◆三人称視点◆
サンクトゥムタワー正面玄関前。
シャッターを下ろして防御を固めていたアユムと連邦生徒会調停室役員だったが、ミネとサクラコの加勢により先への道は開かれた。《V・HEROトリニティ》とミネがまだ健在な調停室役員を次々と蹴散らしていく。
「さあ、シャーレ当番の皆さんは今のうちに中へ」
「……。承知しました。お先に失礼しますわ。どうかご武運を」
「させません! 《アルカナフォースXVIII-THE MOON》で……!」
「リアルファイトをこれ以上させるわけにはいきません。私たちがデュエルで相手しましょう」
アユムが新たなモンスターを召喚しようとした矢先、サクラコのデュエルディスクから発せられたレーザーポインターがアユムのデュエルディスクに命中。リアルファイトモードからデュエルモードへと強制的に切り替わる。
その隙にアル、ユカリ、アリス、そして便利屋68社員はサンクトゥムタワー内へと突入。続けてSRTの小隊がアユムと対峙するミネと交代で調停室役員を制圧。アルたちに続いてサンクトゥムタワーへと踏み込んでいった。
「ミネさん。アユムさんのバイタルチェックの結果は?」
「脳波に乱れあり。若干錯乱の兆候あり。何かしら洗脳または精神汚染の兆候が見られます」
「やはり何かされていますか……。セイアさんにD.U.区へのお使いを頼まれた時は何かと思いましたが……先生を助ける一手となれるなら光栄です」
「異常な状態と診断します。直ちに救護します」
ミネ&サクラコ対アユムによる変則デュエルが開始された。
◆◆◆
「うわっ、うっそぉ~? アユム先輩ったらもう突破されちゃったのー? これじゃあお菓子食べてくつろぐ暇もないじゃん」
突入したアルたちをサンクトゥムタワーのロビーで待ち受けていたのは連邦生徒会交通室の役員たち、そしてモモカだった。アルたちが姿を見せるなり警告や威嚇射撃無しに発砲、アルたちは素早く柱に隠れる。
そのまま交戦する、とアルたちが覚悟を決めたその時だった。続けてSRTの3年生小隊が突入し、交通室との交戦に入る。さすがの連邦生徒会でもSRTの精鋭が相手では防御しきれず、先への道が切り開かれていく。
「ここは我々が引き受ける。シャーレ当番の諸君らは先に進め」
「ありがとう! でも無茶は禁物よ!」
「忠告……いや、激励か。ありがたく受け取ろう」
アルたち一同が先へと進み、阻もうとする交通室の生徒をSRTが足止めする。こうなったらと一斉にデュエルモードに切り替えようとする交通室一同だったが、いち早くSRT側からのデュエル申請の方が早かった。
「折角我々は卒業間近なんだ。ラストデュエルに付き合ってもらうぞ」
「うっげぇ! SRTの司令塔のユキノ先輩が相手ぇ? 今日は厄日だよ……」
「だったら今からでも交通室は連邦生徒会長の声明に反対しろ。そうすれば穏便に収まる」
「ん~……。それは無理な相談かな」
おかしい、とユキノは思った。あの普段はまともに仕事をする気の無いモモカがいつになくやる気に満ちている。その目は覚悟を決めた者がするもので、決して脅されたり何かしら洗脳されてはいないと分かる。
先程のアユムといい、事情があって連邦生徒会長に加担している、と判断される。しかしどんな理由があれど彼女たちがシャーレの閉鎖に踏み切ろうとしているのは事実。であれば、SRTにとって上位組織だろうと異議申し立てはする。
昔であれば連邦生徒会長の命令は絶対、SRTも連邦生徒会側に組みしただろうが……今は違う。サオリたちトリニティやゲヘナとの合同作戦を初めとしてキヴォトスの騒動に関わった結果、もう自分たちSRTは武器のままではいられなかった。
これは、卒業するユキノたちがいずれ迷い、悩むだろう後輩のためにシャーレを残す戦いだ。
「「デュエル!」」
ユキノ対モモカの決闘が始まる。
◆◆◆
次のエリアでアルたち一行を迎え撃ったのは連邦生徒会体育室。その性質上熱血漢が多く、狭い通路の中で大盾を構えながら突撃、アルたちを強襲する。近接アタッカーがハルカしかいないシャーレ当番一同にとっては相性が悪く、足止めどころか後退を余儀なくされていた。
「なんなのよー! 白兵戦ばっか仕掛けてくるんじゃないわよー!」
「でも狭い屋内だと有効な戦術だと思う」
「えっと……私が突撃してる間にアル様たちが狙撃をするのは……?」
「アリスも突貫します! 勇者はパーティーを守るメイン盾ですから!」
「いえ、それでしたら身共が《あーまーど・うぃんぐ》と《あーむず・うぃんぐ》をけしかけて……」
通路の角から迫る敵に対応している間に作戦を練っていたアルたちだったが、そんな彼女らを横切って体育室役員へと疾走、瞬く間に距離を縮める人影があった。彼女は殴打、肘打ち、蹴り、と肉弾戦で次々と沈黙させていく。
通路の制圧が終わるとその人物は礼をし、後からやってきた他の生徒たちが体育室役員を次々と拘束し、無力化していく。アルたちはその独特の衣服に身を包んだ者たちが何者かを知っている。
「山海経高級中学校……」
そう、今回の異変でモンスターが発生していない自治区の一つだ。
しかし、連邦生徒会長によるシャーレ閉鎖宣言を聞いてから一門を派遣するにはあまりに時間が短い。それこそ異変が起こると前もって把握しておかない限り、こおまでの動員は無理のはずだ。
そんなユカリの疑問を察してかは判断がつかなかったが、一人で連邦生徒会体育室を相手した者がユカリたちの方へと歩み寄り、礼儀正しく会釈した。ビジネスウーマンのアルも思わず頭を下げる。
「山海経高級中学校、玄武商会本店の鹿山レイジョです。この度は義によりシャーレに助力します」
「これはご丁寧に。身共は百鬼夜行連合学院、百花繚乱紛争調停委員の勘解由小路ユカリですわ」
「我々玄武商会の者は散開してこの楼を無力化します。シャーレの皆さんは先に進んでください」
「それは心強いですわ! 感謝いたします」
レイジョがユカリたちと会話している間に同じく玄武商会のルミが玄武商会一門に向けて指示し、散っていく。ユカリたちはレイジョとルミに感謝を述べて次のフロアに続く階段に向けてかけていった。
ところが、階段フロアにやってきたユカリたちの前に体育室長のハイネと体育室幹部が立ちはだかった。既に彼女たちは自分たちのモンスターを召喚済みで、戦闘態勢に入っている。
「(スヤスヤ」
当のハイネ本人は立ったまま寝ていたが、ユカリたちの接近に気づいて慌てながら目を開ける。必死に寝てませんよアピールをするのを体育室の面々は呆れながらも非難はしなかった。
「んー。来ちゃったんだ。出来れば来ないでほしかったんだけどなぁ」
「ふざけたこと言わないで。シャーレの閉鎖って聞いて黙ってる生徒がキヴォトスにいるとでも思ってるの?」
「思ってない。思ってないけど、それでも来ないでほしかった」
「これまで突破してきた方々の様子もそうでしたが、何か事情がお有りなのでしょうか? キヴォトス中を敵に回してまで連邦生徒会長に加担しなければいけないよほどの……」
「言わない。言えないんじゃなくて、言わない」
まただ。とカヨコは思った。何かしらの影響を受けているのは否定しないが、明らかに連邦生徒会一同は自らあの連邦生徒会長に味方している。しかし彼女たちがあのモンスターたちの出現を許容しているとも思えない。
であれば、何故……。
「喋らせたかったら……」
「いいでしょう。押し通します!」
ユカリたちの両脇をすり抜けて体育室幹部へと肉薄したのは、2体のモンスター。《富炎星-ハクテンオウ》と《妖眼の相剣師》が応戦する連邦生徒会体育室幹部のモンスターを蹴散らし、そして体育室幹部本人にも山海経の生徒が強襲する。
「ここは我々に任せて、先に」
「ありがとうございます! 全ては勇者のために、ですね!」
アリスは礼を述べてからアルたちと共に駆け出し、ハイネ等の横を通り抜けていった。不意打ちを受けた体育室幹部一同の残りは何とか立て直し、横槍を入れた者たちを対峙する。
山海経の京劇部と玄龍門。それ等一門を引き連れるのはその座を継承した京劇部前部長のカグヤ。そして玄龍門の前執行部長兼キサキ個人の護衛となったミナだ。先程の玄武商会と合わせて山海経は主力の大半をサンクトゥムタワーに送り込んだ形になる。
「酷いなぁ。随分な挨拶だと僕は思うな」
「キヴォトスの各学校に同意を得ずにシャーレの閉鎖に踏み切った連邦生徒会が何を申すのやら」
ミナが起動したソリッドビジョン投影機により玄龍門前門主のキサキが姿を見せる。椅子に座り肩肘をついてハイネを睨みつける姿は、その華奢な体躯に似合わず射竦められそうになる迫力があった。
「易での占いで凶が出たのでミナたちを派遣してみれば、まさかシャーレの先生を解雇するつもりだったとはの」
「……僕だって不本意だったんだ。いや、僕だけじゃない。連邦生徒会の中で心から賛同してる生徒なんていないよ」
「ほう? ではいかなる事情があっての真似か、申してみよ」
「嫌だね。聞きたければ僕に勝ってみなよ」
キサキはしばし考え込んだが、かといって向こう側の事情を汲む気は無い。
「ではそうするかの」
キサキの命により山海経と連邦生徒会体育室との戦いの火蓋が切って落とされた。
◇竜華キサキ
使用デッキは【天盃龍】
◇近衛ミナ
使用デッキは【炎星】
◇朱城ルミ
使用デッキは【神秘の中華なべ】
◇鹿山レイジョ
使用デッキは【十二獣】
◇漆原カグヤ
使用デッキは【相剣】
◇春原シュン
使用デッキは【双天】
◇■■ハイネ
使用デッキは【BK(バーニングナックラー)】
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