"ユウセイ!"
「"先生"。そちらも終わりましたか」
各自治区の異変を鎮圧した後、私はD.U.区に戻ってきました。道中で"先生"とゼアル先生と合流。一路D.U.区へと向かいます。
私が赴いたミレニアムとトリニティは、そこまで多く指示する必要はありませんでした。在校生のユウカやサオリが上手く取りまとめ、対処にあたっていました。そして最上級生がいない状態で大物を相手しても問題無く対応出来ていました。
生徒たちは先生に指導、指示されるばかりではなく、きちんと学習し、自分の技量として身に着けていたのです。これを数年間続けて行けばキヴォトスに定着し、そのうちシャーレの先生も必要なくなる日が来るかもしれません。
しかし、今ではない。
今シャーレの先生がいなくなれば、以前のキヴォトスに戻ってしまいます。
"先生"は苦労するでしょうが、世代交代しても支障ない程度になるまでは根気強く教育が必要でしょう。
"急ごう。アルたちが先にサンクトゥムタワーに乗り込んだみたいだから"
「ええ、勿論です」
D.U.区に発生したオレイカルコスのモンスターたちもSRTとヴァルキューレが撃退したようで、郊外から伺う限りでも事態は収拾しているようでした。銃声が散髪していることからも、今は掃討作戦の最中といったところでしょう。
そんな進む我々の頭上で、突如として巨大なワームホールが開きました。
そこから落ちてきたのは悪魔そのものでした。
光でも闇でもない虚な「e・ラー」モンスターですし、私も武藤遊戯の手記データでしか知りませんが……アレはおそらく三幻神すら超越する、大邪神です。
「ゾーク・ネクロファデス……」
まずい。アレには一体どうやって対抗すればいい? 王の記憶ではファラオが《ホルアクティ》を召喚して滅したそうですが、ホシノは今サンクトゥムタワー攻略を手伝っている最中。外の様子は分からないでしょう。
私のスターダストや時械神で対抗できるか? "先生"たちも同じように自分の持つモンスターで戦えるか考え込んでいるようですが、表情は芳しくありません。ここは3人の持てる力を結集して挑むしか……、
「いえ、その必要はありません」
覚悟を決めた私たちにそんな声がかけられたかと思うと、D.U.区の外から遠距離で破壊光線が放たれ、大邪神に命中しました。目を凝らしてそちらの方を見つめると、どうやら撃ったのはデカグラマトン第3の預言者ビナーのようです。
そして声をかけた者は私の上空を旋回し、高度を落とします。デカグラマトン第10の預言者マルクト。彼女は私へとカードを投げつけます。私はそれ、《時械神サンダイオン》のカードを受け取りました。
「あの大邪神は我らで処理します。先生方は先に進んでください」
「分かりました。後は任せます。くれぐれも無茶はしないでください」
「勿論です。我らもまたキヴォトスに生きる者ですから」
マルクトは再び大空へと飛び立ち、他の預言者たちと共に大邪神と戦い始めました。それも郊外へ誘導して被害が拡大しないよう上手く立ち回りながら。
マルクトから放たれるレーザーはサンダイオンを所持していた頃と出力が変わっていません。どうやら上手く神の力を自分のものに出来たようです。
"行こう、ユウセイ。マルクトなら大丈夫だよ。きっと勝てる"
「ええ、そうですね。信じましょう、彼女たちの強さを」
私たちはキヴォトス中の健闘によって、思ったよりも早くにD.U.区に戻ってこれたのです。
◇◇◇
「アユムさんにも覚悟してもらいます。《E-HEROネオス・ロード》で《アルカナフォースEX-THE CHAOS RULER》に攻撃。ラス・オブ・ネオス・ロード!」
「きゃあぁぁあっ!!」
サンクトゥムタワー前に到着すると、サクラコがネオスに命じてアユムのアルカナフォースを手刀で両断していました。私がデータで知るネオスと異なり、覇王十代のような漆黒の装いをしたネオスは、しかしなおも正義を貫くヒーローでした。
なお、そんなネオスの衣装を見たもう一人のシロコとゼアル先生は「ん……、凄く覚悟が決まってる」"そうだね。サクラコにも勝るとも劣らないよ"と内緒話をしていました。覚悟が何の比喩かは聞かないでおきます。
アユムのライフポイントが尽きた途端、彼女の墓地に置かれた《アルカナフォースEX-THE LIGHT RULER》のカードから瘴気が噴出し、空気中に霧散していきました。そしてアユムは憑き物が落ちたように落ち着いた表情に戻ります。
「お帰りなさいませ、先生。アユムさん達は私たちが救護しますので、先に進んでください」
"分かったよ。この場はよろしく頼むね"
ミネは既に無力化した連邦生徒会役員を駆けつけていた救護騎士団団員とともに救護している最中でした。私たちは彼女たちに任せ、サンクトゥムタワーへと乗り込みます。
エントランスホールではSRT3年生がこの場を制圧していて、ユキノがモモカを拘束していました。ユキノはモモカのデッキから取っただろう《CX 冀望皇バリアン》のカードを提示しました。瘴気は抜けきっています。
「"先生"……。連邦生徒会長の身に何かあったんだな?」
"ユキノ。それは今回の件が終わったらきちんと話すよ"
「了解した。では我々は引き続き任務を続行。先生方の進行の邪魔にならないよう、引き続きサンクトゥムタワーの制圧を進める」
このように経由する途中のエリアで山海経、ワイルドハント、カヤとカンナのタッグ、ネルとアスナのタッグ、ミカとツルギのタッグ、ユメとアコのタッグ等と合流しました。彼女たちはいずれも連邦生徒会室長を相手に勝利しており、私たちに先に進むカードキーのピースを託されました。
そして次のフロアに進むと、ちょうど勝負が終わったようで、ヒナとホシノが互いに拳を突き合わせていました。そんなヒナの側にはデュエルのフィニッシャーになっただろうモンスターが控えていましたが……少し外見はモンスター化していますが、どこからどう見てもヒナのようです。
"あの、ヒナ?"
「なに、"先生"」
"そのモンスターなんだけど、ヒナなの?"
「っ……。あまりジロジロみないで……」
ヒナは恥ずかしそうに頬を紅色に染めて視線をそらします。
そして誤魔化すようにデュエルディスクにセットされたカードを外し、デッキに戻しました。そしてモンスターのヒナも姿を消します。
「いやぁ、ヒナちゃんのヒナちゃんは強かったねー。まさか攻撃に成功したら相手のライフを0にしちゃうんだもの」
ヒナの新たな力、《GO-DDD神空王ゼロゴッデス・ヒナ》は相手が召喚した《GENESIS OMEGA DRAGON》の力を制御する「アダムの因子」で創造されたカードらしく、強くあろうとするヒナの意志が色濃く反映された結果、ヒナ自身のような姿になったようです。
ちなみに同じように「アダムの因子」で創造したホシノのカードは《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》が進化した姿。これはホシノが自分自身が強くなり続ける必要はないと思った結果のようです。それが更にヒナを恥ずかしがらせる理由に拍車をかけているのでしょう。
「それから……」
ヒナは《GENESIS OMEGA DRAGON》のカードをこちらに提示しました。そして私たちの目の前でビリビリに引き裂き、最後は紙くずとなった断片すらも自分の愛銃で消し飛ばしました。
「このカードはキヴォトスには必要ない」
「後始末はおじさんたちがしとくから、先生たちは先に行っててよ」
ヒナとホシノが力強く頷き、私たちを見送りました。
◇◇◇
「"先生"……」
"リンちゃん。後は私たちに任せて、今は休んで"
「連邦生徒会長を……よろしくお願いします。どうか彼女を……救ってください……!」
"勿論だよ。必ずリンちゃんたちと一緒に卒業式には出てもらわなきゃね"
アル、ユカリ、そしてアリスとのデュエルを終えたリンは涙を流しながら"先生"に懇願し、意識を失いました。
私たちが首席行政官執務室にやってきた頃にはリンは究極幻神を召喚していましたが、まさか赤き竜と地縛神を同時に使いこなしていたとは……。その反動で精神力を使い果たしたのでしょう。
他の連邦生徒会役員と違ってリンのカードからは瘴気は発生しませんでした。リンは自分の意思でエラーに味方していたのでしょう。しかし彼女の願いから察するに、単にエラーを倒しただけでは連邦生徒会長は助けられない、となります。
……色々と憶測は並べられますが、やはり彼女と対峙しなければ分かりません。
私は"先生"とゼアル先生と頷き合い、いよいよ連邦生徒会長室へと足を踏み入れたのでした。
「ようこそ、シャーレの先生方」
中で待っていた連邦生徒会長……いえ、エラーは最初に会った時と同じように、私たちに微笑みました。
◇《GO-DDD神空王ゼロゴッデス・ヒナ》
《GO-DDD神零王ゼロゴッド・レイジ》を参照
ちなみにナレ死同然の《GENESIS OMEGA DRAGON》使いは公式がPVで登場した謎の役員を登場させたらになります。
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