◆三人称視点◆
七神リン
ライフポイント:4,700
手札:1枚
モンスターゾーン:《究極神アルティマヤ・ツィオルキン》、《地縛神Wiraqocha Rasca》
伏せカード:《くず鉄のかかし》
陸八魔アル
ライフポイント:6,100
手札:《レッド・リゾネーター》、他1枚
モンスターゾーン:《琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル》、《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》
伏せカード:1枚
勘解由小路ユカリ
ライフポイント:8,000
手札:1枚(「BF」モンスター)
モンスターゾーン:《BF-フルアーマード・ウィング》、《ブラックフェザー・ドラゴン》
伏せカード:2枚
天童アリス
ライフポイント:6,000
手札:0枚
モンスターゾーン:《シューティング・スター・ドラゴン》、《フルール・ド・バロネス》
伏せカード:《セイヴァー・ミラージュ》
現在リンのメインフェイズ1。スピードカウンターは各々5。
アリスたちは新たに出現した神のカードテキストを確認するが、ケチュア語ですらない意味不明な文字で記されていて、耐性、カード効果、ステータスは一切確認出来なかった。正体の分からないままでの対峙を強いられてしまう。
「でしたら、まずは《フルール・ド・バロネス》の効果を発動して、《アルティマヤ・ツィオルキン》を破壊します! フルール・ド・セレナード!」
アリスの指示で《フルール・ド・バロネス》は花びらを伴った風を発生させる。それは竜巻のようにあらゆる物を吹き飛ばすほどの激しさを伴い、究極神へと襲いかかった。
しかし、空を覆い尽くすほどの巨体な神の竜はびくともしない。それどころか攻撃を仕掛けた《フルール・ド・バロネス》を一切気にしない様子でリンの真上で空を飛び続ける。
「うわーん! 破壊効果が効きません!」
「《アルティマヤ・ツィオルキン》は1ターンに1度破壊されません」
「さすがは神っていったところね……」
「スピードカウンターが2つ以上あるので、私は《Sp-エンジェル・バトン》を発動します。2枚カードをドローし、1枚を墓地に捨てます。そしてカードをセットします」
リンがカードをセットした瞬間だった。究極神が天に向けて咆哮を上げる。その音量はヘルメット越しでも耳を塞ぎたくなるほどで、音波が衝撃波となって襲ってくる感覚を覚えた。
「この瞬間、《アルティマヤ・ツィオルキン》の効果を発動」
「させないわ! 《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》の効果で――」
「いいんですか?」
「へ?」
「究極神にアビスの効果を使ってしまったら、地縛神の効果をどう防ぐつもりでしょうか?」
「うぐっ」
《アルティマヤ・ツィオルキン》の効果は未知数。迂闊にアビスの効果を使ってしまったら最後、《Wiraqocha Rasca》によって誰かが致命傷を負ってしまう。アリスのバロネスが控えているとはいえ、ここは慎重に神の効果を見極めるべきか。
「……通すわ」
「では効果を解決します。神のもとに馳せ参じなさい、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
究極神の声に答えるように空の遥か彼方よりエメラルド色の翼を広げたシンクロドラゴンが高速で到来した。そして究極神に随伴するように並行に飛び始める。
この現象はさすがにアリスもアルもユカリも予想していなかった。
「《アルティマヤ・ツィオルキン》は1ターンに1度、魔法・罠カードをセットした時、レベル7,8のドラゴン族シンクロモンスターを特殊召喚できます」
「なな、何ですってー!?」
「シンクロドラゴンの原点にして頂点、それが究極神です」
「シンクロドラゴンを従えて、召喚する神……」
アルはまんまとリンの口車に乗ったことを後悔したが、今更言っても始まらない。顔を振って気持ちを切り替える。今度はやはり考えるよりもデュエリストとしての勘に従うことを誓いながら。
《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の姿にアリスはもうずっと昔のようでつい最近のような過去を思い出す。ミレニアムでネルと一番最初に戦った時のことを。あの時はクリアウィングにしてやられたが、今度は負けるつもりはない。
「《地縛神Wiraqocha Rasca》の効果を発動。バトルフェイズをスキップして、相手のライフポイントを1にします」
「来ましたわね……! 手札の《BF-雪撃のちぬーく》を墓地に送って効果を発動! 《ABF-雨隠れのさよ》を墓地に送って、リン様の手番が終了するまで地縛神の効果を無効にしますわ!」
「その効果は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果で無効にします」
「チェーンして《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》の効果を発動! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を無効にするわ!」
「その効果も《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で無効にします」
これによって《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は(1)(2)両方の効果を使い切った。アリス、アル、ユウカは作戦通りに進んだことを内心で喜び合う。目配せでアルとユウカはアリスに合図を送る。
「チェーンして《フルール・ド・バロネス》の効果を発動します! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果の発動を無効にして破壊です!」
《フルール・ド・バロネス》が馬を駆って《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》へと突進する。しかし、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の翼が緑色に光り輝き出し、強烈な閃光を《フルール・ド・バロネス》に向けて発した。
「その効果も《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で無効にして破壊します」
「!?」
あり得ない現象に3人は驚愕、リンは平然とその光景を見つめる。
「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果はそれぞれ1ターンに1度だけしか発動できないはずじゃなかったんですか?」
「そう認識しているのでしたら、この世界線でのミレニアムでネルさんはアリスさん相手に本気ではなかったのでしょう」
「っ!」
「いえ、「機皇帝」と相性が悪いのもあったでしょうが……。とにかく、クリアウィングが神秘を最大限に発揮すれば、1ターンに、しかも同一チェーン中だろうと、何度でも効果を発動できます」
「「「!!?」」」
《フルール・ド・バロネス》だけではない。炎を吐き出す《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》、突撃する《BF-雪撃のチヌーク》にも閃光が放たれ、3体のモンスターは鳴き声を上げる。
「ダイクロイックミラー!」
3体のモンスターは爆発四散。
まさかの大敗に一同は言葉を失うしか無かった。
衝撃を受けるユカリに、容赦なく地縛神の双眸が向けられる。
「対象にユカリさんを選択。さあ、神の裁きを受けなさい」
「あ、あぁ……」
「ポーラスター・オベイ!」
「ああぁぁああっ!!」
《Wiraqocha Rasca》が吐き出した大量の瘴気を受けてユカリの身体から力が急速に抜けていく。ハンドルを握る手も、座席に乗る腰や背中も、アクセルペダルを踏む脚も、思考すらも。
やがてハンドル操作も制御不能となり、ユカリはカーブを曲がりきれずに地上絵を形成する紫の炎のレーンにぶつかりそうになる。ユカリはその前に自分からバランスを崩して横転。身体を何度も転がし、その場に倒れ込んだ。
「……。ぅ……ぐ……」
「「ユカリ!」」
「走れないDホイーラーにターンは回ってきませんよ。ターンエンドです」
キヴォトスでのライディングデュエルにおいてコースアウトや脱落による失格は無いが、コース上での走行不可能の場合は自動的にデュエルに敗北となる。コース上に残ったユカリは未だ継続可能とみなされるが、デュエルディスクがDホイールな以上、Dホイールで走らなければプレイング出来ないとみなされる。
アリスとアルは断腸の思いで振り返らずに疾走り続ける。2人はすぐにでもユカリのもとに行きたかったが、リンと差を離されて周回遅れになってしまうと自動的にデュエルに敗北扱いとなる。ユカリのためにもデュエルを捨てるわけにはいかない。
「よくもやってくれたわね……! 私のターン、ドロー!」
アルはドローカードを確認、浮かない顔をしながらもうんうんと唸りながらどのようにこの局面を打開しようかと頭を悩ませる。そして意を決すると、先行するリンを鋭く見据えた。
「《スカーレッド・ファミリア》を召喚するわ。《琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル》の効果を発動して、《スカーレッド・ファミリア》をリリース! 戻りなさい、《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》!」
「させません。《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を発動し、その効果を無効にして破壊します」
「ふふっ、かかったわね」
「……!?」
《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》がその宝石のように輝き透き通る羽を広げ、光を発しようとした時だった。アルの後方で突如噴火したかのように炎が湧き上がり、中から悪魔の竜が姿を現した。
「リバースカードオープン、罠カード《王者の鼓動》を発動するわ! エクストラデッキから《レッド・デーモンズ・ドラゴン》を特殊召喚して、その効果を無効にして破壊するんだから!」
「《レッド・デーモンズ・ドラゴン》版の《スターライト・ロード》!?」
「喰らいなさい! 灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!」
アルに呼び出された《レッド・デーモンズ・ドラゴン》がマグマのような火炎を放射すると、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は焼き尽くされ、爆発炎上した。熱波がリンまで届き、彼女は思わず腕で顔を守る。
「さあ、ここから巻き返すわよ!」
アルはリンを指さし、高らかに宣言した。
個人的には架空デュエルはハチャメチャなぐらいの攻防が好きで、OCGに沿ったデュエルなら架空デュエルでなくマスターデュエルのリプレイ見たほうが好きです。
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