Dホイールでの次元跳躍を果たした私は、元の世界に戻ってきました。……いえ、正確には私が生きた世界線ではなく、私たちイリアステルが介入し、不動遊星たちが変えた後の世界にやってきたのです。
なお、戻った日は奇しくもモーメントが暴走を始めたXデーでした。不安半分と希望半分でその日一日が何も起こらなかったことを寝ずに見届け、次の日の日の出を拝み、私は静かに涙を流しました。
アポリア、アンチノミー、パラドックス。
私たちはついにやりました。不動遊星たちがやり遂げてくれました。
私たち4人が集うことはきっともう無いでしょう。
この世界ではあなた達も私も、自分たちの道を走り続けるのですから。
私の容姿は世界を救うために変えた不動遊星やZ-ONEとしてではなく、自己改造を施す前の科学者としての私に戻りましたし、不動遊星としてのDホイールも消失してしまいました。しかしこれまで私が歩いてきた経験は私の中に残っています。そこまでの歴史の改変が私に及ばなかったのは、時械神の御業なのでしょうか。
元の生活などあまりに昔過ぎて、思い出すのも一苦労でした。結局思い出すより新たに覚える事柄の方が多かったです。それでも一つ一つが懐かしく感じられ、最初のうちは日々怪しい挙動をしてばかりだったことでしょう。
不動遊星のことは検索すれば簡単に足跡が追えました。彼はモーメントを制御するメインフレーム・フォーチューンを開発し、モーメントを取り巻く運命を変えてくれました。彼の遺志を継いだ科学者がそれからもモーメントと上手く付き合い、シンクロの過度な加速も起こらず、我々の時代になってもなお人は遊星粒子と共にあり続けたのです。
新たな生活も落ち着き始めたある日、私はチーム5D'sの記念館を訪れました。そこでは不動遊星やジャック・アトラスたちの軌跡が記録されていました。チーム5D'sとして公式大会に参加したのは第一回WRGPが最初で最後でしたが、それから各々の道を歩むメンバーゆかりの品や功績が展示されていました。
そんな中、ひときわ目を引いたのは、イリアステルについてのコーナーでした。
それは未来へ向けてのメッセージ、そして戒め。
世界を破滅の未来から救うために過去に戻った者たちが残した教訓。
それが今の時代も残り、私たちに語りかけてくるのです。
「なーなー! コイツオマエに似てねえか?」
「は~? コイツのどこがボクに似てるっていうんだよ!」
その日は丁度小学生たちが社会科見学に来ていたようで、中々賑やかでした。そんな中、一人の少年が一枚の写真を指さして誰かをからかっていました。私はそんな光景を眺め、反応しそうになり堪えました。
彼はルチアーノ……いえ、この時代のアポリアでした。
彼は同級生と楽しそうに喋りながら次のコーナーへと進んでいきました。
私のことはその他大勢の一人としか認識しておらず、気にしませんでした。
「3つの絶望……これからも彼の身に降りかからないようにしましょう」
平和でした。
私たちが取り戻そうとした平和、そして未来がここにあります。
達成感と感謝。そればかりです。
◇◇◇
"あれ、"遊星"にしては珍しい。テレビ中継なんて見るんだ"
「ええ、今日はWRGPの決勝戦ですので」
仕事場で昼休憩中、私は歴史の修正前のようにプロのDホイーラーとして活躍するアンチノミーのライディングデュエルを観戦していました。彼のデッキは元の世界と同じく【TG】。この時代……いえ、不動遊星から後の時代を全て振り返ってもクリアマインドに目覚めたDホイーラーの数は少なく、彼を今代の決闘王だと讃える声も少なくありません。
物珍しそうに語りかけてきたのは同僚の"先生"です。所謂キヴォトスの"先生"の並行同位体なのですが、やはり生まれ育ちが異なれば差異は発生するものです。レベル2マルチバースともなれば別人と言い切って差し支えないでしょう。とはいえ、"先生"元来の善性はどの世界でも共通なのでしょうか。
「あっ! "先生"、"遊星"!」
職場の入口から少し大きな声で私たちを呼んだのは"会長"、キヴォトスでの連邦生徒会長の並行同位体です。
思い出して驚いたのですが、なんとこちらの"会長"は"先生"と結婚していました。"会長"は飛び級で大学を卒業した秀才なのですが、"先生"が出向で一年間先生を務めた去年のためにわざわざ年相応の高校生をやり直しています。卒業後は"先生"や私の同僚となりました。
モニターから目を離した私たちは"会長"へと顔を向け……2人して驚いてしまいました。しかしその驚き度合いと本質は私と"先生"で全く異なります。"先生"は純粋に"会長"が連れている子たちが誰か気になる様子ですし、私はこの世界でその子たちと出会うことになるなんて思っていませんでした。
""会長"、その子たちは? 誰かのお子さんが職場見学に来たのかな?"
「ふふーん。聞いて驚いてくださいね。このかわいい子たちはなんと私と"先生"の子供です!」
"……。ごめん、何だって?"
「え……? 認知してくれないんですか……?」
"いや、勿論子供が出来たら凄く嬉しいし、私は大人として、夫として責任は取るよ。けれどその子たちは……あっ、なるほど"
「赤ちゃんは近いうちに絶対に作りましょうね。この子たちは前にもちょっとお話した、モーメントのお姫様たちです」
"会長"に促されて2人の少女、モーメントを統括する王女ユニットがこちらに頭を下げてきました。
「アリスは型番AL-1S、個体名はアリスです。アリスはお父さんと出会える日を待っていました」
「初めまして、お父様。私は型番AS-K1、個体名ケイです。よろしくお願いします」
キヴォトスの名もなき神々の王女と鍵はアーククレイドルに残された"会長"の設計データをもとに製造された個体。モーメントの暴走がなければこのタイミングで貴女達はこの世界に生まれていたのですね。
アリス、ケイ。ようこそ我々の世界に。
私は貴女達の誕生を歓迎し、祝福します。
他の同僚たちもアリスとケイ、というより"先生"と"会長"の娘を見に集まってきました。アリスたちの受け答えする様子はキヴォトスでの彼女たちとほぼ一緒。無効でのアリスの人格データはモモイたちゲーム開発部謹製の闇鍋ゲームTSCによるものですが、まさかこちらのアリスの学習にも……いえ、考えるのはよしましょう。
「"遊星"、どうかしましたか? もしかしてアリスちゃんたちの可愛さにやられちゃいましたか? お母さんは許しませんからね!」
「何を言っているんですか……。知り合いに似ていたので驚いただけです」
「遊星? あなたは遊星って言うんですか?」
「ん? ええ、そうです。昔の偉人にあやかって……」
「アリス、知ってます! 遊星は世界を救った勇者の名前です!」
アリスが目を輝かせて若干興奮気味になり、ケイがうんざりした様子で軽くため息を漏らしました。どうやらこちらのアリスも勇者に憧れを抱いているようです。
私と"先生"が彼女に視線を投げかけると、彼女は勢いよく顔を横に振りました。一体どんな教育をアリスにしたかは後ほど詳しく問いただすとしましょう。
「アリス、またですか」
「遊星は5,000年ぶりに復活した地縛神を撃破して、世界滅亡の歴史を変えようとする未来人の意志を引き継いだ、凄い人です。アーカイブにも残ってます」
「耳にタコが出来る、とは人間のことわざでしたか。その現象が発生してしまいそうです」
「アリスも遊星みたいに道を導く光と共にありたいです」
でしたら丁度いい。私は片膝を付いてアリスと同じ目線になると、アリスにデュエルモンスターズのデッキと手渡しました。それは私がかつて修正前に不動遊星として、そしてキヴォトスでユウセイ先生として苦楽を共にした、【遊星】デッキです。
このデッキを手放すことはこの世界に戻ってからずっと考えていました。新たな道を歩み出すからには不動遊星でもZ-ONEでもない、自分のデッキを組んでみたいのです。キヴォトスのアリスはもう自分で走っていけますから譲る必要はありませんでしたからね。
「でしたら、アリスにはこれを託しましょう」
「これは……伝説の遊星のデッキですか?」
「貴女に光差す道があらんことを」
「……! ぱんぱかぱーん! アリスは【遊星】デッキを手に入れた!」
アリスはたいへん喜んでくれましたが、一方でケイが何だか恨めしそうな眼差しを私に向けてきます。とは言え、【機皇】デッキは向こうのケイに渡してしまいましたので、あと私から出せるのはこの程度ですか。
私はソリッドビジョンで「光の剣:スーパーノヴァ」を投影しました。キヴォトスのエンジニア部製ではなく、私が「機皇神」の武装を王女ユニット用に調整した代物なので、同じなのは見た目と威力ぐらいですがね。
「"遊星"、これは?」
「アリスとケイの武装兼デュエルディスクの設計データです。気に入ったならラボにデータを持ち込んで作ってもらってください」
「……。貰いましょう」
私はケイに光の剣のデータを送信しました。ケイは僅かに目を開きつつ口元を緩ませ、私にお辞儀をします。
私の用事が済むとケイは女性職員に囲まれて可愛がられます。鬱陶しいとか迷惑だと口では言いますが、彼女たちを振り払おうとまではしません。まんざらでもないのでしょう。
アリスは職員からの質問に正直に答えるので、時々"会長"や"先生"が慌てていました。主に2人の仲睦まじさを暴露されているだけですので、今日ぐらいは皆からいじられたっていいでしょう。
「騒がしいな。もう昼休憩の時間は終わりだぞ」
そんな有り様な中で部屋の入口から注意したのはパラドックスです。無論、彼にも本名はありますからパラドックスと呼んでも通じません。別セクションの研究員の彼がここに来る用事は無い筈ですが……、
"ここに来るなんて珍しいね。ようこそ、歓迎するよ。お茶とコーヒーどっちがいいかな?"
「あいにく私はインターン生に構内の案内をしているところでね。"先生"、"会長"。お前たちの知り合いだと聞いているが?」
「え? 私たちのですか? 誰かなぁ」
インターン生とは、大学生や大学院生が企業や組織で実際に仕事を体験する「インターンシップ」に参加する学生を指します。モーメントや遊星粒子を筆頭に多数の最先端の研究を担う我々の研究機関は理系の学生なら多くが目指す最高峰です。
パラドックスに促されて彼の後ろから前に歩み出た学生を目の当たりにした"会長"や"先生"は驚きの声をあげました。私もまた反応が出そうになるのをかろうじて堪えました。
「ご無沙汰しています、"会長"」
「久しぶりね、"先生"」
「やっほー! 来たよ、"先生"!」
「えっ!? リンちゃんにリオちゃんにミカちゃんじゃん!」
七神リン、調月リオ、聖園ミカ。
まさか彼女たちとも再会するとは。
いえ、正確には彼女たちは並行同位体、接点はありませんが、これを偶然で片付けてしまって良いものかは迷います。
リンたちを初めとして"先生"の教え子はありたいていに言えば可愛い、美人だ、と形容される女子ばかりなので、案の定"先生"は男性の同僚から羨ましい、とか、物語の主人公かよ、などと言われて茶化されています。
「言ってくれれば歓迎パーティーの段取りしたのにぃ~」
「お二人を驚かせよう、という話になりまして、今まで内緒にしていました」
"今年のインターン生はリンちゃんたち3人なのかな?"
「ううん。もうひとグループ、ヒマリちゃんたちはもう少ししたらこっち来るんじゃないかな?」
そんな困った"先生"をよそに、"会長"はリンたちと親しげに語り合います。その様子からも、"先生"の赴任先はキヴォトスのような学園都市だったのでしょう。私までまるでキヴォトスに戻ってきたような懐かしい錯覚を覚えます。
そんな私を何故かアリスとケイが観察していました。偶然視線が向いただけだろうと思い込もうとしましたが、彼女たちは私から目を離しません。瞬きせずに私の挙動を分析しているかのようでした。
「アリス、ケイ。何か?」
「"遊星"はお父さんの教え子を知っていますか?」
「"先生"たちの思い出話に時々登場したので名前は存じていますが、実際に会ったのは今日が初めてです」
「嘘です。私たちには人間の喜怒哀楽、感情のデータが膨大に搭載されています。それから"遊星"の反応を分析結果から、"遊星"はお父様の教え子を知っていると結論付けられます」
「……。そうですね。その辺りの事情は後日お話しましょう」
あのキヴォトスでの一年間を実際に体験した証明が出来ないので、語ったところで信じてもらえるかは分かりません。ですが、アリスとケイが至った未来の1つではありますから、知ってもらうべきでしょう。
ともあれ、アリスたちやリンたちが加わって、この世界での生活も賑やかになっていくことでしょう。この先どんな道を走ることになるかは分かりませんが、きっと希望に満ちた未来に繋がっているに違いありませんし、そうさせてみせます。
……と、ここで語りを終えられたら綺麗な幕引きだったのでしょうが……。
突然でした。構内に大音量で警報が鳴り響きます。
この警報は中枢モーメントが予期せぬ現象を起こした際のもの。さすがにゼロ・リバースのようなモーメントが暴走している警戒レベルではないようですが、ただちに原因を突き止めなければいけません。
「親睦を深めるのは後です。一刻も早く向かいましょう」
私は自分の机の上に置いていたタブレットを手にしました。映し出された映像ではWRGPを制したアンチノミーがチームメイトやクルーと喜び合っています。そして死闘を繰り広げた対戦チームが彼と握手しようと歩み寄ろうとした時でした。
突如、コース上で空間が割れ初めました。
亀裂は徐々に大きくなっていき、やがて砕け散り、光か闇かも分からない混沌とした色彩の空間と繋がります。
会場内が騒然となり、アナウンサーがプロ意識を発揮して状況を解説し、警護に当たっていた治安維持局の職員が出動し、アンチノミーたちDホイーラーが警戒心を強めました。
そんな亜空間より一台のDホイール……いえ、ロードバイクが飛び出し、ブレーキを掛けてアンチノミーたちの前で停車します。抜群のスタイルが現れたライダースーツに身を包んだ彼女はヘルメットを取り、オッドアイの双眼でアンチノミーを見つめ、彼を指さします。
「ん……、やっと見つけた。アンチノミー、貴方のことは私も耳にしてる」
「君は一体誰だい? それにアンチノミーって一体何のこと?」
「……」
「空間を超えて現れたってことは、君はまさか別の次元から来たの?」
「ん……、問いに対する返事はただ1つだけ。おい、デュエルしろよ」
彼女、もう一人のシロコは明らかに不動遊星……いえ、私を意識した決闘状をアンチノミーに叩きつけたのです。
「何をやっているんですか、シロコもゼアル先生も……」
シロコのパートナーのゼアル先生は後でじっくり問い質すとして、今はモーメントの異常の原因究明が先です。私たちが中枢モーメントの制御室に到着した頃には、中枢モーメントは膨大なメモリを使って演算をしているようでした。
まさか機皇帝や機皇神を作り出そうとしている? いえ、それなら王女ユニットのアリスや鍵たるケイが真っ先に人類消去というモーメントの意志を示していないとおかしいでしょう。
「アリスちゃん、お願いできる?」
「はい! アリス、出撃します!」
"会長"の願いによってアリスが中枢モーメントにアクセス。中枢モーメントが一体何をしているのかを突き止めようとします。我々はアリスを介して得られたデータを速やかに分析しますが……、
「ここじゃない別次元からの干渉!?」
"中枢モーメントを強制遮断!"
「駄目だ。中枢モーメントが生成する他に外部からエネルギーが供給されていて、遮断しても強制終了出来ない……!」
別の世界からクラッキングされているとまでは分かっても、我々には未知の相手に対抗出来ません。中枢モーメントは更に負荷を高めて高度な演算を初めており、このままでは何をされるか分かったものではありません。
私はリアルソリッドビジョンで光の剣:スーパーノヴァを作り出し、ケイの前に置きました。ケイは驚いた様子で光の剣、そしてアリスや"会長"たちを見渡し、やがて覚悟を決めて光の剣を装備します。
「中枢モーメントを破壊して被害を最小限に食い止める、でいいですね?」
「ええ、悲劇を繰り返すわけにはいきません」
「理解しました」
ケイは光の剣にエネルギーをチャージさせ、砲口を中枢モーメントに向けます。この場にいる研究者は例外無く自分たちの手で中枢モーメントを破壊することに悔しさを滲ませますが、現実と理想を天秤にかけ、反対する者はいませんでした。
「ザ・キューブ・オブ・ディス……!」
「ケイ、駄目です!」
「っ!? アリス……!?」
ただ一人、アリスを除いて。
「これはファーストコンタクトです。中枢モーメントを介してアリスたちにコンタクトしようとしてます」
「別世界の者たちが、ですか?」
「アリスたちで演算を補助します。手伝ってください」
「……。承知しました」
私が"会長"に視線を投げかけると、彼女は「アリスちゃんたちに任せてみましょう」と目で返事しました。アリスを信じるのではなくアリスがそう判断したから、"会長"もまたその選択をしたのでしょう。
懐疑的なパラドックスを"先生"が宥めながらアリスたちは作業を進め、やがてアリスたちの前に次元を隔てた別世界の来訪者がソリッドビジョンで姿を現します。アリスはその来訪者と手と手を取り合う形となりました。
「あなたは……アリスなのですか?」
「アリス、分かります。あなたもアリスなんですね」
来訪者の正体はアリスでした。
こちらのアリスと異なりヘイローのある、キヴォトスの天童アリスです。
そんな天童アリスは姿が変わった私を見つめ、笑顔を浮かべます。
「ユウセイ先生! アリスたちは半年でクエストクリアしました!」
その発言から分かりました。彼女は私が赴任したキヴォトスのアリスだと。
彼女たちはキヴォトスから去った私を追跡し、半年で見つけ出したのです。
いかに私という手がかりを追ったんだとしても、見事という他ありません。
「え? アリスちゃんが2人? 別世界のアリスちゃんがこっちの世界に接触してきたってこと?」
「それについては私から説明します」
アリスに続いてソリッドビジョンで投影されたのはヘイローのあるキヴォトスのユウカでした。ミレニアムのセミナー会長となったユウカは頼もしく、この場の混乱を静めるため説明しようとして……、
「え!? リオ先輩!?」
「ユウカ……!? ……。成程、そういうことね。落ち着いてちょうだい。私は貴女の知るリオではないわ。並行同位体、で合っていたかしら?」
「……。はい、そうでした。取り乱してごめんなさい。改めて自己紹介を。ミレニアムサイエンススクール3年、早瀬ユウカ。学園都市キヴォトスを代表してネオドミノシティに初めてご挨拶いたします」
ユウカによれば、あまりにも世界同士が遠いので、次元を隔てた通信はこちらの中枢モーメントとミレニアムの中枢モーメントを限界まで稼働しても2人分をソリッドビジョンで投影するのが限度だとのこと。ですが通信手段を確保すれば後はもう中枢モーメントを酷使する必要も無くなるそうです。
別世界からの接触で構内は大いに盛り上がりました。モーメントの新たな可能性に期待する者、別世界の技術に興味津々な者、別世界の自分と交流しようとする者など、様々です。
もう一人のシロコといいアリスといい、これからも退屈しなさそうです。
そして私にとってはそんな毎日が送れる今は、希望に満ちています。
私だけではなく皆で掴み取った未来。皆で必ず守りましょう。
不安はありません。今の私は一人ではありませんから。
「それで、"ユウセイ先生"?」
"勿論、事情を説明してくれるよね?"
「……。ええ、勿論です」
なお、この後"先生"と"会長"から質問攻めにあったため、キヴォトスでの一年間を洗いざらい説明する破目になりました。そのせいで次の日の勤務時間中は中々疲れて集中出来ませんでした。
更に余談ですが、この後複数の次元を巻き込んだ異変を解決するため、ネオドミノシティとキヴォトスが力を合わせて立ち向かうことになります。一般の科学者に戻った私まで取り組むことになったのは数奇であり必然なのでしょう。
不動遊星でもZ-ONEでもなくなっても、私は私です。
なら私がやれることを希望を捨てずにやり遂げるまでです。
それが私という人間なのですから。
これで本概念は完結です。
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございました。
抜けているデカグラマトン編2章、百花繚乱編、オラトリオ編はまた機会がある時に書きたいと思います。