Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ミカ、サンクトゥムタワーに飛ぶ

 ◆三人称視点◆

 

 

「まさかあの神々に今一度お目にかかれるとは思ってもいませんでした」

「いやいやいや、調べたらちゃんとオリジナルカードは厳重に保管されっぱなしだったよ。ほら、これ!」

「どうやら顕現した神々はオリジナル版から神秘を抽出したわけではなく、過去の記憶の再現のようだね」

「だから虚のモンスター、「e・ラー」なのですね」

 

 トリニティ総合学園ティーパーティー。ナギサ、ミカ、セイアはそれぞれテーブルを囲んでお茶会の最中だった。その隣では2年生のティーパーティーメンバーが突如出現した脅威の対処に追われている。

 

 何とか時間を捻出したサオリがへとへとになりながら4つ目の椅子に座る。ミカが紅茶を入れてサオリへと差し出した。サオリは砂糖もミルクも入れずに一気に飲み干し、糖分補給とばかりに中央の小さなケーキを口に運んだ。

 

「セイア様方はあの神々がどのような存在かをご存知のようですが……」

「サオリさんも先代のティーパーティーホストのことは耳にしていると思います」

「あいにくトリニティに入学した頃には卒業されていましたので、記録では知っていますが……」

「ゲヘナの雷帝と対を成す傑物、トリニティの三体様。彼女の切り札があの神々です。トリニティの創設以前より伝わるその神々の名は「創星神」と言います」

 

 トリニティを囲うように出現した三柱の神々。それが《創星神sophia》、《創星神tierra》、そして《双星神a-vita》だ。更には三柱の神々はモンスターの大群を従え、トリニティに迫ってきていた。

 

「三体様が何故三体と呼ばれたか、それは彼女がサンクトゥス派のリーダーで」

「フィリウス派のリーダーで」

「パテル派のリーダーだったからだよ」

「……は?」

 

 サオリはしばしセイアたちが何を言っているのか理解できなかった。

 

 トリニティとして学校が総合されても派閥として今もなお残っているパテル、フィリウス、サンクトゥス。いずれかに属する生徒は自分たちの派閥に誇りを持っており、協調ならまだしも完全に一体化するなど有り得ない。

 

「三大派閥を一つにまとめていたのですか……?」

「三体様は三重人格者でして、それぞれの人格で各派閥のリーダーを……いえ、話が逸れていますね。重要なのは、三体様が従えた「創星神」は各派閥が厳重に封印していた神のカードなのです」

「それぞれ「破壊」、「創造」、「生命」の権能を司る絶大な力を持つ神々だ。一つ間違えて暴走させれば、トリニティはおろかキヴォトス全体が危うい」

「でも、昔はこの神様を使って自分たちが頂点に君臨しようとしたんだって」

 

 パテルが《創星神sophia》、フィリウスが《創星神tierra》、サンクトゥスが《双星神a-vita》をそれぞれ従え、神をいち早く完全にコントロールして相手を傅かせるか。それぞれの学校は争いながらも神の降臨を模索し続けた。

 

 そして黙示録がごとく全面戦争になるかと思いきや、降臨した三柱は三すくみとなり、やがて三枚の神のカードとなって消滅してしまった。これがトリニティとして手を取り合うきっかけとなったのだった。

 

「アリウスがトリニティに参加しなかったのも、この「創星神」を警戒したのも理由の一つだったかもしれません」

「そう言えば、ベアトリーチェもそのようなことを言っていたような……」

 

 崇高を目指したベアトリーチェはトリニティの神秘とて調べていないわけではなかっただろうが、彼女は目もくれずにアリウスを拠点にした。どの辺りが彼女の琴線に触れなかったかは少し興味が湧いたが、サオリは振り払った。

 

「ともあれ、虚ろな存在と化した三柱は厄災以外の何者でもない。トリニティを害するのなら排除するしか無いだろうね」

「サオリさんも大変でしょうが、何かあれば私たちがいつでもサポートしますので、失敗を恐れずに対処を」

「ご心配には及びません。御三方の手を煩わせないよう、我々は尽力します」

 

 紅茶をお代わりしたサオリは立ち上がって会釈すると、再びティーパーティーの議論の場へと戻っていった。それを見つめながらミカはケーキを口に入れると、椅子を引いて立ち上がった。

 

「行くのですか?」

「うん。ツルギちゃんとデートしにちょっとね」

「そうかい。トリニティは私たちに任せて、ミカは先生方の力になってやるといい。こうなっては時間との勝負だからね」

「大丈夫大丈夫! じゃあ、行ってくるね!」

 

 ミカは自分のデュエルディスクを腕に付け、エクストラデッキからカードを1枚フィールドゾーンにセットする。すると閃光と共に白き竜が咆哮を上げて飛び立ち、ミカの前に降り立った。

 

「じゃあ、飛翔して! 《閃珖竜スターダスト》!」

 

 ミカはジャンプしてスターダストに騎乗すると、スターダストは大空へと羽ばたいていった。その様子はさながら流星のごとし。D.U.区の方向と少し違っていたのは途中でツルギを拾っていく予定なのだろう。

 

「本当なら私たちもサンクトゥムタワーに行きたかったところですが……」

「虚妄のサンクトゥム出現の際に全ての箇所で"先生"の指揮抜きで色彩の尖兵を止められなかった体たらくだ。せめて自分たちの敷地内の騒動だけでも面倒を見なければね」

「ですが、先生方は各学校で出現した「e・ラー」モンスター対処を優先されています。結局私たちが足を引っ張ってしまっているではありませんか」

「そのためにミカはツルギを巻き込んで離脱したんだろう。ナギサはナギサのやるべきことをやればいい」

 

 ティーパーティーの打ち合わせには正義実現委員会や救護騎士団、シスターフッドも混ざってトリニティ全体の問題として議論が交わされている。しかし、代替わりしたとはいえいる筈の者の姿は見られなかった。

 

「セイアさん。つかぬことをお伺いしますが」

「しばらく私たちの出番は無いだろう。呼ばれるまでなら聞いてくれて構わない」

「サクラコさんはどちらに? ハスミさんとミネさんは現場にいるのでしょうが」

「残念なお知らせだ。あの三人なら私の頼みでお使いに行ってもらっている。トリニティにはいないよ」

 

 ナギサはセイアの爆弾発言にしばし目を瞬かせ、事の深刻さに悲観し、その意味を考えてから一つの結論に思い至る。当のセイアは憎たらしいほどいつもの様子でお茶を嗜んでいた。

 

「まさかセイアさん、あらかじめこの騒動が起こると知っていて……」

「あいにく未来予知は時械神のカードを受け取ってから思うように働かなくなっていてね。その分勘が研ぎ澄まされたと言おうか。今回はその勘による采配だよ」

「……。言われてから白状するのではなく初めから言っておいてもらいたかったのですが、結局最後までその調子でしたね」

「今回は元から後輩に任せようとしていた卒業生たちを有効活用した形だ。大目に見てほしいよ」

 

 ナギサもセイアも心配はしていない。後輩は立派にトリニティを守ってくれるだろうし、ミカたちも先生たちが進む道を切り開いてくれると信じている。なので彼女たちはお茶を飲み、行く末を見守るばかりだ。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 百鬼夜行に出現した異変は他の自治区と異なりたった1体のみ。しかしその1体が発する闇と黒雲より無数のモンスターが生まれ出る。そのモンスターはどれもかつてなら「妖怪族」に分類されただろう「アンデット族」ばかりだった。

 

 あんな漆黒の太陽など見たことも聞いたこともない、と百鬼夜行ではその正体を探るために至る所の倉庫をひっくり返して古文書を片っ端から調べていくも、誰一人として手がかりすら掴めなかった。

 

 幸いにも以前花鳥風月部が起こした「怪書」により発生した「怪談」と異なり通常の重火器でも対処可能ではあるが、あの無尽蔵に妖怪を誕生させる漆黒の太陽本体は銃弾をすり抜けてしまう。

 

「ううっ、どの百鬼夜行絵巻にもあのような物の怪は描かれていません……!」

「困りましたねぇ……。あの漆黒の太陽が「怪談」なら正体を看破しないと攻撃も通らないでしょうしぃ~」

 

 陰陽部のカホが山積み担っている巻物に虱潰しに目を通し、ニヤが寝転がりながら書物の頁をめくる。いっそ「百蓮」を持つナグサを守りつつあの漆黒の太陽に突撃させるか、と危険度の高い博打めいた手段をニヤが考え始めた頃だった。

 

「ねー、これどうー?」

 

 チセが巻物の一つを手にとってニヤとカホに見せた。

 

 睡眠時間を大幅に削って調査に費やしたカホは目をこすりながらチセの指が指し示す絵図を眺める。それは夜が明けて太陽が昇ると同時に逃げていく魑魅魍魎が描かれている。

 

 そう言えば、とニヤは思い出した。それは与太話に過ぎなかったが、魑魅魍魎を退散させている太陽は実は妖怪で、妖怪たちは逃げているのではなく、その太陽の妖怪によって生み出されているのだ、と。

 

「にゃはは~。チセちゃん、それはただの太陽でして……」

 

 とまで口にして、一つの可能性に思い至る。

 それは花鳥風月部のシュロが白紙の怪書に自分で思うがままに執筆し、新たな怪奇を生み出していたことに。

 

 だとしたら、科学によって未知なる怪奇が淘汰されていく近年になってもなお誕生する都市伝説のように、この諸悪の根源として妖怪の親玉が誕生したのではないか、と。

 

「確か……ええっと……ああ、そうそう。こんな風に呼ばれていましたっけね~」

「暁頃の天中殺にて現れる百鬼夜行の大首領。その名も空亡」

 

 その声は陰陽部の者から発せられたものではなかった。

 カホが慌てて振り向いた先にいたのは、花鳥風月部のコクリコだった。

 キセルをふかし、太陽を覆い尽くす偽りの太陽を眺めながら。




《幻魎百物語・暁刻天中殺》
儀式魔法
「空亡」の降臨に必要。
(1):自分の手札・フィールドから、
レベルの合計が12以上になるようにモンスターをリリースし、
手札から「空亡」を儀式召喚する。

《空亡》
儀式・ペンデュラム・効果モンスター
星12/闇属性/妖怪(アンデット)族/攻 4,000/守 0
【Pスケール:青1/赤1】
(1):このカードがPゾーンに存在する限り、相手は妖怪(アンデット)族以外のモンスター効果を発動できない。
【モンスター効果】
「幻魎百物語・暁刻天中殺」により降臨。
このカードは儀式召喚及びEXデッキからのP召喚でのみ特殊召喚できる。
(1):自分フィールドにフィールド魔法カードが表側表示で存在する場合、
または自分フィールドに妖怪(アンデット)族のモンスターが存在する場合、
このカードは攻撃対象及び、効果の対象にならない。(「怪談」の特性の再現)
(2):このカードのP召喚に成功した時発動できる。デッキから「百鬼夜行 百花繚乱」1枚を手札に加え、発動する。(フェイズ2移行の再現)
(3):自分・相手ターンに1度、自分または相手フィールドにモンスターが特殊召喚された時に発動できる。
自分のデッキ、手札、墓地より妖怪(アンデット)族モンスター1体を特殊召喚する。
(4):このカードの攻撃力は0となる。

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