Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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アリス、勇者のデッキを選択する

 次にアリスへ用意するのはキヴォトスの生徒なら誰でも持っている自分の武器。そのためにエンジニア部へと足を運びました。

 そこでエンジニア部の面々から様々な武器を紹介されたのですが、アリスが興味を示したのはレールガンでした。

 

「これはエンジニア部の下半期の予算70%を費やして作られた、エンジニア部の野心作「宇宙戦艦搭載用レールガン」です!」

「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれたこの武器の正式名称は……」

「光の剣:スーパーノヴァ!」

「また無駄に大げさな名前を……」

 

 エンジニア部のコトリから紹介された武装は巨大なビーム砲でした。

 

「ひ、光の剣……!? わぁ、うわぁ……!」

 

 実弾を電磁加速して高速射出するのがレールガンで、ビーム砲はレールガンと呼ばないのでは?との疑問は飲み込むことにしましょう。ロマンが重要なのだよ、と言われそうですし、概ね同意しますので。

 

 興奮しながら目を輝かせるその姿はまさしく穢れを知らぬ純真な少女そのもの。もはやエンジニア部が紹介した武装や他の試作品は目に映っていません。それは一目惚れ……いえ、運命の出会いと表現しておきましょう。

 

「……これ、欲しいです」

「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけれど……現実的な問題でちょっと無理かな」

「なんと基本重量だけで140kg以上です! 更に諸々付けて砲撃すると瞬発的反動は200kgを超えます!」

「持っていけるのなら本当にあげたいところなのだけれど……」

「……! この武器を抜く者……この地の覇者になるであろう!」

 

 アリスは大砲を掴み、腰と腕に力を込め、クレーンでも使わないと持ち上がらない巨大質量を一気に持ち上げました。

 

 驚くべきことですが別に不思議ではありません。現に私が作ったホセはDホイールを走らせて体当たりを仕掛けたシェリーを片手で受け止め、逆に投げ捨てましたからね。出力さえ伴えば人体からは想像もし得ない力を発揮できることでしょう。

 

 問題は普通のアンドロイドにそんなハイパワーが必要なのか、というもの。人と共通の道具が使えながら重機と同等の出力を必要とする環境用か、それとも強大な力で相手を圧倒するための戦闘用か……。

 

 しかし、そんな疑問など次のアリスの行動からしたら些細なものでした。

 

「えっと、ボタンは……」

「ま、待って……!」

「……っ、光よ!」

 

 アリスはビーム砲……光の剣を発射。

 エンジニア部の部室天井に大きな穴が空きました。見上げれば青空が見渡せるほどにその威力は凄まじいものがありました。

 

「……すごいです。アリス、この武器を装着します」

 

 それはアリスにとっては伝説の剣を手に入れた勇者のようだったでしょう。

 私の脳裏によぎった光景はそんな希望の一撃とは全く逆のものでした。

 

「――絶望の一撃、ザ・キューブ・オブ・ディスペアー」

 

 アリスとは姿は全く異なるのに、どうして絶望の魔人《機皇神マシニクル∞》を連想したのでしょうか?

 

 

 ◇◇◇

 

 

 光の剣を使った模擬戦も終わり、微調整も完了。

 しかしエンジニア部での用事はまだ終わっていません。

 

「「光の剣」にはデュエルディスク機能も付いてますよ!」

「フィールドゾーンはここ、デッキはここに入れて墓地、除外ゾーンはここ」

「次はデッキか……どうする?」

 

 武器ほど重要ではありませんが生徒は個人用のデュエルディスクとデッキを所持しているため、それも選定しなければなりません。ゲヘナのヒナもそうでしたが自分の愛銃とデュエルディスクが一体化している武器もあるようです。

 

「私のおすすめは【ガジェット】かな。ランク4エクシーズに繋げやすいし動きもあまり難しくない」

「【ドライトロン】なんてどうでしょうか! レベル12の超大型儀式モンスターを使えるのは爽快ですよ!」

「それなら【超重武者】も捨てがたい。最大レベル12のシンクロモンスターが圧巻だね」

 

 エンジニア部の子たちは機械族テーマのデッキを勧めましたが、RPGゲームを履修して知性を育んだアリスの反応はいまいちでした。モモイ達も思いつくテーマを口にしますがこちらも芳しくなく。

 

「いっそ【勇者トークン】はどう?」

「なら【聖騎士】とかも……」

 

 アリスは部室のストレージを物色するも(ちなみに機械族に偏ってました)しっくりこなかったようでした。何も今決めなくてもいいだろう、と話がまとまりかけていたのですが……、

 

「ところで先生のデッキはどんなテーマですか?」

「私はシンクロ召喚を主体とした【遊星】のデッキを――」

「勇者のデッキを?」

 

 私の発言をアリスが聞き間違えたのか、興味津々に聞き返してきました。

 

 勇者ではない……と否定しようとしましたが、よくよく考えたら別に間違ってもいませんでした。不動遊星がシグナーとして世界を救ったことに違いはありません。英雄が勇者に言い変わっただけですね。

 

「ええ。世界を滅ぼそうとした邪悪な神々と冥界の王を撃退した勇者が使っていたデッキです」

「うわぁ……! アリス、どんななのか見てみたいです!」

「分かりました。では少しお見せしましょう。どなたか相手を務めていただけますか?」

「では僭越ながら私が相手を務めさせてもらいます!」

 

 そういった成り行きで私はエンジニア部のコトリとデュエルすることになりました。

 

 コトリのデッキは【無限起動】というエクシーズ召喚とリンク召喚に長けた、上級モンスターがレベル5に統一された中々面白いデッキです。更に高ランクのエクシーズ召喚を可能とする効果を持つモンスターも興味深い。

 

「レベル9になった《無限起動ロックアンカー》と《無限起動ハーヴェスター》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 

 エクシーズ召喚に特化したデッキはフィールドのモンスターのレベルを合わせる効果のカードを上手く使って展開することに長けるパターンが多いとか。今回の場合も下級モンスター2体をレベル9に変更してきました。

 

 不動遊星の時代にも黎明期のモンスターエクシーズは存在していましたが、改めてエクシーズ召喚の様子を観察するとシンクロ召喚と異なりますね。しかし下級モンスターであっても役立てられるとのコンセプトは同じでしょうか。

 

「無限の動力で大地を粉砕です! ランク9、《無限起動アースシェイカー》!」

 

 現れたモンスターエクシーズは工場並みに広いエンジニア部の部室を埋め尽くす程の大きさでした。これでも屋内なので小さなサイズで投影されているのだとか。モモイやミドリもそのスケールに驚いているようでした。

 

「《アースシェイカー》の効果を発動! オーバーレイユニットを2つ取り除いて《くず鉄のかかし》ともう一枚の伏せカードを破壊します!」

「いきなり全てのオーバーレイユニットを使って問題ありませんか?」

「大丈夫! 《アースシェイカー》は戦闘破壊したモンスターをオーバーレイユニットに出来ますので!」

「ではリバースカードオープン、トラップ発動。《スターライト・ロード》で《アースシェイカー》の効果を無効にして破壊します」

「え……えぇぇっ!?」

「そしてEXデッキから《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚します。集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ!」

 

 光がフィールドに降り注いで《アースシェイカー》は爆発四散します。爆発の粉塵や爆風も止まないうちに光の柱を飛び出して舞い上がるモンスターが1体。

 

「飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 翼翻し飛翔したのは白銀のドラゴン。不動遊星のエースモンスターでありシグナーの竜。そして不動遊星と共に幾度も世界を救ってきた相棒でもあります。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「アリス、勇者のデッキを使います!」

 

 コトリとのデュエルを終えるとアリスは【遊星】デッキを気に入ったようで、これを使うことを宣言しました。特にアリスは《スターダスト・ドラゴン》に目を奪われたようなので、そちらに重点を置いたデッキ構築にするのが良いでしょう。

 

「《スターダスト・ドラゴン》や「ジャンク」シンクロモンスターならレア度に拘らなければ私達も持ってたね」

「メインデッキのモンスターもストレージの中にありますから探しましょう!」

「同一カードを2枚入れるか3枚入れるか考えるだけで徹夜するデュエリストだっている。余分にカードを渡すからじっくり考えて自分のデッキを作るといい」

「ぱんぱかぱーん! アリスは自分のデッキの素材を手に入れた!」

 

 アリスはエンジニア部の三人から渡されたカードを高々とかかげました。私もエンジニア部保管のストレージを見させてもらいましたが、選定すれば第一線級とまでは言いませんが充分に戦えるデッキが構築できる程には粒ぞろいでした。

 

 ちなみに一見役に立たなそうなカードでもデッキとしては活躍することをアリスに教えるために、アリスにストラクチャーデッキを渡したヒビキが練習相手になります。使用デッキは【スクラップ】ですか。

 

「《スクラップ・コング》を通常召喚するよ。何かある?」

「いえ、ありません」

「召喚に成功したから効果発動。《スクラップ・コング》を破壊するよ」

「!? 召喚された途端に自爆しました!?」

「お楽しみはこれから。スクラップモンスターが効果破壊されて墓地に送られたからフィールド魔法《スクラップ・ファクトリー》の効果発動。デッキから《スクラップ・キマイラ》を特殊召喚する」

 

 だからって私の時代にも依然ネタ枠だった《スクラップ・コング》を酷使する戦術を披露するのもいかがなものかと思いますがね。

 

 最後にDホイールの話になりましたが、さすがに免許を取得してからでも遅くないという話になり、その場はお開きになりました。そしてエンジニア部を後にしようとした際、私は部長のウタハに呼び止められます。

 

「Z-ONE先生。アリスのことなのだけれど……」

「人として日常生活を送るには不必要な高出力が気になりましたか?」

「ええ。少女型の戦闘用ロボットだと思うんだ」

 

 ウタハとは準備が出来次第アリスを精密検査する方針で一致しました。




◇天童アリス
使用デッキはZ-ONEと同じ【遊星】

◇白石ウタハ
使用デッキは【ドライトロン】
エースかつ切り札は3体のレベル12「竜儀巧」儀式モンスター

◇猫塚ヒビキ
使用デッキは【スクラップ】
エースモンスターは《スクラップ・ドラゴン》
切り札は《アトミック・スクラップ・ドラゴン》

◇豊見コトリ
使用デッキは【無限起動】
エースモンスターは《無限起動アースシェイカー》
切り札は《無限起動要塞メガトンゲイル》

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