連邦生徒会は連邦生徒会長の下に総括室、そして行政委員会傘下の11室で構成される組織です。エラーの発言を鵜呑みにするなら最低でも12人の室長と戦わなくては連邦生徒会長室にはたどり着けません。
更には連邦生徒会は室長だけではなく普通の役員も在籍していますので、アルたちがいかに優れていてもたった4名でサンクトゥムタワーに突撃するのは無謀と言わざるを得ません。
「今から私たちが助っ人に行っても組織だった動きをする各学校の邪魔になるだけだわ。虚妄のサンクトゥムが出現したみたいにある自治区で2つとか3つ顕現したわけじゃないから、今度は自分のところに出現した1箇所に集中できるもの」
「しかし無限に湧き出る雑魚を蹴散らすのに人手はいくらあってもいいだろう。ボスを倒して鎮圧してからサンクトゥムタワーに乗り込んでもいいのでは?」
「……身共もアル先輩に賛成ですわ。確かに身共は誇り高き百花繚乱の一員。直ちに百鬼夜行に戻って事態を収集すべきなのでしょうが、今身共たちがしゃーれで御勤めをしているのを偶然で片付けてよいのでしょうか?」
「アリスも賛成です。これは仲間たちが戦っている間に勇者が魔王城に乗り込む決戦前イベントです!」
カンナは少し唸ってから携帯端末で誰かと会話を始めました。通話を切って軽く息を吐くと、ディスプレイにD.U.区の地図を表示します。そしてシャーレからサンクトゥムタワーまでのルートを矢印線で描写しました。
「SRTのFOX小隊以下3年生の小隊が突破の援護をする。状況次第では何班かサンクトゥムタワー突入にも加わるそうだ」
「見事なお膳立てよ。肝心な時に役に立たなかった一昔前のヴァルキューレが嘘みたいじゃないの」
「ヴァルキューレは警察であって軍隊ではないからな。SRTが復活したおかげで本来の職務に専念できてる」
「では、あとは決死の覚悟で敵の本丸に突撃するだけですわ!」
私たちに同行しようとしていたユカリとアリスも足を止め、アルたちと肩を並べます。各自地区に向かおうとする私たちを心配させまいと自信たっぷりに、堂々とした佇まいで私たちを見送ろうとしていました。
「いってらっしゃい、先生。こっちは私たちに任せておきなさい」
「アリスは勇者です。勇者は魔王になってしまった連邦生徒会長を止めなきゃいけません」
「丸2日間もありますもの。危険な真似はいたしませんわ」
「退路を断たれないようヴァルキューレとSRTがバックアップします。先生方が戻られる頃までにある程度連邦生徒会長までの道を切り開いておきますので」
私は"先生"とゼアル先生と目を合わせ、頷き合いました。アルたちを信じ、彼女たちに任せましょう。
"頼んだよ。アル、ユカリ、アリス"
「ええ、吉報を待っていて頂戴」
私たちは私たちのやるべきことをするためにシャーレを離れ、アルたちは自分たちのやれることをやるためにサンクトゥムタワーへと向かいます。不安はありません。アルたちならきっとやり遂げると思っていますから。
◆三人称視点◆
「ミレニアムに出現したモンスターの群れの特徴は分析出来たかしら?」
「キヴォトスでは市販されていないモンスターが半分以上いたので中々時間がかかりましたが、間違いなくこれでしょう」
ヒマリは大型ディスプレイに出現したモンスターを映した静止画像を並べていく。下級モンスターはアビドスのユメが召喚した記録が残っていたため、大型モンスター4種類はそこから当たりを付けた。
「「覇王眷竜」……。前任のセミナー副会長が別次元に存在すると仮説を提唱してた、四天の龍を統べる究極龍の尖兵ね」
「《覇王龍ズァーク》……。このキヴォトスに出現する可能性が無かったとは言いませんが、この目で見たくはありませんでしたね」
ミレニアムに出現したのは《覇王眷竜ダークヴルム》や《覇王眷竜オッドアイズ》等6種類の「覇王眷竜」モンスターの群れ。そして「覇王眷竜」をサポートするかのように従う「覇王門」モンスターだった。
そして、そんな「覇王眷竜」たちを従える究極龍、《覇王龍ズァーク》がゆっくりとした速度でミレニアムタワーへと接近しつつあった。しかし観測される《覇王龍ズァーク》はリオやヒマリの予測と様子が異なっていた。
「少し前にアビドスのユメ生徒会長が召喚した《覇王天竜》と対極に位置するのが《覇王龍》なら、シンクロでエクシーズ、フュージョンでペンデュラム、のはずよね。ペンデュラムとシンクロしか検知出来ないわ」
「あえて呼称するなら《覇王龍ズァーク-シンクロ・ユニバース》、かしらね」
「ただ、色彩化したミメシス同様に正でも負でもない虚ろな存在で顕現してる。それなら"先生"方からの情報を元に、《覇王龍ズァーク-e・ラー・ユニバース》と改めるべきよ」
「どの道キヴォトスを破滅させるだけの力を持った《覇王龍ズァーク》はその半分も出し切れない筈です。なら、いくらでもやりようはあるでしょうね」
と、リオとヒマリは敵軍を分析して対処法を模索するのだが、それが実行に移されることはない。何故なら3年生の彼女たちは後輩たちにその役目を譲っており、現に動き出そうとしたところ、ユウカやノアたちに助力を拒まれたからだ。
「これからのミレニアムは自分たちで盛り上げて、自分たちで守らなきゃいけないから、私たちは大人しくしろ……だったわね」
「困りました。卒業を間近に控えていてもまだミレニアムの生徒には変わりありませんのに」
「あの子たちの意志は尊重したいわ。陰ながらユウカたちを助けてもいいのだけれど、恨まれてしまうもの」
「おいおい、リオとヒマリが雁首揃えて何やってるんだ?」
自動ドアを開けて遠慮なく室内に入ってきたのはネルだった。隣にはアスナもいる。既に「覇王眷竜」の群れに対処すべくC&Cにもセミナーから出動命令から下されているが、2人とも戦闘をした形跡は見られなかった。
「C&Cも2年生以下だけ総動員するのね」
「アカネたちにすっこんでろって言われちまってな。トキなんざコールサイン00は私のものだーとか言い出しやがってさ。ったく、花道ってもんを知らねえのかよ」
「だから私たちは私たちの出来ることをしに行くの。だからさ、許可を頂戴」
「出来ることをしに……」
アスナの言う出来ることは他の自治区やD.U.区への加勢ではない。しかしリオもヒマリもネルやアスナが何のためにここに来たかすぐに分かった。
キヴォトス全土に放映された連邦生徒会の緊急記者会見。シャーレがあと2日で解散されることは把握しているし、ミレニアムから正式に抗議しようとした矢先にこの異変。間違いなく関係があるだろう。
そこにアリスからモモトークが入り、他のシャーレ当番たちと共にサンクトゥムタワーの連邦生徒会本部に乗り込むのだという。先生方がいなくなるのを防ぎ、かつ異変の元凶だろう連邦生徒会長を倒す、一石二鳥の行動だ。
「リオとヒマリにもユウセイ先生からモモトーク入ってんだろ? 「すべての戦いを勇者のためにせよ」、ってさ」
「ゲーム開発部の部室にあった漫画の台詞じゃないですか……。いえ、私も好きですけれどね」
「アリスたち一行で連邦生徒会全員を退けるのは難しいわ。なら、手が空いている私たちでアリス一行を援助するのは合理的ね」
「そうなるだろうと思って、リオとヒマリのDホイールは整備を済ませておいたよ」
音声通話で会話に混ざってきたのはウタハだった。彼女はミレニアムタワー地下駐車場でリオとヒマリのDホイールの整備を終え、オイルまみれになった手で顔に触れないよう腕で額の汗を拭う。
なお、ネルはDホイールを所持していない。ライディングデュエルの際は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に騎乗していたから。今回もミレニアムからD.U.区にはクリアウィングでひとっ飛びするつもりでいる。
リオはしばし考えこむが、モニターの向こうではユウカとノアが主導してC&Cを始めとした各部活へ的確に指示を送り、「覇王眷竜」を次々と退治していっている。それどころかトキを筆頭に《覇王龍》とも戦闘を開始している状況だ。
「……もう私たちの出来ることはここには無いわね」
「ええ。ミレニアムは後輩たちに任せて、私たちは他にやれることはやりましょう」
「そうこなくっちゃな。じゃああたし達は先に向かってるぜ」
「ええ。時間的余裕もあまり無いし、私たちを待たずにサンクトゥムタワーに突撃して構わないわ」
リオとヒマリは地下駐車場に向かい、ネルはアスナを連れて窓を割り、ミレニアムタワーから落下する。その間に自分のエクストラデッキからカードを一枚抜き、デュエルディスクへとセットした。
「その美しくも雄々しき翼を翻して、光の速さで敵を討て! 来い! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
召喚された白き龍はエメラルド色の翼を広げてネルとアスナを乗せる。そして大空へと飛び立った。途中でひしめく《覇王眷竜ダークヴルム》等が邪魔になるが、クリアウィングは縫うように回避しつつ速度を保ち飛行する。
そんなネルたちに接近してきたのは《覇王眷竜クリアウィング》。ネルのエクストラデッキにも一応入っているが、風属性が占める【スピードロイド】デッキとは相性が悪く、もっぱらリアルファイト要員だ。
《覇王眷竜クリアウィング》の翼が翠色に輝いたかと思うと光が放たれた。戦闘相手を問答無用で破壊する効果が発動されたのだが、それを見たネルは鼻で笑った。クリアウィングを相手に先に手を出すなんて馬鹿だな、と言いたげに。
「ダイクロイックミラー!」
色彩が微妙に変化する混沌の光は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が放つ済んだ碧色の光によって打ち消され、逆に光を浴びた《覇王眷竜クリアウィング》が悲鳴を上げて爆散した。
「《覇王龍ズァーク-シンクロ・ユニバース》……あたしが戦ってみたかったが、もう後輩に譲ってやらないとな」
戦場と化したミレニアムを背に、ネルたちはD.U.区へと飛んだ。
◇総力戦:覇王龍ズァーク-シンクロ・ユニバース
《覇王龍ズァーク》なら爆発でもあり貫通でもあり神秘でもあり振動でもあるが、《シンクロ・ユニバース》は貫通オンリー。装甲も同じで重装甲のみ。
時折眷属の覇王眷竜を召喚してくる。
なお、ズァークを倒しても戦闘は終わらない。両脇の《覇王門零》と《覇王門無限》の両方が生き残っている場合、ペンデュラム召喚でズァークを復活される。後列にいるペンデュラムモンスターを先に倒すべし。
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