む出すための儀式のようなものだとか。しかしゼアル先生の一言で思い留まり、引き続き彼女が使うことになりました。

 

"ウェポンマスターって感じで格好良くない?"

 

 ……もう少し彼女に寄り添った説得があっても良かったと思うのですが、彼女の決意を覆すにはこれぐらいが丁度いいのかもしれません。

 

 アビドスといえばもう一つ。これまで継承してきた三幻神のオリジナルカードは紫外線カット機能のある額縁に入れ、生徒会室に飾ることにしたそうです。もう二度と人の手に触れないよう砂漠に埋めてしまう案もあったのですが、ビナーが出現するアビドス砂漠で掘り返される可能性は無きにしもあらず。だったら自分たちの視界に入るところに置こう、となったのだとか。

 

 とはいえ、アビドスの問題は何も解決していません。アビドス横断鉄道が開通したので人の流動は良くなりましたが、アビドスに留まってもらうよう発展させなければ立地上の通過地点になるだけでしょう。砂漠化を食い止め、アビドス高校の借金を減らす。これが当面の課題になります。

 

「エデン条約やアトラ・ハシースでの借りもありますし、トリニティから資金提供を、ミレニアムから技術提供を受けることは不可能ではありません。それでもアビドス単独で復興に努めようと?」

「ええ。私たちの問題は私たちで解決します。キヴォトスでは毎年沢山の学校が廃校になっていますから、アビドスだけが贔屓された、って思われないようにしたいんです」

「大丈夫よ先生。私たちは絶対にやり遂げるからさ。なんたって今アビドスは3人も生徒が増えて8人がかりだもの!」

「……。そうですか。分かりました。アビドスの選択を尊重します」

 

 そんなアビドスは結局ホシノが新しく生徒会長になったそうです。旧生徒会のユメとホシノの承認により対策委員会が新しい生徒会相当の組織になりましたが、アヤネが辞退、ユメが強く推薦したためホシノがその座についたとのこと。

 

 ホシノはこれまで夜一人で治安維持の巡回をしたりと単独行動が少なくありませんでしたが、以前よりは落ち着くことでしょう。彼女一人でアビドスを守らなくてはならない時代は過ぎました。今はもう頼もしい後輩がいるのですから。

 

 ところで、シェマタやセトといった一連の元凶だったゲマトリアの地下生活者ですが、あの後もう一人のシロコが懲らしめたのだそうです。ゼアル先生の言い分を信じるなら「灸を据えた」そうですが、おそらくそれ以上に脅したのでしょう。もう二度と悪巧み出来ないように。

 

「ごきげんよう、"先生"」

 

 そんな地下生活者の暗躍を利用して崇高ことホルアクティの召喚を成功させた黒服は、罰ゲームでオベリスクに殴り飛ばされたせいか、全身包帯まみれで再び姿を現しました。

 

「あ、ミイラおとこだー」

「うへぇ……次はゴッド・フェニックスで丸焼きにしよっか」

 

 シャーレ当番だったイブキは私たちが思っていても口にしなかった感想を正直に述べ、同じく当番のホシノは笑いながらも目は全く笑わないで招かれざる来訪者を睨みつけました。しかし見た目のシュールさに反して黒服の足取りは確かなものですので、実際にはそこまで重傷ではないでしょう。

 

 黒服は出張準備中のゼアル先生の元まで行くと、スーツの内ポケットから2枚のカードを取り出し、ゼアル先生へと差し出しました。それは《溟界神-ネフェルアビス》と《溟界神-オグドアビス》。もう一人のシロコを再反転させて色彩から救い出せる、神のカードです。

 

「アンティルールの範囲外ですが、この2枚はゼアル先生に譲りましょう。もしこの世界から旅立つことがあれば持っていてください」

"いいの? 神のカードだし、神秘の探求には不可欠なんじゃあ?"

「アメン・ラーとラー・ホルアクティを観測したことで、これまでの研究は一区切りつきました。神としての原初のラーはもう私には必要ありません」

"……ベアトリーチェみたいに崇高を手中に収めようとは思わないのか?"

「我々ゲマトリアは研究者であって支配者や救世主になるつもりはありません。今後も研究過程で"先生"方と対立することもあれば一時的に協力関係になることもあるでしょう」

"……もらえるならもらっておく"

 

 ゼアル先生は黒服からカードを受け取り、もう一人のシロコに手渡しました。もう一人のシロコは渋い顔をしたものの、観念してサイドデッキに2枚の神のカードを入れます。

 

「これで私はもう「次」に「今」を継承する術を失いました」

 

 その発言を聞いた"先生"とゼアル先生はぎょっとしました。もう一人のシロコは警戒心を強めます。私も思わず作業の手を止めてしまい、黒服へと視線を向けてしまいました。

 

 黒服は、キヴォトスが何度もやり直していることを観測できている。

 

 一方のホシノとイブキはこれをスルー。意外にもラーや幻魔を使役するホシノとイブキはカヤやリンのように前回を覚えている様子はありません。ラーや幻魔では神秘が不足している、というわけでもありませんし、性質の違いでしょうか。

 

"黒服、お前……いや、もしかしてゲマトリアは……"

「残念ながら七神リンほど完全に継承出来ている者はおりません。そしてこの情報は今回をもって無意味となる。私はそう予測しています」

"……! つまり、黒服はこのまま今の3年生が無事に卒業出来ると思ってるの?"

「くっくっくっ、無事かどうかは"先生"方次第です。最後まで気を緩めずに生徒たちに寄り添ってください。それがシャーレの先生ですよね」

 

 黒服はホシノにシャーレへの差し入れを手渡すと、そのまま帰っていきました。受け取ったホシノは露骨に嫌な顔をしましたが、紙袋はD.U.でも毎日行列が並んで開店後すぐ無くなることで有名なスイーツのお店のもの。捨てたくてたまらないようでしたが、同時に喉から手が出そうなぐらい視線が外れません。

 

 ホシノの携帯端末に連絡が入ったのはちょうど葛藤している時でした。なんでもアビドスの過疎化市街地地区にビナーが現れたとユメから連絡があったのだそうです。ホシノはすぐさま荷物と武装をまとめました。

 

"私も行くよ、ホシノ"

「いいの? ビナーなら何度も追い払ってるからおじさんたちでも大丈夫だよ~」

"油断せずにいこう。何かあってからじゃあ遅いからね"

「……そうだね。じゃあお言葉に甘えちゃって、指揮お願いね」

 

 "先生"はホシノとともにシャーレのヘリに乗ってビナーが出現した現場へと向かいました。そんな2人を見送ったゼアル先生は再び百鬼夜行に赴く予定です。シェマタの一見で急遽切り上げてきたので、残件を片付けに行くのだとか。

 

 そんな私は"先生"がアビドスから戻ってきたら出張するつもりです。事務仕事をこなしている間にもオンライン会議で方針決めや相談に乗っていますが、現場を見に行かないことには話になりませんので。

 

「アリウス復興計画……何事もなければいいのですが」

 

 これからもまだまだシャーレの先生の出番は多そうです。

 困り、悩み、苦しむ生徒は尽きないでしょうから。




これで対策委員会編3章は終わりです。次はイベントストーリーを不定期に掲載していきます。リクエスト募集しますので、お気軽にリクエストください。
本編はしばらく休載します。見切り発車で進めようとも思いましたが、やはりこれまでと同じくじっくり構想を練りたいです。本編再開は原作が以下のとおり進んだらになります。

百花繚乱編:コクリコと決着が付いたら。
過ぎ去りし刻のオラトリオ編:3章以降で問題が解決したら。
デカグラマトン編:2章の内容次第では飛ばします。
明日へと続く道編:4.5th PVに登場した謎の連邦生徒会役員の正体が判明したら。

ご意見、ご感想お待ちしています。
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