Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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アロナ、元凶に憤る

「さて、今はZ-ONEには観客に徹して欲しいですし、そして"先生"も黙っていてください。ですよね、アロナ」

「エラー……!」

 

 通話をデュエルディスクに転送した私はソリッドビジョンで向こう側の映像を映し出します。投影されたエラーは私が最初に出会った時のように完璧に連邦生徒会長を装っています。表情、仕草、言葉遣い、どれを取っても連邦生徒会に残された記録通りで違和感がありません。

 

 ……何でしょうか。この表現しきれない違和感は。連邦生徒会長がe・ラーと決闘していて、途中で彼女は肉体を奪われて、彼女はA.R.O.N.Aに代わってシッテムの箱の管理AIとなって"先生"を支え続けた……だった筈。ですからエラーは私たちが倒すべき敵、で正しい筈なのですが……。

 

 シッテムの箱からソリッドビジョンで姿を見せたアロナはエラーと睨み合います。アロナは怒りと憎しみを抱きながらも表面には出さず強い意志のみを見せ、エラーはそんなアロナに満足そうに微笑みます。

 

「貴女自身は手を出さないんじゃなかったんですか?」

「最後なんだからいいでしょう。まさか卒業シーズンまでずれ込むなんてね。アロナの頑張りのおかげかな?」

「違います。全部先生方のおかげです! 貴女が今更何したって最後は先生方が必ず勝つんですから!」

「いいでしょう。色彩も黄昏も退かれましたし、これがファイナルターンです!」

 

 エラーは自分のD・パッドを展開し、ソリッドビジョンで映像を投影します。ソリッドビジョンが更にソリッドビジョンを出す奇妙な構図ですが、こちらもきちんと見ることができます。サンクトゥムタワーの立体図が。

 

「決闘の内容は簡単。48時間以内に生徒会長室にいる私にデュエルで勝てばアロナの完全勝利です。ですが……」

「サンクトゥムタワーは連邦生徒会長の許可でテロ対策として各エリアが封鎖出来るんでしたね」

「そのとおりです。通るには各エリアの管理を任された連邦生徒会の各室長のアクセス権が必要です。ここまで言えばあとは分かりますよね?」

「リンちゃんたち連邦生徒会役員を全員倒さなければ貴女のもとにはたどり着けない……ということですね」

 

 エラーが示したサンクトゥムタワーの断面図ではどこのエリアをどの室長が受け持っているかが色分けされています。これを見る限り直通エレベーターを動かすにもアクセス権が必要。全員は大げさにしても半分以上の室長と戦わなくてはいけないようです。

 

 しかし……まさかチェスや将棋で戦うわけでもありませんし、室長を順番に倒しても48時間もかかりません。サンクトゥムタワーを徘徊する連邦生徒会役員全員を相手しても半分の24時間あれば充分でしょう。

 

「アリス分かりました! きっと一歩歩くごとにエンカウントしてしまうんです! 黄金の◯を捨てないと駄目です!」

「いくら連邦生徒会に所属してる生徒が全員一流のデュエリストだって仮定しても、"先生"たちの敵じゃないと思うわよ」

「途中でしゃとるに誘導して閉じ込めるつもりでしょうか……?」

「そもそもバカ正直にサンクトゥムタワー内を突破しなくても、我々ヴァルキューレが部隊を編成して窓から突撃させれば済む話だ」

 

 何かがある。しかしその前兆が未だ見えず。

 念のためキヴォトス各地のエネルギー濃度を分析しますが、いずれも正常値。

 異次元から呼び寄せるにしても虚妄のサンクトゥム発生時のようにエネルギーが出力されますし、本当に何もありません。

 

「ええ。おっしゃるとおり、いくらリンちゃんたちでも先生方は止められないでしょうね。ですけど、それはこっちに構ってる余裕があれば、でしょう?」

 

 サンクトゥムタワーの立体映像を消したエラーが次に表示させたのは空中モニターでした。映し出された映像はサンクトゥムタワー……というよりD.U.区の上空映像でしょうか。雲もあまり無い晴れ模様の元で人々は普段通りに生活していますが……、

 

 そんな平和な光景が、突如として終わりを迎えました。

 空がひび割れ、砕け、裂け目から大量のモンスターが出てきたからです。

 しかし未だエネルギーは検知されず。まるで夢幻を目にするかのようでした。

 

「な、なんなんですの、このもんすたぁたちは……!?」

「あり得ない! リアルソリッドビジョンでもセンサーには引っかるのに、実体がない幽霊だとでも言うのか!?」

 

 外へと視線を向けると、サンクトゥムタワーを中心としてモンスターが降りてくるのが分かります。エラーが見せている映像はリアルタイムのもののようです。これほどの大群ともなれば、対処を誤れば一般市民に被害が出てしまいます。

 

「シャーレの先生はキヴォトスの生徒を見捨てない、ですよね。困った生徒を助けに行かなくていいんですか?」

 

 エラーは楽しそうに映像を消し、今度はキヴォトス全土の地図を表示させました。そして指でバツ印を合計7箇所、奇しくも虚妄のサンクトゥムが出現した同数を記していきます。

 

 D.U.区、アビドス、ゲヘナ、トリニティ、ミレニアム、百鬼夜行、レッドウィンター。エラーが最後まで語らずとも察せます。D.U.区と同じように他の自治区でもモンスターを出現させている、と。

 

「光でも闇でもない……まさか、私の《夢幻虚光神》と同じように……!」

「そう。闇と光、混沌と秩序、陰と陽。それらから逸脱した虚ろな存在。それが私の作り出す虚像、「e・ラー」モンスターです」

 

 アロナはエラーを睨みつけ、強く歯を噛み合わせました。

 

「っ……! エラー、キヴォトスを何だと思ってるんですか……!?」

「私に無限に絶望を齎す楽園。違いますか?」

「そんな運命も明後日には終わりです! 先生方の完全勝利で!」

「……。それは楽しみにしましょう。盛大な持て成しと一緒に、ね」

 

 ……。またです。またエラーの頭の後ろでヘイローがちらつきました。

 確かキヴォトス人のヘイローは意識がある時にだけ現れるのでしたね。

 エラーに体を乗っ取られた連邦生徒会長のヘイローが無い理由はこれなのですが、なら時折出現するわけは……。

 

 私はエラーがアロナと対峙している間に一歩下がり、ゼアル先生に近寄ります。どうやらゼアル先生もエラーを観察して今の現象をおかしく思ったようです。彼のパートナー、もう一人のシロコの足音を立てずに側に来ました。

 

「ゼアル先生、エラーのヘイローですが……」

"うん、一瞬だけ見えた。連邦生徒会長のだったね……"

「では乗っ取られた連邦生徒会長の意識がまだ残ってるのでは?」

"それだとアロナの説明が付かない。……いずれにしても、ただエラーを倒すだけじゃあ済みそうにないね"

 

 同感です。慎重に真実を見極めないと取り返しのつかないことになります。

 世界とは変化を恐れるもの。時の流れは容易く変えられません。

 もし一度失敗してしまったら、私たちイリアステルのように、連邦生徒会長のように、途方もない労力と時間を費やさないと修正など出来ません。

 故に、心してかからねば。

 

「D.U.区に出現したモンスターは我々ヴァルキューレがSRTと連携して対処します。先生方は他の学校の指揮に回っていただいて問題ありません」

「ヴァルキューレもSRTも連邦生徒会防衛室の傘下でしょう。連邦生徒会長として待機を命じます」

「あいにく、現在のヴァルキューレの指揮系統上の上流はシャーレです。連邦生徒会長が不在の間、カヤ前防衛室長の提案でリン前連邦生徒会代行が承認、シャーレが同意して施工されました。取り消しにはシャーレの許可が必要ですので」

「ふぅん。カヤちゃんもリンちゃんもやるじゃん」

 

 カンナが部下に指示を送っている間、私は"先生"やゼアル先生とともに誰がどの自治区に赴くかを決めます。結果、ミレニアムとトリニティは私、アビドスと百鬼夜行はゼアル先生、ゲヘナとレッドウィンターは"先生"が行くことになりました。

 

 早速行動を開始……しようとしたところで、今日の当番で来てもらったアル、アリス、ユカリをどうしようか決めてませんでした。事務所での仕事はもう無理ですから、このまま私たち3人と同行して帰っていただきましょうか。

 

「いえ。私はこれから別行動を取らせてもらうわ」

 

 しかし、自分たちの学校に戻ろうとしたアリスやユカリと違い、アルだけは動こうとしませんでした。しかし彼女はシャーレに留まるつもりもないようで、荷物をまとめて、自分の銃とデュエルディスクの最終チェックをします。

 

「私たち便利屋68は一足先にサンクトゥムタワー攻略に挑むから」




5D'sとZEXALの一挙放送は楽しかったです。でも今更気づいた点も結構あって新鮮でした。

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