Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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マコト、ヒナを刺客にする

 ◆三人称視点◆

 

 

「《超弩級砲塔列車シェマタ》の効果を発動! オーバーレイユニットを1つ取り除いて、まずは《邪神イレイザー》を破壊しちゃおう!」

「「ラーの翼神竜」カードをエクシーズ素材にしてる時、耐性を貫通するー」

 

 シェマタの砲塔が方向、角度を定める。本来なら高度なコンピューターまたは数十人係での運用を求められる列車砲であるが、モンスターとして召喚された超弩級砲塔列車にかかればターゲットを定めるのは全自動だ。

 

「ゴッド・フェニックス・キャノン!」

 

 轟音を響かせてシェマタから砲弾が放たれる。いや、それはもはや砲弾ではなく疑似太陽に近いプラズマ光弾と言えるだろう。しかしそれすらもあくまで表向きのもの。実体はラーの翼神竜の神秘を再現した一撃だ。

 

 プラズマ光弾は不死鳥へと姿を変え、向かってくる《邪神イレイザー》の放つブレス攻撃をもろともせずに襲いかかり、邪神を焼き尽くした。黒焦げになって下にいたモンスターもろとも砂漠に倒れていく。

 

「《邪神イレイザー》の効果で、フィールド上のカードは全て埋葬される。だよね?」

「そういうことー」

 

 《邪神イレイザー》の死骸を起点に闇が広がっていき、多数のモンスターが奈落の底へと引きずり込まれていく。全てを道連れにする効果を持つ神を抹殺する神の効果だが、さすがに遠い位置にいるアバターやドレッド・ルート等他の邪神までは範囲外のようだ。

 

 そんなドレッド・ルート率いる軍勢はハイランダーの部隊が会敵、戦闘が始まった。列車モンスターを召喚し、自分たちも戦ってモンスターを次々と撃退していく様子が衛星からの映像でも分かった。

 

「ん、じゃあ私たちは《邪神アバター》を倒しに行こう」

「そうよね。さっさと片付けちゃって卒業式の準備を再開しなきゃ」

「そうだねー。もう今さら邪神なんてお呼びじゃないしね」

「え、と。すみませんがホシノ先輩とユメ先輩も出番無しでお願いします!」

 

 形勢逆転したので打って出ようとしたアビドス一行だったが、意気込んだホシノに冷水を浴びせるかのようにアヤネが頭を下げた。戸惑いを顕にするホシノは何か言おうとして、しかし口を開閉させるだけで声にならなかった。

 

「これからアビドスは私たちだけで守らなきゃいけないんです。三邪神が出てきたからってホシノ先輩とユメ先輩に頼ってばかりじゃあいられません」

「それは確かにそうなんだけど、おじさんたちはまだアビドスの生徒だよ? だったらのんびり寝てるわけにはいかないよ」

「問題ない。私たちだけで何とかする。ホシノ先輩たちにはアビドスを守る以上にやらなきゃいけないことがある」

「え、と? それってどういうことかな?」

「アビドスだけじゃなく、キヴォトス全体を守る戦いをってことですよ」

 

 そこまで言われてホシノはようやく察した。アビドスのことは自分たちに任せて、ホシノはD.U.区に向かってシャーレ閉鎖を阻止しに行ってほしい、と。

 

「ゼアル先生からのモモトークによれば、SRTとヴァルキューレが部隊を編成してサンクトゥムタワーに突入するつもりのようですが……」

「任せておけない。でも私たちはアビドスも守らなきゃいけない」

「だからホシノ先輩。行けない私たちを代表して、ユメ先輩と一緒に……シャーレをよろしくお願いします!」

 

 アヤネから頭を下げられてホシノはしばし熟考する。

 

 アビドスを守りたい気持ちは大きいが、それよりもシャーレの閉鎖はキヴォトス全土を巻き込む一大事だ。それに合わせるかのように今回のような異変が各地で発生していることからも、あの連邦生徒会長が何か良からぬことを企んでいるのは明白だ。

 

 それこそ、シャーレ閉鎖を起因として最終的にキヴォトスが滅亡してしまうかもしれない。ゼアル先生のキヴォトスのように。

 

 ホシノはユメと顔を見合わせ、互いに力強く頷いた。

 

「うん。分かった。じゃあアビドスはアヤネちゃん達に任せるよ」

「ちゃんとハイランダーの子たちと仲良くするんだよ」

「分かりました。お任せください!」

「ん、じゃあD.U.区まで行くなら《ジェット・ドラゴン》を出すけど?」

「いやー必要ないって。おじさんにはおじさんの愛竜がいるからさ」

 

 ホシノは自分のデッキからカードをドローし、デュエルディスクにセット。すると天空に赤みがかった銀色に金色の装飾が施された身体と翼のドラゴンが姿を現した。ホシノがテコ入れして大幅強化された【ホルス】デッキの切り札だ。

 

「《ホルスの黒炎神》。これでひとっ飛びするよ」

「分かりました。お気をつけて」

「連邦生徒会役員はキヴォトスの優秀な生徒が集ったエリート集団だ。油断するなよ」

「大丈夫だって。ちょーっと先生たちが異議申し立てしやすいよう道を切り開くだけだからさ」

 

 ユメとホシノを乗せたホルスが大空へ舞い上がり、D.U.区へと飛び立った。

 それと入れ替わるようにアヤネのヘリが校庭に着陸する。

 アヤネの先導でシロコたち、そしてスオウたちも乗り込む。

 

「では、私たちは私たちのやることをやりましょう」

「ん、アビドスは私たちが守る。先生やホシノ先輩に余計な心配はかけさせない」

 

 ホシノとユメを欠いたアビドス防衛戦が、始まる。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「それで、自治区内に出現した「神」は合計何体だ?」

「4体ね。そのうち1体はとびっきりヤバそうなのよ」

「1体に戦力を集中させて各個撃破したいところですが……今回ばかりは手分けして各個撃破するしかなさそうですね」

「では、どの部がどれを担当しますか?」

 

 ゲヘナ学園の万魔殿では大テーブル上にゲヘナ自治区全土の地図を広げ、「神」の出現ポイントに駒を置いている。見事なまでに離れた位置に出現した上に、「神」に呼応したように多数のモンスターも出現している。

 

 駒の形はそれぞれ蜘蛛、猿、トカゲ、魔神。「神」を示す駒の周囲にデュエルモンスターズを卓上でやる際のカウンター用の赤いおはじきが散りばめられている。あまりの数の多さが頭を悩ませる。

 

「大物の「魔神」は万魔殿で受け持ちましょう。風紀委員会に厄介な「蜘蛛」を押し付けるとして……」

「「猿」は温泉開発部にまかせて! 猿だって温泉浴はするんだから!」

「では美食研究会は「トカゲ」を退治しますか。ですが周囲のモンスターを退治する者は動員していただけますか?」

「キキッ、風紀委員会に捻出させるから安心しろ」

 

 打ち合わせに参加しているのは万魔殿、温泉開発部、美食研究会、救急医学部……のうち、三年生のみだった。彼女たちは方針だけを決定して後は在校生たちがどのように危機的状況に対処するのか見定める考えだ。

 

 大筋で固まった頃だった。扉が乱暴に開かれ、乱入者が現れる。万魔殿議員の制止を振り切って突き進むのはヒナ、そして彼女に従うアコだった。

 ヒナはポケットに入れていたチェスの駒を地図の上に起き、「魔神」の駒を指で弾き飛ばす。

 

「どういうつもりなの、マコト」

「ヒナ、いきなり現れて何だその態度は?」

「3年生に待機を命じないで、最初から全力で1体ずつ確実に潰していけばいい。今後のためだとか悠長なことを言っている場合では無いわ」

「キキッ。ゲヘナだけを見れば全力で対処するのが利口なやり口なんだろうなぁ。だがそうじゃないのはヒナだって分かってるだろう?」

 

 マコトは「魔神」の駒を置き直し、ヒナが置いた女王の駒を地図から追いやる。自分たちを排除していると受け取ったアコは頭に血が上るが、ヒナはわざわざマコトが移動してまで駒を追いやった位置に意味があると受け取り、察した。

 

 それはゲヘナから見たD.U.区のある方向。つまり、マコトはヒナにゲヘナに構ってる暇があるならシャーレ閉鎖を食い止めに行け、と言っているのだ。

 

 ヒナは目を丸くしながらマコトを見つめる。マコトは目を逸らして知らんぷりする。いつものやり取りだが、最後までマコトらしいと自然と笑みがこぼれてしまった。それを目ざとくマコトに見つけられ、あからさまに不機嫌になられた。

 

「いいわ。マコトの案に乗ってあげる。イオリたちがちゃんとするかも知りたかったところだし」

「しかし委員ちょ……もとい、ヒナ! こうまで蔑ろにされては来年度になっても風紀委員会は万魔殿に振り回されてしまいます!」

「アコ。「虎丸」をスタンバイさせて。すぐに出発する」

「っ……。分かりました。すぐに準備させます」

 

 ヒナの言う「虎丸」は万魔殿でイロハが運用する重戦車「ティーガーⅠ」ではなく、風紀委員会が運用する軍用ヘリ「EC665 ティーガー」を指す。《魔王龍べエルゼ》で飛べない距離でもないが、体力と精神力は温存しておきたかった。

 

「ところで、私たちを追い出したのだから、勝算はあるのね?」

「キキキッ! それは実質2箇所受け持つ風紀委員会の働き次第だな!」

「そう、ならいいわ。くれぐれもイオリたちの足を引っ張らないで頂戴」

「ヒナはこっちのことばかりじゃなく自分たちの心配でもしておけ」

 

 連邦生徒会役員が一筋縄ではいかないことなどヒナも承知している。特に室長クラスが本気を出せば軽くいなす程度では済まない、とヒナは認識している。だからと臆する必要とてこれっぽっちも無い。

 

 ヒナとアコが去り、集った一同も自分たちがやるべきことをやるために散っていく。

 

 ゲヘナを襲ったモンスターの群れは「地縛」モンスター。

 

 襲来した神はそれぞれ「蜘蛛」こと《地縛神Uru》、「猿」こと《地縛神Cusillu》、「トカゲ」こと《地縛神Ccarayhua》。そして最強の地縛神、「魔神」こと《地縛神Pukasaqra》、すなわちスカーレッド・ノヴァである。

 

 ゲヘナ防衛戦の火蓋が切って落とされた。




◇大決戦:地縛神スカーレッド・ノヴァ
初見殺しなのは三属性でそれぞれ前半戦の地縛神が異なるところ。Uru、Cusillu、Ccarayhua、ChacuChallhuaがそれぞれの属性を受け持つ。

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