Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

193 / 195
"先生"、アロナを卒業させる⑤

 エラー

 ライフポイント:250

 手札:0枚

 フィールドゾーン:《捻れて歪んだ先の終着点》として扱うフィールド魔法

 

 シャーレの先生

 ライフポイント:4,750

 "先生"の手札:1枚

 Z-ONEの手札:0枚

 ゼアル先生の手札:0枚

 モンスターゾーン:《No.39希望皇ホープ》、《SNo.0 ホープ・ゼアル》、《希望皇龍ホープドラグーン》、《時械神祖ヴルガータ》

 魔法・罠ゾーン:《くず鉄のかかし》、《ZW-獣王獅子武装》、《ZW-弩級兵装竜王戟》、《ZW-阿修羅副腕》、《リバース・ブレイカー》

 

 現在"先生"のバトルフェイズ。

 

 絶望神は討ち果たされ、エラーには伏せカードも手札もありません。彼女を守るモンスターもいません。墓地から発動する効果を持つカードも無く、今更デッキから発動するカードも使ってこないでしょう。

 

 あとは攻撃権が残っている《希望皇龍ホープドラグーン》でダイレクトアタックすればこのデュエルは私たちの勝利です。しかし、絶望神を破壊してから"先生"はエラーを見据えたままでした。

 

「どうしましたか? 今更怖気づきましたか? 攻撃しないなら私のターンを始めちゃいますよ?」

 

 絶望神を攻略されてもエラーはまだ強がりを見せて"先生"を挑発します。顔には不敵な笑みを張り付かせていますが、私にも分かります。明らかに無茶をしてそう振る舞っているのだ、と。

 

"□□□"

 

 "先生"が呼んだその名は、私にとってはもはや遠い昔の忘れ去られた記憶の彼方に眠った、とても懐かしいものでした。そう、アリスやケイを設計した"会長"、つまり私の世界の連邦生徒会長の名でした。

 

"どうしたい?"

「はい?」

"□□□は、どうしたい?"

 

 "先生"の問いかけにエラーは最初のうちはきょとんとしていましたが、やがて悪い笑みをこぼしながら"先生"を睨みつけます。それを見た連邦生徒会一同は揃って悲痛な顔になりました。

 

「私はエラー! 絶望の権化! このキヴォトスを何度でも、何度でも、何度だって! 絶望に染めて味わい尽くします! この身体の持ち主、今シッテムの箱に逃げた□□□が負けを認めるまでね!」

"それは「e・ラー」の望みで、□□□の願いじゃないよね"

「っ……!!」

 

 エラーが動揺し、頭上に僅かな間ヘイローが浮かびました。

 

"エラーは自分のことを"連邦生徒会長"とも"絶望の神"とも言えないって言ってたよね。それにユウセイをキヴォトスに赴任させる際もそう言ってたそうじゃないか。つまり自分は初めから□□□じゃなく、e・ラーでもないって自白したも同然じゃないか"

「……。それがどうかしましたか?」

"一方で、アロナは連邦生徒会長はe・ラーに身体を乗っ取られたって言ってた。この矛盾のことはずっと考えてた。でもエラーと直に会って分かった。アロナはエラーを私たちの敵にしたかったんだ。エラーの言う絶望の権化としてキヴォトスから追い出すために"

「っ!!」

 

 そう、言わばエラーは□□□とe・ラーが混ざりあった状態。時折ヘイローが出現するのは□□□寄りの思考になった際にだったのでしょう。□□□が屈したその時、ヌメロンコードの担い手たる□□□という存在を一つになり、エラーは絶望の神となるのです。

 

 エラーが卒業間際に異変を起こしたのは、あとは自分が討ち果たされることでキヴォトスが未来へと続く道を行くことを確定させ、e・ラーとの決闘に決着をつけるためです。皆の青春を取り戻すため、自分一人を犠牲にして。

 

 アユムたちが闇のカードを手にしたのは□□□の犠牲を知ったからかもしれません。リンがエラーに加担したのは□□□を諦めきれなかったからでしょう。少しでも決着を先延ばしにし、更にやり直せばより良い未来を掴めると信じて。

 

"駄目だよ。□□□だって私の生徒なんだから。リンちゃんたちと一緒に卒業してもらわなきゃ。卒業アルバムに遺影みたいな写真を残したくないでしょう?"

「……。……だったら……だったらどうしろって言うんですか!」

 

 ずっと被っていたエラーという仮面が砕けた。エラーの心からの叫びはそう私たちに印象づかせるには充分でした。涙のこぼしながら声を張り上げ、大げさなほどに身振り手振りで訴えてきます。

 

「何度も、何度でも、何度だってやり直してきました! リンちゃんもカヤちゃんも数え切れないぐらい死んじゃったんですよ!? 私一人じゃあどうにもならないから"先生"に来てもらっても、その"先生"だって星の数ぐらい失敗するし!」

"え……。ご、ごめん……。不甲斐ない先生で"

「何もかも上手くいってた時だって、ちょっとずれただけで"先生"は、"先生"が、私を……!」

 

 その説明から察するにゼアル先生の時とも推察出来ますが、多少経緯が違います。もしかしたらゼアル先生と酷似した世界も彼女は巡ったのかもしれません。そして、ゼアル先生の時はエラーとして彼と対面した、とも考えられます。

 

「何かが、誰かが犠牲にならないとキヴォトスの青春が守れないなら、私が……私が犠牲になって何が悪いんですか!?」

"悪いよ。悪いに決まってる"

「どうして!? 私は"先生"をキヴォトスの生贄にはしたくないんです!」

"けれど、そう考えるのは、結論になることは悪いことじゃない。思い悩んで、間違えて、それでも歩み続けるのが子供なんだ。責任は大人が取ればいい"

「だったら、今すぐ責任を取ってもらいますよ、"先生"! 私を選んでターンエンドするか、キヴォトスを選んで《ホープドラグーン》でダイレクトアタックするか、二つに一つです!」

"……難しいね。もしその二つしか本当に選択肢が無いのなら、私はその責任をずっと背負っていくことになるだろう"

 

 けれど"先生"はそのどちらとも選ぼうとしません。1ターンの持ち時間の制限は刻一刻と近づいています。代わりに"先生"は彼女へと手を差し伸べるだけです。苦しんで、泣き叫んで、それでも大切なものを守ろうとする生徒に向けて。

 

"それで、最初の質問に戻るよ。□□□はどうしてほしい?"

「それをこの期に及んで聞いたところで、"先生"に何か出来るんですか?」

"出来るよ。大人は子供が思っているよりずっとずるいからね。きっと□□□が思いもよらなかった方法で解決するから"

「っ……! ……」

"大丈夫。ここにいるみんな、□□□を責めたりしない。連邦生徒会長って肩書が重荷だったんだとしても、最後なんだしリンちゃんたちは分かってくれるから"

「私、私は……みんなの青春を……キヴォトスが好きだから……」

 

 □□□は膝から崩れ落ちました。

 大粒の涙をこぼし、顔をぐしゃぐしゃにして、泣き続けました。

 それは□□□が皆の前で見せる、初めての弱さだったのかもしれません。

 

「助けて先生」

 

 言えましたね、□□□。

 助けてほしいと生徒が訴えるなら、それを聞くのが先生の務め。

 なら、必ず貴女を助けましょう。貴女の未来をこれ以上奪わせはしません。

 

"……ユウセイ。頼む"

「ええ。私はこの為にキヴォトスに呼ばれたようなものですから」

 

 そして、"先生"は根拠も無く□□□に希望を与えたわけではありません。

 シャーレの先生間で事前に打ち合わせて、エラーの正体が予想通りだった場合、私が解決すると断言しました。

 

 ターンエンドか《ホープドラグーン》でダイレクトアタックするしかない? いえ、まだやれることがあるでしょう。

 

「《時械神祖ヴルガータ》で□□□にダイレクトアタックします」

「え?」

「《時械神祖ヴルガータ》の攻撃力は0。しかし、ダメージステップが終了したことで、《時械神祖ヴルガータ》のテキスト外効果を発動します」

 

 私は自分のデュエルディスクから《時械神祖ヴルガータ》を、そしてデッキから《究極時械神セフィロン》を含む11体の時械神のカード全てを抜き取り、□□□の方へと投げ放ちました。

 

「《時械神祖ヴルガータ》とデッキ・手札・墓地の時械神11体と共に、□□□に装備状態となっている「絶望神e・ラー」、そして墓地の《捻れて歪んだ先の終着点》を、時空の彼方へと送ります。オウル・エン・ソフ!」

 

 《時械神祖ヴルガータ》が閃光が放たれると、□□□の身から徐々に瘴気が滲み出します。それをサンクトゥムタワーの外で顕現したセフィロンを初めとする時械神たちが受け止め、封じ込めました。

 

 そして、絶望を連れ、12体の時械神たちが天に昇っていきます。

 それはまるで宗教施設の壁画やステンドグラスに描かれる昇天そのもの。

 もしかしたら古の聖者たちはこのような光景を見て後世に記録を残したのかもしれません。

 

「ありがとうございました、時を司る神々よ。おかげで私たちの世界、そしてキヴォトスは救われました」

 

 時械神たちが空の彼方へと消え去っていき、依代となっていたデュエルモンスターズのカードが床に散らばりました。拾い集めましたがどれも神としての力を失っており、カードテキストも大型モンスターのものに変わっていました。

 

 これらのカードは除外ゾーンにも置けないので、ひとまずポケットの中にしまいます。それから"先生"やゼアル先生に頷きました。"先生"も私に頷き返し、□□□を見つめ、彼女へと歩み寄りました。

 

 □□□の頭上にはヘイローがはっきりと浮かんでいます。もう憑き物が取れて意識がはっきりしている証でしょう。そんな彼女は困惑しながら自分の顔や身体を触って自分の様子を確認します。

 

"お疲れさま。それから、卒業おめでとう"

 

 そんな彼女へ、"先生"はハンカチを差し出しました。

 呆ける□□□をよそに、"先生"は彼女と同じ目線になり、涙の跡を拭きます。

 

"意外とどうにかなるもんでしょう?"

「先、生……?」

"準備はリンちゃんたちがやってくれてるから、□□□はちゃんと卒業式には出ないと駄目だよ"

「せ、んせい……せんせい、せんせいっ!!」

 

 せっかく拭ったのに□□□はまた泣き出し、"先生"に抱きつきました。その様子はキヴォトスのトップの連邦生徒会長でも、何度もやり直してキヴォトスを救おうとした超越者でもなく、情緒不安定な思春期の一生徒に他なりませんでした。

 

 私はゼアル先生と静かにハイタッチしました。リンは感極まって咽び泣いています。それをみっともないとぼやくカヤだって嬉しさを隠していません。アオイは静かに涙をこぼし、アユムはモモカと喜び合います。

 

 こうして、この一年で最後の異変は幕を下ろしたのでした。

 そして、晴れ渡った空模様は生徒たちの門出を祝福するようでした。

 




□□□は連邦生徒会長の名前が判明したら書き換えます。

◇エラー
使用デッキは【絶望神】
エースモンスターはいない。「e・ラー」モンスターがそう。
切り札は《絶望神アンチホープ》

ご意見、ご感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。