Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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"先生"、アロナを卒業させる①

"エラー、って呼べばいいかな?"

「ええ。ユウセイ先生には言いましたけど、今の私は"連邦生徒会長"とも"絶望の神"とも言えませんので」

 

 ゼアル先生の問いかけにエラーははにかみました。"先生"は何も語らずにエラーを良く観察します。

 連邦生徒会に残る彼女の記録と照らし合わせても特におかしな様子がありません。乗っ取られたり洗脳されれば違和感が生じるものですが……。

 

 同行していたカヤに声を落として訪ねてみても、かつての彼女のままだと返事が返ってきました。ますます混乱してしまいます。それほどまでにエラーが連邦生徒会長を取り込んでしまったのか、または……、

 

 ちなみに連邦生徒会長の身に何があったかは、生徒たちにはここまで来る途中で軽く情報共有しています。でないと私たちとエラーとの間で交わされる会話についていけませんから。

 

"出来ればクビは勘弁してもらいたいんだけど、異議申し立てしてもいいんだったよね?"

「ええ。まだ連邦生徒会で可決したわけじゃありません。ですから私が議案を取り下げれば来年度もシャーレは存続します」

"何のためにシャーレの閉鎖を?"

「キヴォトスの希望の象徴だから。これで答えになってると思いますけれど?」

 

 生徒たちがどよめきました。

 エラーはそんな反応が愉快なのか、軽く笑います。

 いつものようなのにそんな仕草をされ、カヤが青ざめます。

 

「私はシャーレを解体してキヴォトスを滅亡させる。先生方はそれを阻む。単純な構図ですよね」

"それをみんなが許すとでも"

「許す必要はありません。私がそうするだけです。みんなはそれを絶望しながら受け止めればいいんじゃないですか?」

"なら、それは止めさせてもらうよ"

 

 エラーは机に置かれた自分のデッキを掲げると、それを虚空に消失させました。そして私たちの前に立ちはだかります。立ちふるまいは変わっていないのに、雰囲気が一変したのを肌で感じます。

 

「じゃあデュエルで決着を付けましょう。私が勝ったらシャーレは解体してキヴォトスを絶望に染めます。先生方が勝ったらシャーレは存続、私のことは煮るなり焼くなり好きにすると良いでしょう」

"分かった。それで、デュエルの方法は?"

「うーん。リンちゃんみたいにサバイバル戦で3人をまとめて相手する自信は無いですし……。先生方3人のフィールドと墓地、ライフは共有。デッキと手札は別。ターンは私→一人目の先生→私→二人目の先生→以下略、でどうですか?」

"それで同意する。……答えはデュエルの中で見つけるから"

 

 "先生"、もう一人のシロコ、そして私がデュエルディスクを展開し、自分のデッキをセット。"先生"ともう一人のシロコはDゲイザーもセットします。

 

 生徒一同が固唾をのんで見守る中、私たちは最後のデュエルに挑みます。

 

「「""デュエル!""」」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 私たち3名がデッキから手札となるカードを5枚ドローする間、エラーは手を掲げました。すると先程消失させたデッキから5枚だけカードが出現し、エラーの周りに浮かびます。

 

「私の先攻です。私はフィールド魔法《捻れて歪んだ先の終着点》を発動」

 

 浮かんだ手札らしきカードが1枚消えると、辺りの情景が一変します。

 

 それは私がキヴォトスに招かれる際にエラーが見せた、地平線の彼方まで広がる不毛の大地、そして並び立つ黒き墓標。その一つ一つが連邦生徒会長が巡ってきた希望が潰えた最果てです。

 

 そう、連邦生徒会長はこの墓標の数だけキヴォトスの青春をやり直し続けたのです。誰も悲しまないで、苦しまないで青春を送れるように。エラーがもたらす絶望にも負けず、自分自身すら失っても、なお。

 

「あ、ほら。そこのアーカイブはゼアル先生の世界ですよ。シロコちゃんが滅ぼした、ね。寂しければ過去のイベントを再生してあげますけれど、どうします?」

「お前……!」

"よすんだ、シロコ。私たちは挑発に乗るつもりはないよ"

 

 もう一人のシロコが激情にかられてエラーを睨みつけ、口を固く結びながら歯を強く噛み合わせるのを、後ろからゼアル先生が制します。息を荒げたもう一人のシロコは努めて深呼吸し、再び冷静さを取り戻します。

 

「このカードの発動コストとして永続魔法《輪廻の海》、《常闇の空》、《とどまらぬ大地》を手札に加え、そのまま発動します」

"コストでサーチを!?"

"やっていることがアロナと同じ……。これも連邦生徒会長が持つヌメロンの力を取り込んだためか……?"

「手札誘発カードが無いのでしたらカード効果を解決します。モンスターが私のフィールドに存在しない場合、1ターンに1度、自分・相手のエクストラデッキからランダムにモンスターを特殊召喚出来ます」

 

 なんという破格の効果を持つカード。コストという妨害出来ない形で任意のカードを手札に加えられる上にエクストラデッキの強力モンスターを即座に呼び出せるとは。しかも相手のモンスターまで……!

 

「まずは"先生"のデッキからは……《No.39希望皇ホープ》ですか。次にゼアル先生のデッキからは……《NO8エーテリック・セベク》ですね。最後にユウセイ先生のデッキからは……《スターダスト・ドラゴン》でした」

 

 呼び出された3体のモンスターはいずれも私たちのフェイバリットカード。それが……私たちのフィールドに呼び出されました。

 思わず困惑する私たち。自分のデュエルディスクの盤面を確認しても、確かに我々のフィールドに《スターダスト・ドラゴン》たちのカードがあります。

 

"相手のエクストラデッキからランダムにモンスターを「相手のフィールドに」特殊召喚するってこと?"

「ええ、そうです。ちなみに私はエクストラデッキがありませんので、召喚できません」

"……! かさ増しもしないでエクストラデッキを構築しないのは今どき珍しいね"

「私には必要ありませんから。シンクロも、エクシーズも」

 

 キヴォトスにおいてはシンクロとエクシーズは三幻神を筆頭に猛威を振るった最上級モンスターに対抗するために開発された召喚法。それを真っ向から否定するとは、まるでキヴォトスの進歩を真っ向から否定しているかのようです。

 

 こちらはいきなり3体のモンスターを並べられ、相手は魔法カードを3枚手札に。どちらが得だったと言うとモンスターの方と思えますが、お膳立てした張本人のエラーにとってはそうではないのでしょう。

 

「相手のフィールドにモンスターが召喚・特殊召喚・反転召喚されたことで永続魔法《輪廻の海》の効果を発動。デッキからその数と同じ数までモンスターを特殊召喚出来ます。《ストレイン・スポア》を2体特殊召喚」

"乾いた大地が、凍っていく……!?"

"《ストレイン・スポア》……。キヴォトスのデータには無いカードだね"

「続いて魔法カード《ビザール・サクリファイス》を発動。自分フィールドのモンスターを全て破壊します」

 

 エラーは自分で呼び出しておきながら自分の手でモンスターを破壊しました。当然コンボを狙ってでしょう。

 

「永続魔法《常闇の空》の効果を発動。破壊されたモンスターはフィルドのモンスターエクシーズのオーバーレイユニットになります。私は《希望皇ホープ》と《エーテリック・セベク》を選択」

 

 デッキから直接呼び出されたモンスターエクシーズはオーバーレイユニットが無く、ほぼ無力。それをわざわざ自分から補充するとは。言い寄れない不安がよぎります。それは"先生"、もう一人のシロコ、ゼアル先生も同じなようです。

 

「《ストレイン・スポア》の効果を発動します。このカードがオーバーレイユニットになったモンスターエクシーズの「e・ラー」モンスターを私の場に特殊召喚します」

"なんだって!?"

「いでよ、《希望皇ホープ e・ラー》、《エーテリック・セベク e・ラー》!」

 

 エラーの場に現れたのは色彩を失った「e・ラー」と化したホープとホルス。まさか自分のモンスターの「e・ラー」モンスターと対峙することになるとは。そして私を相手するからには、対象はエクシーズだけではないでしょう。

 

「続いて装備魔法《ストレイン・エレメント》を発動して、《スターダスト・ドラゴン》に装備します。この効果で「e・ラー」モンスターを私の場に特殊召喚します。現れろ、《スターダスト・ドラゴン e・ラー》!」

「やはり来ましたか……!」

 

 このためにエクストラデッキからわざわざこちらのモンスターを呼び出したのですか。アビドスに三邪神、トリニティに創星神、ゲヘナに地縛神を出現させたのも、おそらくこれと似た効果によるものでしょう。

 

「そして永続魔法《とどまらぬ大地》の効果により、私のフィールドにモンスターがいる時、私のライフはフィールドのモンスターの攻撃力の合計した数値で固定されます」

"と、言うことは……"

 

 《希望皇ホープ e・ラー》が2,600、《エーテリック・セベク e・ラー》が3,100、《スターダスト・ドラゴン e・ラー》が3,000。よってライフは8,700。このモンスターを一掃しない限り本来のライフ8,000には何ら影響がない、ということでしょう。

 

「ん……、やることが汚い」

「ふっふーん。これで私の場は整いました。先生たちのモンスターは私の「e・ラー」モンスターより劣るただの木偶の坊! この調子で希望を絶望に染め上げてあげます!」

 

 エラーはカードを1枚セットしてターンを終えました。

 まさに異次元のデュエル。

 しかし私たちは負けませんし、負けるわけにはいきません。

 これまでの生徒たちの青春を無駄にはさせません。




「これが最後の戦いだ!」ってやつです。

《捻れて歪んだ先の終着点》
フィールド魔法
このカードはデッキ・手札より「輪廻の海」、「常闇の空」、「とどまらぬ大地」を発動して発動できる。
(1):自分・相手のターンに1度、自分のフィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
相手のEXデッキからランダムで1枚選び、相手のフィールドに特殊召喚する。
その後、自分のEXデッキからランダムで1枚選び、自分のフィールドに特殊召喚する。
(2):このカードはカードの効果を受けない。

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