◆三人称視点◆
アビドス高等学校自治区。ハイランダー鉄道学園が砂漠横断鉄道を本格的に運用し始めたことで交通の便が良くなり、少しずつ復興が始まっている。依然としてカイザーからの借金の返済は完遂していないものの、目途が立っているのは幸いか。
アビドス高等学校からはホシノ、ユメ、クロコが卒業する。ホシノは卒業してからもアビドスに残るつもりだったが、ユメは早々にキヴォトスの外への進学を決め、クロコもまたアビドスから去ると宣言した。ホシノはそれを受けて外の世界を見て回るのも悪くないかなぁ、と思っている状態だ。
そんな卒業生の巣立ちを祝う卒業式の準備をしていた対策委員会一同だったが、アビドスを覆う空気が一変したのを察知。真っ先にシロコが、次にホシノが校舎の屋上へと階段を駆け上る。ノノミ達も彼女達の後を追った。
「アレは……闇の……ううん、邪神の軍勢って言えばいいのかな?」
屋上から目を凝らすホシノが見つめる先には無数のモンスターが砂漠を覆いつくし、アビドスへと進攻してくる光景が広がっていた。どれもデュエルモンスターズのモンスターばかり。
そして、そんなモンスターたちを従えるように、巨大な三柱がアビドスに接近しつつあった。ホシノは、シロコは、ユメもノノミもアヤネもセリカもテフヌトも、世界を混沌へと陥れる神々には見覚えしか無かった。
「モンスターの上に浮かんでる漆黒の太陽は《邪神アバター》だね」
「ひぃん、空を飛んでるのは《邪神イレイザー》だよぉ」
「砂漠の大地にそびえ立つ巨人は《邪神ドレッド・ルート》に違いないわ……」
これまで三邪神を召喚したことのあるホシノ、ユメ、テフヌトが自分たちのカードを見つめるが、迫りくる脅威から感じられる気質は以前相対した邪神とは似て非なるものだった。
そこに"先生"よりモモトークが入る。連邦生徒会長による一方的なシャーレ閉鎖とその阻止を阻むようにキヴォトス各地に出現した「e・ラー」モンスターたち。アビドスはその発生源の一つだそうだ。
「うへぇ。こっちはヒナちゃんとこみたいに大所帯じゃないんだけどなぁ」
「あんな大軍勢相手を食い止めるなんて無茶よ!」
「こうなったら他の自治区に応援要請を……」
「ゲヘナとトリニティでも最上級モンスターが出現してるみたい。すぐは無理」
刻一刻と距離を縮めてくる絶望の群れ。しかし対策委員会一同の中で逃げるという選択肢を持つ者は誰もいない。これまで借金、カイザーPMC、ビナー、シェマタ騒動から守り抜いてきた自分たちの学校を去るつもりは無かった。
アヤネが自分のデュエルディスクを操作してアビドス自治区の地図を屋上の床に投影。観測できる邪神とモンスターの軍勢を黒塗りで示す。散開して侵攻を食い止めるのを優先するか、三邪神の撃破を優先させるかで意見が割れる。
「こうなったらさぁ、まずは市街地戦にならないよう打って出て、高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処すればいいんじゃないかな?」
「いやホシノ先輩、それって大敗フラグじゃあ……」
「とにかく時間がありません。三分で支度して出発しましょ……」
そんな時、携帯端末に連動させているアビドス校舎のインターフォンのベルが押される。アヤネが携帯端末をポケットから取り出そうとすると、ベルはピンポンピンポンピンポンと矢継ぎ早に押され始めた。
1秒間で16回もベルを押す来訪者が誰かは全員察したが、ホシノは屋上の柵を超えて下を覗き見る。やはり想像していた通りの人物がベルを鳴らしまくっていて、後ろでは保護者のように別の生徒が深くため息を漏らしていた。
「そんなに連打して壊れちゃったら弁償してもらうからねー」
ホシノは屋上から飛び降り、地面に着地する。シロコも後に続き、ユメは屋上から地面に落ちる排水パイプを伝って地上に降りた。ノノミたちはさすがに危ない真似は出来ず、大急ぎで階段を降りる。
「呼んで呼ばれてじゃんじゃーん!」
「真打ちとーじょー」
「……久しぶりだな」
来訪者、ハイランダー鉄道学園のノゾミ、ヒカリは元気よく、そしてスオウは相変わらずぶっきらぼうに言葉を紡いだ。
「一体何をしに……」
「ごめんスオウちゃん! ちょっと私たち、すっごく困っちゃってて。後でケーキでもパフェでもご馳走するから、私たちを手伝ってくれない?」
こんな時に何用だ、と鋭く言いかけたホシノにユメが言葉を割り込ませた。見事なほどに相手の要件を全く聞かず、かつこちらの要求を押し付けている。ユメのように心から訴えかけなければ身勝手だと断じられるところだろう。
「ぱひゃ! 手伝いも何も、私たちはそのために来たんだから」
「事後承諾になるけど、武力介入許可ちょーだーい」
「虚妄のサンクトゥム出現の際に色彩化ビナーと色彩の尖兵が出現した教訓から、ハイランダーはアビドスと合同で防衛にあたる方針にした」
ハイランダーはアビドスに加勢する。
そんな宣言を聞いたホシノは目を開いて瞬きを何回かした。
「えっ? そうなの?」
ホシノは思わず校舎の玄関から出てきたノノミを見つめるも、ノノミはネフティスから何も聞いていないようで、勢いよく顔を横に振った。
「アビドス中央駅、それから市街地区外の二箇所で部隊を待機中させている。後はそちらの許可を得られれば、邪神の軍勢に攻撃を仕掛けられる」
「超弩級砲塔列車のスタンバイもばっちりー」
「ほらほらー。定刻過ぎちゃうよ。早く早く」
「だってさ、ノノミ会長。どうする?」
淡々と事実を告げるスオウ、マイペースなヒカリ、急かすノゾミ。ホシノはアビドスの新たな会長となったアヤネに視線を向ける。無論、迷うまでもなくアヤネは力強く頷いた。
「分かりました。アビドス高等学校生徒会会長として、ハイランダー鉄道学園の支援を受け入れます!」
「おっけー! ハイランダー鉄道学園CCCとして、アビドス高等学校からの支援要請を受け入れるよ!」
「……聞いてのとおりだ。出発進行」
スオウが無線連絡をした途端、遠くから轟音が鳴り響いた。ついに邪神の軍勢からの攻撃が始まったかと一瞬身構えたセリカだったが、ノノミがすぐに否定する。アヤネが上空からの映像を確認し、状況を把握した。
「今の音は超弩級砲塔列車による一斉砲撃だったんですね」
「距離が離れている群れを一網打尽にするにはこれが効率的だからな。接近されれば白兵戦に切り替える」
「で、でも。向こうには相手の人数が多ければ多いだけ力を増す《邪神イレイザー》がいるんだよ? 大勢で戦ったらとんでもない強さになっちゃうから、危ないって」
「ぱひゃひゃ! それはどうかな?」
不安げなユメに不敵な笑みをこぼすノゾミ。ユメとテフヌト以外のアビドス一行は何故ここまで自信満々なのか、以前の出来事を思い出してすぐに察した。しかしそんな想像を軽く超える現象を、ハイランダーはもたらす。
ヒカリは自分のデッキから1枚のカードをスオウに渡した。スオウはあからさまに嫌な顔を浮かべたものの、手で頭を押さえつつ自分のデュエルディスクを展開。そのカードを発動させた。
「速攻魔法《神の怒り》を発動!」
「「!?」」
スオウの発動宣言に真っ先に反応したのは三幻神の担い手であるホシノとユメ。特にユメは過去の出来事を思い出して深刻な面持ちでスオウを止めようとしたが、カード自体や効果発動で生じる現象から神の力を感じなかったため、思い留まった。
「これ、アキノ先輩が作らせたラーサポートカードの1枚?」
「ええ。私では全く神秘を引き出せませんけどね。ですが雑兵の掃除にはこれで充分でしょう」
空が急に曇りだし、漆黒にうずまき出す。そして闇に染まったラーが姿を見せ、地上に神の怒りを降り注いでいく。衛星からの映像から確認する限り、遠く離れた邪神の軍勢へと容赦なく襲いかかっているようだ。
そして空が晴れ、一通り裁きの鉄槌を落とし終えた《ラーの翼神竜》が天を舞って降臨する。太陽光に照らされて黄金色に輝く竜の姿は幻想的であったが、神ではないことはすぐに分かった。
無論、ハイランダーの狙いはそれではない。
「私は《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を召喚!」
「そしてーレベル10の《ラーの翼神竜》と《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》でオーバーレイー」
召喚されたばかりの《ラーの翼神竜》は、攻守4,000を誇る圧倒的な強さを発揮せぬままに異世界への渦へと消えていった。素材にしか使われないラーってみっともないなぁ、とホシノは他人事のように思った。
「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
「エクシーズしょうかーん」
「ランク10、《超弩級砲塔列車シェマタ》! 定刻通りに出発進行ー!」
出現したのは神の再現を試みて失敗したアビドスの夢の跡。創造主のゲヘナでも用済みとなった列車砲は、しかしハイランダーにとっては現役で運転される有益な車両である。
◇制約解除戦:邪神イレイザー
攻撃:神秘、防御:特殊装甲
参加人数に比例して強くなる初見殺し要素がある。せいぜい6人までが限界。
そしてHPが尽きるとイレイザーを中心とした範囲内にいるキャラに大ダメージを与えてくる。移動要員必須。
◇大決戦:邪神ドレッドルート
生徒のステータスを半減するデバフを常時発動しているため、ギミックでの効果無効が攻略には必須。HPが半分以下になると《神の進化》でパワーアップしてくる。
◇総力戦:邪神アバター
生徒の中でLv、好感度、星+固有値を計算して最も高いキャラの姿とスキルを使用する。護衛として従属神が何体か乱入してくる。
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